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巻きぞえアリスの異世界冒険記。  作者: 冬野夏野
始まりの章
10/53

姫のお願い叶え隊


あの後、直ぐに目を覚ましたワニもどきの怪物に追われながらも、死に物狂いで階段を駆け上がりもとの地下水路に戻ってきた私とベルティナ様はもう寄り道はしまいと強く誓い、疲れ切った足を引きずりながら黙々と地上を目指した。



「…そう言えばベルティナ様は何で誘拐されたいの?」


「あぁ、それはね…白馬の王子様に助けに来てもらうためよ」


「???ちょっと何言ってるかわかんない」


「だから誘拐犯さんに連れ去られたらベルを心配してマクシムが助けに来てくれはずなの!そのためよ!」


ちょっと未だに理解できずしっかりゆっくりとお姫様の目的を聞いた。

彼女はマクシムという城のとてもお強い騎士に恋心を抱いており、何かにつけては彼に構ってほしくてちょっかいを出していたが、子ども扱いしかされず悩んでいたそうな。

そこに兄カミルが行方知れずになった際、マクシム含めた城の兵士が彼の捜索に行く姿を見て思いついたそうだ。

自分も同じく拐われてしまえばマクシムが助けに来てくれると、これが彼女の考えた『白馬の王子様大作戦』だった。


「誘拐犯さんは本当の誘拐犯じゃないから安全だし、完璧な作戦でしょ?」



無邪気に笑うベルティナ姫を見て私は本当に彼女にとっては安全に目論見を果たせる作戦だと思う。

しかし私自身は最終的には確実に脱獄前よりも重い罪に問われること間違いなしの絶望しかない作戦で、子供の無邪気さにひたすら恐怖した。












ー巻きぞえアリスの異世界冒険記10ー











「大丈夫よ。最後にはベルがちゃーんと説明してあげるから!ねっ!」



と姫様は私を悪いようにはしないと言ってくれるのだが、カミルの様子を見ればあまり期待しない方がいいだろう。

フォルカさんを味方につけるか、ジルベルトさんの元まで帰れたら私の勝利だ。諦めてはいけない。


お姫様が私の荷物を回収できていれば私は一発で逃げ帰れるのにと都合よく回らない世界を少し恨めしく思う。

どうしたらいいかと悩んでいる内に町に繋がる下水道の通路に出たようで、先ほどより淀んだ水、元の世界の排水溝のような臭いが鼻をつくが、壁にかかった鉄の梯子とその上にマンホールを発見した。



