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両親転生  作者: 八神ひろ
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方針転換

 ふぁ……。小さな欠伸あくびをして目を覚ます。手を伸ばすと、いつの間にか隣で寝ている奏音かのんに触れて、その存在に気づく。


 おっと。2日連続添い寝か。妹の部屋も作ってあるんだけどな。


 まあだいぶお互いに疲れていたから細かいことは気にしない。


 南向きの窓からは数十km先まで森が続く景色が広がる。だが、その先は険しい山が連なっており、300mの高さのビルからでも、その先を見通すことはできないようだ。


 今日も天気は晴れ。太平洋の天気はすぐに荒れるというイメージを持っていたが、そうでもないのかもしれない。


 絶好の冒険日和なのだが、先にやる事を思い出して、ちょっと気分がしぼんでいく。


 俺は、そんな自分にかつを入れて、昨晩に待機させたままのドローンにWake upと自己診断の命令を出す。幸い、どこも壊れたりしていないようで、ミサイル現場の調査に支障はない。


 発進させようとしたところで、妹を起こさないとバリアを抜けられず現場につかないことに気がついた。


 んー、と数秒悩んだが、まあ起こす程でもないので先に他にできることをやろう。


 優先順位的にはネット環境かな?情報戦に備えておきたいし。俺たちの国は日本と同じく島国だから、ネットがなければ新鮮な情報が入ってこない。情報が入ってこないというのは、何をするにしても後手に回るということは昨日学んだばかり。


 もちろんテレビとラジオも大切な情報源だ。この島でも衛星放送やラジオが受信できると昨日確認しているが、ネットよりも情報の鮮度は落ちる。加えて、動画や音声メディアは、頑張っても2倍速が限界だ。短い時間で浅く広く情報を得るにはテキストメディア、つまりネットニュースやSNSの方が有効なのだ。


 もちろん動画や音声メディアは短時間でも大きな情報量を受け取ることが可能だし、深く情報を知るには一番だ。何事も使い分けだな。アンテナさえあれば島でも受信できるのも大きなメリット。


 さて。どうやってネット環境を手に入れようか。テレビやラジオと違って相手国の許可がなければ正規ルートでは接続する事さえできない。許可なく海底ケーブルに直結するという方法も考えたが、どこにあるのか知らないのでつなぎようがない。物理ケーブルでの接続が望めないとなると、無線での接続はどうだろうか。


 日本本土まで携帯の電波は届かないので、衛星通信かな。接続許可など正当な手順を踏む余裕がないため、結局は魔法で「衛星をジャックして匿名でインターネットにアクセスできる装置」を作り上げることとなった。例によって、仕組みは俺自身分かっていない。


 装置により通信速度は低めながら、あっさりとインターネットに接続できた。早速ネットメディアを30分くらい眺める。が、どれもテレビで手に入れた情報ばかりで、めぼしいニュースが無かった。昨日の神の御告げや、俺たちの島が話題を独占しており、やはり俺たちが失踪したことは報道されていないようだ。


 加えて、父さんたちが失踪した事故もまったくググっても検索にヒットしない。昨日、東島2尉が話していた内容は間違っていなかったということだろう。


「おはよー」


 そうこうしていると妹が起きてきた。


「おはよう」

「それは?」


 パソコンを指さして聞かれたので、俺はただ作ったと答える。


「あ、そうだ。顔洗ったら、バリアを少し空けてもらえるか?昨日のミサイルを調査したいんだ」

「わかった。その後、それ使わせてね」


 同意を得たと同時に、ドローンを操作する。遥か彼方の島北西部ではドローンが俺の命令を受け海に飛び出して行く。ミサイルはバリアに衝突したのだから50kmほど沖だ。もう12時間くらい経ってしまったから、証拠などが流されていないか心配だ。


