(11)
きっと「正義の味方」や、奴らを盲信する愚民どもは……俺達が死体と怪我人の山を築いた、と非難するだろう。
だが、言うまでもなく、そんなのは不当な非難だ。
繰り返すが、俺達に「正義」なんて無い。
有るのは、現実主義だけだ。
だから、何人もの警備員や市役所の職員が死んだり、怪我して動けなくなってるように見えても、あくまで、必要最小限の犠牲だ。
無意味な虐殺をするのは身勝手な「正義」に取り憑かれた者どもだ。
俺達は、理性的で合理的で現実的な大人の男だ。
必要最小限の犠牲は出しても、虐殺なんてやる訳がない。
つまり、俺達が大虐殺をやらかしてるように見えても……それは虐殺じゃないって事だ。
はい、論破完了。
「き……君達ッ‼ な……何人殺せばッ‼ 気が済むんだッ‼」
恐ろしい事に、この簡単な理屈を理解出来ない阿呆が、俺の親父の後釜として……次の市長になろうとしている。
副市長の古賀は……俺達に連行されながらも、俺達を罵倒するのをやめなかった。
どうやら、俺は重大な勘違いをしていたようだ。
こいつが「正義の味方」どもの手先になったのは……「正義の味方」どもを恐れていたからでは無いのか? そんな事を思っていた。
もし、そうなら、こいつには情けをかけてやるべきだろう。
しかし、こいつは……俺達が出した「必要最低限の犠牲」を、まるで大虐殺のように非難し続けている。
普通の人間なら、金玉が縮み上がり……あと数日は○△×が勃たなくなるような光景を見ても、俺達を罵倒するのをやめない。
そうか……。
こいつもまた、独り善がりな「正義」に取り憑かれた「正義の暴徒」だったのか。
仕方ない……こいつにも「必要最低限の犠牲」に加わってもらうしか無いようだ。
こんな奴が権力を握れば……自分の「正義」に従って、恐るべき暴走をするだろう。
それを防ぐには……殺すしかない。
「そうか……こいつは単なる『正義の味方』どもの手先じゃないらしいな」
「お……おい……何を言ってる?」
「じゃあ、こいつは『正義の味方』についての重要な情報を知ってる可能性が高いですね」
「だから、何を言ってるんだ、君達はッ⁉」
古賀は「見習い」の鋭い指摘にも白ばっくれていた。
「『正義の味方』を名乗るテロリストどもの情報を全て自白させて……それを撮影して動画サイトに流す。『正義の味方』どもの強みは……正体不明な事だ。正体がバレた『正義の味方』など、潰す手はいくらでも有る」
「いいっすね。でも、どうやって自白させます」
待てよ……そうだ……良い手が有った。
「い……いや、ちょっと待て……。おい、そっちのデブの方のクリムゾン・サンシャイン……」
古賀がまた何か言い出した。イチイチ、うるさい奴だ。
「何だ?」
「君の声に聞き覚えが有る気がしてたが……思い出したぞ」
「へっ?」
「たしか、市長の緒方さんの息子……ぎゃあああッ‼」
俺は余計な事を言い掛けた古賀の息子を手で握り潰してやった。