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無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~  作者: ねむ鯛
第一翔 始まりの転生

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第 終 羽 エピローグとプロローグ

最後です!

 

 ――――そして約半年後――――


 〜霊峰ラーゲンにて〜


 龍帝が見下ろす、岩で囲まれた天然のコロシアムのような場所。そこには数多の竜達が倒れ伏していた。死んではいないものの満身創痍。様々な傷跡が残る中、特に多いのが鋭利な刃物で切り裂かれたようなものだった。


 これは強さを求めて定期的に行われる竜同士の戦闘の結果だ。


『まさか、あやつが今のラーゲンで最も強くなるとは思わなんだ』


 思わず龍帝が唸る。最後に生まれた末の息子。竜種のくせに弱気ですぐ泣く。特に何をするでもなく、世界各地をフラフラと飛び回り、家族の中では最弱の翼竜種。


 それが変わったのは少し前に帰ってきたとき。勝ちたい相手が出来たのだとあやつは言った。そしてその相手がこの霊峰ラーゲンに訪れたとき、何かを思いついた様に東の大陸に飛んでいって帰ってきたらこれだ。

 東の大陸でまさかあんな物を引っさげて帰ってくるとは。たまにはあやつの放浪癖が役に立つか。


『天帝の娘よ、今のあやつにお主は勝てるかな?』



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 


 〜とある氷漬けの山〜



 壁が凍りつき、冷気が地を這う。極寒の地。そのとある洞窟から時間すらも凍り付きそうな冷気が零れていた。

 洞窟の入り口から突如として光が迸る。同時に轟音。中には人影が一つ。重厚なガントレットに包まれて突き出された拳。その正面には、洞窟の中に似つかわしくない吹雪く寒空が覗く。否、正確には壁が吹き飛ばされ、拳の先の山までもが消え去ってしまったのでもうここは洞窟と呼べないだろう。


「……ようやく、できた。鳥さん、次は勝つ」


 普段は眠たげにまぶたを落とされた瞳に、疲れを滲ませ羊の獣人が拳を握る。そこには冷気と電撃、そして若干の期待が込められていた。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 


 〜とある大陸の酒場~


 夕刻、酒を飲み交わす冒険者で溢れるこの場所で、なにやら噂話に興じている一席があった。


「おい聞いたか? またやったんだってよ!」


「何がだ?」


「なにがってあれしかないだろう? 炎獅子の大魔女だよ」


「ああ、あれか」


「すげぇよな。半年前に急に頭角を現したと思ったら一気にSランクまで登り詰めて、今じゃどこもかしこも彼女の噂で持ちきりだ。このまま行けば『英雄級』も夢じゃないって聞くぜ?」