 ドローンの送ってくる位置情報を地図に出して眺めていると、だだだっと洗面所から妹が駆け足で戻ってきた。こういうときの妹はドローンより速い。


「はやく、はやく」

「いやまだドローンが現地に着いていない。もう10分くらいかかるかな」

「んじゃ先に、パソコン」

「はいよ、ああ携帯もデータ通信はできるようになったぞ」

「じゃあ携帯でいいや」

「ああ、そうだ。ネットが使えるようになったから、改めて神様の御告げとやらがどんなだったか調べてくれないか?」

「うん、わかった」


 俺もさっきまで調べていたんだが、多分妹の方が適任だ。この間までは自分の携帯も無かったような妹だったが、情報の整理に関してはもう追い抜かれている感じがする。母親譲りかもしれない。


「ちなみに、衛星をジャックしてネットに接続してる。バレたらぶっちゃけごめんなさいだが、国交が無いうちから繋がせてもらえるとは思えんし、まあ仕方ないということで」

「わー。やっぱり真っ黒なんだね」


 一瞬、違法接続をとがめられたかとギクっとしたが、真っ黒とは画面の中の話だった。早速、気象衛星の画像を見ているようだ。


「ごめんなー、結局、今日も冒険(遊び)に行けないかもしれない」

「まあどうしようもないからね。この島は逃げないから大丈夫だよ」


 結局、自衛隊との交渉は延長戦に突入だ。元々、一朝一夕で簡単に終わるとは思ってないけど、先の見通しが無いのも事実。


 俺たちとしては外交よりも、島を探検したり、未知の人類と仲良くしてみたいという気持ちが強い。国籍もないこの地球で何ができるのか、とも思う。とは言え、将来、神様の加護がなくなったことを考えると、今から周辺諸国と付き合っておき、独立国として共存共栄できるよう地盤を整えておきたい。


 と思いにふけっていると、妹が何か見つけてきたようで、話しかけられる。


「神様の御告げ、東島さんの言ったとおりだね。日本以外だと、台湾、中国、韓国、北朝鮮、ロシア、モンゴルの人に御告げがあったらしいよ。SNSでほぼ同時につぶやかれているみたいだから間違いないね。分析してる人によれば、東京から半径2200kmくらいじゃないかって」

「え、もうそこまで分析してる人がいるの?」


 やはりネットの方が情報が早い。しかもかなり分析が進んでいるようだ。それを短時間で見つけてくる妹の情報分析スキルも高いのだが。


「あ、そうそう。SNSで兄さんの同級生っぽいアカウントも見つけたけど、兄さんが居なくなったことに気づいてないっぽい。兄さん、友達居ないの?」

「おいおい、お前は特定班か!って俺にも友達くらい居るわ!」

「ほんとにー?!って冗談よ。ごめんごめん」


 といいつつ、両親がいなくなってからは、家のことが最優先で、友人と遊ぶことも無くなったし、なによりも友人達は高校を卒業してしまっていて、進学先やら就職先やらも含めて連絡先を聞いてない。


 そんなに仲の良い友達がいなかったのは事実なのであんまり言い返せなかった。


「と、言ってるうちに、バリアまでもうすぐみたいだ」

「りょーかい。カメラの映像頂戴!」


 ドローンの映像をパソコンのモニターにも映して、俺たちは阿吽あうんの呼吸でバリアを解除し、ドローンを外に出す。


 ドローンは爆発の起きた場所を入念に調べていくが、もうミサイル本体は沈んだのか、辺りは穏やかな海を取り戻していた。ドローンのカメラ越しに観る景色も一面の雄大な海が広がっていた。


「っと。あった」


 小さな破片が水面を漂っていたのを見つけてドローンを操作し回収する。しばらく探したが、結局カケラを一つ発見しただけしか成果を得られなかった。


 これ以上探しても無駄ということで、ドローンを引き上げて帰還させる。


 さてと。自衛隊からの連絡もまだ無いことだし、気力(魔力?)のあるうちに、周辺施設を作っておくかな。


「何が良いかなあ」

「次は病院作って欲しい!」

奏音かのんの力があるじゃないか」

「私の力もいつまであるか分からないでしょ?」


 そりゃそうか、と納得して、俺は超高層ビルから500mほど南の離れた場所に立つ。この辺も地盤が安定してそうだ。


 ぬぬっと声を漏らして力を溜め込んだら、はあっと一気に解放する。今度はそれ程高くないーーそれでも100mはあるーー建物と、それに付随してヘリ2機と救急車2台と消防車2台(うち1台は梯子車)を魔法で作成する。


