外伝ぽく、気を抜いて
20XX年10月22日土曜日
7時にララが起こしてくれる。もう手錠はなくなっていた。
コエプコン社が個別のカウンセリングと緊急集会を開く。
完全5日制で土日は授業も仕事も行われない。土曜の午前中は社会参加と違って、ロボット達から公共ボランティアを入れられている。近くの公園の草刈りや掃除を行う。
H世代が皆でてきて場所が振り分けられる、実質は1時間程度である。昨日テロにみまわれるという事件があったから公共ボランティアは中止、上は社長から下は末端の清掃員まで、政府主導のカウンセリングAIの質問に答えてPTSD(心的ストレス障害)のレベルを調べた。
勇者から電話があった。昼飯でA5の肉をおごりたいと言ってくる。了解した。
緊急集会と言うがコエプコン社の社長の演説が配信された。ウェアラブルコンピューターで見れる、演説を聞きながら、僕とララはでかける段取りをした。演説の内容は僕達は産まれながらの勝組でエリート意識というか、選民思想を植えつけようとしていた。魔下 耕世のようなテロリストにはそれがうらやましいからテロをおこすのだ。それも一面の真実であるがアジテーションタップリで哲学的でない。
龍先生が武士道について講義を行う。
コエプコン社も龍先生も僕だけは免除していいとララに連絡がはいった。実技もあるのだろうか?
僕は強いしみんなには嫌われていた。
関節技のコースや急所の位置は人間毎に違っている。たくさんの人と練習しなくてはいけない。間合いには魔がいる、自分の攻撃のリーチを把握しながら距離の取り方を探るのも、後天的に学習しなくてはならない。
相手を実験台にする。色々と研究する。
ボッチだらけのH世代ならともかく、予定調和やお約束がまんえんしている他の世代と、特に上の世代とはうまくいかなかった。
武道の授業で僕の顔を見ると、青ざめる者や嫌な顔をするもの多数でてくる。龍先生がお前が惻隠の情をもって高みから降りてこないから、みな武道の授業を選択してくれない。嘆いていた。
「マスターがイマイチ溶け込めない理由がわかった」ララが口にした。一匹狼と言えば格好いいが、精子の影響を強く受けた、ただのボッチである。
『私は集団にいる時程、孤独を感じる』
自分以外の何かを演じて群れるのは嫌いだ。
招かれてないのに顔を出すわけにはいかない。ララと一緒に世界が憧れる未来都市コエプコンを巡る事にした。
経済特区である都市コエプコンはタクシーにドライバーがいない。それどころかハンドルもついてない。イスの配置も前が後ろを向いている、ララと向かい合って座った。都市内部だけならアメリカのような自動運転が認められている(自動運転車は道徳哲学における「トロッコ問題」-そのまま進めば子供をひくが、ハンドルを切れば搭乗者が確実に死ぬ場合-人工知能は反射反応が遅いのではない、状況を冷静に判断して命令を確実に実行する。哲学議論は答えがでないと曖昧にせずに、優先順位を突き詰める知的なタフさが欧米にはある)自動運転ではあるが悪意ある人間のハッキングに備えて、1トンの鉄塊が50キロで暴走しないようアクティブ・セーフティが最優先事項として内蔵AIのプログラムに書かれ、車個体につけられたセンサーが周囲の環境(望むなら横の画面で鳥のように車を上から見るように再構成される)や交通にダメージを与えると判断した時は緊急停止をする。エアフリーコンセプト(非空気入りタイヤ)とよばれる「パンクしないタイヤ」空気が入ったゴムチューブの代わりに、タイヤ表面のゴムと中心部のホイールの間に、板状で少し波打った特殊な形をした樹脂製スポークが張り巡らせている。釘などが刺さって空気が抜ける事がない、樹脂製スポークはタイヤの内側と外側に60本ずつ、合計120本。高い強度をほこりながら、柔軟性を持っており、車の重量をしっかり支えながら、路面からの衝撃は0であり、移動中ウェアラブルコンピュータでゲームができる。
「いらしゃいませ、どこまで行かれますか?」「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています」タクシーAIが声をかけてくる。情報通信と情報工学により車同士が会話するだけでなく、各種の交通インフラともリンクしていて、コエプコンの中央交通制御室が目的や緊急度を判断して、道路を振り分け渋滞が起きないようにしている。
電気自動車は規格化をねらい特許を公開して無償提供したが、燃料電池自動車(水素自動車)は最先端技術はブラックボックス化した。日本のモノ作りは1990〜2000年代のポスト冷戦が始まると賃金が20分の1という中国が現れ、同時に第三次産業革命がおこり、ブレトンウッズ体制の切り下げから変動為替に移行し、数々の産業が国外に脱出し空洞化が起き、新興国による低賃金による人海戦術と産業スパイを含む公開情報のキャッチアップが始まった。日本に残った会社はカイゼンを行い、設備を改良し単位時間当たりの生産力あげることで乗り切った。諸外国では生産効率をあげると解雇がおこると経営者との間に信頼がなく、日本のモノ作りの現場は効率をあげても社長が新しい仕事を取ってくると信じてバタ狂いしながら必死に頑張った。人工減少によるボトルネックも孤立化型アンドロイド(人間型ロボット)の導入で乗り切った(ブラックボックスのデータはインターネットを経由せずにVPNなどの専用回線をつなぎ情報を守った。組み込みようOSはTRON(プログラムの起動で優先順位がある)で各社非公開にし、アンドロイドでも使われるLinuxは公開にした)。現場の人達は名前をつけて可愛がっている。
家電製品は構造と機能が1対1対応ですっきりしている「組合せ基本設計思想」で中国、朝鮮、ASEANにかったぱしにやられたが、構造と機能が多対多対応で因果知識や固有技術がたくさんいる「擦り合わせ基本設計思想」では自動車などは一歩も譲らなかった。アメリカは生産はベルトコンベア式で野球の編成と同じだが、日本はセル組立型で個人や少数のチームが完成まで受け持つサッカー型だ。
アメリカはエンジンの圧力ネジをインターネットオークションにかけたが日本の下請け業者も参戦したが、値段が合わなくて早々に撤退。中国の会社が落札したが、中国製の圧力ネジは3年持たない、中古車市場で日本車は40%落ちで引き取ってもらえるがアメリカ車は70%落ちまで下落した。中古車で売ることまで視野に入れた購買層がみな日本車に流れた。
