#10 え?まさかのそういう系?
何か気が乗ったんで、また少し長めだぜ。
モチベの上下が激しすぎるぅ()
「それで、だ。
まず異世界から呼ばれた勇者に対して絶対に説明されることがあるんだが…」
「へぇ?なに?」
態々"絶対に"と強調したからには重要な事だと身構えた優樹。
「それはこの世界における法則…『レベル&スキルシステム』だ…」
———ガタッ!
そう聞こえる勢いで立ち上がった優樹。
実際には彼が座っているのはソファーなので音がしなかった、残念。
「うぉお!?」
しかし気迫は十分、マルクをドン引きさせるレベルの食らいつきではあったようだ。
「…今、何と言いましたか?」
瞳孔を縮めて、真顔で迫る優樹はその幼い顔に似合わず、それ故にかなりの狂気を感じる。
「お、落ち着け…『レベル&スキルシステム』と言っただけだぞ…」
「"だけ"?とんでもない!
なるほど…これは…かなり面白くなって来たねぇ…?」
「…優樹、興奮しすぎ、話を前に進めたいから少し静かにして。」
「…それもそうだな……よし、一旦落ち着こう…」
リリスに窘められ、深呼吸をしていったん興奮をリセットする優樹。
「…それで?大体想像がつくが、どういったものなんだ?」
「……あー、うん、まぁそのまんまの意味で、この世界では"レベル"と"スキル"が存在する。
レベルは詳しくは分かっていないが、"魂の成長"によるものらしい、
食事をしたり、知識を蓄えたりすると、魂に蓄積されて成長するらしい。
さらに手っ取り早いのが、魂を持つ者を殺してしまう事だ、
魔物と呼ばれる害獣共を狩るのがこの世界でのレベル上げとして一般的だな。
レベルが上がると、自身の能力が向上するんだ。
力が強くなったり、頑丈になったりとな。
レベルが高い者程強いっていうのはこの世界の常識だな。
そしてスキルっていうのは"魂に刻まれる技能"ってところだ。
何でもいいからある程度、一つの物事を習熟すると、魂に刻まれるそうだ、
そしてこの世界では、魂に刻まれた技術は時として物理法則等を無視してその技術を強力なものにする。
例として、剣士なんかが剣の修練をしてると、剣術のスキルを身に着けるんだ。
するとスキルは剣士の剣術の経験を魂レベルで保持し、実行する。
そうなった場合何も考えずとも今までと同等の剣術が使えるんだ。
そして、剣術のスキルと向き合い、剣士自身が剣をうまく扱うように心がけると、
理論上今までの倍近い剣術を行使可能となるんだ。
まぁ実際はそこまで跳ね上がるわけじゃないが、それでも強くなることには間違いねぇ。
ま、簡単にまとめるとレベルを上げまくって、スキルを大量に覚えれば強くなれるってわけだ。」
ふぅ、と一息つくマルク。
ほぼ休まずに喋ったため疲れたのであろう、紅茶を啜って唇を潤している。
「…なるほど、大体理解した、けど、どうしてこんなシステムがあるんだ?」
「あ~、それは簡単だ、勇者のやる気を引き出しやすいようにってのと、
努力すればその分報われる世界にしたいって神が言ってたそうな。」
「…なるほどねぇ…しかし、それは異世界から来た人間にも使えるのか?」
優樹も勇者も、元は異世界の人間である、この世界の常識は通じない。
「そこは心配ねぇ、どんな生物もこの世界にいると適応されるらしい。
大体6時間程すればある程度は馴染んできて、一部能力は使えるようになるらしい。」
「能力?」
「あぁ、この世界のすべての生物…まぁそれなりの知性がないと使えないものも多いが、
何はともあれ皆いくつかの力は例え赤ん坊であろうと使えるんだ、
この世界特有の力ではあるが、異世界から来ても馴染んでくれば使えるわけだ。
そのうちの一つなんだが…物は試しだ、『ステータスチェック』」
そう唱えるとマルクの目が少し光った。
「今俺の前にはステータス…
現在の状態だな、力の強さとか頑丈さ、魔力がどれほどあるか…
他にも現在の健康状態や、名前、年齢なんかも見えたりするな。」
「へぇ、そんな能力があるのか…」
「今はお前に見えないが…『パブリックステータスウィンドウ』」
そう唱えると今度はマルクの前に光る薄い板…
現代的に言うと平面的なホログラムによるディスプレイが現れた。
「これは能力じゃなくて、魔法の一つなんだがな…
こういう風に自分の今の能力が表示されるんだ。」
そう言って優樹に見せたディスプレイにはこう書かれていた。
————————————————————————
Name:マルク
Age:24
Gender:Male
Job:Guard Leader(ダルパルト衛士長) Lv.48
Level:72
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優樹はそれを見て、何とも言えない表情をしていた。
(…英語と日本語が混じってる…なんでだ?)
そう、謎に混じった言語が若干彼を困惑させているのである。
「お?どうした?読めないってことはないだろ?
何せ神が作ったシステムの一つだからな、見たやつが読解可能な言語で見えるようになってんだ」
「…あ゛~~~~…」
変な声を揚げながら納得する優樹、その内心は…
(これ、誰にでも理解できる言語とどんな言語でも理解できる俺が競合起こしてやがるな?)
そう、まさかの"バグ"である、現実世界のバグとはこれ如何に。
要するに、全ての生物が理解できる言語で見える特殊な方法と
意味さえ籠っていればすべての言語を理解可能な優樹はお互いの効果がぶつかり合い、
結果として言語が混じった良く分からない構成になっていたのである。
今の所、英語と日本語だけで済んでいるのがありがたいところである。
「…いや、なんでもない、ちょっと変な事が有っただけだ、気にしないでくれ。」
「お、おう、そうか?
いや、そう言われると逆に気になってしまうのが人の性なんだがねぇ…」
「でもマルクは違うでしょ?」
「半分は人間だから間違ってねぇっての!」
そんな風に、ある程度冗談を言える程度には打ち解けた優樹達。
先程から優樹の後ろで彼ら黙ってを見守るリリスはちょっとばかり寂しそうに彼らを見ているのであった。
「AIとはいえ…もう少し構ってほしいんだけどな…」
そんな風にとても小さい声のリリスのつぶやきは、誰にも届かなかったと思われる。
…しかし、優樹はひっそりと頬を掻いていたという事だけ、ここに記しておく。
タイトルは読者の代弁ですね。
いい感じにのって来ましたよ?




