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第2話 どうか諦めて欲しい





今日こそは、奴に諦めてもらわなければならない。


そう思いながらの、僕の足取りは重くなっていったのだ






「おはよう」



毎度の事ながら、よく飽きもせず、いつもの笑顔で

相も変わらず

目の前のこの人物は、僕に話しかけてくる。


本当に馬鹿みたいに諦めが悪い。


「…………」



「おーい、おはようーって」


あからさまに不機嫌な顔をして無視を決め込んでいる僕に

挨拶の返答を期待しているようだ

誰かコイツの脳内に "諦める" という言語をねじ込んでやって欲しい。


「まーーた、やってる」


と、面白げに笑う我が幼馴染に

"コイツをどうにかして欲しい" という淡い期待を込めた眼差しを向けるが「挨拶くらいいいじゃん。」なんて


期待をした僕が愚かだった。




「嫌だ。」

なんでコイツに挨拶を……と思って口にした僕の言葉を他所に



「いいじゃん、減るもんでもねぇし」

とあっけらかんに笑う当人である。

僕のストレスの根源は今日もおめでたいらしい。



今日とて僕には理解が出来なかった

古森結友が、僕に話しかける理由が

メリットなんてあるはずがないのに。




「……なんで、僕に話しかける」


今日初めて、古森に話しかけた言葉だった

会話というよりかは、問いかけに近い。








「友達になりたかったから」




まるで小学生のような、なんて単純な答えなのだろう。


僕としたことが、一瞬、本当に純粋なる言葉なんだと

心からの言葉なんだと、思ってしまったくらいに。





「どうして」



ポツリ、とまた問いを投げかけたのは何故だったか。



少し間を開けて古森は口を開いた。


「……うーん、なんとなく?」




「は?」



先程から思いもよらない返答に

間抜けな声が漏れてしまった。

いや、どういうことだよ、なんとなくって。




「……理由が欲しい、のか?」



「え、」



言っている意味が一瞬わからなかった

数秒ほど、時間が止まったようにも感じた。



「俺が、お前と友達になりたい事に、理由が欲しいのか?」



なんだよ、それ。


理由が欲しいって まるで僕がお前に……



──── とてもどうかしている言葉が頭をよぎった所で

我に返り、このしち面倒な話題を切ってしまう算段を思いついた。いや、切ってしまいたかった。



「ホント、お前うざい。」


と、あしらうように返す僕に


「それは初めて言われた」と、何故か嬉しそうに笑う。

そんな古森結友を、僕は直視出来なかった。



ここ最近だが、ほんの少しだけこの男が

人に好かれる、いわゆる"人気者"というのもわかる気がしている。ここまでくるといっそ変人(変態?)だとも思うが。




──── 彼と僕とでは住む世界が違う人物のはずなのだ



「なぁ、友達になろうぜ」


「面倒くさい」



僕は、1人が好きなんだよ



「じゃあー、 一緒に飯を食おう」


「おい、人の話を聞いていたか?」



2年間、坦々と守り続けていた、静かで無難で平穏なる日々が、目の前に立っている

人気者の皮を被ったド変人によって崩されようとしている。





「はぁ、」 ため息を零すしかあるまい。





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