中小企業の部品メーカーは外は「モジュラー」で中は「インテグラル」で対抗した。集積回路は中国や朝鮮にコピーされたが基礎工業力がいるコンデンサーなどはコピーされなかった。日本の企業は商品がいかに使われているか追跡調査をして、建設機械などは転売情報まで入手していたが、諸外国はペタの情報を超えるがビッグデータが活用できるようになって商品の追跡調査を行うようになった。もともとはある程度のサンプリングデータを元に母集団の情報を類推する統計学が使われていたが、今では母集団の情報をわしづかみにしてAIによるビッグデータ分析。統計学は欧米でも衰退した。「クローズ」「緻密」「すり合わせ」「自己完結」「ギャランティ」を尊ぶ日本社会(誰が責任があるかガバナンスがいる、オープンイノベーションのスマートフォンや、分権的なスマートグリッド(小規模発電やコストの最小化)ではコテンパンにやられた。コレコレという技術をどう使い、これからの社会はどうあるべきか、哲学的な思考がいる出口戦略も弱い)、日本中小企業にも何か異質なもの(世界統一規格による世界全工場並列処理)が近づいてきていた。
労働集約的な製品(貿易材)の労働力が多い国が得意とし、資本集約的な製品(貿易材)は資本の多い国が得意とし、調整集約的な製品(貿易材)は調整能力の高い日本の工場現場が得意とした。
最後のフロンティア・アフリカまで開発がすむと労働者の賃金もグローバル化してどの国でも高騰した。日本の工場による逆キャッチアップがおき、同じ給料でも日本の現場が生産能力と品質管理と納期で圧倒した。
経済取引は相手を信頼しないと成り立たない。国家が商法など法制度、不動産などの登記システム、格付け、消費者保護制度など整備してないと国際貿易ができない。朝鮮は法の上に反日がくるし、中国は共産党の都合で法を変え、工場が撤退する時「社員の生涯賃金を保証しろ」と言ってくる。信頼性の欠如が昔から大きな問題だった。
僕達はコエプコンチルドレン達の居住区から離れたコエプコン社が主催する、常設の未来技術パビリオンを見学する事にした。昨日打ったタミフルは3日ぐらい効果が持続する。下界との接点であり、黒づくめの学生服の社会科見学の学生が列を作っている。なんとなく笑えてくる。日教組が強い所は原爆ドームを見学に行き、開明的な学校はコエプコン社にくる。
まずはコエプコンの食を支えるミドリムシ館に入場した、ララがwifiにつながっていてコンパニオンも勤めてくれる。ミドリムシは単細胞生物で光合成をする植物であり、移動する動物の要素も持っている。豊富な栄養素を持っていて、その数はなんと59種類(14種類のビタミン、8種類のミネラル、9種類のアミノ酸、9種類の必須アミノ酸、10種類の不飽和脂肪酸、βーグルカンやクロロフィルといった7種類のその他)。優れた光合成能力で二酸化炭素を効率よく吸収、地球温暖化防止に貢献(アマゾンの密林は違法伐採で狩り尽くされ「世界の肺」を失った、世界の平均気温は産業革命から2°C上昇し、動植物の種の30%が絶滅した)。バイオ燃料も創り出せる。藻類バイオ燃料は質が重めなのでマイナス50度になるジェットエンジンには向かない。藻類が油を7割供給できるのにミドリムシは3割程度だがメインターゲットは最寄りの福島空港発のジェット機である。コエプコン社が配給するプロテインダイエットのベースになっている。
津波による塩害を受けた、耕作放棄地は農地法の改正を受け、コエプコン社が買収しバイオの培養プールに改造して緑を蘇らせた。旺盛な繁殖力を持つ2種の藻を組み合わせてハイブリット増殖させて、炭化水素(石油)1リットル当たり60円を実現した。
ボトリコッカスの培養による、単位面積当たりで生産できるエネルギー量は同じバイオ燃料のトウモロコシの数百倍になる(トウモロコシは一粒が200個になる、小麦は4倍で、連作可能な米は40倍)。トウモロコシの利用は穀物価格が高騰につながる。作物の耕作面積を奪う。
ボトリコッカスという藻の品種改良をして従来の物より約1000倍の増殖能力を『榎本藻』が実現した。
藻は原始地球で紫外線に抵抗するために緑色になり、光合成をして酸素を地表に供給し、油をまとって浮き上がり光の届く所にとどまった。
琉球で発見されたオーランチキトリウムは、多くの藻類が乾燥重量当たりに創り出せる炭化水素(石油)の量は1%未満であるなかオーランチキトリウムは炭化水素を20%創り出せる。
オーランチキトリウムの増殖の速度は、ボトリコッカスが6日で2倍になるのに対して、わずか4時間で2倍になる。オイル生産効率はボトリコッカスの12倍。
オーランチキトリウムは光がなくても有機物を餌にして増殖する、従属栄養性藻類に属している。餌を常に与える必要があるが、24時間増産でき、日照時間が少なく、狭い日本でもうってつけ。
まず人間の生活廃水には有機物が豊富に含まれている。一次処理水としてオーランチキトリウムの餌にする、下水汚泥や食品工場の廃水も有機物を含む廃棄物になり、ほとんどオーランチキトリウムの餌になる。まずオーランチキトリウムで炭化水素を得る。次の二次処理水には窒素やリンが残されるので、今度はコレをガラス張りの天井(中国の放射能汚染や酸性雨対策)でボトリコッカスの培養に活用し、ここでまた炭化水素をつくる。窒素とリンが原因で起こるプランクトンの異常発生を防ぐ。
それでも残る残滓は家畜の飼料やメタン発酵の材料に利用、あるいは可液化してオーランチキトリウムの餌とする。
さらに残りは燃やすことになるが二酸化炭素はボトリコッカスの光合成に活用し、熱もオーランチキトリウムのタンクを温めるの活用する。
基本採掘された石油は沸点の低いものから「ガソリン留分」「灯油留分」「軽油留分」「残留」に蒸留され・LPガス(液化天然ガス)・ガソリン・ナフサ・エチレン・プロピレン・プタジエン・ベンゼン・トルエン・キシレン・灯油・ジェット機燃料・軽油・重油・潤滑油・アスファルトに分けられ、ナフサに至っては国内の需要をコンビナートの生成分では間に合わず輸入している。
炭化水素はエネルギーだけでなく石油製品の基礎となるエチレンが精製される。エチレンは合成繊維、塗料原料、洗剤原料、医薬品、エチレンと鉄があればたいていの物ができる。
例えば。
低密度ポリエチレン フィルム、電線被膜、ゴム袋、包装紙、ホース。
高密度ポリエチレン 成形品、パイプ、ポリバケツ、ポリタンク。
塩化ビニル 塩化ビニル樹脂、排水パイプ、文房具、ビニールハウス。
エチレンオキサイド 衣類、ペットボトル、ポリエステル繊維樹脂、酢酸エチル。
アセトアルデヒド 除光液、接着剤、塗料
スチレンモノマー ポリスチレン、合成ゴム、発泡スチロール、プラスチック。
それだけではなく、リビア東部(アメリカは中東を民族毎に国家を細分化して、新分割統治を戦略にしている)の重金属の含まない良質な石油からしか精製できない(ベネズエラが埋蔵量一位になった事があるが、重金属の混ざった悪質なドロドロの油だった)、F1の車体やジェット機のエンジンの噴出ノズルに欠かせない高性能炭素繊維(鉄と比較すると10倍の強度を持ち、剛性は役7倍でありながら、重さは4分に1という強くて軽い素材だが、日本の伝統技術の知識と経験が活かされ、炭素繊維を縦と横に織り込む技術が世界的に優れている)まで精製できた。コストを度外視すればの話だが。
