冒険者ギルドへ
喫茶店を出て大通りを眺めながら歩いていく花屋にアクセサリー店、日用雑貨を売っている店や、食堂。
どれもゲームには必要なさそうではあるがどれも現代にはない日常がにじみ出ていてこれはこれでいい。
道を歩いている人たちからの視線は相変わらず絶えないでいる。奇怪な物を見るような視線がほとんどである。
ふつう紳士ってこんな目立つもんだっけ?
まあゲームでプレイヤーとして珍しいのは分かるんだけどさ。
そう思いながら歩いていると前の女性が、向かってきた男とぶつかった。
それだけならよかったのだがどうやら向かってきてぶつかった男は俺の目の前を歩いていた女性のベルトのところから、ポーションを一つかすめ取っていたようだった。
ポーション一つとはいえ、この初めの町で行動するプレイヤーにとっては大事なものだろう。
俺はそのまま歩いてきた男の足を持っていた杖で引っ掛けて転ばせた。
どうやら杖の攻撃力増加のスキルは絶大なようで、ダメージこそ加わらないものの、衝撃はものすごかったらしく、男はその場で大きくバランスを崩し頭からずっこけた。
その際に男はポーション瓶を空中に投げ出したので俺はそれをキャッチして盗まれた女性のところへ歩いていって返しに行った。
俺の前を歩いていた人も男がこけた音でびっくりしてこちらを向いていたらしい。
「すみません、これ、さっきぶつかったときに盗まれていたようなので、お返しいたします」
そういわれて女性はちょっとびっくりしながらポーションを受け取った
「えっと、ありがとうございます」
「いえいえ私にどうにかできることでよかったです。ああいう輩がいるのもわかったことですし、お互い気をつけましょう」
俺はその時普段なら考えられないほどの笑顔を放っていた
「は、はい」
そしてその女性は何故か俺に背を向けて走り去っていった
そのあと俺は泥棒のほうを向いたが、どうやら泥棒は周りのプレイヤーに取り押さえられた後だった
「ちくしょうよくもやりやがったな!」
「縄にかかっているのに元気ですね」
「まあなーそういうあんたはよくやったな。ふつう初心者はこういうのに手を出さないんだけどな」
まあそうだろうな。普通こういうのって初心者がやったら返り打ちだもんなぁ
「私に何とかできてよかったです。それでこの方は今からどうするのでしょう?」
「基本犯罪プレイヤーは町中で見つかったら牢屋行きだからな。今から憲兵に連れて行くことになるな。それでほとんどの場合は少し報奨金が出るんだが、あんたの手柄だからあんたが連れていくといい」
憲兵なんてあるのか。割とマジでリアルなゲームだなこれ
「そうですか。ですが私は杖をひっかけただけで、実際捕まえたのは皆さんなので皆さんが報奨金をいただいてください」
俺がそういうと周りがざわついて、俺と話してきた人が、本当にいいのか?と確認してきた。
まあ実際捕まえたの俺じゃないしな。どうぞ。とにこやかな笑顔で返しておいた。
正直俺は冒険者ギルドに行きたいので、半分逃げるように「私はこれで」と挨拶だけしてその場から去った
俺はまた前を向いて歩きだした。冒険者ギルドへ向かうマップの通りに進んでいくにつれてひとが多くなり、武器屋、道具屋などの冒険関連の店が増えてきた。
またそれにつれて俺に向く目も比例して多くなってきた
そのまま歩いていくとひときわ目を引く大きな建物があった。どうやらあれが冒険者ギルドらしく、人の出入りが激しかった
俺もその人ごみに紛れて冒険者ギルドの中に入った
ギルドの中に入っても視線が向くのは変わらずだった
もはや視線になれたので、そのまま受付へ行った
「冒険者ギルドへようこそ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「そうですね、登録が主な目的で、あとは指名手配の確認ですかね。職業的にパーティーが望めそうにないので、一人で外を歩くときに気を付けようかと思いまして」
「分かりましたそれではまずは冒険者登録からですね。まずこの用紙に必要事項を記入してください」
えーと必要事項は、名前、種族、第一職業これだけ?
