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短編集

ブラック企業で過労死して転生したんだが、転生先でも休む暇が無いとはどういう事だ!

作者: ぽいずん

 息抜き執筆です、矛盾点などはスルーしてください\(^o^)/

 ふと目が覚めた。

 しかし… いつの間に寝ていたんだろうか、ぶっちゃけ今の俺には寝ている暇さえ惜しい状況なんだ、寝てる時間があるんなら仕事を片付けないと。


「そうだ! 仕事!」


 思い出したかのように飛び起きる。締め切りはもうすぐそこまで迫っているにもかかわらず、業務内容の進捗は40%程度しか進んでいないのだ…が。


『目が覚めたかね? あまり時間が無いので単刀直入に進ませてもらう』

「はぁ? え? ここはどこだ? いや、俺は急いで仕事をしないと…」

『仕事? ああ、それはもうやらなくても良いんだよ。君はもう死んでいるのだから… 過労死というやつだね、ダメだよ? 人間の体って言うのは弱いんだからちゃんと休ませないと』

「え? 死んだ?」


 なんて事をとを言うんだこいつは! こいつ? あれ? 誰もいない。


『まだ動揺しているみたいだね、時間が無いから端的に説明させてもらうけど… さっきも言ったが君はもう死んでいる。ここは魂を浄化するための場所なんだが、君には一つ僕のために働いてもらおうかと思って意識が戻るのを待っていたんだよ』

「俺が… 死んだ?」

『そう、死んだんだ』


 よくよく見てみると、確かに今の俺には手足なんて物は無かった。それにこの声の主… 姿は見えないが若くて中性的な声色だが、どこかしら有無を言わせぬ威圧感を感じる。


『僕はね、創造神というやつでさ、僕の作った世界に蔓延るバグを修正してくれる人材を待っていたんだよ。僕自身が創造した世界に直接干渉できないからね… まぁアレだよ、君は所謂異世界転生をするんだけど、僕の使徒として世界の修正に従事してもらいたい』

「世界の… 修正?」

『そう。もうね、現地人だけではどうにもならなくなっていてね、わざわざ異世界転生に寛容である地球人に転生してもらう事にしたんだよ。君のいた世界では異世界転生の物語はたくさんあるんだろう? それを君にも体験してもらう』

「いや、急にそんな事を言われても… 確かに異世界転生にはそこそこ詳しいけれど」

『大丈夫大丈夫。君は僕直属の使徒として活躍してもらうんだから、それなりに体の強化はさせてもらうよ。すぐに死なれたら僕も困るからね』

「ええ? でもそういうのって現地人に勇者とか聖女とかの加護を与えたりするんじゃないですか?」

『それはもうとっくに試したんだよ。でもね、文明レベルがまだまだ低いせいか、ちょっと人よりも強い力があるとすぐに人格が崩壊しちゃって、傲慢な支配者に出来上がってしまうのさ。

 だからこその君なんだよ。地球人としてある程度高度な文明の中を生きていて、その中でも特に謙虚が美徳の日本人… 与えられた仕事に対する責任感は抜群だしね」



 うーむ、謙虚が美徳の日本人はすでに滅びの危機に瀕していると思うが、いつの時代の情報なんだろう。とはいえ、死んでしまったという事には驚きと後悔を感じるが、転生するって事は別の体で生き返るって事だろ? それはそれで有りなのかもしれないな。

 ここで断ったら、間違いなく魂の浄化とやらをされてしまいそうだし前向きに検討してみようか。まずは色々と聞かないといけないな。


「えっとそれで、俺に頼みたい仕事と言うのはなんなんですか?」

『よくぞ聞いてくれた! これでやっと話が進められるよ。まぁさっきも言ったけど、世界に蔓延るバグの修正をやってもらいたい。バグと言うのは世界の一部が異界と繋がってしまい、そこから魔物が溢れ出してくるんだよ。異界の魔物が放つ瘴気は大地を腐らせ空気を汚し、もう大変なんだよ』