次は野菜工場のパビリオンに入る。
人間一人を生かすのに約4haの耕地が必要だが、地球上に耕作可能な土地は300億haしかない、中国発の環境汚染や、焼畑農業や地球の砂漠化によって年々減ってきている。
LED照明を利用した植物工場の建設ラッシュが始まった。
始めはレタスだったが、いまでは中国発の放射能汚染の影響で根野菜や実のなる野菜でも値段が高騰し、コストが成り立つ、工場が安全意識の高い富裕層にインターネットによる直売を行っている。農業に株式会社が参入し農協はつぶれた(人工の産業従事者の構造がかわり、民自党の票田にならなくなったのも見捨てられた理由だ)。
工場内部は積み重ねられたアルミニウムの棚にみずみずしい野菜が規則正しく並んでいる。タネの植込み以外、人間を使うことはまったくなかった。
栽培ではまったく土を使わない、細かく砕いた石を土代わりに、肥料分を水に溶かした水耕栽培で育てられている。土を使った栽培では、水が土の中に必要以上に含まれてしまい、本来必要な分量より多くの水を与えなければならない。工場では肥料を溶かした水を循環させたり、霧状にして吹きかけたりして、水の使用量を、通常の100分の1にまで抑えている。
1キロのトウモロコシを生産するのに灌漑用水は1800リットルいる。牛肉1キロを生産するためには、その2万倍の灌漑用水が必要になる。日本のように食料を輸入している国が自国で作った場合、どれほどの水資源が必要かと仮想した物をバーチャルウォーターという。水資源は豊かであるが飼料などの輸入量は多く、バーチャルウォーターの問題では世界的な非難を受けている。コエプコンはせめて食用野菜だけでも自給できないかと考えている。
植物の生育に必要な光の波長は決まっている。レタスの場合、赤色LEDの光を浴びると、葉が柔らかくなり、苦味が少なくなって甘みが増す。さらに栄養価が高くなる。
植物毎に栽培に最も適した光の波長は決まっている。レタスの場合、最も美味しくなるのは660ナノメートル近辺の赤色、LEDは波長が選べるので、植物毎にベストな光で照らすことができる。さらに『パルス照射』といって、パッパッと高速点滅させながら光をあてる方が成長率が良くなり、電気の消費も抑えられて一石二鳥、蛍光灯に比べると消費電力を40%減らし、収穫量は50%アップできた。
トマトや世界初のインターフェロンイチゴがつくられている。インターフェロンとは体内にガンができたり、ウイルスが浸入すると分泌されるタンパク質で、抗ガン剤に使われているほど、腫瘍細胞やウイルスの増殖を抑える力が強い物質。これを作り出す遺伝子をイチゴに組み込んだ。かつては「青いバラ」とは不可能を現す言葉だったが、青い色素を持つデルフィニジンを精製する遺伝子をパンジーから抜き出して、バラに導入することに成功し、今では「青いバラ」は夢がかなうという意味に使われている。
また、アルカリ性の土壌では多くの植物が鉄分不足に陥る。土壌にある三価鉄(Fe3+)をうまく利用できないためだ。そこで、三価鉄を吸収する能力の高い大麦の遺伝子をイネやトウモロコシに導入して、アルカリ性の土壌でも生育しやすい作物が開発された。
またアフリカでタンパク質が70%を含むスピルリナという藻に目をつけた(牛肉の3倍以上の含有率)。スピルリナ(Spirulina)は、藍藻綱ユレモ目の幅 5-8μm、長さ 300-500μm ほどの「らせん形」をした濃緑色の単細胞微細藻類。約30億年前に出現した原核生物の仲間で、現在でも熱帯地方の湖に自生している。現地の人々の貴重な食糧源として利用されてきた。水温30-35℃の無機塩類濃度の高いアルカリ性(pH9-11)の水を好み、陸上植物と同じように酸素発生型光合成を行い増殖する。コエプコン社の培養槽で造られた培養液からの分離・濃縮工程では、スピルリナの大きさが0.3 - 0.5mmと大きいため、0.003 - 0.01mm程度のクロレラなどの生産で用いられる遠心分離機を使用する必要がなく、スクリーンフィルター(ろ過)で脱水濃縮される。乾燥工程後、粉末状またはタブレットなどに成型された形で生産されている。配給の成分にも使われている。
健康食品としてクロレラも栽培している。直径2-10μmのほぼ球形をしており、細胞中にクロロフィルを持つため緑色に見える。光合成能力が高く、空気中の二酸化炭素、水、太陽光とごく少量の無機質があれば大量に増殖する。乾物としての主な成分は、たんぱく質45%、脂質20%、糖質20%、灰分10%。その他にビタミン類やミネラル類を含む。基礎研究で抗ウイルス、抗ガン、免疫賦活、糖尿病予防の各作用が認められるが、ヒトの体内では高血圧と高コレステロール血症、肝機能改善のデータがあるが、クロレラに多く含まれるクロロフィルは、分解の過程で光過敏症の原因となるフェオフォルバイトを副生するため、日本ではフェオフォルバイト含有量の上限が定められている。またビタミンKが豊富なため、大量に摂ると抗血液凝固剤ワルファリンの効果を減じる恐れがある、細胞壁が強固なために消化吸収率が悪いなどの指摘もあり、服用は自己責任である。
次は養殖のパビリオンに入る。
中国発の放射能汚染で日本海側の漁業は壊滅した、とれた魚は全部放射能濃度の検査して出荷しているが、消費者離れが起きている。北海周辺、日本周辺、チリ周辺は世界三大漁場であるが、日本は失墜した。
太平洋側は漁協毎にナワバリがあり、地域のエゴが優先され回遊魚が大きくなる前に解禁され乱獲される、小さい内にたくさん獲って漁獲量を、縦割りの港行政が競い合う。
川魚の場合、日本の場合「子は獲っても、主は返せ」小さい内に間引くのは自然な事であり、卵を産むような親まで成長した物は川に返すべきという、川魚専門の釣り師には考え方があるが、海の場合は話が別である。
中国など夜中に強い光を出して魚が寄って来たところを網で一網打尽にする。人工衛星の写真で太平洋の海が明るいのである。一人っ子政策で戸籍の無い闇子まで含めると20億に近い胃袋を満たさなくてはならない。タダ同然で船長に親から売られ、三度の食事の保証だけで不眠不休で働かせる。人件費だけでもコストで勝負にならない。漁師は自分で獲るより通りかけ(公海行き来は自由である)中国船から買った方が安くつく。
スウェーデンではある程度の大きさにならないと獲ってはいけないし、加工も新鮮な内に船の上で済まし、港から配送する、日本は獲った物は冷蔵庫に放り込み港で加工する。農林水産省はヨーロッパ型を目指したが「そんな甘い事を言っては回遊魚は中国に獲られてしまう」と漁協は猛反発。結局先送りされた。
