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第66羽 大戦犯では??

お久しぶりです。わたくし、ねむ鯛は眠すぎてほとんどの時間を寝て過ごしてしまいました。これはメリィさんのベルの音のせいでは?作者は訝しんだ。

あ、嘘ですごめんなさい。もちろん私が悪かったです!!だから石をなげ……岩!?

 

 槍の先端から滴る血を振り払い、未だ驚いた顔のメリィさんに向かって駆け出す。欠片を踏み砕く音にハッと気を取り直した彼女は慌てたように体に力を込めたメリィさん。


 私の接近に合わせて突き出された拳の力を槍で巻き込み手前に引っ張ればバランスを崩してつんのめる。その隙にテイクバックしていた槍で脇を打ち据えた。鈍い感触に表情を歪めた彼女はその場に踏ん張って反撃を試みてきた。痛みのせいか少しだけ踏み込みが浅い。体をずらして拳を避け、蹴り飛ばした。


 クリーンヒットして宙を舞った彼女をすぐさま追いかける。空中で体勢を立て直したメリィさんが後ろに飛び退りながらこちらを見据え、高速で拳が空を乱打した。なにを?


 答えはすぐにでた。勢いよく飛来した冷たい輝きが頬を撫でる。氷だ。拳に生み出した氷を殴った勢いで飛ばしてきたのだ。それも連打で。多数の氷塊に魔術での迎撃を選択。


 《赤陣:火穿葬槍(かせんそうそう)


 握りしめられた手の先の魔術陣から、人体程度なら軽く飲み込めそうな大きさの炎の槍が射出された。貫通性能に特化したそれは氷拳の雨を消し飛ばし、その奥にいたメリィさんにも到達。

 氷によって威力が落ちていたため彼女の拳の一振りでかき消されてしまったが、しっかり仕事をしてくれた。


 息を整える暇を与えることなく低空を飛ぶように接近。渾身の突きを放った。タイミングはバッチリです。この距離で避ける場所はありません。

 するとメリィさんは避けるでもなく地面を這うように接近してきた。両手のガントレットをクロスし下からすくい上げ、槍を持ち上げるように踏み込んできた。既視感のある状況。これでは先ほどの二の舞。また頭突きをお腹にもらってしまう。


 なので私は全力で槍を握りしめると翼をはためかせ『急降下』で地面に罅が入るほど力強く踏み込んだ。もちろんその負荷はメリィさんにも行くわけで。

 最初は耐えていた彼女だったが、やがて腕が下がって頭で支える形になり、足も体を支えきれず膝を突き、最後には全身を地面に叩きつけられた。


 さっきのお返しです。二度目どころかこちらが誘導したので食らいませんよ?今の状況なら下から横に力の向をずらしていった方がなんとかなったかもしれませんね。


 そんな事を考えていると地面に倒れ伏したメリィさんから冷気の放出が止まる。それに喜ぶでもなく私は訝しんだ。

 気絶した……?いえ、戦った感じではまだ彼女には余裕があるはず。死んだふりでしょうか?


 ――ッ!!


 メリィさんを中心に大きく魔力が胎動する。

 それを感じ取った瞬間後ろに大きく飛び退けば。


 ――――閃光が爆発した。


 これは……雷……?


 迸る(イカヅチ)の中心でメリィさんがユラリと体を起こす。電気の影響かメリィさんの髪がふわりと浮かび広がっている。まるでメリィさんが大きくなったように感じた。正確には違います。彼女から感じる圧力が大きくなったのです。


 バチリバチリと弾けるような衝撃が空気を叩いている。すごい威力だ。飛散する雷の余波で鍾乳石が砕けている。冷気の放出を止めたのはこの魔法を使うためですか……!!


 メリィさんの口が「ちょっとだけ、全力……!!」と動いた。


 私の耳が聞こえていたならバリッという音が聞こえたのではないでしょうか。メリィさんの姿がかき消える。視界が横にブレた。そう思った時には背中から壁に叩きつけられていた。


 認識できないほどの速度で真横から蹴り飛ばされたのだ。


 ――()ッ!!


 脇腹がものすごい熱を持っている。肋骨がいくつか折れているようです。それだけではありません。実際に脇腹が焦げています。雷の影響でしょう。『高速再生』を使って急いで治療していく。口元を伝った血を手で拭って壁から飛び出した。


 目の前に拳を振りかぶったメリィさん。現れるのは一瞬だった。咄嗟に柄で受け止めれば、衝撃が突き抜ける。


 ――くっ!?体が痺れて……!!


