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第64羽 下手人

いつも読んでくれてありがとう!

ブクマと評価もうれしい!

 

「メリィさん、まさか……」


 流石にこの状況を放ってマンドラゴラを拾い集める訳にもいきません。どうせ龍帝に頼まれていたのです。メリィさんと洞窟の状況を一緒に確認しましょう。


 洞窟に近づくと抵抗感のようなものが。これは壊れた結界の残された力ですね。それとは別に強力な魔力を感じます。こちらは鱗を持つものが対象の結界でしょう。


 一歩洞窟に踏み込む。


「う!?」


 思わず後ずさってしまった。結界の中から感じたのは濃密な魔素。自然界に存在している魔素の50倍はあります。とは言え普通にしていても魔素を50倍吸収する訳ではないですが、長居すべきでないのも事実。


 早めに済ませてしまいましょう。濃密な魔素の中へ早足で踏み込む。

 狭い入り口をくぐり抜けてしまえばその先は巨大な鍾乳洞のになっていました。大小様々な鍾乳石が天井からつり下がったり伸び上がったりとたくさん生えていて、足下は水たまりのようになっている。幻想的な光景に見惚れるのもつかの間、奇妙な音が聞こえてきました。

 ガキンガキンとなにか硬いものと硬いものがすごい力でぶつかり合うようなそんな音です。


 音の発生源は天井まで届くような巨大な鍾乳石で遮られていて見えない。なんだか嫌な予感がします。足下の水たまりをはね飛ばしながら、急いで鍾乳石を回り込む。


 そこで目に入ったのは上下から伸びた鍾乳石の中心、そこに宝石のような輝きを放つ玉が収まっている。あれに近づくほど魔素が濃くなっています。ここの魔素はあれから放出されたものなのでしょう。しかし今重要なのはそれではありません。

 その玉をひたすら殴り続けているメリィさんがいることです。両手に肘から下を覆う巨大なガントレットを装備している。拳を振り下ろしている姿はまるで重機のよう。


「メリィさん!!何してるんですか!今すぐ止めてください!!」


 恐らくメリィさんが殴っている玉が龍帝が言っていた宝玉でしょう。何かが封印されていると言っていましたし、殴っていて良い結果になるとは思えません。

 取りあえず止めてもらおうと声をかけてもメリィさんはこちらをチラリと見て一言呟くだけ。


「お使い」


「前にもここに入りましたか?」


「うん。長くいると体調が悪くなるから何回も」


 下の洞窟で会ったときに言っていたお使いがこれと言うことでしょう。龍帝が言っていた下手人というのもメリィさんで確定です。体調が悪くなるのは魔素のせいです。ともかく止めなければ。


「メリィさん、止めてください。止めてくれないのであれば実力行使に出ます」


 槍を構えてそういうもののメリィさんは首に着けたベルの音と共に殴るのを止める様子は無い。しかたありません。未だ殴り続けるメリィさんに駆け寄り、首に向かって槍を突き出す。風を裂いて進む槍は狙いを(たが)える事なく首へ向かい――――


「……殺気が乗ってないよ?」


「ッ!!」


 その直前でピタリと止まった。彼女が止めたわけではない。私が躊躇してしまっただけ。

 槍を引き戻して胴をなぎ払えば当たる前に今度こそ彼女は飛び退いて宝玉から離れた。ベルの音が鳴る。


「邪魔」


 両手のゴツいガントレットの両拳を打ち鳴らし、こちらに突っ込んできた。


「やりづらいですね……!!」


 彼女の重厚な拳を逸らしながら思う。

 数多の人生を送ってきた経験から私は悪意と呼べるものに対してかなり敏感です。他者を害そう、蹴落としてでも自分の利益を優先しよう、そういう悪意。

 しかし彼女からはそんな悪意を感じない。感じるのは単純に邪魔をされたことに対する敵意だけ。

 たった1時間に満たない時間を洞窟内で過ごしただけですが、私は……!!


「メリィさん、その宝玉の中には何か良くないものが封印されています!!壊すのは止めてください」


「ダメ。これはボスのお使いだから」


「くっ!ならそのボスは何が目的なんですか!?」


「さあ?でもジャシン様がどうこう言ってた」


 ジャシン?まさか……!!


「あなた……ジャシン教ですか?」


「そう私は幹部の1人」


 ジャシン教。フレイさん達との話で出てきた宗教の名前。私が実際に見たわけではないのでどういう組織なのかはあまりわかりません。

 しかし世界を滅ぼしたことのあるといわれている存在を崇めている訳ですから、良いものだとは言えない可能性の方が高いです。良いか悪いか判断がつかないなら――――


「とりあえず貴女を捕まえます。それから考えましょう」


「そう、でも――――」


 そう言ったメリィさんは私が突きだした槍を身を屈めて避けた。そのままクロスさせたガントレットでギャリギャリと槍を下からすくい上げるようにして迫る。


 無理矢理腕を持ち上げられ、胴体に角によって威力の増幅された頭突きが突き刺さった。


「ガフッ!?」


 腹部に重い衝撃を受け、その場に留まることもできず吹き飛ばされる。鍾乳石を3つほど背中で砕いてようやく止まった。


「――――鳥さんにできるかな?」


 魔素のせいか頭が重いし、案外大変かも知れませんね……!!


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