養殖に活路を求めた。
「好適環境水」と呼ばれる魔法の水はコエプコンのような山の中にあってもマグロやフグを養殖できる。養殖のフグは毒を持たない。
好適環境水は魚が浸透圧を調整していることで考え出された。魚は水と塩分濃度が異なる環境を生きるため、淡水魚は体内に水分を取り組み過ぎないように、海水魚は水分を外に出し過ぎないように調整している。
好適環境水は浸透圧調整に深く関わる成分について研究して、海水を構成する60の成分から、カリウムやナトリウムが重要である事を突き止め、わずかな成分を水道水に加えた物が好適環境水だ。
実際に使う場合は、魚の種類によって、塩分濃度を海水の25%〜10%に調整、相当に低濃度なので海水魚と淡水魚が一緒に飼育できる。
好適環境水のメリットは海水で育てるより、魚の成長が早い。トラフグの場合は孵化した1000匹を、好適環境水で満たした35トンの水槽で飼育した結果は、約850匹が1年2ヶ月ほどで1kgサイズ(体長35〜37cm)まで成長する、様々な成分を真水に加えて、海水に近付けた人工海水(主に家庭での海水魚飼育や水族館で使用される)では1kgサイズになるのに2年ほどかかる。好適環境水の中では1.7倍もの速さで成長する。短い期間で出荷できるので、ビジネス上のメリットが非常に大きい。
成長が速い理由は、体内で塩分調整をする必要がないため、その分のエネルギーを成長に回せる。天候の影響も受けず、水温も一定にコントロールでき、通常の養殖では、病気になるのを防ぐため抗生物質などの薬品の大量投与が欠かせず、魚の安全性の問題や、環境への影響も懸念されるが、好適環境水は元々が水道水だから病原菌がいないので、こうした薬品もいらない。
従来の人工海水が1t当たり1万5千円から2万円するのに対し好適環境水は100分の1まで下げれる。
絶滅危惧種であるニホンウナギの完全養殖(稚魚のシラスではなく、卵の孵化による養殖)にも成功した。ウナギは何もないところで成長させると、稚魚が全て雄になってしまう(これは自然環境でも同じ)。ホルモン剤を投与して大量の雌を生産するスキルを確立し、稚魚が何を食べているのか?疑問だったが、その問題も解決し、日本人が必要とする1億匹の半分5千匹を供給でき、WWF(世界動物保護基金)から禁漁規制が勧告され、日本政府が受け入れ、たくさんのウナギ屋がつぶれた。コエプコンはそれらの人々からノウハウを買収して、日本中にフランチャイズ店を展開した。今では貧困層以外土用の丑の日はウナギがチェーン店に行けば食べれる。
日本政府は地域の自立と叫びながら、地方自治体を潰した。自立という言葉は経済的ないし財政的な意味で使われているが、都市部でさえ食料やエネルギーの物質循環を指す「マテリアルフロー」では破綻している。地方の農村部や外国に依存している。こう指摘すれば、グローバリストから「競争優位の産業長所に人的資源を投入するだけだ。かんじんなのは人間の流動化だ」と笑われる。勝目のない分野からの撤退は戦略らしい。日本政府は地方を大型ベッドタウンにすると叫び、リニア新幹線の整備を強力に推し進めたが、NPO(非営利団体)を中心とする新地方コミュニティの中で雇用は生まれず(ロボットへのシフトと情報インフラの整備は職を奪いこそすれ、増やすことはなかった)、トリクルダウン(更に成長した金持ちからの経済的波及)は起きなかった。黒字企業も税金にとられるぐらいならと研究開発に回し驚くほど税金を払ってない、どの企業も給料上昇はせず内部留保に回した。戦争が無くなれば供給過剰になりデフレになり、同時に経済成長モデルはだいぶ過去のことになり、昔から持っている定常化資本(この場合不動産や企業設備などの実物資産、預金や株などの金融資産も含まない、手にした金は銀行や企業が使っていると判断する)の価値は勝手に上がる、不動産などの不労所得は経済成長に影響される給与所得(GDPは市場で取り引きされた財やサービスの総計)より相対的に増大する(資本回収率r>経済成長率g)。結局はリニア新幹線も国家官僚の天下り先が集中する東京へのストロー効果が強化された。未来都市コエプコンは自給自足100%を目指した。存在自体が政府へのアンチテーゼである。
次に医学館に向かう。
突出した天才的個人能力はアメリカに譲るが、コエプコンの医師の平均値は世界一である、TPPの影響で国民皆保険を含む医療保険制度は崩壊し、個人が経済レベルに合わせて民間の保険に加入する。下手な所に入るとつぶれてしまう、保険は銀行の預金と違い、たてまえは互助組織であり、つぶれれば今までの積み立てがぱーになる。
それでも医局の徒弟制度は残り、外国のように手術すれば手術する程、金になる個人主義的制度は根付かなかった、アメリカでは医師個人が指名され、患者を持って勤め先の病院を変える事はよくあるのだが、日本の場合はどこの病院に異動しても給料はそんなに変わらなかった。スーパードクターの海外流出は止められなかったけど、問題は流出速度を上回る速度で技術者を育成すればいい。平均値の向上と新技術の導入で乗り切り、国民の平均寿命は相変わらず世界一である。
富裕層はiPS細胞を使い、複雑な組織で成り立つ臓器は人と同じ大きさまで成長する無菌ブタにはめ込み造らせて、入れ替えながら。患者自身の幹細胞を使えば移植後の拒絶反応の危険はない。心臓の筋肉は筋繊維を3Dプリンターで作成し、神経細胞はそのままでは死んでしまうため、植物由来の抗ガン剤の候補でもある「アナカルジン酸」という化合物を投与する。手術の場合は少子化で少なくなった献血ストックに対して、血液中のタンパク質でもっとも多い「アルブミン」を利用した人工血液を開発した。アルブミンは血清(血液の上澄み部分)100mlに5gほども含まれており、主に血液を血管内部にとどめる役割を担う。ひとつのヘモグロビンの周りに3つのアルブミンがくっついたクラスター(ブドウの房のような形のもの)「ヘモアクト」には従来の人工血液(白い血液と呼ばれた牛乳のような修飾ヘモグロビン製剤は血管の中で安定せずに、血管外に染み出し、血管収縮がおき血圧が上昇した)のような副作用はない。ヘモアクトは8ナノメートルと赤血球の1000分の1しかなく脳梗塞患者のつまった血管に酸素を供給できた。筋肉はストレスをかけて強くしなくてはならないから、四肢再生は安価な義手義足でまかなっている。魔王も交通事故にあい、左足は電筋義足だ。パラリンピックにはでれるかもしれないが、身体を使った普通の格闘技の大会にはでれなかった(キメラとデザイナーチルドレンによる世界超人選手競技大会が毎年行われていた。マスコミは祭典の生中継でしか視聴率が取れなかった、なんでも賞金をかけてすぐに大会にした)。空手はやめたけど情熱は消えなかった。僕が龍先生の格闘技パッケージを紹介した。電脳空間でのパッケージ授業では僕の方が先生である。
