魂の復讐者
ロレイドの小隊と街の見回りをすることになった、約、1時間ほどかけ、ロレイドの小隊の巡回エリアを見まわた。特に問題はないかのように思われていた。だが、東門につながる大通りへ近づいていくと、何やら大勢の叫び声が聞こえてきた、それを聞いてロレイドたちが一斉に走り出した。俺たちもワンテンポ遅れてそれについていく
東門まで出ていくと、絶叫飛び交う地獄絵図。住民は我を忘れどこへ向かえばいいのかもわからずただはしる
どうしたらいいかわからずに立ち尽くす小隊の人と俺たち
すると、ロレイドがいきなり東門の外へ向かって走り出した。
「どうして外へ行くんですか?!」
「住民はどっちに行けばいいかわからなくていろんな方向に逃げちゃいるが、武装を持った人間は全員何かを追うように東門の外へ向かっている!」
鋭い観察眼で、現在の状況を見抜いて東門へ行くことにしたらしい
「キイラ!他の小隊に情報伝達してこい!お前が一番他の隊の巡回経路に詳しいはずだ!」
「はい!」
「スマーニャ!ラギアル!コーレル!お前たちは住民の誘導と安全確保をしろ!そのほかは俺についてこい」
『はい!』
ロレイドは小隊長らしく、隊員に指示を出す。ちゃんと隊員の能力を考えての指示だろう
東門の外へ出ると、街の周りは変わり果てていた。草木は枯れ、毒々しい紫色に変色し、それに伴い、いつも街の周りにいるモンスターはとこどどころが腐食した、ゾンビという表現がふさわしい姿になっていた。そのほかにも普段見かけないモンスターが大量にうごめいている。周りにはたくさんの人たちが、そのモンスターと戦っている
「なんだこりゃ見たことねえのしかいねえ」
「ですね……」
話す間もなくモンスターの数体がこちらへ向かってくる
それを早々に察知し、ロレイドがばらばらに切り捨てる
「数自体は多いが、モンスターの力自体はそう強くない、レベルで言えば2から10前後だ。お前は弱そうなやつをやってこい。お前なら、動きでどれだ強くて弱いかわかるだろ。あとの問題は嬢ちゃんだ。戦えるのか?」
その問いに対し、ミーちゃんはインベントリから出した大槌と眼差しで答える。
「分かった、だが無茶はするな。それとこんな異常だ、確実に元凶がいる。魔法のことは詳しくは分からないがそっちの類だろう、そしてこれだけの規模でこんな異常な現象を展開できるなら、もっと強いモンスターの召喚も容易なはずだ。高レベル帯のモンスターが出たら連絡を入れてくれ。連絡は、これを使う」
そういって手渡されたのは、小さな玉
「光柱弾だ。強く地面に投げつければ投げた地点に細い光の柱を形成する。異常時にはこいつを使ってくれ。念のため、一人5個渡しておく」
「分かりました」
「それじゃあ俺の隊もお前らも各自ばらけてモンスターの殲滅に勤めてくれ。もし、モンスターの復活や、新たな出現を多数確認したら光柱弾を使ってくれ、解散!」
「ライ兄、一緒に倒そう」
「分かりました」
送られてきたパーティ申請を承認しモンスターの塊に突っ込んでいく
ミーちゃんが大槌で、モンスターにダメージを与え、体力の減ったモンスターに俺がとどめを刺していく
大槌は攻撃力こそ大きいが、攻撃速度にネックがある。特に、わずかに体力の残ったモンスター一体のために大槌を振り上げるのは非常に効率が悪い。そこを俺が少し残った体力を削りきっていくというやり方である。言い訳に聞こえるかもしないがこれが最善だ
モンスターの数が多いため、それを何十回と繰り返した
それで倒したモンスターの数は200を超えた
ステータスを見てみると、レベルは7
かなり倒したが、経験値量は少ないようだ
まだ残っているので、倒していると、明らかにモンスターではないが、味方ではない人物を発見した。
その人物を見て、ミーちゃんが瞬時に光柱弾を投げた。
「あの人は、ゲームでも残虐さがトップレベルのPKプレイヤー……!なんでこんなとこに!」
