ベアの冒険①
「じゃ、行ってくるね!!」
『ベア、大丈夫?』
心配そうに苺ちゃんが、私を見ている。
「大丈夫だよ。少しの時間だし。」
そう、さっきから何を話しているのかというと…私1人で冒険するの。
買い物ぐらいで、冒険って大げさかな…とも思ったけど。
玄関のドアを開けて、外へ出た。
目的地に早く行かないと…。
ぬいぐるみは、バスに乗れないから歩くしかない。
30分ぐらい歩くと、疲れてしまった。
道路には、座れないからどこか場所を探そうとしていた時…“それ”はいた。
『ワンワン…ワンっ!!』
この声は…、苺ちゃんが気を付けなさいって言っていたものだ。
前を見ると、茶色い犬が私を見て吠えている。
うわぁ…どうしよう。
逃げたら、追ってくるし…どうしたら良いの?
私は、犬を見ながらじりじりと後ろに下がった。
そしたら、犬も一緒に来る…。
ずっと、このままなんていやだよ…と思っていた時に、誰か現れた。
『ほら、これあげるから…。』
そう言って、犬に何かを渡している。
すると、犬はそれをくわえてどこかに行ってしまった。
犬に襲われなくて良かった…と思い、道路に座りこんだ私。
『キミ、大丈夫?』
私を助けてくれた人が、きれいな声で私に聞いてきた。
「…はい。ありがとうございます。だけど、びっくりされないんですか?」
『えっ、何を?』
キョトンとしながら、そう聞いてきた男の人。
20代くらいで、苺ちゃんの従兄弟の夏音ちゃんと同じくらいだなぁ…と顔を見ながら、思った。
「その、私が話せたり動ける事です。」
『うん、平気だよ。俺、そういうの何とも思わないし…。それに、新聞記者に言ったりしないよ。』
この人は、何て素敵な人なんだろう…と思った。
私が思っていた事を全て、答えてくれた。
「あ…ありがとうございます。さっきは、本当に助かりました。」
『敬語じゃなくて、大丈夫だよ。どこかに、行こうとしてたんでしょ…?』
「あっ、じゃあ…。私の大好きな人の為に、買い物をしようと思ってて。」
『そうなんだ。俺も今、買い物に行こうとしてたんだ。そしたら、キミがいたんだよ。
そういえば、名前は何?』
「あっ、私の名前はMoon Bearっていうの。皆からは、ベアって呼ばれてる。あなたは…?」
『へぇ、ベアっていうんだ。俺は、深瀬 翔。』
「深瀬さんっていうんだ。よろしくね。」
『うん、よろしく。』
「さて、私は買い物に行かなくちゃ。」
『あっ、一緒に行こうよ。ぬいぐるみだけだと、大変でしょ?』
「えっ、いいのっ!?デパートまで、行きたいの。」
『ベア、デパートまでってかなりあるだろ。
歩いてたら、日が暮れちゃうよ…。』
「うん…。」
『よし、それじゃ行くか。俺、今日バスで行こうとしてたから、バッグ大きいの持ってるよ。入る?』
「うん。よろしくね。」
そして私は、深瀬さんとデパートに行く事になった。