第十一羽 見慣れぬ綺麗な建物
昇った朝日が窓から少女のかわいらしい顔を照らし出す。スヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた少女はやがて、まぶたを震わせゆっくりを目を開けた。
「んぅ……? 朝ですか……。えっと」
ここはどこでしたっけ?
見慣れない内装の室内をじっくりを見渡して。ようやく覚醒してきた脳が昨日のことを思い出してきました。そうそう昨日は依頼を終えて宿に泊まったのでした。釣られて思い出したくないことも出てきて思わずゲンナリしてしまう。
超特急で帰ってきたら、モルクさんにも勘違い話が広がっていた件。あんなに急いだのに……。
鳥の飛行速度を存分に活かし、その日のうちに帰ってきた私はモルクさんから冒険者ランクに関する話をされたときに投下された爆弾に愕然としました。彼は彼で勘違いしてそうな気配がしますし……。うぼぁー。
持って帰ってきた回復薬が入った樽は、モルクさんのお店の倉庫に持って行きました。皆さんが思っていたよりも早かったらしく、とても喜ばれました。なにせ顔を見せたときになにか忘れ物でもして取りに帰ってきたのかを聞かれたくらいですからね。違いますよ!! 荷物を持って帰ってきたんです!!
もう!! 失礼しちゃいますね。私そんなに抜けていませんよ!
回復薬を受け取りに言った業者の人も最初は全然信じてくれなくて、モルクさんの手紙を見せてようやく信じてくれたくらいです。口をあんぐり開けてました。早くして欲しかったので手の平でグイッと押し上げて戻しましたけど。
ギルドでの評価も最高評価を頂きました。頑張ったかいがありましたね。ルマーさんも本当に10トン全部持ってきたのか再三確認していました。だから忘れ物ではありません!!!
報告を終わらせ別れた後は、モルクさんに紹介された宿に泊まりました。なんと一ヶ月分を先払いで負担してくださりました。最初は断ったのですが、命を救われたのだからこれくらいはさせてくれと言われまして断り切れず……。
朝の支度を済ませて外に出る。準備運動をしたのち、『無明金剛』を構えて日課の訓練。
う~ん、10トン減ると流石に体が軽いですね。なんだか物足りなく感じてしまいます。
部屋で体を軽く拭いた後食堂へ。
「……ごちそうさまでした」
おいしかったです。
宿で提供された朝食を食べ終え、ナプキンで口元を拭く。さて、今日はどうしましょうか。とは言っても特に予定はないので、冒険者ギルドに行ってなにかクエストでも受けましょうかね。ついでに冒険者の方とお話でもして、他大陸に渡ることができる別の方法でも聞き出せれば御の字ですね。
「おや?」
宿から出て冒険者ギルドに向かっている途中、綺麗な外装の大きな建物を見つけました。中からは元気な複数の子供の声が聞こえます。外がおしゃれな鉄柵で囲われていて、敷地が結構広いですね。なんの施設でしょうか。
近づいてみれば門に文字が。えっと……
「スワンヌ孤児院……。え、ここ孤児院なのですか……?」
驚きました。私が知っている孤児院は大体ボロボロのガタガタで、酷いところだと院長が支援金を横領していたりします。なにせ私も居たことがありますから。
ここまで綺麗で大きな施設はなかなかお目にかかれません。さすがは商業都市ということでしょうか?
そう言えばフレイさんも孤児院出身でしたね。ここは北の大陸でも王都でもないですけど。それにしても、上手に使えるようになっているでしょうか、あれ。まあさすがにこの短時間では難しいでしょう。……できてたらどうしよう。
「おい!」
「はい?」
そんなふうにフレイさんの事を思い返しているときに声がかけられる。声は門を挟んで反対側、両手で門を握った男の子のものでした。こちらをジッと見ています。どうしたのでしょうか?
「……お前、遊びに来たのか?」
「え?」
「おーい、シスター!! 門開けてよ、1人増えたよ!!」
「え? え!?」
どう言う事ですか!?
想定外の事に戸惑っていると、施設の中からパタパタという足音が聞こえてきた。
「はーい、今行きま〜す」
そうして現れたのはシスター服をまとった、エルフの少女だった。
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一ヶ月分先払い→モルクはお礼も兼ねて居場所の固定も狙っています。