 屋上は当然ヘリポートだ。ぶっちゃけ病院が背の高いビルに入ってもあまり良いことがない。万が一停電にでもなったら入院患者を連れて階段を降りるだけで大変だからな。ちょっと張り切って箱物を作りすぎたな。


 箱だけは立派だが、もちろんヘリを操縦できる人間も、手術の執刀医もここにはいない。設備は作れても人間は作れないのが俺の魔法の弱点かな(作りたくもないが)。


 まあそれでも、非常時に抗菌薬(いわゆる抗生物質)があるだけでも随分違うだろう。


「わあー、めっちゃ立派だね!」

「しばらくは開店休業だけどな!」


 この施設も地下に巨大バッテリーを設置してある。そろそろ発電所も考えたいけど、火力にしても水力にしても、どう考えてもすげえ大掛かりな施設になるんだよな。うーん。


 お次は、島に必須の設備を作る。そう、港だ。外界との交通手段としては飛行機か船となるわけだが、どちらの港もあって損はないだろう。


 まだ国交も無い状態なのでまったく不要ではあるが、この島は何しろ結構でかい。島の拠点間の輸送に使えれば、島の発展にも役立つだろう。


 ただ外から攻め込まれることを考えるとちょっとだけ憂慮すべき物件ではあるが……バリアもあるし、どうせ自衛隊も他国も揚陸艦ようりくかんくらいは持ってるだろうし、島嶼とうしょでの作戦なんて、周辺国で訓練してないところは無いだろう。


 ちょうど、超高層ビルの北西側に入江があり、少し深くなっているようなので、ここに湾を作る。


 少し深くなっているとはいえ、港とするには15mくらいの水深が必要ということで、いくら綺麗な海でも5mくらいしか見通せない俺の魔法ではなかなかに難しい。


 5mくらいの海水の質量をずっと沖の水として錬成し、一瞬水位が下がった際に再度海水と海底の砂を沖の海水に、さらにさがった水位でさらに海底の土を元にコンクリートと鋼材からなる岸壁がんぺきの構造物を作成。


 すぐに水位が戻ってくる上にあんまり一気にやると津波みたいにどばっと押し寄せてくるから死ぬかと思った。


 頑張りすぎて疲れたので、空港はまた後で作ることにした。


 ふあー。腹減ったー。まだ朝だけど、仕事の後の飯は美味い。結局、卵とかチーズとかを作り出して、妹にオムレツ(朝ごはん)を作ってもらった。少しずつ妹も料理の練習だ。

 

 オムレツの良いところは、失敗しても調味料で味が決まるので絶対に美味いものしかできないとこだな。


 しかし毎回魔法で作り出した食材やら食料やらだと好きなものしか作らなくなっちゃうな。エンゲル係数はゼロでも偏食になりそう。農作物の輸入は急務だなあ。


 優雅にコーヒー飲みながらそんなことを考えていると、ミサイルの破片を回収したドローンが帰ってくる。


 うーん。俺たちじゃ破片見てもさっぱりだな。まあ発射源は日本が把握しているだろうし、聞いて日本経由で抗議するしかないか。


 妹を傷つけたという気持ちはまだあるから、本当はこのミサイルをそっくりそのまま字のごとく撃ち返してやるのが筋なんだが、確実に戦争になるよなあ。


 まあいいや。気にする気持ちすら勿体もったいないから、もう忘れてやろう。大人はスルー力も大切だ。


 RRRR...


