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第六羽 予想外に弱いタイプ

 

 右手でお姉さんの口を塞いだまま、自分の口元に人差し指を当て、「しー」とジェスチャーすれば僅かに顔を赤くしてコクコクと頷いた。もう大丈夫そうなので手を外して話しかける。


「落ち着きましたか?」


「……はぃ、お騒がせしました……」


 俯いて赤くなったお姉さんは消え入りそうな声でそう答えてくれました。なんとか悪目立ちは止めることが出来ました。良かったです。


「それでどうして急に叫びそうになったのですか?」


 私のカードになにか不備があったのでしょうか。このカードはパルクナットのギルドマスターのお爺ちゃん、ヤガスさんが用意してくれたものです。話したのは短い時間でしたが、こちらは魔物だとわかっているのに真摯に対応してくれた方です。ですので大丈夫だと思うのですが……。


「いえ……失礼な話なのですが貴女がまさかBランク冒険者だとは思いませんでしたので……」


「ああ、大丈夫ですよ。そういうのは慣れていま―――え?」


「……え?」


 今、お姉さんはなんと言いましたか? ……Bランクって言いませんでしたか?私が……Bランク?


「ランクの見間違いとかは……」


「ないですよ? カードが白金色でしょう? それはBランク冒険者の証ですよ」


 ……なんか豪華だなーとは思っていました。間違いない? なんでそんな事に……。


「えっと、その、冒険者のランクってどうやって決まるんですか?」


「今までの実績を元に下のランクから昇格していく形になります。Gが一番下でSが一番上、英雄級が例外的な存在になります。皆さん見習いのGランクからですね」


「つまり普通にやっていきなり高いランクから始まるって事は……」


「ないと思いますよ? それがどうかいたしましたか?」


 ッスゥー……。私冒険者として活動したことはないのですが……!!なぜか私はBランク!!


 お爺ちゃん!? これ貴方のせいですよね!? きっとお礼としてランクを上げてくれたのでしょうけれど、変に露呈した場合面倒なことになるのですが!?


 ……一旦落ち着きましょう。Be Coolです。ポジティブに考えましょう。

 逆に考えれば大陸渡航までに必要なランクを上げるまで時間が短縮されたと言うこと。


 例え今まで冒険者としての活動履歴がなく、いきなり生えてきたように見えたとしても!! 疑われたときに詰んでしまいそうな未来しか見えないとしても!! 本当の事を伝えるにしても説明できる人が他大陸にしかいないとしても!!

 ……あれ? 他大陸……? これはマズいのでは……? いえ、まさかね。そんな簡単に判別できるようなものは……。


「それにしても」


 カードを見ていたお姉さんが不思議そうに首を傾げたのを見て、背中から流れるはずのない冷や汗が滝のように流れ出した。……気づかないで?


「……なんで他の大陸で発行されたカードを持っているんですか?」


「他大陸……? そんなの分かるんですか……?」


「はい。ここの……」


 そう言ってお姉さんが指を指したのは冒険者カードの名前の部分。『メル』と書かれたその左のクローバーのマークだった。


「ここのマークが冒険者カードが作られた大陸を示すんですよ。ここにいる皆さんは南のサウザンクルス大陸の冒険者なのでスペードのマークです。冒険者様はクローバーなので……北のノッセントルグ大陸ですね」


 笑顔で死刑宣告をされ、目から光が消えていく。

 あっ……、終わった。


 渡航が制限されたこの世界で他大陸のカードを持っている私。この上なく怪しい上に不自然きわまりない。


 私、終了のお知らせです。これにて閉廷!! 解散!! 逃げます!!


 混乱した頭が、衝動的にカードをひったくって逃げるため手を伸ばしたところですぐ横で声が聞こえた。


「メルさん!! 書類、持ってきましたよ」


 そこにはキラキラした笑顔で何かが書かれた書類を見せてくるダラムさんが。これでお店の困りごとが解消できると安堵の色が見えて。


 ……。


 …………。


 ……逃 げ ら れ な い !!


 そんな笑顔を向けられたら、逃げるに逃げられないじゃないですか……!!


本日最後!

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