コエプコンは子育てはアトム型、教育はドラえもん型、医学はガンダム型と割り切り、高額な手術支援ロボット・スーパーダビンチを大量に購入した。アメリカではスーパーダビンチがない病院では誰も手術を受けない。ダビンチは今迄の内視鏡手術と違い、内視鏡の位置と、ロボット手術器具を持つ位置が、操作者である医師の目と手の位置が正確にマッピングされていて、心的回転の負荷が少ない。
最早、会社や病院内部で新人を育てることが出来ない。
医師、弁護士、建築士など国家資格に関することは、バンソニーが提供する、擬似手術、擬似裁判、擬似建築(SF的に言うならシミュレーション現実)など2000時間程クリアし、トラブルへの対応をAIで採点して、採用する会社に人間性まで鑑定してある、たくさんの項目に点数をつけた評価用紙を送る。学生は学校で習うだけでなく、パッケージを使い電脳世界で実践して学べるし、NPCの先生がすることを真横でジックリ見ることができる。必要に応じて巻き戻しもできる。それどころか幽霊のように取り憑いて視覚や触覚やメスの使いかたなどを追体験できる。
バンソニー社の神経伝達ヘルメットは触覚的情報をフィードバックするシステム「触覚技術」が初期状態で内蔵している。ミクロソフト社も教育支援のソフトを販売しているが、バンソニー社のように電脳空間を使ったものではない。まるで医療支援ロボットを使ったゲームのようになっている。欧米人はドライだからそれで割り切っているが、日本ではシミュレーションで開腹手術から教えている。万が一の時、医療支援ロボットが使えなくなった時の対応も教える。そんなマンガみたいなことはめったにないだろうが(自衛隊を除く)、手術がいかに発達してきたかの歴史を初歩から教える。その理解がある方が、手ぶれとかなくなる支援ロボットの使い方が上手くなる。日本のオリジナル技術で手ブレ防止機能をそのままに触覚が伝わる機械にカスタマイズされ、本社に逆輸入されている。
再生医療は永久歯の再生も可能とした。完全に脳だけの存在になり、電脳世界で社会生活(金を稼ぐ)を行う者も現れた。こうなると恐いのは細菌感染による脳炎だけである。記憶力を回復する特殊タンパク質(RbAp48)も発見され、金があればアルツハイマー(ボケ老人)は過去のことになり、高級娼婦フェイのように完全義体として現実世界で生活する者も現れた(遺伝情報から目と目の距離がわかり、本人の顔をある程度再現できた)。伝染病研究者が「我々はジャングルの隣に住んでいる」と言わせる程、大気圏の上を行くQSST(静音超音速旅客機(クワイエットスーパーソニックトランスポート))が整備され、東京からLAまで2時間半、ドバイからシドニーまで1時間半、約4時間で地球を一周する。移動中は前世紀のコンコルドと違い静かで快適。世界交通力が激増し、LCCによる交通関係の価格破壊とが襲った時代(アメリカでは高級ホテルが無料飛行機をシーズンオフの宣伝費と割り切って運営し、一部の都心では無料タクシーが広告代で運営されている)。国際線では数分ですむウィルスチェックや免疫検査が完全実施されている。生体認証が導入され、個人の特定どころか病歴や犯罪歴まで確認できる。福島空港の横に建設されたコエプコンのサイバー医療棟群には、お手頃な価格の手術代のため、世界中に散らばる中間層からの医療旅行者であふれている(*美容整形では朝鮮に負けている)。完全自由診療のアメリカでは盲腸の手術も500万円、保険にはいっても100万円払わなくてはいけない(保険に入ってなければ裂傷3針縫うだけで30万とられ、幼児のひたいに軟膏を塗っただけで20万とられ、薬局で500円で売ってる局所麻酔薬1瓶が8000円に跳ね上がる)。貧困層はメキシコに行くらしい。コエプコンは滞在場所として温泉ホテルも経営している。3Dのチャット空間ができ、企業の出張はへったため、宿泊業や交通機関や娯楽施設が拠点をコエプコンに異動してきた。
魔王が筋電義足(少し残った筋肉に脳から神経を伝わる電気信号を感知して義足を動かす、筋肉が衰えた時に生体電流を感知して動きを補助する小型のパワードスーツもある)の調整のためにコエプコンに来た時、会いに行ったが、ララと同じように温感センサーや圧力センサーをカバーしたナノスキンに覆われていた(触覚のハードウェアはスベスベしてるか、ザラザラしているかまで理解できる)けど、肌色にはせずに黒と銀色の未来的なデザインにしている。フェイのように隠す人間と露出させる人間と二極化が進んでいる。ファッションとして脳波を感知して動くネコミミベッドギアなどがあり、自分の感情表現をサポートしたり、話し方を分析して相手の感情を教えてくれたりする。
今の戦争は国民国家同士ではありえない(かなり無責任で、何があるかわからない未来に対して誠実さを欠くという意見もある)。正確には血の出るような戦争だ、隣の国は三戦(法戦、情報戦、宣伝戦)とわりきってるし、サイバー空間では今も各国は凌ぎを削っている。領空侵犯はどこの国もやっている。対テロ用の特殊地域に投入される自動ロボットと、悪環境化で活動する特殊部隊の戦線布告なしの投入がメインである。
最後に自衛隊の広報館を後にした。
二人で全体が見渡せる歩行者天国の真ん中にきた。
ララがwifiの接続が切れて無口になった。
「ララ。あなたが守った未来です」
この時はミサイルの事など誰も知らなかった。ララは少してれて右の頬をかいた。両手を少し広げてゆっくりと回りだした。まるで少女のようだ。
「私が守った町なんですね」
僕は胸に抱えていた不安を口にした。
「殉死したプログラムって。ララなの?」
今しかないような気がした。
「いいえ、違います」ララが動きを止めて微笑んだ。「私ではありません、ただ「C22」は親友でした」
ララが内蔵しているスピーカーで牧歌的な音楽を流した、しゃべるのに障害はなかった。ダンスの授業で習った曲だ。あの時は会社の配慮でパートナーを替えて踊っていた。
「当時はそれをできた彼女がうらやましかった。でも今は分かるんです。彼女は生きるべきだったと」
ララが僕の手をとってきて踊りに誘ってきた。
「あなたが私に生きる意味を与えてくれた」
僕達は平和を享受した。魔下 耕世は捕まらなかった。次にテロが起きるまでの束の間の平和。
昼ごはんは勇者の部屋でA5肉を焼いてくれた。
「肉なんて久しぶり食う」
「本当におごりがいのない男だな、おまえゲーム以外に価値を見いだせないだろう」
「おまえがグルメ過ぎ」
「なあ、ションベンちびった事、魔王には内緒にしてくれ」
「ああ、それ頼むために、おごってくれたの?」
「当たり前だ、こんな高級牛、何もないならおごる訳ないだろう。魔王の妹にバレたらネットで世界中に拡散するだろう」
