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第十四羽 杞憂

 

 お昼ご飯にバーベキューというなかなか豪快な食事を終えて、子供たちはみんなお昼寝の時間。クレアさんたちシスターはお仕事に。私もなにかお手伝いをと思ったのですが、子供たちが抱き着いてきて一緒に寝ようとせがまれてしまいました。


 困った私は助けを求めてクレアさんを見つめたのですが「ふふ、随分懐かれたみたいね。みんなのことを見ててあげて」といわれたので私も一緒に寝ることに。別に私も疲れて眠くなったわけではありませんので悪しからず。そんなこんなでみんなと同じ部屋で雑魚寝していたところパチリと目が覚めました。外から足音、……だれかが来た?


 足音は複数。クレアさんたち大人組がいる部屋のほうへと向かっていきました。

 僅かな不安を感じた私は子供たちを起こさないようにそっと立ち上がり、声のするほうへ。


「皆さん今日も巡回お疲れ様です」


「おう、ありがとうクレアさん。……今日はなんだか随分いい匂いがするな」


「ふふ、今日は遊びに来た子がご馳走してくれたのよ」


「……子供が? 大丈夫なのか?」


「ええ、なんでも――」


「クレアさん?」


「あら、メルちゃん。起こしちゃった?」


「……いえ、大丈夫ですよ。お手洗いに起きただけですので。そちらの方たちは?」


 目を向けた先には鎧を着けた大人達がこちらを見ていた。


「そう? あ、紹介するわね。この子が今話した本人よ。メルちゃんっていうの。それでこの人たちは巡回の白鱗騎士団の人達よ」


「初めまして、メルシュナーダ、メルです」


  クレアさんの紹介に合わせて挨拶をすれば、大人達の中から一番体格の大きな男性が1人までに出てきた。短く切りそろえた金髪を逆立たせた強面の方です。


「分隊長を務めている、トーヴだ。よろしく。お嬢さん」


「はい、よろしくお願いします」


 差し出された手を握り返した私は、その笑顔の裏で内心胸をなで下ろしていた。


 ……杞憂で良かった。大人がゾロゾロやってくるときは大抵取り立ての催促をする荒っぽい人たちだったので、もしやと邪推してしまいました。そうですよね、ここは支援の厚い孤児院でした。経営難になんてなっていないですよね。


「今日はこの孤児院に食料を分けてくれたと聞いた。白蛇聖教を代表して感謝するよお嬢さん」


「ふふ、少し前に回復薬を多めに補充した所でご飯を切り詰めていたから助かったわ」


「いえ、私も皆との食事は楽しかったので気にしないで下さい。ところで回復薬とはだれか怪我をされたのですか?」


「違うわ。タダの保険よ」


「最近ジャシン教の活動が各地で活発になっているのは知っているだろう? 怪我人が出ているとの話も多くてな。どこの家庭でももしものタメに回復薬を常備する様になったんだよ」


「そのせいで回復薬は品切れだし、あっても高くて……」


「作戦行動中以外は訓練が中心の騎士団などは怪我も比較的少なく問題ないのだが、普段から怪我が絶えない冒険者などはかなり困っているようだな」


「なるほど、それで……」


 私が回復薬を急いで運搬することになったのですね。ジャシン教は市民にまで迷惑をかけているのですね。……メリィさんは、……いえ、今は考えても仕方ありません。


「……ところでお嬢さん。施しはありがたいのだが……、その大丈夫なのかな? 懐は」



 ああ、私が子供に見えるから金銭的な心配をしてくれているのでしょう。問題ないことを伝えようと口を開いた時。


「大丈夫で―――」


「ふん、親の金で施しか? 随分お優しい事だな」


 突如として冷ややかな言葉が部屋の中に突き刺さった。

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