「確かにな。前に共同で仕事をしたんだが、街に襲いかかる魔物の群れのほとんど全部彼女1人で焼き払っていたからな。あれは壮絶だった」


「Sランク昇格の時のアレか!? お前あそこに居たのかよ!? ……で、どうだった?」


「……めちゃくちゃ美人だった。俺も強かったらお近づきになれるのかねぇ」


「ぎゃははッ!お前の顔じゃ無理だろ!!」


「言ったなテメェ!」


 じゃれ合う冒険者。その後ろの席で背の高い男がニヤニヤと面白そうに正面の女性に声をかけた。


「だってよ? 炎獅子の大魔女様?」


「よしてくれよ……」


 恥ずかしそうに両手で顔を覆う赤髪の女性。耳まで真っ赤になっていた。


「でも彼の言っていることは確かなんだな。この半年でとっても強くなれたんだな。すごいんだな」


「それはあんた達が突いてきてくれたからだよ。1人じゃ無理だった。ねぇ、Sランク目前のお二人さん?」


「ま、お前の伸びが一番すごいけどな」


「……まだまださ。あの娘の横に、いや、前に立てるようにならないと」


 女性は笑った。もっと強く、と。そう願って。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


 ~中央の島国・セントラルクスにて~


「それはなんだ?」


「はあ……?」


 大聖堂の一室。

 壁を向き、机に背を向ける巨大な椅子に座った人物が虎耳の大柄な老人に問う。椅子に遮られて座っている人物の姿は見えない。


 白蛇聖教の白鱗騎士団その団長であるガルディクトは突然の質問に疑問符を浮かべた。

 それ。

 おそらく机の上に載せられた巨大な水晶の事だろう。もっと言うなら、そこに映し出された映像の事だろう。

 何を言っているのだとガルディクトは怪訝な表情で答えた。


「我らがアイドル、アモーレ様ですが?」


 移された映像。それはシルクの髪をなびかせて、歌って踊っている幼女の映像だった。非常に楽しそうだ。

 周りには敬虔な教徒もいる。なにやら光る棒を振っているが。

 巨大な椅子に座った人物は思った。なにやってるんだこいつら。


「私の記憶が正しければその子は大聖女だったはずだ。島の中とは言えアイドルなどとして人前に出すべきではなく、厳重に守るべき存在のはずだ。お前も知っているだろう?」


「そうでした、間違えましたな。大聖女アイドル、アモーレ様でした」


「うむ、そこではなくてな???」


 思わず、これが頭痛が痛いという状態かと頭を抑える。


「半年前からだ。急に塔から脱走を始めた。危険だと諭して塔に連れ戻し、厳重に見張りを立てこの件は終わりのはずだった。しかしこの子は徐々に監視をくぐり抜け始め、遂には下の聖教街に姿を見せた。騎士団の精鋭を出し抜いてだ。そこからは何をやっても脱走を成功させる。そして気づいたらこうなっていた。どう言う事だ?」


「はっ、目に入れても痛くないですな」


「そんなこと聞いてないが????」


「我らの教義は『不幸を駆逐し、皆に幸福を』。彼女だけのけ者ではかわいそうではないでですかな。――――最高司祭様?」


「……ふん」


 水晶の映像はまだ続いている。


『大聖女様~!こっち向いて~!!』


『今日もかわいいよ~!!』


『皆さん、今日もありがとうございます! 私は初めて出来たお友達の言葉と背中で救われました。そのおかげで今ここに立っています。この幸運を、幸福を皆にも届けたいから。聞いて下さい。「蒼の翼を」――――♪』




 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 


 そして――――



「まいったなぁ!!ついてないぞ!!」


 背後を気にしながら悪態を吐く恰幅の良い男性が馬車を全速力で走らせる。それこそ何かに追い立てられるように。


「頑張れアレキサンダー!!お前ならあんなやつ振り払える!!」


「モォ……」


 疾走する馬車。それを引いていたのは馬顔負けの速度をだす牛のような魔物だった。移動速度は下手な馬の魔物よりも速く、体力は豊富。力も強くて温厚な気性。

 そんな牛のような魔物に檄を飛ばすも、疲れの滲んだ鳴き声を返した。


「シュラララララッ!!」


 何かがこすれるような大きな鳴き声が響く。鳴き声の主は背後の巨大な蛇の魔物。牛どころか馬車ごと丸呑みしにしても余裕そうなサイズだ。

 この大蛇にもうかれこれ三十分は追われている。アレキサンダーはずっと全速力なせいで息が上がっているのに、大蛇の方は余裕そうだ。


 男は商人だった。蛇に追われ始めてからすぐさま荷物を投げ捨てる判断をしたものの、膠着状態。逃げ切れないでいる。


「Sランクの冒険者パーティーが討伐に失敗して這々の体で逃げ帰った大蛇……!! 街の反対側に痕跡がみつかった今ならと急いで出発したら、鉢合わせするなんて……!! 時間は有限なのに冒険者の皆はビビって誰も護衛をしてくれないし、荷物は捨てて大赤字! 散々だ! 今なら行くべきだと私の勘が告げていたのだが……鈍ったか!?」


 このまま喰われるくらいならアレキサンダーだけでも逃がすか!?

 切羽詰まって最後の決断をしようとしたとき。


「もしもし、おじ様?」


 聞こえてきたのは鈴の鳴るようなかわいらしい声だった。


「うお!? なんだ嬢さん、なんで馬車の上にいるんだ!?」


「馬車……?引いてるのは牛……」


 突然駆けられた声に驚いた男が上を見上げれば、屋根の上から身を乗り出したあどけない少女が見下ろしていた。予想外の事態に思わず言葉に詰まる。まさか他に人が居たなんて。無賃乗車か……?いや、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「お嬢さん、見てわかる通り今は大変なんだ。そこは危ないから降りて馬車の中に入っていなさい。……おい、アレキサンダー!女の子のお客様だ!!かわいいお客様を蛇公にくれてやるわけにはいかん。気張れよ!!」


「ブモーッ!!」


 気炎を上げる二人に少女は困ったような笑みを浮かべた。


「えっと、お困りでしたらお力添えしますよ。例えばあの蛇とか?」


「それはありがたいが出来れば強い大人を連れてきて欲しいね!!」


「強い大人……勝てるなら倒してしまっても問題ないと?」


「そりゃそうだ!!」


 何を当たり前の事をと男は馬車を操作する。もっとも助けを呼ぶ手段はないし、その助けがSランクの冒険者パーティーを蹴散らす蛇に勝てるなら天にも昇る幸運だろうが。今は神にでも祈って走り続けるしかないのだ。


「シュラララララッ!!」


「なにッ!?」


 その時、首をもたげた蛇の鱗がザワザワと蠢いたかと思えば、無造作に発射された。蛇がこれだけ大きいのだ。鱗の大きさは人1人軽々と越えるほど。それが数え切れないほど襲いかかってくる。


 終わった。男はそう思った。女の子も運が無い。こんな馬車に乗り合わせてしまうなんて。

 目を閉じることで迫る恐怖から逃げ出した。鱗が次々と地面に着弾する大きな音が響きそして遂に痛みが――――来ない?