「分かったよ」
午後からは体育館に勇者と供に移動した。
龍先生は特定の流派を名乗らなかったが、身につけてる技はどれも素晴らしく、その技を後世に伝承しようという有志が集まって、毎週土曜の午後にサークル活動的な事をしている。銃器が戦争の主流になった時代、伝統の継承が一部の人には理解出来ないかもしれない。でも僕らはタスキを誰かに渡すことに価値を見いだした。自分で実現できない技も守り、必要としてくれる後から来る世代に届ける。こうして学び続けることがある種類の正義だと信じている。
小学生の頃は1世代あたり20人ぐらい参加するのだが、しだいにスポーツの方に流れていき、性格や才能が向いている奴もKARATEやJUDOの選手になり、タミフルを飲んでコエプコンの外である大会にでる。各世代に1人生き残ればいい方、H世代が僕、勇者、太郎、宗茂、エリーの5人残っているのが、珍しい事なのだ。
みんなが僕のように格ゲーをしているわけでない、勇者はライトノベルを書くから居合術や抜刀術など日本刀に興味がある。太郎は「政治家に成るには、虎に成らなくてはならない」と真剣に言う。服装は自由でいい、僕は動きやすいトレパン、トレシャツだが、太郎は蹴りが出しにくいハカマを着てくる。蹴りがある時はたくし上げている。顔も洋風だし、どこかカン違いしている外人に見える。本人は忍者衣装を探したのだがコスプレイヤー様しか見つけられなかった。日本文化や作法などに興味があり、茶道にも興味があり龍先生に教えてくれと頼んでいたが、さすがに門外漢だと笑って断られている。宗茂はjudoの先生から熱烈なスカウトを受けていたが、断わっている。純粋な戦国ヤローで火縄銃を撃てるし、小具足術といった鎧武者相手の「裏を欠く」の語源にもなってる古流武術も教えてくれるから、このサークルに残っている。エリーは太郎の金魚の糞である。
勇者は太っているから身体の可動領域に限界があるけど、関節の柔らかさは1番である、ねじり上げたり回転したりしてたくさんある遊びを殺さないと関節技がかからない。オリンピックの選手のように筋肉の力を抜けば、押さえた指の跡がつく。水のような筋肉、力を入れれば鋼のようになる。きちんと体重を落とせば、才能は1番だと思う。
宗茂は怪力がある、腕力がハンパでわない。いちおうB世代にウルフさんという、縦横がっしりして厚みもある大人がいるのだが、引き手の強さは宗茂の方が勝っている、このまま成長して大男になり、リーチまで獲得していけば懐も深くなって、一本背負いとかできなくなる。ルールが柔道やレスリングになればウルフさんでも勝てない。
太郎は合気道の合気を獲得したいようだ。大東流合気柔術の本をたくさん読んでいる。空気投げや不動の構えなど神秘的技が紹介してあり、龍先生から技を盗もうと必死である、サークル活動に百人程でいりしているが、龍先生が合気が取れてると表現しているのはA世代の一番弟子の遥さんだけである。太郎の技は素直過ぎて「柔能く剛を制す」はできるが「剛能く柔を断つ」ができない。僕が乱暴にしかければ太郎が対応できない。勝ち方が分かっている。彼の精神の中で何か意識革命が起きないと僕には勝てない。技単品の熟練度は凄まじいモノがある。
エリーは弱い、力がないから、ある程度に重さのある武器を殺傷力のある速度で振るうことができない。本人がビビリな性格で脅されると萎縮する。でもダンスゲームをすればNO.1である。腕力はないが体幹は強い、体重が軽いからジャンプ力はある。3センチずらして重心を崩しながら、それでいて次の足がでないようにバランスを崩すのだが、子供に技をかけるのは難しい。体重が軽いからケンケンをする。エリーも似たような事をするし、空中で回転したり、バク宙したりして関節技のコースを外してきたり、ダンスの応用だと思うけど、両足を広げて回転を加えて背中から落ちるのを回避したりする。毎日部屋で足を使い色違いのボタンを押すリズムゲームをしているから、脚力はそんなに悪くない。空中で回転してかかと落としをしたりする、体重が軽いから威力はそんなにないんだけど、ダンスサークルにでも入れば、直ぐにセンターが取れるのではないか、龍先生もエリーには手裏剣や、投げ銭、ナイフコンバットを中心に教えている。
A世代の遥さん。色白で東北系かな?新潟の女は白人より白い、切れ長の目をしてまつ毛が長い。どこか神秘的。腰まである長い黒髪を首のあたりでひとまとめに結っている、J世代の緑が入ってくるまで、生身で触れることのできる唯一の女性だった。龍先生の一番弟子で、天才はこんなこともできないのかと凡人に説明したり、教え導くのが下手だが、彼女はどういうイメージで身体を動かしたらいいか、意識するポイントなどを、きちんと説明してくれて、龍先生より分かりやすい。魔王や勇者がゲーム中「なんでお前、そんな事ができるんだ」と口にするが、僕の答は決まっている。「お前ら、なんでこれくらいできないんだ?」僕は自分が理解していることを他人に説明できない。
妊娠中も見学に来て、龍先生の指導を手伝っていた。解説のマンガも描いていて、原作者である龍先生に承諾を得ていた。
明らかにコンピューターで物理演算処理できない透明な力を持っている。皮膚に触れただけで回転して投げ飛ばし、手を握れば動かしてないのにハジキ飛ばされたり、人差し指で急所を押さえて呼吸困難にしたり、H世代5人でかかっても1分以内に近接戦闘で一ヶ所にまとめられ、カカトでどこかを踏んで5人とも動けない。赤い緋袴を身に付けて現われてくるから、巫女さんのようにどこか神懸かりである。
彼女は自分の子宮を使って一月前子供を産んだ。
女性の卵子は胎児の時に700万個、産まれてくる時に100万個、思春期になると40万個まで減少し、生涯500回の排卵がおこなわれる、コエプコンは出産時に卵巣をとり、本人用に凍結卵子が10個残されている。後はオークションにかけられるのだが、精子が一回の射精で一億個と考えれば、政府の勧める人工増産にとって貴重であることは確かだ。
遥さんに僕の精子を使ってみてよと持ちかけたら「夕夜はこの子の父親になってくれますか?」と聞かれて「無理だ」反射的に答えてしまった。「では、夕夜の精子は使わないようにしましょう」イタズラぽく微笑んだ。ネットオークションで誰かの精子を買って産んだ。ロボットの「彼方」と一緒に育てている。会社の依頼でモーションキャプチャーに呼ばれない時は、龍先生原作者の格闘技解説マンガを描いている。
