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第三十六羽 詰めが甘い

 

 メニューをじっくり読み込んで選んだのは、肉と魚系の注文を端から端まで。注文したときは店員さんも驚いていました。半信半疑だったようですが1つ目に持ってきたハンバーグを、2つ目のチキングリルが来るまでに食べ終わって待っていたら次からは急いで持ってきてくれる様になりました。多分食べきれずに途中でキャンセルになると思ってゆっくり作っていたんでしょうね。ふふ……甘いですよ……。

 モルクさんの依頼を熟したお金があるので懐には余裕があるのでいくらでも注文することが出来ます。


 ミルはパンとスープにおかずがついたオーソドックスな朝食メニューを選んでいました。お店にピッタリなおしゃれなメニューでしたね。……私ですか? おしゃれ? なにそれ美味しいの?


「メルは健啖家なんだね……。ところでその野菜は食べないの? 好き嫌いは良くないよ?」


 微妙に引きつった表情のミルが私のお皿に残った野菜を見やる。

 私は口の中のものを飲み込んで、食べ終わった十枚目の皿を重ねた。


「これは体質でして……私は野菜は食べられないのです……」


「そうなの?」


「ええ、どうにも植物は穀物類と果実以外食べられなくて体調を崩してしまうのですよ」


「そっか、それなら仕方ないね」


 なんどか穀物類と果実以外も試してみたのですが……その度に体調を崩してしまいます。やはり消化出来ないようなのです。私の進化系列は現在ハヤブサなので、穀物と果実が食べられるのが救いですね。鷲や鷹ではなく、スズメやツバメに近いですからね。そうでなければ、魚肉以外完全に無理だったかもしれません。


 ああ、キャベツやレタスなんかの緑黄色野菜も食べたい……。私の体質が恨めしい……。

 体質……? 待ってください、何か素晴らしいひらめきが降りてきそうな予感が……!


 ……消化できない。……体質。……変化。……今世。……? そうです! 『追憶解放(エントランス)』すれば鳥の体質から変化して食べられるようになるんじゃないでしょうか!? 思い立ったが吉日。やってみましょう。上手く行けば今世で諦めていた植物が食べられるようになるかもしれません。


「鬼」と「チーター」は見た目での変化が大きいのでここは「普人」で良いでしょうね。なんの変化も起きない外れ追憶解放(エントランス)でしたが、変化しないのをありがたがるだなんて思ってもいませんでした。


「ミルさん、私、野菜も食べようと思います!」


「え!? 体質はどうなったの?」


「体をつくりかえました」


「どう言う事? ……本当にどう言う事!? 今の一瞬になにが起きたの!?」


「ひらめきが降りてきたんです」


「ひらめきで変わるほど体って摩訶不思議に出来てたっけ!?」


「もぐもぐ……。美味しいです」


「もう食べてる!? 好き嫌いがないのは良いことだけどね!?」


「ミルさんはもう食べないんですか?」


「今それを聞くの!? 見てるだけでお腹いっぱいになったけど!?」


「そんなに見ても……あげませんよ?」


「いらないよっ!!」


 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 


「ごちそうさまでした」


 十枚積み上げたお皿のタワーが三つ出来上がりました。

 お肉はジューシーで口の中でとろける様でしたし、魚はホロホロと崩れる身に香辛料が主張しすぎない案配でとても美味しかったです。今世で諦めていた野菜も食べることが出来て、体に満ちる充足感も相まってニッコリですね。


「わ……、たくさん食べたね……。今日は依頼受けるの止めとく?」


「腹八分目なので問題ないです」


「……八分目ってなんだっけ。八人分って意味だったかな……?」


「ほら、止まってないで行きますよ?」


 首を傾げて何かを思案しているミルを引っ張って進む。なぜか顔が引きつっている店員さんにお金を払って、追憶解放(エントランス)を解除して店を出た。さあ、依頼を受けに行きましょう!


 今日は絶好調ですよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 改めて見てもどえらい無茶を、美味しくご飯を食べれるようにするためにしてる、と思うと日本人としての何がなんでも美味しく食べる魂が、どこかにあったりするのかと思うとクスッとする今日この頃。
[一言] 逆転の発想だけど、使い過ぎたら全身が弾け飛ぶ能力を使ってでも食う価値あるか?………………あるか。
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