表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/69

(3)

「おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、絶対におかしいぞ、誰も何も変だとは思わないのかッ‼」

 いかん……思わず大声を出してしまった。

 マズい。あのヒスを起こしている妹よりも、俺が感情的になってると思われたら……実際は俺がクソ妹を論破してる筈なのに、事情を良く知らない奴らは、妹が俺を論破したと思い込んでしまう。

 クソ。

 あいつは頭が悪いクセに印象操作だけは昔から上手かった。

 そうだ。あいつは印象操作だけで、俺よりいい大学に行きやがった。そして、俺が一浪二留したのに、印象操作だけで、浪人せずに大学に受かって、留年せずに大学を卒業しやがった。

 クソがッ‼

 殺……いや、落ち着け。

 俺は理性的だ。

 俺は合理的だ。

 俺は現実的だ。

 俺は大人の男だ。女みたいに感情的になったりしない。

 そして、俺の中には何の理想もない。俺はどんな正義も信じていない。だから、「正義の暴走」とは無縁だ。

 はあ、はあ、はあ……よし、深呼吸。

「待て、女のお前が、何で、市長選挙に立候補出来る?」

「えっ?」

「女は政治家になれない筈だ」

「なれるよ。昔から」

「嘘を言うなッ‼」

「阿呆かッ‼ ここまで阿呆だから、兄貴は、裏口から入った大学を2回も留年したんだよッ‼」

「何が阿呆だッ⁉ いつから女が政治家になれるようになった? 何年何月何日何時何分何秒からだッ⁉」

 ……。

 …………。

 ……………………。

 沈黙……周囲からは何の反論もない……。

 やった。

 クソ妹を論破してやったぞ。

 俺の完全勝利だ。

「おい、山下、今の撮影してたよな。あとで、動画サイトにUPしろ。俺のクソ妹の恥かしい姿を全世界に公開してやる」

「すいません……山下さんは、ここに居ませんし……動画サイトのアカウントはBANされてます……」

「あとさ……兄貴……日本で女性が政治家になれるようになったのは……」

「へっ⁉」

「一九四六年の四月一〇日から……」

 ば……馬鹿な……親父やお袋を通り越して……父方・母方両方の祖父(じい)ちゃん・祖母(ばあ)ちゃんさえ生まれる前じゃないか……。

 ああ……何と言う事だ……。

 「正義の味方」どもに洗脳された者は……歴史修正主義者と化してしまうのか……。

 いや……待て……もし、俺のクソ妹まで「正義の味方」どもに洗脳されてるとしたら……。

「あのさ、ちょっとそれ貸して」

 俺は「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を指差して、そう言った。

「はい、どうぞ」

 俺は「見習い」から散弾銃を受け取ると……。

 ドンッ‼

 そうだ……「正義の味方」どもに洗脳された者は殺していいんだった。

 それを犯罪だと非難する事こそ「正義の暴走」だ。

 そもそも……このクソ妹は、俺がミニコミ誌の編集者を拉致して、うっかり死なせて、死体を焼いて、その灰を鳥栖(とす)の山奥のダムに捨てたぐらいで……俺を警察に突き出そうとしやがった。

 そうだ……あの時から、クソ妹は「正義の味方」どもに洗脳されてたんだ……。

 実の兄を警察に突き出し、実の父親の政治生命を危うくするなど……「正義の暴走」以外の何だと言うのだ?

 ともかく……。

 俺は……「正義の味方」どもが俺のクソ妹にかけた洗脳を解いてやった。

 副作用で妹は死……あ……腹から血を流してるけど……まだ、生きてやがる。

「おい、『見習い』くん、拳銃有る?」

「はい、どうぞ」

 俺は見苦しく生き続けてる妹の足を払うと、床に倒れた妹を拳銃でヘッドショット。

 よし、これで悪は去った……じゃなかった。

 おっと間違えた。よし、これで正義は去った。

 残ったのは、少しも感情的じゃない男らしい理性的で合理的な現実主義だけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