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 全ては終ってしまった。

 副市長の古賀が……自分が「正義の味方」の手先であり、「正義の味方」どもが裏で恐しい悪事を企んでいる、と告白した動画はネット上から抹消された。

 その結果、古賀と「正義の味方」どもが起こした数々の犯罪の濡れ衣を着せられたヤクザ達は……占拠した老人ホームに入っていた福岡県警のエラいさんの母親を殺して、その死体を老人ホームの入口に吊した。

 あの動画さえ……公開されていれば……「俺達がやった事にされてる犯罪の真犯人を二四時間以内に逮捕しろ」と云うヤクザ達の要求は……あ、いけね、古賀の野郎は自殺したんで逮捕出来ねえや……まあ、いい。

 ともかく、「正義の味方」どもが、持て囃される世の中になったせいで、誰もが「正義の味方」どもの真似をして、「正義の暴走」をやっている。

 そのせいで、事態はどんどん酷くなってるのに……その事に誰も気付かぬフリをし続けている。

 こんな世の中は正さねばならないが……俺は、もう全てを奪われた。

「あの……どうしたんですか、先輩……?」

 隠れ家にしていた古川のおっちゃんの別荘にやって来たのは……最早、俺の最後の仲間となった自称「見習い」。

「もう……俺は終った……。全てを失なった。『正義は報われない』なんて良く言うだろ。でも、『正義の暴走』を止めようとする奴は……もっと報われないんだな……」

「先輩、何、気弱になってるんですか……」

「あの人の……クリムゾン・サンシャインの遺志を継ごうとしたけど……俺には出来なかった。俺は……つくづく駄目男だ」

「先輩らしくないですよ……。あの……知ってますよね?……お父さんが市長を辞めるって発表したのを……」

「ああ……そうだな……。俺は『市長の息子』じゃなくて唯の駄目男になる。俺には……警察と『正義の味方』どもの包囲網が迫ってる。君もすぐに逃げろ。そして……クリムゾン・サンシャインのコスチュームは2度と着るな。これからは……『正義の味方』どもが支配する地獄のような世の中になるだろう……でも、嫌なモノから目を逸らして生き続けろ」

「だから、次の市長選挙の候補者受け付けが始まってるんですよ‼ 先輩が立候補するんですッ‼」

「へっ⁉」

「駄目元で行きましょう。すぐに。これから……」

「い……いや、ちょっと待て」

「選挙演説で訴えるんですよ。自分こそが『正義』だと思ってる暴徒が裏でどんな酷い悪事を行なってきたか……そして、初代クリムゾン・サンシャインが、奴らの手によって、どんな目に遭わされたかを……」

 そんな真似をすれば……成功率は低い。

 でも……。

 そうか……これしか無い。

 「正義の味方」を名乗る暴徒どもの「正義の暴走」を止める……最後の手段だ。

「わかった……。これが俺の最後の戦いだ……。何としても……『正義の味方』どもの『正義の暴走』を止めて……ヒトモドキの関東難民どもを、久留米から追い出してやる」

「その調子ですッ‼ それでこそ先輩ですッ‼」

「だが……これだけは約束してくれ……」

「な……なんですか?」

「もし……俺の身に何が有っても……君だけは生き延びてくれ……そして、万が一の時は……君が3代目クリムゾン・サンシャインになってくれ」

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