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ショートショート『脈のない人』

作者: 川住河住

 私には好きな人がいる。

 小学生の頃からずっと片想いしている男の子。

 出会いは平凡だった。

 私のクラスに彼が転入してきた。それだけ。

 ただ、私が彼に恋するには十分だった。



 勉強ができて運動が得意な彼は、すぐにクラスの人気者になった。

 男子が休み時間にサッカーをやっている時、女子は彼の魅力を語り合う。

 彼がゴールにシュートを決めた瞬間、女子たちの間で取り決めが作られた。

 それは、《《彼に告白しないこと》》。

 彼はクラスの女子みんなのものだから。

 誰かと恋人同士になってはいけない。

 二人きりで話すことも、連絡先を交換することも、休みの日に遊ぶことも、バレンタインデーにチョコレートを渡すこともダメ。もしも破ったら仲間外れにされてしまう。

 女子たちは抜け駆け禁止の協定といっしょに彼への想いを胸にしまって過ごすようになった。もちろん私もそう。



 あれから十年経った。

 私は彼と同じ高校に通っている。

 同じ小学校出身の女子は他にいないし、あの約束を未だに覚えている人はいないと思う。

 そこで私は決意した。

 2月14日。チョコレートを渡して告白しようと。

 彼に脈がないことはもうわかっている。

 常識的に考えたらやめておいた方がいいと思う。

 しかし、この想いを告げなければ私は前に進めない。そんな気がするのだ。



 当日、制服に身を包んだ私はチョコレートを持って彼の家へ向かう。

 学校もある平日だけど関係ない。

 この日を逃したら次はないのだから。

 高校でも人気者だった彼の家にはたくさんの人が集まっていた。

 その中に黒い服を着た彼のご両親を見つける。

 服装に乱れがないか、髪形がおかしくないか、念入りにチェックしてからあいさつする。





















「この度はご愁傷様でした」


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ!『脈のない人』って、そう言うことか!(^^;)
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