そういって、俺の腕をつかんで逆向きに走り出すミーちゃん。
「にがさない♪」
しかし瞬間的にその人物は回り込んできた。
「そこの女の子はともかく、そこの紳士君。君はとても興味深い職業選択のようね、あなたの事、とっても気になるわ♪」
そのひとは、そういいながら、フードを脱ぐ
声色から薄々感じてはいたが、世間一般的に呼ばれる、オカマと言われる人だろう
その鋭い目からは凶器は感じられないものの、強い殺気を放っている
「私のレベルは158。今のあなたたちじゃ戦ってもお話にならないことくらいは分かってるでしょう?」
「何しにこんなとこに……」
「ああこれ?これは、依頼ね個人的に依頼を請け負ったの。よくわからない人だったわね。依頼内容は信用問題だから言えないけれど」
「依頼が終わったらすぐ帰って!」
「そうね、依頼は大方終わったかしら、それじゃあ私からも条件があるわ。私の出すモンスターにここにいる人の誰かが勝てたら帰ってあげる」
「そんな……!」
そういって、彼、彼女?は指を鳴らした。
そのとたん周りにいたモンスターが光のエフェクトに包まれて消えた
今まで戦っていたものは、それに驚き、あたりを見回し、光柱弾のあるこちら側に注目し、
それを見て誰かが叫んだ
「亜異裏素だ!」
「アイリスだって?!全員逃げろ!」
それを聞いて逃げ惑うそこにいた人たち
「なんだ?」
よくわかっていない人もいたようだが、ある人が、こういった
「知らねえのか!?よく掲示板で見るだろ?!性格破綻オカマだよっ!」
そのとたん、アイリスと呼ばれた目の前の人の目つきが変わり。一瞬で、殺気の量がけた違いに増えた
『詠唱破棄―タナトス・シューティングスター!』
その魔法が唱えられると同時に
無数の紫色の光弾が逃げる人たちめがけて流れ星のように降り注いだ。
しかし威力は隕石といったところだ
逃げた人たちは漏れることなくその流れ星の餌食となった。
そこからすこし離れていたロレイドたちは、爆風のダメージこそ受けたものの、隊全員無事だった
「まったく……誰がオカマよ、大体掲示板でその言葉を口にしたら私がキレることくらい流れてるんじゃないの?。言っておくけどね?さっきあなたPKプレイヤーだって言ったけど私がPKするのはオカマって言われたときだけよ?でも約束は約束。私の出すモンスターと戦ってちょうだいでないと帰ってあげないから」
『マジックサモン―ソウル・アヴェンジャー《バーサーカー》』
それが唱えられると、今までモンスターと戦っていた一帯から魂のようなエフェクトが集まっていき
一定の場所にとどまり、モンスターを形作っていった
そのモンスターは今までにあったモンスターからはかすかにしか感じられなかった攻撃意志が、そのモンスターでも抑え込むのが不可能なまでに膨張していた
そして今までのモンスターよりはるかに、異形だった
アンデットがもとになったからか、筋肉はおかしな色をしてところどころが切れ、骨が見えている
大きさは高さで俺の3倍以上
人によっては戦う意思が出てこないだろう
「せっかくだから、この子の説明をしてあげる。このこはソウル・アヴェンジャー《バーサーカー》。マジックサモンでのみ召喚できるの。召喚条件は、自分で召喚したモンスターが倒されてから1時間以内で50体以上分のデスログが、召喚者の半径500メートル以内あること。50体以降は数が増えるにつれて、攻撃力が上がっていくの。この子の特徴は物理攻撃力に能力を集中させていることそのほかは速度が少し高いだけで、物理、魔力共に防御力は0、それに伴って体力も低い、この子結構癖がある子でね、攻撃の威力は高いのだけど、防御力が0のせいで、攻撃の時に自分の力で体にダメージを入れていって、最終的には自壊するの。復讐のために召喚されて復讐に死んでいくの哀しい子なの。でもこの子はあなたのために、バランスを考えた子を召喚したわ。この子の攻撃は、力任せで単純愚直。この子の攻撃をすべてよければあなたの勝ちね。でももし攻撃に当たってみなさい、よくて体半分、最悪肉片ね。私はこの子の相手にそこの紳士のあなたを指名するわ。別に逃げても大丈夫よその時はここにいるみんながこの子に殺されるだけだから」
