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第??話 獣ノ刻 その1

過去編ですが、長くなりそうなので、終わった後に簡潔にまとめたものを投稿しようと思っています。過去編があまり好きじゃない人は、そっちを読んでから本編に合流するルートもあります。

 

魂源輪廻(ウロボロス)』という能力が自分のなかにあると知ってしばらく。私は再び転生していました。


 今の私は十歳と少し。チーターの獣人としてこの世界に生をうけました。この世界での獣人の容姿は良くあるもので、人の姿をベースとして動物の要素を掛け合わせた様な姿となっています。私は頭の上には猫耳が乗っていて、腰当たりからは尻尾が伸びています。髪と体毛は橙色で、髪は腰当たりまで伸びていて少し長めでしょうか。


 今は人里離れた小屋に保護者代わりの師匠と一緒に住んでいます。両親はもう居ません。師匠が言うには、赤ちゃんの頃に捨てられていた私を、偶然拾ってそれから育ててくれているそうです。


 私の師匠は猿の獣人です。人間と比べて力も強く身軽で、おまけに頭もすこぶる良いので特別な技術を幾つも持っています。そんな師匠は控えめに見てもかなり強く、私が動ける様になってからはいつも鍛えて貰っています。


 なのですが……今日は何だか様子がおかしいですね。いつもなら修行を始めている時間なのに師匠の部屋に呼び出されてしまいました。どうしたのでしょうか?


「師匠? 入りますよ」


「ああ、いいぞ」


 ノックをして確認を取った後、扉を開けて部屋に入れば師匠はいつになく神妙な顔をしていました。今でこそ落ち着いていますが、若い頃はさぞやんちゃをしていそうなお爺さんの顔です。

 今は体がこちらを向いているので見えませんが、立っている姿を目にすれば揺れる長い尻尾が見えるでしょう。


 師匠は人と同じ形をした耳に逆立つ房毛(ふさげ)が生えているのが特徴ですね。初めは焦げ茶色だったんですが、ここ最近ではすっかり白くなってしまいました。もう六十歳近いですからね……。


「昨日のことを……よく考えてみたんだ……」


「あ、はい」


 昨日のこと……? そう言われても特に修行の記憶しかないですけど……。


「それで結論を出した」


 そう言った師匠の目はあり得ない生ものを見るような目で。


「お前……今日で破門な」


「!!?!?!??」


 そんな突然の宣言に私は思わず目を白黒させてしまった。


「な、なんでですか? 私が何かをしてしまいましたか!?」


「いや、したというか……出来なかったんだが……」


「出来なかった……。あ、アレのことですか!? ですがあんなのちょっとしたお遊びだと言っていたじゃないですか!」


「いやワシもお遊びだとは言った。だがな? 獣人ならお遊びで出来ることだからだ」


 眉間を押さえ、大きく息を吐いた師匠が頭痛を抑えるように言葉を続ける。


「いやな? ワシもまさかとは思ったぞ? なにせ初めてお前が槍を振るったときの光景は今でも鮮明に思い出せる。天才だと。ワシの期待に答えられる子だとそう思った」


「なら……!!」


 しかしだ、と心を落ち着ける様にもう一度息を吐いた師匠は椅子に深く腰掛け直した。


「あれからお前は一向に強くならん。ワシが教えた体術はまともに習熟出来んし、魔術もてんでダメ。魔法が苦手な獣人用にワシが生み出した魔術がだぞ? 要領が良ければ(よわい)三つの子でも使えるぞ?」


「……う゛」


「それどころかお前は何もない所で転ぶし、小指をいろんな物の角にぶつけまくるし、皿を洗えばちょくちょく割るし、そそっかしいし、ほとんどのことに要領悪いし、なんか気づいたら槍を転がして遊んでるし、街できれいなお姉ちゃんに声をかけたら邪魔をするし、酒を飲んでると取り上げるし」


「最後らへんのは残当では?」


「だまらっしゃい!!」


 ……えぇ……。


「ワシもまさかとは思った。人間ならともかく、獣人であるお前が、とな? だが疑念は日に日に強くなり、遂に昨日確かめてしまった訳だ」


「何なんですか! 結局理由は!?」


「……ともかくだ!! お前は才能ないから破門!」


「そんなこと言わないでくださいよ! 私強くなりたいんです!」


「ならん!! 無理!!」


「頑張ります!!」


「うるさいバカ弟子!!」


「なんですかクソ師匠!!」


「なんだとおっちょこちょいが!!」


「このスケベジジイ!!」


「ちんちくりん!!」


「発展途上です!!」


「それ以上育たんわ!!」


「デリカシーないですよ!! それにそんなこと師匠に分からないでしょう!!」


「わかるわバカモンが!! ……ええい!! そこまで言うのなら昨日のやって見せい!!」


「いいですよやってやりますよ!! 目玉こぼれ落ちるくらいしっかり見ててくださいよ!!」


 売り言葉に買い言葉。怒りに身を任せ師匠の言葉を承諾する。

 こんなの簡単ですよ! 昨日はたまたま出来なかっただけです!


 鋭くなった目つきの師匠に背を向けて、意気込み強く右脚を前に出し、地面に着く前に宙で止める。そこで左脚をちょいちょいと……うん? 上手くいかないですね。ケンケンしている見たいになってしまいました。思い通りになる前にバランスを崩して右脚を地面に着いてしまう。仕方がないので今度はと左脚を前に出して……あれ? どうするんでしたっけ? なんだかこんがらがって……わわ! 脚が絡まった……!!


「あいた!?」


 ……昨日みたいに転けてしまいました。頭を振って痛みを飛ばし、座り込んで師匠を見上げた。


「うーん……案外難しいですね、スキップって」


「うん、ものすごい運動音痴だから破門!!!!!!!!! 無理!! 終わり!!」


「なんでですか!!」


「当たり前だ!! バカ弟子がァ!!! 獣人で運動音痴が居るかァ!!!!」

 

【悲報】 主人公、非才の身に加え運動音痴が判明。


すみません。しばらく忙しいので三月辺りまで結構な頻度で更新が止まるかもしれません。ご容赦くださいませ……。

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