第三十三羽 お泊まり治療
巻き髭とエセ忍者が謎の三人目に連れて行かれてしまった後。ウサミミ騎士こと、トコトさんとその随伴の騎士の方達が主導で巻き髭の残していった粘液と、エセ忍者の残していった毒を処理して下さりました。
毒は魔法で無害化出来る方がいたのでもっぱら粘液の掃除をするみたいですが。私の毒もある程度消して貰ったのですが、体内に入ったものは完全に消し去るのが難しいので治療を受けなくてはならないとのこと。
かなり楽になったので私も事後処理を手伝おうとしたのですが、それを伝えると、「何言ってんの!? メルちゃんって馬鹿なんだね、馬鹿なんでしょ!? 早く治療して貰ってきなさい!!」とトコトさんには怒られ。
「すみませんすみません、トコト様が暴言を吐いてすみません。そしてすみませんがトコト様のおっしゃったことはもっともであると愚考します。直ちに治療を受けてついでに頭の検査もして貰ってください。それではすみません」と随伴の人には謝罪に見せかけた罵倒を浴びせられました。……解せぬ。
ちなみに崩れた街の修復は、街を取り仕切っている貴族の方が大多数を受け持つそうです。お労しや……。私は最後踏み込みでちょっと穴を開けただけなので……許して……。
そしてエセ忍者から受けていた毒の影響で血を吐いてしまった私はといえば……。
「おはようメル。気分はどう?」
「おはようございますミルさん。問題ないですよ」
「昨日の今日で何言ってるの。あの複合毒だと普通動き回るのは無理だからね?」
お礼を言う私に呆れたようにジト目を送ってくるミル。お察しの通り、ミルに治療を受けていました。実際に治療を受けたのは昨日で、今日は体調が問題ないかの確認ですね。
血を吐いた私を見て血相を変えたミルは、治療のための薬草や器具が揃っている自分の住まいに引っ張ってきました。ビックリしましたが後でこれが幸運な事だと気づきました。
昨日はジャシン教のテロのせいで怪我人も多く、街の診療所はてんてこ舞い。私が診察を受けるまでにはかなりの時間がかかったでしょう。そこをミルに診て貰ったので悪化することもなく体調は万全に回復しました。
なので治療を受けた後は孤児院とモルクさんの商会に顔を見せにいきました。皆無事なようで良かったです。
「それにしてもすみません。経過観察とはいえ家にやっかいになってしまって」
実は昨日はミルの住まいに泊めて貰いました。きちんと薬は処方したから大丈夫だとは思うけど、念の為一日様子を見させて欲しいと頼まれたので。
……その時、名前を教えていないのになんで知っていたのか問い詰められました。半ばパニックになりながらごまかしたのでなんて言ったのかは覚えていませんが。
「別に気にしないでよ。助けて貰ったんだからこれくらい当たり前だよ。……別に今から住んでも良いんだよ?」
「いえ、申し出はありがたいのですが一ヶ月分先払いで宿を借りているので今日だけですよ。ご迷惑をかけるわけにもいきません」
「……そっか。別に迷惑じゃないんだけどな……」
「はい? なにか言いましたか?」
「ううん、何でもないよ」
「そうですか?」
何か言っていた気がしたのですが、気のせいでしたかね?
「そう言えば幼なじみとパーティーを組んでいたんじゃないんですか? 昨日も今日もそれらしき姿は見当たりませんでしたが」
……ミルが家からいなくなった経緯はお母様に聞いています。話通りなら少年がいるはずなのですが……。
「あれ? よく知ってるね? 伝えたことないのに。あたしの名前の事と言いなんだかすごく詳しいね」
「あ、あはは。偶然風の噂で聞きまして……」
冗談めかして言ったミルに慌ててて笑ってごまかした。続きの言葉を待っていると、笑顔だったミルの表情が次第に暗いものへと変わっていく。
……あれ、地雷踏みました?
まさかパーティー関係で不和があったのでしょうか? 昨日のテロ行為で安否確認に現れなかったということは少年はすぐこれるような場所にはいない可能性が高い。今の話の流れで暗い表情になるということは、不本意な事が起こったと言うこと。ここで内容を聞くのはぶしつけでしょうか……?
ここは慰めるべきでしょうか、それともそっとしておくべき!? と、とにかく話題をそらしましょう。……今時の人間の話題ってなに!? 私は3日前に来た魔物だからわかんないですよ!!
慌てた私はこんがらがった思考の中、自分でもなぜそうなったのか理解できない言葉を発してしまった。
「あの……私とパーティーを組みませんか?」
「……え?」
ブックマークと高評価ありがとうございます!
タイトルとあらすじを変えました。
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