B世代のウルフさんはモンゴル系か、トルコ系、寒いところ出身だろう。まぶたが厚く一重。マユも薄く、頭はスキンヘッドにしてある。コワモテというよりは笑うと糸目になってデフォルメされたお地蔵さんのよう、ユーモラス。実際より老けて見える。目が良くて5.0。狩猟民族の中の狩猟民族。動体視力は人間が望める最高クラス。弓術は人差し指と中指で引っ張る日本式ではなく、親指と人差し指ではさんで引っ張るモンゴル式を龍先生から習っている。剛から入って柔に至ったタイプで、「発勁、発勁」と口にしながら、オリエンタルミステリーをひたすら求める太郎とは間逆である。足の指で打っていると表現するが、端から見て瓦に触れただけで5枚ぐらい割っている。この技はゲーム的に処理できて、ある程度のスキルポイントで買えたりする。
実践KARATEのルールで闘えば一番強い。(オッパイのある遥さんと緑は乱取りを遠慮する)ガードの上から叩き込んでくる。きちんとガードしても体重がないから崩されてしまう。ただ二人の間では分かっている。体重が増えて、受け即反撃ができるようになれば、リーチが後少し届くようになれば、実践KARATEのルールでも僕の方が強いことを。そして、それがそんなに遠くない事も。
J世代の緑も特筆に値する。
母親がベラルーシかポーランド系だろう、民族が混ざる所は美人が多い。髪も深緑で皮膚が薄く緑がかっている。
テロの言いがかりを回避するため、I世代から半数が女性になった。多分政府の依頼かもしれない。
そこでコエプコンは光合成ができるように藻の遺伝子と融合させた。中国が先頭を切っているデザイナーズチルドレン、キリスト教圏の欧米は「一万年後まで続く遺伝子を個人や国家の欲望で好きに書き換えていいはずがない」発狂せんばかりに叫んだ。イスラム教圏も「神のプログラムへの挑戦か?」同調していた。まあ、彼らの理屈では遅刻しても交通事故しても「神のおぼしめしです」と言い訳さえしない。
日本も倫理的問題を口にする御用学者はいたが、アジアが抱える環境問題の深刻さを考えるなら、自己責任で改造しないと普通の生活ができない。
サンショウオが藻の遺伝子を取り込んで(正確には藻がサンショウオの胚子に潜りこむ)水中で酸素を作り出すから、同じ脊椎動物の人間にできないはずがない。蚕の1万1千個の遺伝情報は解明されていて、蜘蛛の遺伝子を組み込んだ(蜘蛛の糸を直径1センチにできるなら、同じ大きさの鉄の5倍の強度を誇る、自然界最強)強靭なスパイダーシルクを作ったり、タンパク質の蛍光遺伝子を蚕に組み込み光る糸を使ったり、抗菌機能や人間の細胞と親和性の高い性質を持たせた絹糸を作り、外科手術の縫合やシートや人工血管に使われている。遺伝子改良の技術は避けては通れない。
アメリカでは遺伝子組換え動物が造られて普通の2倍の速度で成長するサケやバイオニックアートと呼ばれる光遺伝子を混ぜたペットが売られている。クローンは巨大化したり早死にしたりするけどペットのクローンがビジネスとして成り立っているし、日本でも野菜の不飽和脂肪酸を含んだ「ヘルシーピッグ」という豚が開発されているし、インドや東南アジアでは「ゴールデンライス」と呼ばれるビタミンAであるカロチンを含んだ稲に置き換わっていた。貧困層のビタミン不足が解消された。小麦の栽培はもともと雑草が育たない砂漠地帯の水辺部で始まった。植物に殺虫作用のある遺伝子を組み込むと更にそれを食べる虫に進化してくる。害虫の天敵をおびき寄せる遺伝子を組み込み対策を変えた。
除草剤ラウンドアップという葉や茎に散布し、どんな雑草にも効果あり世界130ヶ国で使われている、地面に落ちると水と二酸化炭素に分解されるため環境にも優しい。植物には、アミノ酸を作る「EPSPS」という酵素があり、グリホサートにはこの酵素を作れなくする働きがあり、栄養を作れなくなった植物は枯れるのだ。EPSPSは植物特有の酵素なので人間や動物には影響がない。アグロバクテリウムという微生物にグリホサートの影響を受けない「CP4・EPSPS」というタンパク質を作る遺伝子を発見し、ラウンドアップ耐性作物を作ることに成功した。
作物も環境ストレスで成長しない場合はほうれん草や小麦、テンサイなどに多く含まれているグリシンベタインという物質を合成する遺伝子を取り出して、寒さに弱いイネやトマトに導入したところ低温だけでなく、高温や乾燥、凍結や土壌の塩分濃度などさまざまなストレスに強い作物ができるようになった。また、トレハロースは保水性の高い物質として知られているが、遺伝子改変によってトレハロースが多く蓄積する植物を作ったところ、乾燥に強いだけでなく、強い光に対しても耐性を示した。通常の大豆には脂肪酸の中に動脈硬化を防ぐ働きがあるオレイン酸を20%程度含んでいるが、遺伝子操作の技術を使って、ある酵素の発現を制御することでオレイン酸量を4倍にすることができた。また、ステアリドン酸はDHA(炭素を主成分とし、脂質のもとになる)やEPA(血流を良くし、脳の働きを活性化する)を作る成分。心臓発作のリスクを軽減する。大豆には含まれていないがサクラソウの一種から遺伝子を取り出して大豆に入れ、ステアリドン酸も含んだハイブリッド大豆ができた。抗酸化作用があり、視力アップし抗ガン作用もあるアントシアニンを合成するふたつの遺伝子をトマトに組み入れた紫色のトマトを作り、子供の世代へ遺伝もした。高温で焼いたり揚げたりするとアクリルアミドを発生するジャガイモを遺伝子操作して20分の1に減らすこともできた。輸入されている食べ物で遺伝子操作されてない物はなかった。
絶滅した動物達も復活したが、生きていた時代より、ウィルスが進化していて風邪で直ぐに死んでしまう。無菌室の空間に閉じこめジュラシックパークめいた事はアメリカで始まっている。
人工子宮によって作られる子供に対する考え方は、ロボット達が親権を持ち、コエプコン社の意向が反映され、改造の許可が日本政府から降りた。日本版デザイナーズチルドレンの始まりであり、光合成は深刻な食料不足も解消できるし、強化人間しか作り出すことができない中国を一気に追い抜けると判断した。
酸素を作り出すだけなら、酸化チタンをベースにした新しい金属によって太陽の光だけで酸素と水素に分解できたし、電気や有機物を加えないで光と水と二酸化炭素から有機化合物であるギ酸を作り出した。人工光合成によってエネルギーを作り出すだけならできた。効率で藻類を超えられない。実用化への研究途中である。
人間と藻の遺伝子をハイブリッドは光合成により、人間は酸素と化合物を受け取り、藻の側は二酸化炭素と窒素豊富な老廃物を栄養にする。いいところどりだ。
研究は長年進められてきたが、やはり遺伝子が安定せずにI世代は10人しかいない。緑がいるJ世代は50人いるが、水中の中で2時間以上潜ってられるのは緑だけである、言ってしまえば緑は唯一の成功例である。コエプコンは緑の卵子を販売はしていない。会社の研究開発に使われている。H世代では精子が共通だったように、いつしか緑の卵子だけを使う世代が現れるかもしれない。
