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「マズいよ、一郎君……君の父さんが元に戻らないと、次の市長は、十中八九、副市長の古賀だろうな……」

 市会議員の古川のおっちゃんに呼ばれた俺は、バーの個室でとんでもない事を告げられた。

「じゃ……じゃあ……」

 えっと……優斗がああなったお蔭で……俺が親父の跡継ぎになれると思ってたら……。

 ああ……世の中ってのは色々と酷い。

 ほんの少しの希望が見えてきたのに……すぐに消えてしまう。

 なら……希望なんて最初から無い方が良かった……。

「あいつは、君の父さん以上に関東難民の受け入れを進めるだろう。そうなれば……この久留米市内では、関東難民の方が我々『地元民』より多くなる。市政は関東難民どもに牛耳られるだろう」

「そ……それで……その……」

「いいかい。君がやってる『悪い遊び』の事は知っている。若い内は、少しぐらいそんな事をするのも良いだろう。だが……君が君の父さんの跡を継いで次の市長選に立候補する気なら……しばらくの間、例の『悪い遊び』は控えてくれ」

「は……はい……」

「君が市長になれば、あんな方法でなくて、合法的な手段で関東難民を排除出来るようになる。その時までの我慢だ。いいね?」

「わ……わかりました……」

 そ……そんな……。

 たしかに、古川のおっちゃんの言ってる事は……正論だ。

 でも、市長になれる代りに……俺はこれまで苦楽を共にしてきた仲間と手を切る下衆野郎になるしか……。

 待てよ。

 あいつら、手切れ金を要求してきたりとか……。

 俺が市長になった後も俺に纏わり付いてきて……。

 どうする? どうする? どうする? どうする?

 何とか、あいつらを始末……。

 出来れば、ああ、そうだ。あいつらを始末した上で、「正義の味方」どもが、お得意の「正義の暴走」をやらかして、あいつらを虐殺したように見せ掛ける事が出来ればベストだが……。

 いや……答は1つしか……全てを一挙に解決出来そうな答だ……そう……あの時見付けた……。

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