 このミサイルの破片は自衛隊に預けるか、とドローンを見つめていると、今連絡しようとした相手から衛星電話が鳴る。


「はい、天乃あまのです」

「海上自衛隊の東島です。昨日の宿題の結果が出ました。お話の続きをさせていただけないでしょうか?」

「了解しました。エージェントは積んだままで、艦の位置は移動してませんよね?」

「はい。昨日のままです」

「わかりました。では、すぐに起動します」


 俺は先にミサイルを積んだドローンを護衛艦に飛ばす。続いて、リビングに移動し、妹を呼んで昨日と同じくVRメガネなどを装着する。


「お待たせしました。天乃です」

「昨日は東島が大変失礼しました」


 昨日と違って、艦長室に連れてこられた。メンバーも昨日はもう1~2名同席していたのだが、今日は艦長と東島2尉しかいない。聞かれては困ることがあるのだろうか?艦長ものっけから謝罪しているし、この感じだと昨日の訴えはなんらかの効果があったとみて良いかもしれない。


「いえ、お気になさらず」

「私からも大変失礼なことを申し上げました。お許しください」


 東島2尉からも謝罪があった。だが断る!俺は子供なので謝罪を受け取らず、先を促す。だって悔しいじゃん?


「で、どうでしたか?」

「はい。4点の確認事項がありましたので、1つずつ報告申し上げます」

「お願いします」

「まず1点目。ご指摘の住所は確かに空き地となっており、さらに近所の住民もいつ、建物が取り壊しになって空き地になったか覚えていないということでした。土地の名義は、国に帰っており、とおる様、あかり様の親族はご存命にも関わらず、相続されておらず、少し不自然な状況となっておりました」

「相続人も私たちになっていなかったのですか……」

「……はい。2点目ですが、銀行通帳と印鑑、それから生命保険の申請は本物としか思えないものでした。ただし銀行口座は死亡および相続放棄で凍結されており、保険料は口座に残ったままで相続されないのは不自然と言って良いでしょう」

「まあ今更僕たちもその保険料が欲しいわけではありませんから、不自然という結果を引き出せただけで満足です」

「その他の書類は限りなく精巧な偽物という判断となりました。理由は日本側の戸籍が無いからです。そして本来マイナンバーは偽証するだけで犯罪ですが、マイナンバー通知カードが他人の番号とかぶらないものを2つお持ちだという時点で不自然ですし、そもそもすべてが限りなく本物としか思えない書類でした」

「ご確認ありがとうございます。私にとっては無用の物となりましたが、それらも両親との形見の物ですのでお返しいただけますか?」

「はい。承知しております。それから、3点目の学校についても、卒業アルバム、出席番号に欠番を確認しました。不自然ですが、今朝ヒアリングした範囲では誰もそのことについて理由を覚えていらっしゃいませんでした」

「ということは、友人との記憶も、自分だけのものになったのか……」

「……最後にご指摘の病院でも不思議な現象が起きておりました。確かに加藤小春という女性が重い心臓疾患を患っておりましたが、つい先日突然すべての数値が正常化し、本人の体重も1日で適正なものへと変わっており、もちろん疾患も完治しておりました。残念ながら、おっしゃっていた学会発表についてはご本人が辞退されたようで、そのせいかニュースなどでも取り上げられなかったようです」


(……加藤さん、良かったあ……)

 妹のつぶやきが聞こえた。そうだな。妹の力で治癒ちゆしたのは嘘になってなかったんだな。


「貴方がたと繋がっている神、いや神様には重い心臓病でも治せる力があるのですね?」

「……?だとしたら?どうだと言うのです?」


 昨日から東島2尉の様子がおかしい。病院に何かこだわりでもあるのか?


「私は……いえ、何でもありません。以上の結果から天乃さまの言うことが嘘だとは思えません。なんらかの力が働いて、戸籍や記憶を改変されたとしか思えない状況証拠が複数あるからです」

「良かった。信じていただけるようで」

「そして、それらの改変は神様の力と言わざるを得ない大きなものです。私は神様に愛されている貴方がたを信頼し、神様の御告げのとおり、一つの国として認めることを日本政府に働きかけます」

「!!」


 これは有難ありがたい。しかしこの気の変わりようは気になるな……。


「ありがとうございます」

「1週間ほどお待ちいただけないでしょうか?その間に説得して参ります」

「そんなに早くできるんですか?」

「申し遅れました。私は、外務省の現在は総合職を兼務しております、東島健とうじまたけると申します。特別にこの2年くらいは本艦の飛行班長を兼任させて頂いております。改めまして、昨晩は無礼を働き、大変申し訳ございませんでした。何卒、ひらにご容赦ようしゃくださいますれば」