「その修正の方法とは?」

『なーに、君に色々と加護を授けるから、君は世界を旅しながら現地に赴くだけでいい。君に授けた能力が勝手に浄化してくれるから、そこだけは安心してくれたまえ。

 さて、何度も言ったがあまり時間は無いのだよ。一応これから君の肉体を創るんだが希望はあるかい? ハンサムが良いとか筋肉が良いとか、女性でも良いしエルフやドワーフ、獣人でも良いよ?』

「え? これから創る?」

『もちろんそうさ。加護をたくさん与えた魂がね、女性の腹から産まれてくるのは非常に危ないんだ。特に母親の体が加護に耐え切れなくなって、産んだ直後に死んでしまったりとかね。

 だから新規で君の肉体を創造するんだよ。そうすれば身体の強度も思いのままだからね』

「な、なるほど? でも俺のせいで母親が死んでしまうというのは嫌だからしょうがないか」

『そうそう、しょうがないのさ。それに産まれて育つまでの時間も惜しいからね、降り立った直後から動いて欲しいからって言うのもある』

「なるほど… では見た目は人間で、日本人の見た目が異世界で目立ってしまうなら現地に合わせるようお任せします」

『そうかいそうかい、じゃあ張り切って創らせてもらうよ。他に何かあるかい? 男性? 女性?』

「男性で!」

『よしわかった。じゃあ体はすぐに創るとして、君に与える能力について説明するよ。まずは地球人にもお馴染みのスキル3点セット、鑑定と収納、そして言語理解は標準装備として与える。

 次に異界と繋がる原因となる魔力溜まりを散らす効果がある魔力拡散、これは常時発動するようになっているから意識しなくても大丈夫だ。

 そして最後に、魔力溜まりと言うのはどこにでも発生する物なので、未開の秘境とかにも赴かなくてはいかなくなる。だから秘境にいる魔物や悪い人間とかに襲われても対処できるような戦闘能力と、僕の世界を旅する上で必要な情報を与えてくれるナビゲーションを与える。


 戦闘に関してなどの事もナビゲーションに聞けば教えてくれるからそれに従って行動してね』

「は、はぁ…」

『よし、体の方は出来上がったよ。これだ!」


 創造神と名乗った声の主は声をかけると、何もない空間から1人の男性の体が出てきた。

 しかもこれは… 金髪イケメンだし! 目を瞑っているから瞳の色は分からないけど何色でも問題の無い顔をしている。これが俺の体になるのか? こうして外から見ているっていう事の違和感がすごい。