それを聞いて逃げるわけにはいかない。それに、俺自身の力を図るのにもいいかもしれない
「分かりました。」
「それじゃあ始めるわね、5、4、3、2、1。行きなさい」
「グアァッァッァァァァァ」
おぞましいほどの雄たけびを上げて相手が走ってくる
最初の攻撃は真っ直線。彼女が言ったように攻撃に関しては愚直らしい。
相手は、振り上げた、大きな剣を力任せに俺めがけて振り落とす
それを右に飛んで軽く避けるつもりだった……
だが、剣が振り下ろされた瞬間いきなりHPバーが30%削れ、体が剣の風圧で吹き飛ばされる
左肩に違和感を感じすぐに左を向く、
そこには絶望したような顔をするミーちゃんの顔とあるはずの腕がなく、空中で、腕がぐちゃぐちゃになって、モンスターの死んだとき同様、光に包まれているところが目に映った
どうやら、相手異常な攻撃力からくる剣の恐ろしいほどの風圧で腕がねじり切れたらしい
ゲームの設定で痛覚は遮断されているからよかった……
「ライ兄!」
「オーウェン!」
「大丈夫です!来ないでください!」
ステータスには、部位欠損、持続出血と書いてあった。
そして今でも体力はすこしずつ減っている
相手のほうも自身の攻撃力で、自分にダメージを負っている
割合は約10%といったところだ
相手は剣を持ち直し体制を整えたところだった
そして向き直してまた攻撃を仕掛けてきた。
残っている右腕を失わないように、今度もまた右に避けた、今度は前回よりも遠くに全力で
だが全力ずぎて体制を崩した。そこに剣の風圧が飛んできて体を舞い上げられる。左手がない状態での着地はバランスがうまく取れず、落下でのダメージを受けてしまった。
しかし今度は四肢を持っていかれなかった。攻撃のたびに攻撃力が落ちるようだ
相手は今度は15%ほどダメージを受けていた
合計で25%どうやら、攻撃を行うたびにダメージ率が大きくなっていくのだろうか?
相手は考える暇を与えてくれず次の攻撃を構える
今度も同じく攻撃。今回はバランスを崩さずに避けることができた。風圧もだいぶ弱まってきた
相手の体力は残り55%ほど
次の攻撃も避けて、相手の残り体力は、30%次が相手にとっての最後の攻撃になるだろう
そして相手の攻撃それを避けようと飛んだ瞬間、急なめまいに襲われ、攻撃を避けそこなった。まともに当たりはしなかったものの、風圧で、左手のように右足がねじりきれた
最後の攻撃で、相手は残り体力を使い果たし倒れこむが、体力は全損したのではなくミリ単位で残っている、しかし、私も手と足が片方ずつなく、持続出血で、どんどん体力が減っていっている。これでは、先に私のほうが体力切れで死んでしまう。ステータスに貧血というデバフもついている。これがさっきのめまいの正体だろう。視界もかすんできて、音も聞こえずらい……自分の意識が完全にはっきりしているがために、疑似的な瀕死状態は違和感がすごい
そこに、ロレイドが叫んだ
「オーウェン!杖を投げろ!あいつの残り体力ぐらいだったらそれで削れる!」
その言葉を聞いて、右手で持っていた杖を構え、抜くことができないまま、もうろうとするなか投げた。
狙いに大きさがあるので外れることはなく、そのままソウルアヴェンジャーに命中
「グぅ……グガァァアァァァ……」
小さなうめき声とともにソウルアヴェンジャーは消滅、そして俺部位欠損と、出血による体力切れで倒れた。
面白いと思っていただけましたら、評価、ブックマークのほどよろしくお願いします。
よろしければ感想のほうもお願いします。全てが励みになります。





