どうしても、好きだから。
お呼びですか? ご主人サマ
そして今に至る。
あー。夢か。。。
必死に美優は目をこする。
しかしいくらこすっても目の前の現実からは、逃げることはできない。
「あの、どなた? 」
美優は、「これは夢だよ」と言って
もらえるように、期待を込めて聞いた。
「俺? 美優のペット……みたいな? 」
だめだ。
美優は頭を抱えながら、そう思った。
「な、なによあんた!? 」
相変わらず女生徒たちは、ワーワー
叫んでいる。
「なぁに? 子猫ちゃんたち。
あのさ、あんまり美優のことは
イジメないでね? 」
この、自称私のペットの男は、
笑顔で女生徒たちに言った。
「キャ、キャァーーー!」
ん? 今のは、何のキャァーなの?
「か、カッコイィ!」
そ、そっちかよ!
てっきり、狼みたいなのが喋った!? とかだと思った。
「きょ、今日はこのぐらいにしといてあげるわよ!つ、次こそは……、
そ、その人のメアドを教えなさい!」
は? 今のなに?
美優は、不安を隠せないような
表情で、固まった。
「み、ゆ、う? 」
「ひぇ!」
「ひぇ!ってなにさ」
相変わらず、美青年やな!
そう美優は、心の中で思った。
まだ美優は、この気持ちには
気づいていなかった。
そして、この美優に対する
美青年の気持ちも。
「あ、あんた何者よ!」
「だ、か、ら、俺は美優のペット!」
多分、こうゆーのって、普通は理解に2日はかかるだろう。
なので、2日後……。
「つまり、あなたは私のペットなのね? 」
「そうって言ってるじゃん」
美優は、
「一言そういうだけで
理解ができる天才がどこにいるんだよ!」と思った。
「これから、怖いことがあったら、俺に言ってよ!」
「う、うん……」
美優は曖昧に頷いた。
「なんで私? 」
「ん? なにが? 」
「だから、麻妃だっているじゃん!」
「あー。天堂麻妃? 」
「そう!」
美優は少し怒り気味で怒鳴った。
「美優じゃなきゃ、だめなんだよ」
「な、なんで? 」
ードキッー
「だって、美優が一番泣き虫なんだもん」
一瞬でもトキめいた私が馬鹿だった。
「ねぇ、美優、今日保育園の日でしょ? いつも思うんだけど、なんで
保育園行かないの? 」
「……。靴がなくなるの」
美優は、悲しそうな表情で
そう言った。
「え!? 」
「靴も、カバンも、ぜぇんぶ無くなっちゃう」
「それって、イジメじゃん!」
そう言ったのは、子供の頃の
美青年である。
「うん……」
「い、急いで保育園行くよ!」
「え!」
美優は、困った顔で、また、嫌そうな顔で否定した。
「だめ!行く!」
「ここ? 」
子供の頃の美青年は、保育園を
指差して、美優に問いかけた。
「そう」
そこには、『夢見保育園』と、
でかでかと書いてある。
「し、失礼します」
「あ、あれま、これはとんだ
美青年が来たもんだ。
まだ小さいけど、こりゃ、
将来すごくカッコよくなるよ!」
保育園のおばさんらしき人は、
子供の頃の美青年をみるなり、
そう言った。
「で……、そのうしろにいるのは……、み、美優ちゃんね。
もう来なくていいと、この前言っただろう? 」
そのおばさんの言葉に、
子供の頃の美青年は、大きく目を見開き、驚いた表情をした。
「まぁ、そんな美青年を連れて
来てくれるなら、話は別……」
「あぁ? 」
子供の頃の美青年は、おばさんを
睨みつけた。
「え? 」
「来んな? それを決めていいのは、
ばばあ、てめぇじゃねぇよ!」
「へ? 」
おばさんは、突然のことに、
全く反応ができなかった。
「勝手にきめつけてんじゃねぇよ!」
「な、な、な、」
おばさんは、驚きすぎて、
後ずさりをした。
「ふん。いこーぜ、美優」
「う、うん」
美優たちは、ズカズカと保育園に
入っていった。
ガラガラ。
保育園内は普通だ。
子供も、どこにでもいそうな子、ばかりだ。
「あぁー!美優だ!それと、
か、かっこいい子もいる!」
「え? どれどれ? 」
保育園内の子供は、一斉に
玄関に集まって来た。
「おい、てめぇらどけ。
ねぇ、美優、いじめて来た子の名前、
わかる? 」
「絵無ちゃんと、早ちゃん」
美優の手は、細かく震えていた。
「えなと、はや? オッケー。
おい!絵無!早!」
その、絵無と早とみられる子供は、
走って子供の頃の美青年の近くに来た。
「はぁい? お呼び? やっぱり、
私って可愛いから、違う保育園にも
私の名前が知られていたのねぇ」
絵無は、お嬢様ぶりながら、
甲高い声で言った。
「えぇ? なに? 私にも用があるのぉ? いいよ!私、いい子だから、
要件聞いてあげる!」
早も、可愛こぶりながら、
言った。
「……、こっちこい」
「なぁに? 」
「どぉしたのぉ? 」
絵無と早は、まだ声を作って、
可愛こぶっている。
「おい、そのキモい声、ねじ伏せて
やろうか? 」
「な、キモい声ぇ? 」
「ひどぉい!」
絵無は、声を作るのをやめ、
素の声で、怒り気味で言い、
早は、相変わらず声を作りながら、
嘘泣きをした。
「……、キメェ。
そんなことよりよぉ? てめぇら、
美優のいろんなもの、隠してるん
だってなぁ? 」
「そうだったらなに? 」
絵無は、完ぺきに声を作るのをやめていた。
「あ? ざけんな!」
バチン!
嫌な音が、園庭に響きわたった。
「痛!」
「てめぇ、ふざけんな!
人のこといじめといて、
『それがなに? 』だぁ?
てめぇ、この、人間のドクズが!」
絵無は、頬を抑えながら、半泣きに
なった。
「こ、これからよ!」
そう、意味深のことを叫びながら、
2人は逃げていった。
「もう大丈夫!」
「ありがとう……」
美優は、手はまだ少し震えていたが、
ニッコリと笑顔を見せた。
しかし、これから、
とても恐ろしい悲劇が起こった。
ー美優の母親が死んだのだー
原因は事故。
赤信号を、2人の保育園生が通り、
それを避けようとしたところ、
曲がり角からきたトラックに当たり、
死んだ。
その2人に、美優たちは
思い当たる人がいた。
「お、お母さん……!」
美優は、号泣した。
「み、美優!ごめん!俺が助けられなくて!俺が、絵無なんかを
相手にしなかったら、こんなことにならなかったのに!」
そう。その2人とは、、、
絵無と早。
絵無と早は、美優の方を見て、
ニヤリと笑った。
その顔を見て、美優は
泣きじゃくった。
「このこと、覚えてる? 」
「ううん。ショックで覚えてない」
「そっか」
そこから、長時間の沈黙が続いた。
「もう、今の俺なら絶対にこんなことにさせない」
「え? 」
「俺は美優のペットなんかじゃない!
俺は、み、美優が好きだ!
どうしようもなく好きだ!
どんなに頑張っても、
どんなことと交換しようとも、
この気持ちだけは変わらない!」
美優は、目をまん丸くし、
そしてすぐに顔を真っ赤に染めた。
「私も!」
美優は、顔を隠しながら、そう言った。




