第1話 朝から頭が痛くなる
「おはよう郁也。」
玄関を開けると同時に響く優しい声音
「おはよう、茉優」
僕はそう呟いて、玄関を閉じる。
そんないつもどうりの朝だ。
セミロングの髪をしばっている目の前の彼女は
僕の幼なじみである「高場 茉優」だ
お節介な奴で、家が近いののも手伝ってか、朝弱い僕をいつも勝手に心配して登校の際は毎度迎えに来てくれている。
そんな彼女の前をすり抜けて、勝手に一人で歩き出す僕に一切の文句を言わずに後ろからひょこひょこ付いてくる
飽きずに毎日よくやるものだ。
お陰様で、高校に入学してから2年と2ヶ月
中学時代遅刻魔だった僕の遅刻回数は0である。
お節介と称しつつも、僕はもうこのお節介なしでは朝、
ちゃんと起きることが出来ないのかもしれない。
茉優と自分に呆れつつそんなことを考えていると
茉優がクスクスと笑い出した。
「………………何?」
「いやぁ、昨日も古森くんが泣いてたなぁと思い出してさ」
「………………………………。」
「古森」その名前を聞いて、僕は眉間に皺を寄せた。
その名前は今1番、僕が聞きたくない名前1位に光り輝いている。
今回で3冠目だおめでとう。
「古森 結友」 高校3年でクラスが同じになってからというものの、無駄に、本当に無駄に、
僕にまとわりついてくる変な男だ。
友達というものが疎ましくて億劫で仕方の無い僕に、事ある毎に「友達になろう。」と言ってくる。
推測だが、いわゆる「一人でいる奴が放っておけないタイプ」なんだろう
普段クラスで一人行動が多い僕が気になって仕方がないんだろうな。
…………僕は、好きで一人でいるのだ。
ひとりが寂しいだとか、ひとりが悲しいだとか
思った事なんてない。
だからアイツに心配される筋合いも、最早、友達になろうとされる筋合いもないのだ。
なのに、
「はぁ……、アイツ、本当にうざい。」
と、無意識に口から零れる
古森結友は毎度僕が「一人でいることは好きだから心配する必要はない。」と説明しても僕にまとわりついてくる。
昨日で約15日目。その間1度も欠かさず古森結友は僕に
「友達になってくれ」と頼み込んできた
最初の5日目くらいはきちんと返答していたが
今は面倒くさくて適当に無視を決め込んでいる。
にも、関わらず、関わらずだ。
奴の勢いは衰える所か増していった。
「もういい加減古森くんと友達になればいいのに、悪い人じゃないよ古森くん。」
と茉優が僕に向けて言うが
「いや、諦めるのはあっちだ。」といっそ意固地になる
「まーた、郁也はそうやって……」
と茉優は呆れながらもどこか楽しそうに呟いた。
古森の話をしているうちに、徒歩10分もあれば着く
僕らが通う、「小瀧高等学校」が見えてきた。