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狼とJKの恋物語  作者: クールホーク
1/4

ご主人様を、お守りします!

「お呼びですか? ご主人サマ」

歳は、16、17ぐらい? なのに声は幼い。

そしてこいつは黒猫……いや、狼のようだ。

黄色い瞳にふっさりとした尻尾と耳。ひげも立派に生えている。


ーまって、理解できないー


〜1日前〜


「やっば……部屋が汚すぎる……マジ笑えない……」

16歳になった、平塚美優ひらつか みゆうは、部屋の様子に絶句した。

「よし!かたずけるか」


「ん?なにこれ」

美優の手元には、ほこりかぶったCDらしきものと、ふえがある。

「これは……? このCD、まだ使えるのかなぁ」

美優はテレビの電源を入れ、CDを見てみた。


「ねぇ美優、僕、もう『おひっこし』しないといけないんだ」

「なぁに? 『おひっこし』って」「違うとこに住むことだよ」

「違うとこってどこ? 」「もう、美優は心配さんだなぁ。そんな心配しなくていいんだよ」

「美優は心配さんじゃないもん!」「ははは、ゴメンゴメン。そんな怒んないでよ〜」

「裕ちゃんがイジワルするから怒るの!」

「ゴメンね。そのかわり、いいものあげるね」

「いいもの!? 」「そう」「早くちょうだい!」「いいよ。はい、どうぞ」

「なにこれ? ふえ? 」「そう、ふえだよ」「なにに使うの? 」

「もし、美優が誰かに嫌なことされたら、このふえを吹いてね」

「このふえ吹けばいいの? 」「そうだよ。だけどなにもないときは吹かないでね!」

「わかった!美優、裕ちゃんの言うこと守る〜!」「うん、良い子!」


「え?美……優? うちの名前……。てか、裕ちゃんって誰? 引っ越し? 全く

記憶にないんだけど。。。多分そのふえってこのふえだよね。」

美優は、自分の手の上のふえをじっと見つめた。

「ちょっと明日、麻妃に裕ちゃんって人のこと聞いてみよ」

天堂麻妃てんどう まきは、

平塚美優の幼馴染だ。

「でもその前にお父さんに聞いてみよう」

美優の母親は、美優が5歳の時に、亡くなった。

「ううっ……。お母さんのことは思い出すのはやめよう。それより、早くお父さんに聞いてこよう」


「え? 裕ちゃん? だれだそれ」「え? お父さんも裕ちゃんって人知らないの? 」

「うん。わるいね」「いや、いいんだけどさ」

(そっかー……。お父さんも知らないなら、もう誰もわかんないだろうなぁ)


〜次の日〜


「ねぇ麻妃〜」「なに? 」「あのさ、裕ちゃんって人、聞いたことある? 」

「裕ちゃん……? ゴメン。聞いたことないわ」

「えーマジで!? 麻妃が聞いたことないなら、だれに聞けばいいんだろ」

「そのふえってのをふけばくるんじゃん? 」

麻妃は得意げな様子で言った。

「ふえなんて……。こんな時間経ってんのに来るわけないて」

「う……ん。まあそうかぁ」

美優と麻妃は風船がしぼんだようにガックリしてしまった……

「まあ、もうその裕ちゃんってのは忘れるわ」

「なんか役に立てなくてゴメンね」

「いいよ。それより話聞いてくれてありがとね」

「いいよ別に」

「ねぇ、なに話してんの?」

「あっ、克樹!」

藤井克樹ふじい かつきは、美優、麻妃の幼馴染だ。

「克樹のこと忘れてたわ〜」

「ひどいなぁ、このクラス1の美男子の俺を忘れるなんて」

「まあ、否定はしないが……」

「あのさ、裕ちゃんって、知ってる?どうせ克樹に聞いても無駄だけど」

「あぁ〜、裕也のこと? 」

「えっ、嘘!知ってんの!? 裕也? 」

「うん。裕也。もしかして忘れてたの!? 美優にかぎってはよく、『裕ちゃん、裕ちゃん』って言ってたのに? 」

「うっそ! 」

美優は目をまん丸くした。

「なんで克樹知ってんの!? 」

麻妃も驚いた様子で聞いた。

「だって、よく美優と俺で裕也と遊んだじゃん」

「じゃあ、克樹も、このふえもらった?」

美優はふえを取り出した。

「なにそれ? そんなのもらってないよ」

「えっ? ウソ〜!なんで私だけ? 」

「知らないよ。けどまあお前が特別なんじゃん? じゃあもう俺遊んでくるわ。じゃあな」


「うん……実に不思議だ」

「ねえ、あんたなんなの? 」

急に美優の背後から声がした。

「は? 」

「は?じゃねぇよ。あんたさ、なに克樹君と仲良くしてんの? 」

「だって幼馴染だし、話したいことがあったから……」

バチンッ

美優は、思い切りほほを叩かれた。

「いっ……」

「キモい声出してんじゃねぇよ。一回叩いたぐらいでさ(笑)」

(キモい声だぁ〜!? あんたらが叩いてきたからだろうがよお!ったく。ホンットにくだらないな)

「おい、無言になってんじゃねえよ」

「なら言わせてもらうけどねえ、

『男と喋るくらいいいじゃんか。そんなのも許せないあんたらって、

どんだけ心狭いんだよ』はい。言いましたけどなにか? 」

「はぁ〜!? うちらに逆らうわけ? 意味不!マジムカつくわ」

バシャァ

「んっ……。み、水? 」

「はっ!バーカ!うちらに逆らうとこうなんだよ!こうされるの嫌なら

うちらに逆らうな!」

「……」

「ははは!!こいつ、これだけで黙って喋れなくなってるよ〜」

「は?マジ? ダサ(笑)」「超ウケるし」「まあ、こいつはこのぐらいがちょうどいいんじゃん? 」「ねえ、いっその事もっとイジメよ!靴汚したり、ノート破ったり」

「いや、それだけじゃ甘いよ!毎日こいつん家に電話してやんない?

あの、イタ電ってやつ? ww」

「いいね、それけっさく!」

女生徒たちは、様々な暴言を吐き、何度も殴る、蹴るを繰り返した。

(ちっ。そろそろマジで傷んできそう。身も心も。……。一か八かで、ふえを……)

美優はそう心の中でいい、ポケットからふえを取り出した。

「あぁん? なにモゾモゾしてんだよ!ちゃんと身をわきまえろよ!」

バキッ

「ッ……!」

「ん?こいつ手になに持ってんの? 」「ふえじゃん? 」「は? なんで? 意味わかんらん」


「よ……し」

ピィーー!!

ふえの高い音が学校の裏庭中に広がる。


「お呼びですか? ご主人サマ」

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