「…これは町に繋がってそうな予感」


「早速上がるわよ!」


やる気満々の姫様とは対照的に私は今囚人服だし、手枷もついていて人に見つかると一発でアウトの可能性しかなくて不安だった。

しかしお姫様を先に行かせるのはそれはそれで心配だったので慎重に梯子を上がり、そろそろとマンホールを持ち上げた。

多少重量はあったものの、マンホールはゆっくり持ち上がった。

丸くくり抜かれた空間には綺麗な星空が広がり、外であることともう夜だということがわかる。

警戒しながら頭を出して辺りを見回すと閑散とした町の通路に出たようで城壁の反対側に住宅地が並んでいる。

大分町の外れのようで人影がない事にホッとしていると、フッと影が掛かる。




「おっ!やっぱりノドカちゃんっすね。こんなところで何してるんすか?」



一瞬心臓が止まりそうになるほどにビビったが、この馴れ馴れしくチャラい感じの喋り方には覚えがあった。

振り返るとマンホールの蓋を柵のように利用して身体を乗り出して見下ろしてくるのは派手なスカジャンに生え際だけは地毛の黒毛が覗く金髪頭。

ファンタジーな世界観から浮くそのヤンキーっぷりに今は無茶苦茶安心して思わず力が抜ける。




「や…ヤス先輩…っ!!」


「ん〜?…その格好にマンホールからの登場はただならぬ理由がありそっすね」


「うぅ〜っ!!助けてぇっ!!」



新たな希望の光、ヤス先輩に私は迷うことなく速攻で助けを求めた。

あっさり私が困っていることを理解したヤス先輩は私達を下水道から引き上げ、スカジャンを私に被せると足早に古びた教会へと避難した。


「あんま人気なくてよかったすね。ここの神父サマはこの世界に来てから世話になってるんす。信用できる人だから安心していいっすよ」


ヤス先輩がニッカリと笑うと扉に鍵を掛けた眼鏡の優しげな神父さまも柔らかく笑みを浮かべる。


「しかし何があったんすかー?話聞かせてもらえる?」


固く締まった扉の前で崩れ落ちる私の背中を優しくポンポン叩きながらさすってくれるヤス先輩に私は事の経緯を話した。

それはもう王子と誘拐されたところから全てお話しした。

ヤス先輩は初めはわりと真面目な顔で話を聞いていたのだが、最後には膝を叩いて笑い出していた。


「ぅははははっ!王子サマと誘拐されて帰ってきたら誘拐犯と勘違いされて投獄されて今はお姫サマ連れて脱獄って!アンタ面白いわっあっははっ!!」


「笑い事じゃないんですよ!!今度はわりとマジで誘拐犯みたいなものだから困ってるんですよぉ〜!」


しばらく大爆笑するヤス先輩が落ち着くまで数分を要したが、彼は相変わらずクスクス笑いながらも快く協力してくれると言った。

優しい神父さまの助けもあり、修道服を借りた私はとりあえず目立ちすぎる囚人服から着替えようと思ったのだが、ジャラリと手首に垂れ下がる鎖が非常に邪魔だ。

これにはヤス先輩も神父さまもお手上げ状態なので、フォルカさんに頼らざるおえない。



「えーっと…」


キョロキョロと教会内のフォルカさんを探すと彼は祭壇の奥の白い十字架の前に立って、教会のステンドグラスを見上げていた。

ステンドグラスには天使や太陽のような光や女神や神様のようなものが描かれている。

私には綺麗だなと思うくらいのステンドグラスをフォルカさんはジッと青い瞳で見つめていた。


「フォルカさん…?」


何となく声をかけづらくておずおずと控え目に呼びかける。

しばらくステンドグラスを見つめていたフォルカさんはいつもの様に私を振り返り、何も答えないものの表情だけで『何』と問いかけてくる。


「これ…」


取ってほしいなと言う前に彼がパチンと指を鳴らすとガチャンと手枷と壊れた足枷も外れて床に落ちた。その際手枷が足に落ちてめっちゃ痛かった。

今までとは打って変わり、あまりの対応の早さに驚きつつ痛みに悶える私を他所に彼は静かに教会を出て行ってしまった。



「絶対無理だと思ったのに…何故」


ステンドグラスを見上げていたフォルカさんは何を思ったのか、私にはわからないけれども、今までにないフォルカさんの素直すぎる態度に明日は天変地異が起こるに違いないと思わずにいられない。



