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第二話 自己PR

「こんにちは。三光商事総務部長の永井と申します」

「同じく、総務部の大石と申します」

 40歳代の男性、永井さんと20歳代の総務部人事担当の大石さんは花田さんにあいさつをした。

「お世話になっております。このたび、花田和人様の面接の機会を頂きありがとうございます。是非、花田様に貴社のご案内をお願いしたく存じます。よろしくお願いします」

 僕がそう言うと、永井さんに着座を促された。

 面接が始まる。永井さんがまず口火を切った。

「さて、花田さんにいろいろご質問をさせていただけばと思いますが・・・その前に、簡単で結構ですので、自己紹介をしていただけますか」

「はい。私は地元の高校の普通科を卒業して、東京にある4年制大学の経済学部に入学しました。この大学に進んだのは、東京で住んでみたいという憧れがあったのと、私の親戚のいとこがこの大学の卒業生で、結構研究とか、課外活動とか、就職サポートに力を入れていていい大学だと聞いていまして、同じくらいの偏差値の大学も併願して他に2校合格していたのですが、結局ここに決めました」

見たところ、花田さんは極度に緊張していることはなさそうだ。いい感じに見えた。

「その後、就職活動ではメーカーに興味があったので、10数社、機械や自動車などの関連のメーカーを中心に受けて、その中で内定をいただいたフタムラプレスに入社しました。入社後は1ヶ月ほどの現場研修の後、営業部に配属され、主に自動車部品メーカーにモーターやエンジンを構成しているプレス部品の営業をしてきました。今年で5年目になります」

「へええ。フタムラプレスさんといえば、多品種の精密部品を生産している、技術力のある会社さんやで。大手の完成車メーカーにも一部、直接卸している製品もあるくらいや。知っとるか?」

 永井さんが大石さんに話を振ると、大石さんは首を傾げて知りませんという合図をした。

「とにかく安定したええ会社や。最近も増収増益してるんじゃないか。うちみたいにビルだけでかくてなんかあったらわからない、風が吹けば飛んでいきそうな会社じゃないぞ」

 皆、永井さんの話に苦笑いを浮かべた。永井さんは基本的に明るくて、気さくな人だが、冗談のつもりでこういう自社の自虐的な話をする。大石さんはそんなことないですよ、と他の3人に小声でフォローを入れた。無論三光商事自体もそんな財務体質とか、収益のバランスが悪い会社ではない。産業機械の商社として、あらゆるメーカーのニーズに長年応えてきた会社だ。未上場の会社だが、やろうと思えば上場だってできる力もある。

「それでや、なんでそんなええ会社を辞めようと思ったん?」

 永井さんが顔を上げ、視線を履歴書から花田さんに再び移した。永井さんが花田さんの現職をいい会社だという認識がある分だけ、退職することを不思議そうに思っているようだった。それだけに、この質問は相手を納得させられる回答が求められるはずだ。一つ、この面接の山場を迎えた。



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