 槍がガントレットから流れてきた電気を通し、体が硬直する。無理矢理力を入れ、衝撃に合わせて後ろに飛び退れば、いつの間に追いついたのか真横に。全速力で槍を巡らせ攻撃を防ぎ、後ろに飛び退くことで威力を逃がすもののメリィさんはすぐに追いついてくる。何度防いで下がっても距離を離せない……!!電気による痺れがそれを助長する。。速すぎてまともに目で追えない……!まるでコマ送りでもされているような速度で、今の私では対処が難しいレベルです。


 仕方がありません。少々無茶しますが……。


 またもや突然現れたメリィさんの攻撃をなんとか防ぎ、距離を離しつつ呼吸を変化させていく。

 片手を突いて地面を削りながら失速。そのさなかに体を蒼の闘気が包み込む。氣装纏鎧(エンスタフト)だ。


 体に蒼をまとったまま槍を振るい、コマ送りのような速度で迫ってきた彼女の攻撃にぶつけ合わせる。感電は……しない。槍にまとっていた炎を消して、《黄陣:付加》で雷をまとい武器の接触による通電を防いだからだ。これでまともに打ち合える……!!

 威力を相殺し拳を弾けば、驚いたように彼女の目が僅かに大きくなる。しかしそれも一瞬のこと。すさまじい速度で動かれればもはやまともに目で追えなくなる。


 次だ。目で追えなくても反応はできる。感覚を研ぎ澄ませろ。

 魔力を使って風を周りに送り出す。『空間把握』で周りの障害物を認識し『風靡』で周りの空気の流れを掴む。風の発生源とこれから通る道筋、そして終点を予測。自然に発生する風を判別していき、メリィさんが作り出す風をあぶり出す。


 そこだッ!!


 首を動かせば目が合った。

 背後に回り込んで拳を大きく振りかぶったメリィさん。そのがら空きの胴体に。


 ――【下弦月かげんげつ


 後方180度をなぎ払うカウンターバックのなぎ払いが直撃した。反撃が来るとは思っていなかったメリィさんは、くの字で吹っ飛んでいった。好機!!

 駆け出すと同時に握りしめた左手を目の前へ。同時に闘気を爆発させ戦撃の構えを取る。


 ――《紫陣:加速》


 紫の魔術陣の先に見えるメリィさんを見据え、地面を踏み砕く。


 ――【魔喰牙ばくうが】!!


 次の瞬間にはメリィさんの目の前にいた。未だ体勢の整わない彼女は咄嗟にガントレットでのガードを選択。しかしそんなもの関係ありません。


 魔術による加速と戦撃による加速。そこに私の全身の力を一点に集中させた片手突きは。

 ガントレットを容易く割り砕いて、その衝撃が彼女の全身を貫いた。


 ゴム鞠のように軽々と吹き飛んで地面にバウンドしたメリィさんは起き上がったもののどこか足取りが力ない。戦撃は私の通常の攻撃よりも遙かに威力が高いです。いくら格上だろうとなんども食らえばタダでは済みません。

 メリィさんが発生させている雷も威力が下がっているように見えます。こちらは単純に魔力不足でしょうか。


 その時、洞窟の入り口から極大な雷の奔流がメリィさんめがけて殺到した。この魔力、龍帝ですか!?

 体にダメージが残っていたメリィさんは避ける暇もなく飲み込まれてしまった。


 私が受けたら一瞬で消し炭になるような威力。いくらメリィさんとはいえ、耐えられるものでは……。戦闘で高まっていた熱が急激に冷めていく。


 成り行きで敵対していたメリィさん。彼女の本質はきっと悪ではなかった。一時とは言え仲良く過ごすことのできた彼女がいなくなってしまうのは、なんだかこの霊峰の冷たい風が胸に吹き込んでくるように感じられました。


 ――いや、まだ生きている!?


 龍帝の攻撃で消し飛んでしまったはずのメリィさんは未だ健在でした。雷を扱うが故にメリィさんに雷の耐性があったのかもしれないとか、龍帝が洞窟を壊さないように加減をしているのかもしれないとかそんな考えが浮かびましたが、一瞬で吹き飛ぶような出来事が起きてしまいました。

 龍帝の攻撃をその身で受け止めていたメリィさん。彼女が徐々に攻撃の向きを逸らし始め、やがて斜め後方に受け流すことに成功し。

 そして狙ったのかそうでないのか、受け流された強力な雷のブレスは宝玉に直撃してしまったのです。その途端、軋むような嫌な音が。マズい!!


 ――龍帝!!攻撃を止めてください!!宝玉が!!


『なに!?』


 巨大な雷の光線は収まったものの既に遅かった。

 罅の入った宝玉から黒い影が這い出してきたからです。

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