まあとりあえず書き込んでいこうかな
・ライデル・オーウェン
・人間
・紳士
「はい、ありがとうございます。それではギルドについて大まかに説明をさせていただきます。まずあちらがクエストの掲示板。あそこでクエストを選んで受注してください。そして向こうのほうに見えるのが、指名手配掲示板です。町の外での行動は指名手配犯に気を付けてください。次にランク制の説明をします。ランクはG.F.E.D.C.B.A.S.SS.SSSの10段階で登録後すぐはGランクです。依頼はご自分のランク以下のクエストをを受けることができて、クエストの達成数でランクが上がります。ちなみにクエスト失敗の場合は違約金が発生しますのでご注意ください。そのほか何か気になることがございましたらご質問ください」
ふむ、おおむねほかのゲームと同じか。大きく違うのは指名手配書があることくらいだな。
特に質問もないし、あっても気になった時でいいだろう。
「いえ、大丈夫です」
「分かりました。それでは冒険者証の発行まで少しお時間をいただきますので、後ろの椅子におかけいただくか、ギルド内でお時間をつぶしていただけますでしょうか?」
「分かりました」
そういって俺は受付を去った。
まず足を運んだのは指名手配掲示板。見ておかないと大変な事になるだろう。
いろんな犯罪者の情報が載ってあった。窃盗に暴行さらには殺害まで
犯罪者の特徴も描いてあった。このあたりで出る犯罪者で一番攻撃力のある裏職はどうもも殺し屋と暗殺者らしい
ほとんどがフードで顔を隠し布で口を覆って顔がわからないようにしているようで、暗殺者は影に隠れるものスキルで見つけにくいそうだ
それと、通常職で罪を重ねた結果できた裏職業も要注意と書いてある。戦士からの派生で、断首者、弓士からの派生で血弓者、魔法使いからの派生でダークマジシャン、格闘家からの派生で、撲殺人。
今確認されているのはこのあたりらしい
指名手配犯についてはこれぐらいでいいだろう
次はクエストの掲示板でも見てみようか
お手伝い系から、お使い系クエストが多い印象だ。討伐系も結構あるが、なぜか始まりの町に、Sランクなどというクエストがちらほらと散在していた。
そうこうしているうちに冒険者証ができたようで名前が呼ばれた。
「それでは冒険者証ができましたのでこちらをお渡しいたします。首からかけるなどして常に見える場所に出しておいてください」
なるほど、これが冒険者証か
「これは手首につけていてもよろしいでしょうか?」
「すぐに出せる位置にあれば構いませんが、なくされないよう十分ご注意ください」
「分かりました」
そういって俺は冒険者証を手首に巻きつけた
さて、一つクエストでも受けてみようかな?
もう一度クエスト掲示板の前に立ち、吟味した二つのクエストをもってカウンターへ行く
「クエストの受注ですね。薬草採取とミニラビの討伐ですね。それでは気を付けていってらっしゃいませ」
クエストを受注した後ギルドを出た。
そういえば今所持金っていくらだろう
インベントリを出して所持金を確認する。
今のところ1万メル持っているようだ
それとインベントリに初心者応援ボックスが入っていた。
それを開封してみると、白の紳士服セット、紳士の黒杖を手に入れることができた
どちらも今着ている初期装備よりはそれなりにましだったのでこちらを装備することにした
紳士の黒杖はなかなかいいデザインをしている。そのうえ仕込み杖になっているようだ。これはありがたい
そうなるとステータスが気になるな...
ステータスも見てみよう
〈ステータス〉
ネーム:ライデル・オーウェン
種族:人間
職業:紳士 暗殺者
Lv:1
HP:50
MP:20
STR:10
VIT:10
INT:10
MND:10
AGI:10
LUK:10
SP:0
なるほどこんなもんか
これでどうにかなればいいんだけど
それじゃあ薬草の採取とミニラビ討伐行きますか
そう小さくつぶやいて町の外へ足を向けた
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