(5)
「体調不良で自宅療養中と云う事にして姿を隠して下さい」
翌朝、親父の顧問弁護士の事務所に行くと、そう言われた。
「えっと……自宅療養って?」
「もう、この近辺で、貴方を入院させてくれる病院は有りません。本当に入院が必要な病気になった場合は別にしてね」
「えっ?」
「今時、女性看護師にセクハラなんてやりますか?」
「いや……だって、弁護士や親父の世代の男なら誰でも……」
「時代は変ったんです……。誰が『異能力者』か判らないのに、貴方みたいな『遊び』をやるなんて狂気の沙汰です。貴方が暴力を振ったり、セクハラをした相手や、その家族・友人が……何の証拠も無しに貴方を殺せる化物かも知れないんですよ」
「は……はぁ……でも……」
クソ弁護士は溜息をついた。
「何で……子供の頃から、今みたいな状況が当り前だった貴方に、私みたいな年寄が『今の時代に適応しろ』って説教をしなきゃいけなんですか?」
俺は……親父を見習っただけだ……。
親父の言う通りの「良い子」になろうとしただけだ。
だが、当の親父は、自分だけ「古臭い男」を卒業しやがった。
そして、変われなかった本当の息子である俺を見捨てて……今の自分に合った新しい息子を見付け……そいつを自分の跡継ぎにするつもりだ。
「警察対応は私がやります。貴方は、ほとぼりが冷めるまで大人しくしていて下さい。判ってますよね?……貴方は市長の息子だから、今まで無事で済んだんです。でも……貴方のせいで、お父さんが権力を失なえば……もう、貴方を護るモノは無くなります。警察は貴方を逮捕し、貴方が暴力を振ったり、セクハラをしてきた相手は、容赦なく貴方に反撃し……『御当地ヒーロー』達は、貴方をどこの誰でも無い単なる1人の時代錯誤で傍迷惑な暴漢として叩きのめした上で、警察に引き渡すでしょう」
やめてくれ……。
クソ弁護士は、俺が薄々気付いていながら、目を逸らし続けた事が何なのか、ベラベラと説明しやがった……。
ブチのめしてでも口を閉じさせたい所だが……残念ながら、そんな真似をしたら、困るのは俺だ。