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第二羽 渡航手段を求めて


「ところでメルさんはどうして旅に?」


「私ですか? 私は海を渡りたいのですよ」


 アモーレちゃんを迎えに行くにも、フレイさんに会いに行くにも、ジャシン教について調べるにせよ、海を渡らなければ話になりません。

 私は飛んで大陸を移動することができますが、中央の島国セントラルクスにその方法で向かうと前回のように蜂の巣をつついたような大騒ぎになってしまいます。


 そうなるとアモーレちゃんがまた遠慮をした場合、説得する必要が出てくるのですが、同時に追手の対処もしなければならず大変です。無理だとは言いませんが、時間的な余裕を得るためにも、合法的に大陸を渡る手段が必要なわけですね。


 ……本音で断られる場合を度外視しているのは、メンタルへのダメージが凄まじいからです。全力で泣きます。まあ彼女が友達をたくさん作って楽しそうにしていたら話は別ですが。


 ともかく、渡航手段はないよりもあった方が良いです。


「海か……。若者が願いがちなことだけど、それはなかなか難しいな」


「やっぱりそうなのですか?」


 フレイさんに聞いた通り、どの大陸でも大陸間の流通は白蛇聖教に制限されているのでしょう。モルクさんの口ぶりから察するに誰もが大陸を渡るのは夢見るのですね。


「私が知っている主な手段としてはいくつかあるけど、1つ目が冒険者ランクを上げること。Sランクの冒険者にもなれば別の大陸でも仕事を頼まれたりもする。最初は主に白蛇聖教関係の仕事だけどね。別の大陸でも活躍して名を馳せれば、現地の人間に指名で依頼を頼まれることもある。

 もしくはなにか目的があった場合。申請してそれが白蛇聖教に承認されれば一定期間大陸に滞在の許可がでる。だが移住を許可されたことは聞いたことがないかな。あくまで期間限定だ。その間に観光もできる。メルさんが渡航しようとするならこれが一番実現的だ」


「ふむふむ……」


「2つ目が白蛇聖教に入って偉くなる、もしくは偉い関係者にコネを作ることだ。幹部級の人間になれば別の大陸でも仕事を任される。人手なんてどこでも不足しているからね。末端の人員でも付き人として海を渡ることもある。1つ目に比べると自由度は低いが、難易度はかなり下がる。別大陸の噂なんかはこの人たちが最大の発信源だ」


「ほむほむ」


 ……うーん。私は宗教関係は苦手なのですよね。神様に会ったこともあるだけに、その影響力は知ってますし、狂信者なんかにも手を焼かされたこともあります。白蛇聖教がそうだとは言いませんが、感情が先行してどうにも……。全部の手を聞いてから決めるつもりですが、まあこれは最後の手段ですかね。


「3つ目が王族、もしくはかなり上位の貴族になることだ。白蛇聖教に多額のお布施が出来るほどのな」


「……うえぇ」


 生まれガチャでSSRを引き当てましょう。リセマラ無しの一回きりです。がんばりましょう。


「ま、これは無理だよね。これに関して1つ目と同じで護衛として着いて行く方が現実的だ」


「護衛……」


 なんとなくもう見えてきましたよ。


「4つ目が大陸を渡ることができるほどの商人になることだ」


「無理です」


 私に商才はありません。赤字を出しまくって借金漬けになるのが目に見えています。


「なら護衛だね」


「ほとんど護衛じゃないですか……」


「そりゃそうだ。一般人にとって大陸を渡ることは狭き門をくぐり抜けた先にしかないものだよ。若者はみんな諦めるよ」


「……ちなみにモルクさんは?」


 商人として渡れるのですか?と問いかけた。


「いずれは私もそうなるつもりだよ」


 つまりまだ大陸は渡れる程ではないと言う事ですね。一足飛びには進めないですね。

 コツコツやりましょう。私が今までにもやってきた事です。慣れっこですよ。



「っとここが私の店だ」


 静かに決意を固めたところで馬車が止まった。彼の視線を追えば、品揃えがかなりありそうな大きさの商店。窓が下から三段。三階建てのようです。


「まあ、急いでもってくるはずだった積荷は何も無いけどな……。品切れだよ」


「ぶも〜……」


「あはは……」


 あの大蛇に襲われた時、逃げるために積み荷を捨てて重さを減らしたそうなのです。どうにも急ぎで補充が必要だったそうで、無茶をしたのに結果は散々。




 肩を落として暗い顔をしているモルクさん。このまま見過ごすのはなんとも……。なにか力になれないでしょうか。

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