物珍しそうに教会を見て回っていたベルティナ様に不意に『着替えないの?』と促されて、私は神父さまに教会の奥にある居住区に案内される。


「どうぞ、こちらの部屋をお使いください」


「あ、ありがとうございます。あの…なんか突然押しかけて本当にすいません!」


神父さまことヨルン神父からしたら私みたいな得体の知れない人間と王女様を匿うのは大変まずい事だろうに、本当に助かる。


「貴女が悪しき者でないことは私も聞いていますし、彼からも貴女のことをよく聞きましたので大丈夫ですよ。私も貴女を信用しています」


こんな会ったばかりの私の事を信用すると言ってくれるくらいヨルン神父とヤス先輩は仲がいい様子。

もう一度頭を下げて私は部屋の扉を閉めた。

月明かりが差し込む寝室のベッドに修道服を広げて、身につけていた囚人服を脱ぎ始める。

そう言えばジルベルトさん家では大抵制服かジャージまたは体操服だったから下着や囚人服を除いたこちらの服を身につけるのは初めてだったな。



「これ着たら私もシスターかぁ〜何かいいかも」



「姉ちゃんの下着姿色気ねぇーなぁ…」


美化しまくりの自分のシスター姿を妄想していると、とても失礼な幻聴が気持ちのいい妄想を打ち壊す。

声のした方を見やるとしゃがんでベットにもたれながら私を上から下まで視線をやってはふっと鼻で笑う黒いシルエット。




「ぎゃぁあああーっ!!覗きっ?!誰っ!?変態っっ!?」


完全に1人だと思っていたのに見知らぬ怪しい影の存在に大パニックに陥る。

囚人服を抱きしめながら扉側の壁に激突すると同時に扉が開き、ヤス先輩やヨルン神父が部屋に雪崩れ込んだ。



「何事っすか!?ノドカちゃん大丈夫すかー!?」


「どうしたのですか!?」


「ノドカ姉ちゃんいきなり大声出すなよ!ビビったぁ」


「変態がっ……ニール…?」


ランタンの明かりで照らされた室内の影の正体は私を置いて逃げたニールだった。彼は尻餅をついて『驚いた〜』と言いながらズレたゴーグルを直しながらスッと立ち上がった。

大体何が起こったか、整理がつかずしばし固まっていたが皆の視線が自分に集まっていることに気づき、まだ着替え途中だったことを思い出した。




「あーっ!あ゛ーっっ!!あーもーっ!!とりあえず出てって!!!」


全身の血が沸騰するような感覚に苛まれながら私は怒りの勢いに任せて全員を部屋から叩き出して、修道服を身につけたものの直ぐに部屋を出る気分にもなれず、ニールにプロポーションにケチをつけれたことも思い出されてしばらく屈辱と羞恥心で悶えていた。