 おーっと。何か艦長にもあらがえない権力をお持ちだと思ったら官僚様ですか。しかも外交官とな。そりゃあ弁も立つし、口では勝てないわ。


「もういいですよ。正直なところ、両親の子供では無いと言われたことに腹が立っただけですから。証拠は神に消されたみたいですし」

「ありがとうこざいます。残念ながら日本国籍はございませんが、いずれにせよ日本は二重国籍を認めておりません。ですから、新興国の国籍、いえ君主として日本政府との会談に臨んでいただけるよう、全力で取り計らいます」

「こちらこそ、ありがとうこざいます。では、進捗しんちょくがございましたら、お電話いただけますか?」

かしこまりました。ちなみに、国の名前はなんと言うので?」

「まだ決まっていません」

「では、会談を取り付けるまでには、決めておいていただければ。それから、憲法や法律なども決まっていなければ早めにお願いします」

「分かりました。理由を伺っても?」

「はい。例えば憲法や法律で国民をしいたげるようなものがあったり、出自などで明確な序列が決まるようでしたら、正直なところ日本国民の民意を反映して、国交の樹立は不可能かと存じますので」

「分かりました。日本の憲法と法律と近いものを考えているので、問題ないかと思います」

「はい。では、しばらくは他国に干渉させぬよう努力しますので、おそれながら、他国との秘密裏の接触はお控え願えればと思います」


 なんてことをしてたらドローンがバリア前まで来てた。妹に合図してこっそり外へ出す。


 俺は頼みごとを増やしてから会談のまとめに入る。


「はい。向こうから接触しない限りはお約束します。あ、それから、もうすぐ2台目のドローンが貴艦にミサイルの破片を持ち込みますので、調査していただけますか?」

「畏まりました。調査できる方に届けます。破片はお返ししなくて良いのでしょうか?」

「一応、会談でお邪魔する際にお返しいただけますか?では、今お話しているエージェントロボットは次のドローンが来た際に一緒に引き上げます。何かあればこの衛星電話でお願いします」

「はい。委細いさい承知いたしました」

「では、失礼します」

「失礼いたしました。お時間頂戴して有難うございました」


 エージェントにお辞儀をさせ、艦長室から退出する。2代目のドローンを邪魔にならない場所で待つ。


 やるべきことがすべて終わりエージェントと2代のドローンに帰還命令を出すと同時に、はああああ、と盛大に息を吐いた。


「いやー大変だったね。なんかでも最終的に上手くいったんだよね?」

「そうだなー。多分だけれど、神様の痕跡こんせきを目の当たりにして、得体えたいの知れない神様に俺たちがまもられていることを再認識して、怖くなったんだろうな。敵に回すことが」

「そうなの?」

「だってよ?昨日、東島さんも指摘しているように俺らしか人が居なさそうなことはバレてるし、その肝心の俺らの年齢も昨日渡した書類でバレてるのよ?未成年二人に警戒してくるとか、神の存在を軽視できないっていうなんらかの――それこそ外務省のお偉いさんの判断が何か――があったとしか思えないだろ。てのひら返しってこーゆーこと言うんだよなあ。今回はいい方向に掌返してくれて良かったよ」

「うん。でも、友達居なくなったね」


 そうだ。記憶が改変されて俺たちは居なかったことになっていたのだ。


「……ああ、そうだな。もう誰にも俺らのことは覚えられてないんだな……」

「わたしが兄さんのことを覚えてるよ」

「そうだな。俺も奏音のことを覚えてる」


 それだけで充分だ。


「これからどうする?」

「そうだな。これで、しばらくは外交の時間が稼げる。ってことで冒険再開しようぜ!」

「え!やったー!」


 なんだかんだ、ここまで早かったな。もっと時間がかかるかと思ってた。神様様々だぜ!


いつもありがとうございます!

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