「あれ、まだ生きてる?」


 男の目の前ではアレキサンダーが無傷で走り続けている。まさか、外れたのか?まだ幸運の女神には見放されていないようだ。


「お嬢さん無事か!? 心臓に悪いから、早く……中に……?」


 次に男が取った行動は少女の無事を確認することだった。視線の先には2本の脚でしっかりと立った少女が。安堵すると同時に違和感が首をもたげる。


 ここはそこらの馬よりも早いアレキサンダーが疾走する馬車の上だ。その屋根の上に少女がバランスを崩すこと無く立っている。そんなこと可能だろうか? 思わず目を見張る。


「シュラララララッ!!」


 なにやら苛立だしげに鳴き声を上げる蛇に、少女は「おや?」となにか気づいたような反応を見せた。


「その額の傷……私が付けたもの……? あなた、まさかあの時崖から一緒に落下した蛇ですか? なるほど、生き残っていたんですね」


 その言葉に大蛇は応えることなく憎々しげに少女を睨み付ける。

 憤怒の感情を滲ませた蛇の鱗が再びざわめく。鱗を飛ばす前兆。男は恐怖した。さっきのような幸運はそうそうない。あの攻撃が来たら今度こそ死ぬ。


 止めてくれと。叶わぬ願いと知りながらも懇願せずにいられない。だがその願いは聞き遂げられる事なく。


 無慈悲に鱗は発射され――――そして男は見た。


 いつの間にか黒い棒を持っていた少女。その少女が迫る全ての鱗を打ち落とすのを。


「私は夢でも見てるのか……? まさか……さっきのも?」


 男はさっき鱗が当たらなかったのは運が良かったからだと思っていた。しかし今の光景を見てしまえば、そんな考えは消え、別の答えが浮かび上がってくる。


 すなわち、この小さな少女がとんでもない実力者だと。


 鱗を全て打ち落として見せた少女の表情に特に変化は無い。

 ただ、出来ることをしたのだと。運でもなんでもなく実力なのだと。

 少女の表情が物語っている気がした。


 少女が徐ろに眉を顰め、口を開く。


「あなた、先ほどの攻撃でいつでも仕留められたのに、追いかけて遊んでいましたね? 弱者をいたぶるようなその在り方、気に入りませんね。まあ……これも何かの縁でしょう」


 少女がなにかに納得し、大蛇を正面から見据える。


「どうやらあなたもあの頃と比べてかなり強くなったようですが……」


 パリパリと不思議な蒼光が稲妻のように少女の体を走る。次の瞬間には少女の姿が屋根の上からかき消えた。


「――――私の方が上のようですね」


 瞬間、轟音。

 男にわかったのは。

 次に現れた少女が、棒を振り下ろした格好で蛇の頭があった場所に居たことと。

 蛇が地面にクレーターを作り上げ、動かなくなったこと。

 それだけ。何が起こったかなんて見えもしなかった。


「いち……げきで……?」


 蛇の頭なんてあまりの威力にパックリと裂けている。それもただの棒でだ。開いた口が塞がらない。あまりの状況にアレキサンダーですら走るのを止めて、呆然と見つめている。


「う~ん、持ってってご飯にしましょうか。……それでは私はこれで失礼します」


 男のフリーズした思考は、少女が大蛇をどこかに消し去り、馬車を通り過ぎて行ってからようやく動き出した。


 商人としての勘が言っている。あの少女とは何かしら縁をつないでおくべきだと。寧ろ今日の不運はこのためにあったのだと。

 何より命を助けられたのだ。恩を返さずしてどうして商人を名乗れようか。

 男はすぐさまアレキサンダーを走らせ追いかけた。


「ま、待ってくれお嬢さん……!!」


 少女を通り過ぎた所で馬車を降り、呼び止める。少女はキョトンと不思議そうな顔をしていた。


「ありがとう。……いえ、ありがとうございます。今日は命を助けられました。恩返しをさせて欲しいです。私はモルクと言います。貴女の名前は?」


 名前を聞けば少女はクスリと笑って答えてくれた。


「私はメル。メルシュナーダです。折角です、良ければ次の街を案内して下さいな。今日家を出たばかりなのですよ」



 ~to be continued~

はい。と言うわけで一時的に完結、実際には休載となります。

ご愛読ありがとうございます!詳しくは活動報告にて。

ここまで付いてきてくれた読者さんはこの作品がどのくらい面白かったか、下の方にある★の多さで評価して貰えると嬉しいです。

いつか更新は再開しますので、またお会いしましょう。


追記:2章の更新を開始しました!

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