「あー姉ちゃん、着替え終わった?皆食堂にいるから行こうぜ」


ガチャっと扉を開けて廊下に出ると壁にもたれかかっていた頭にタンコブ、頰を腫らしたニールが私を待っていた。


「…タンコブとその頬っぺたどうしたの」


「ヨルンと妹姫様ににやられたよ…イテテ」


どうやら仇はヨルン神父と姫様が取ってくれたようで、ちょっと胸がスッとした。


「そう言えば何であんたがここにいるの?」


「そりゃここが俺ん家だからに決まってんじゃんか」


「??あんた神父さまの息子なの?盗賊なのに?!」


「ん〜ちょっと違うなぁ…まぁ、似たようなもんだけど」


この教会は孤児院も担っていて身寄りのない多くの孤児を養っているそうで、ニールもその内の1人なんだそうだ。


「あ!そう言えば何で置いてったのさ!お陰で大変なことになっちゃったよ!!」


「ごめんてー、俺あの騎士団長様が苦手でさー。でもまさか妹姫様誘拐しちゃうとはなーもうそこら中兵士が走り回ってたぜ!」


「ヒェ…やっぱりもうバレてるのね…ホントどうしよう…」


「まぁ、俺も協力するからとりあえず捕まってから何があったか聞かせてくれよ」


食堂までの道中で私はニールに投獄されてからの経緯を説明した。丁度話終わったと同時に食堂に着き、食欲をそそる香ばしい匂いにお腹が鳴る。



「おっ、丁度いいタイミング!飯が出来上がったからノドカちゃんも食べるっすよ」


おたまを持ったエプロン姿のヤス先輩が手際よくすでに姫様とヨルン神父が陣取っているテーブルに私とニールの分の食事を用意してくれる。

焼き飯に野菜炒め、中華風スープとシンプルなそれらは懐かしい中華な香りがして食欲をそそられる。

投獄されてから何も食べてない胃には効く匂いだ。


「ワルツさんとこでも家事手伝いで忙しい身っすからね!料理には自信あるっすよ!」


今日リーゼンフェルトにやって来たのも買い出しの用事があったためらしく、主夫ヤンキーの飯は大層美味で、あっという間に平らげてしまった。

本場の中華料理に似た味で五臓六腑に染み渡る美味さに感動していると、そっと胡麻団子に似たデザートまで出てくるサービスの良さにヤス先輩へのリスペクトが止まらない。

ワルツさんのところでも手放せない優秀な人材であることが容易に想像出来る。

ちなみにワルツさんとノワール君はジルベルトさんの所に行ったらしい。よく突っかかりに行く人だ。



「それじゃあ、お腹も満たせたところでどうしようか考えるっすよ」


使用済みの皿洗いまでしっかりとこなしたヤス先輩が温かい紅茶の入ったカップをそれぞれに手渡しながら切り出した。


「普通に早く街から離れた方がいいのではないですか?」


「それは無理だぜ、ヨルン〜。街中も出入り口も兵士だらけだぜ」


「しかもノドカちゃんはお姫様の計画も手伝ってあげなきゃいけないんすよね?」


「そうよ!最終的にはマクシムに助けに来てもらわないとダメなんだからね!」


姫様のお言葉で全員が黙りこくってしまった。

ぶっちゃけ逃げるのは皆の協力があればどうにかなりそうだけど、このお姫様の要望が鬼門だ。


「うーっ!ジルベルトさんから貰った魔法アイテムがあればなぁー…」


「んじゃあー…いっそ取りに行けばいいんじゃねー?」


「ニール君…ふざけてるの…?」


「いや〜だって逃げられないんじゃどこにいても一緒じゃん?ならいっそカミルも姫様もいる状況で王様にでも話通したらいいんじゃね?」


はははと他人事だと思って笑うニールにヨルン神父のゲンコツが下る。

しかしこのまま私が逃げれば姫様誘拐は真実となり、私を庇ってくれたカミルの立場も悪くなるだろう。

ニールの言う通り逃げてもダメならばいっそのこと突撃した方がいいかもしれない。

問題を起こした時は拗れる前に早く謝りに行く方が事を大きくしなくて済む。

それにカミルのことも放っては置けないし、大事な荷物一式取り戻さないとだ。



「うん!とりあえずカミルに会いに行くか!」


そう決断した私に言い出しっぺのニール含めた全員が面食らったように驚いている。

結局のところ作戦らしい作戦じゃないし、自ら捕まりに行くようなものだから呆れられてもしょうがない。


「ジルベルトさんの協力があってそう言うんならともかく、ノドカちゃんアホっすよねー…でもまぁ手伝ってあげるっすよ」


「いや〜ホント魔法でも使えたら良かったけど、まぁ何とかなりますよ!多分!」


「姉ちゃんのそーゆーとこ嫌いじゃないぜ。城には俺が連れてってやるよ」


流石の盗賊業を営んでいるだけあってニールは自信満々で頼りになりそうだ。

姫様的にはどうかと訊ねれば『そうね…そっちの方がマクシムと遭遇しやすいかも?』とエンカウント率を気にしていた。


「姫サマの要望にお応えするなら向かう最中、適度に兵士から逃げつつ城に行くっすよ!」


「それなら確実にマクシムに伝わるわね!採用っ!!」


なんてヤス先輩のとんでもない提案に姫様が即座に食いついた。

こうなったらもうどうにでもなれと皆の案を聞いていた。


無事に作戦会議を終えたところでちょっとした準備をする間、手持ち無沙汰になった私はヤス先輩の作った胡麻団子をつまみながらフォルカさんを捜していた。

教会を出て行ってから姿が見えず、もう家に帰ったのかなと少し心配になった。


「フォルカさーん?」


人目を気にしつつ、外の教会横の広場を見回すが、子供達が遊ぶだろう遊具やスコップが刺さったままの小さな畑、その横の倉庫近くに脚立や教会の屋根まで届く梯子があるだけで彼の姿はない。