『じゃあ君の魂をこうやってこの体にっと…』


 急に体に吸い寄せられる感覚が起こり、あわあわしている内に内部へと入り込んでしまった。


『どうだい? 体を動かしてみて?』

「お、おおおお? 動く!」

『そりゃそうだよ、僕の仕事は完璧さ。ちなみにその体は特製だからね、ちょっとやそっとじゃ壊れないから安心してね。さすがに溶岩の中を泳ぐとかすれば溶けちゃうけど』

「そんな恐ろしい事はしません!」

『そろそろ良いかな? 早速で悪いんだけど、地上に降り立って各地の魔力溜まりを解消してきてくれ。詳しい事はナビゲーションが教えてくれるから、頼んだよ!』

「え? もっと聞きたい事があるん……」


 俺の言葉が終わる前に光が俺を包み込んでしまった。あまりの眩しさに目を閉じていると、頬を撫でる風の感触と、足に大地を踏みしめる感触を感じる事が出来た。

 恐る恐る目を開けてみると… 大草原と言っても差し支えない程の広大な土地に1人立っている自分がいた。



「いやいや、こんな所がスタート地点だなんて… すでに詰んでないか? これ」


 思わず独り言を言ってしまう。


 しかし見渡す限りの大草原、少なくとも日本では決してお目にかかれない風景に目を奪われた。まぁ日本は島国だし、山が多いもんな。


 さて? これからどうしたもんか。思わず自分の体をまさぐってみる…が、質素に見える服を着ているだけで、他に荷物とかは持っていないようだった。これでどうしろと…

 ともかく、魔力溜まり? それを見つけて散らせって話だったよな。しかも散らす能力はバッシブスキルのようで常時起動していると、なら行くだけで良いんだな? 多分。


 とりあえず草原に座り込んでみる。今後の行動を決めないといけないからな、まぁ考えても分からんだろうけど。


「しかし過労死したってだけでも驚いたのに異世界転生か、こりゃ随分とレアな人生を拾ってしまったようだな」


 生まれ変わったって感じがしないから転生と言われてもピンと来ないが、実際に今の体を見る限り今までの俺じゃない事だけは良く分かる。


 それにしても前世かぁ… 碌なもんじゃなかったよなぁ。

 平凡な家庭に生まれて高卒から働きだしたんだけど、その職場が非常にヤバかった。何度も辞めようと思ったけれど、無駄な義務感が邪魔をして退職届を書く事は出来なかったのだ。

 せめて今手掛けている仕事を終わらせてから~なんて考えていると、終わってもいないのに次の仕事が舞い込んでくる始末。しかも期限は短いのばかり… もう新人の頃から休む暇も無く仕事しかしてない人生だった。


「それなのに全然貯金が貯まっていないってのはブラックたる所以だろうな、給料は激安だったし」


 じゃあアレか? この世界で魔力溜まりを解消しつつスローライフとか送ればいいのかな? もしかして創造神とやらのご厚意だったとか!

 いいじゃんいいじゃん! 世界を旅するっていうのにも惹かれるし、もういっその事この世界を堪能し尽くしてやれば…!


『初めましてマスター、私がナビゲーションです。妄想中の所失礼しますが、すぐに旅立っていただきますよ? 魔力溜まりの増加は待ってくれませんから』

「はぁ? ナビゲーションってこんなに流暢に話しかけてくんの? そっちの方が驚きなんですけど!」

『すぐに立ち上がって下さい、これより任務の遂行を始めます。まずはここから西へ250キロほど離れた場所に魔力が溜まっています、そちらへ急行してください』

「250キロ? 遠くない? もしかして歩き?」

『当然歩きなんかではありません、走って下さい。それだけの身体能力は備わっていますので大丈夫です』

「大丈夫の基準が俺とは違うね?」

『急がないと10年20年とかかってしまいますよ? それに異界と繋がってしまったら瘴気を持った魔物との戦闘になってしまい、さらに時間がかかります。キリキリ働かないと終わりません』

「なんてこった」

『最悪の場合、ナビゲーションである私が貴方の体を動かして仕事をしますよ?』

「そんな事が出来るんなら最初から俺はいらなくなかった?」

『……』


 お? ナビとか言うけどスルースキルまで持ってんのかよ。いやでもちょっとくらい感傷に浸らせてくれても良くない?


『良くありません、なので強制執行する事に決定いたしました。貴方の体を強制操作を開始します』

「はえ?」


 急に俺の体が勝手に立ち上がり、走り出したのだ。


「おいおいおいおい! なんかこれ気持ち悪いんですけど? それに言葉に出さなくても考えている事が読めちゃうのかな?」

『当然読めます、貴方の体に私はいますから。それではしっかり働いていただきますよ? ノルマは5年以内に魔力溜まりを完全撤去です』

「ちょっと! せめてゆっくり休む時間だけでもくれよ~!」

『お断りします』



 くそぅ! あの創造神もブラックだったんじゃないかよ、俺の第二の人生はどうなってしまうんだ!?



 こうして体をナビに乗っ取られたまま、第1の魔力溜まりに向かって走り出したのだった。

 お読みいただきありがとうございました。┏oペコッ

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