次に教会の周りをぐるっと回りながら正面の扉まで来る。


「フォルカさーん…?」


そこにも彼の姿はなく、キョロキョロと辺りを見回す。

本当に帰っちゃったのかな…ちょっと寂しい。

そんな風に寂しくなっている私の前にふわりと見慣れた黒い羽根が舞い落ちる。

その漆黒の羽根を手に取り、私は教会の上を見上げた。

見上げた先には月を背に屋根の上に座って夜空を見上げる人影を見つける。天使のような翼を背中に携えたそのシルエットに安心して私は直ぐに広場に向かった。

屋根の修理でもしてたのか、丁度屋根にかかる梯子を上って屋根に上がる。

結構な高度と、三角屋根の足場の悪さに内心ビビりながらしっかりと視認できるようになったフォルカさんに近づいた。



「フォルカさーん!捜しましたよ!」


「………」


私が声をかけても返事をせず、ただ横目に私を見やるフォルカさんの反応はいつもの事なのでめげない。

遠慮なく彼の隣に座ると一瞬嫌そうな顔をされたが、私のライフはまだ大丈夫だ。めげないぞ!


「作戦会議した結果、またお城に行くことにしました!」


「……馬鹿なの?」


「いや、色々考えて決めたんですからね!聞いてくださいよ!」


と一方的にフォルカさんに作戦内容と目的を伝えた結果、彼の呆れ顔にため息が加わってしまった。




「やっぱ馬鹿じゃんか。呆れた」


と心底呆れたように吐き捨てるフォルカさんはおもむろに私が持っていた胡麻団子入りの容器を取り上げた。

そして私から取り上げたにも関わらず、我が物顔でぱくぱく団子を食べ始める。


「あー!私が持ってきたのに…」


「うるさいなー…今日の迷惑料ね。……結構美味いじゃん」


「…あぁー… 団子…」


次々となくなる団子を悲しい気持ちで見つめつつも、フォルカさんがいつものように不遜な態度に戻ってちょっと安心した。

虐められたいわけではないが、しんみりしたフォルカさんを見ているのは調子が狂うのでいつもみたく不穏な笑みを浮かべる方がいい。



「ほら」


よかったよかったと1人で頷いているとフォルカさんが急に声をかけてきた。

私が振り向くと勝手に私の手を取り、ポンと団子を食べ尽くした彼は容器を返却してきた。

そーゆーことする!?と吃驚してフォルカさんを見ると、彼はもう一度容器に手を添えた。


「えぇ何すかコレ…抜け毛?」


「お前、張っ倒すぞ」


「えぇ…だって」


容器にふんわりと乗った3枚の黒い羽根を見てやっぱり抜け毛だと思う。



「抜け毛じゃないからぁ!!何も出来ないお前にちょっとした魔法アイテムを恵んでやってるの!わかるかなぁー!?」


考えを見透かされたのか、容赦なくバシバシ頭を叩いてくるフォルカさんは怒りつつも羽根の使い方を教えてくれた。

この黒い羽根を空にかざして念じれば一時的に空を飛べるそうだ。ただし使用者1人のみと色々制限があるとの事だ。


「せいぜい大事使うことだね!僕は帰るからっ!!」


プンスカ怒りながら翼を大きく広げて飛び立つフォルカさんを私は慌てて羽根を引っ張って止める。


「ちょっと!痛いんだけどっ!?さっきからふざけてんの?」


「ふざけてません!あの、ありがとうございます!私もすぐ帰りますからね!」


それだけ伝えてバサバサ羽ばたく翼を放すと彼は一度私を見た後に夜空に舞い上がっていった。

『おやすみなさーい』と遠ざかる背中が見えなくなるまで手を振り、容器の黒い羽根を見つめて私は決意を新たにした。




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