プロレスファンであり、服装は「御意見無用」と背中に書かれたTシャツを着て、太ももの付け根まで露出したホットパンツをはいている。
龍先生が乱取り中に「今度は何のルールで闘う?」と緑に聞いてきた。「プロレスで」と答えた。その時初めて提示されたルールで、体育館に畳を敷いただけの簡単な道場にリングやロープやマットがあるわけではない。みんなが何をしたらいいか分からずにとまどっていると、緑だけが動いた。対戦相手はタマタマ僕だった。頭が回らずレスリングの親戚かなと思った瞬間、彼女はフランケンシュタイナーをしてきた、太ももで頭をはさまれ、恥骨で鼻を嫌というほどぶつけた。頭を畳に叩きつけられた。
僕達がやっているのは、基本人体の急所をねらう格闘術だから身体の大小はあまり関係ないのだが、どちらかと言えば相手を傷付けるより無力化させるのが目的であり、飛びつき技がないわけではないが、下手したら首の骨が折れるぞ。「プロレス禁止」と龍先生が直ぐに宣言した。
男まさりでアッケラカンとしている。「女は性欲の処理をどうすんだ?」と聞けば「僕の場合はバイブを使ったり、サファイア(緑のロボット)に手伝ってもらったりしている」と答えてくる。遥さんに同じ質問をしたら「H」と言ってブン殴られた。ララから「女性にそう言うことを聞いてはいけない」とたしなめられた。
気楽に話せる性を感じさせないジェンダーフリーな奴だと思っていたら(僕っ子だし)、先週考えを改めさせる事件が起きた。
元はと言えば勇者が緑を彼女にしたいと言ってきた。セックスパートナーは姫がいるのに、何でそんな複雑な人間関係を作りたがるか不思議だ。僕が遥さんに僕の精子を使ってよと発言した時、「男はロリコンだろう、年上が好きだなんてお前は霊長類か?」と言って馬鹿にしてきた。別に付き合う気は無かったが、誰かわからない男の精子を使って妊娠するのが、なんとなく、くやしかった。勇者も付き合いたいというよりは人間の女の子に対する好奇心のように思える。僕らは他の世代と違って女がいない。将来のラノベ作家として取材し研究したいのだろう。
「ラノベの女性キャラは極端な能力や性格を与えるか、無垢な象徴として描くかすればいいから、人間の内部をえぐるような文芸作品のマネをしなくてもいいだろう」勇者は嫌な顔をしながら「引き出しは多くしたいんだ。協力してくれ」断る理由もなかった。
緑に「どんなゲームをやってる?」と聞けば「かいぶつさんの森」と答えてくる。
「かいぶつさんの森」はバンソニー社が出している3Dモンスターを2頭身キャラとして出している。女の子のライトユーザー向けに開発されたスローライフを楽しむゲーム。ゲームマネーによる課金がないどころか、通貨がない。物のレアリティを軸とした完全物々交換の世界。
最初にすることは海で魚を取ったり、果物を採取して交換する材料を集める。モンスターとの戦闘は少しもない。
次に釣ざおや虫捕り網やスコップと交換する。レアリティのある魚を釣ったり、虫を取ったり、化石(美術品の扱いになる)を探したりする。2頭身キャラとなった3Dモンスターからお願いされて、依頼をこなしていくとレアリティのある品を3Dモンスターからプレゼントされる。船で移動することで、常夏の島、常春の島、常秋の島、常冬の島に移動できる。ネットで情報を集めて(○○という3Dモンスターが××に価値を見いだして☆☆系列のアイテムと交換してくれる)交換用のレアリティの高いアイテムを捜索する。
プレイヤーキャラクターは八頭身でNPCとの違いがすぐにわかる(個人の3Dデータを流用している女の子が多い)。役場に行って登録すれば村の中にある程度のスペースがもらえる、自由に家を建てたり、植物や果実木を植えたり、公園(ライトな遊園地施設を設置できる)を作ったりできる。土地を所有しない共産主義的な世界観。
不動産屋でバイトして3Dモンスター達の要望を聞いて家や庭をリフォームしたり(満足度に応じてレアリティのあるアイテムをプレゼントされる)、役場からの依頼で公共事業(橋、ベンチ、街灯)や学校、病院などリフォームすれば追加スペースをもらえたりする。洋服屋でバイトして2万点以上ある洋服・バック・アクセサリー・ピアス・靴・靴下からコーディネートしたり(気に入ればプレゼントをもらえる)、美容院でヘアスタイルやメークアップを変更したりできる(自分のアバターも)。美術工房でバイトして置物や絵画なと課題をこなしたりして、最終的に店長にある程度認められれば、オリジナルの家具や電気製品や美術品や服、エンブレムなどがデザインできる。ネットでつながっているリサイクルショップがあり不要な物や新デザインのものを交換希望アイテムを提示して置かせてもらえる。
バンソニーが定期的に主催するファッションショーや、家のモデルハウスの展示会に出展できる。緑からネット上で展示しているハウスに招待された。勇者と二人きりになると気まづいから僕と魔王も一緒に行くことになった。この手のゲームでHな事をしようとしてもキスまでで、男女の違いはオッパイとフォルムの違いだけで性器は描かれていないツルツルであり、そういう目的で楽しみたければ18禁のソフトを買わなくてはならない。そのソフトは性器を自由にカスタマイズでき、脳に送る性感信号も大幅にアップされる。傷みが快楽に変わるSM専門のソフトもある。
男みたいな女だからプロレスの話でもして盛り上がるのかと思えば、3人で指定されたモデルハウス展示場に行けば、庭に柿や桃やリンゴやブドウの木が植えてあるのはいいにしても、家の瓦にいたるまでショッキングピンクでできていた。
何か嫌な予感がしていた。
「ここでいいのか?」
勇者に確認した。
「間違いない」
勇者が断言した。
「俺、帰っていいか、凄く時間を無駄にするような気がする」
「僕だって、魔王の手伝いすることあるんだから、ここで一人にしないでくれよ」
勇者の言い分ももっともだ。毒を喰らわば皿までだ。覚悟を決めて入った。
一応ノックをしよう。着替えとかは瞬間にできるからラッキースケベみたいなイベントはない。
「どうぞ」緑の声がした。
扉が開いた。緑はマイナンバーと同時に登録されている自分の3Dデータを流用している。モデルハウスはゲーム世界から電脳世界に出張しているため、僕らのアバターはいつもの2頭身の姿だ。8頭身の緑の身長の半分ほどに設定してある、幅は緑よりあり、このくらいの身長でないとドアを通れない。
破れて太ももやパンツが見えるピンクのGパンツに、背中に墨で「情け不要」と書かれたピンクのTシァツ。ゲーム世界では乳首は描写されない。ツルツルだし、コエプコン社が誇る「柔らかエンジン」を使っているわけではないからオッパイはゆれない。コエプコンの「柔らかエンジン」は凄く揺れるので世界的に有名(物に当たるとカタチを変えるとこまでオーバーに再現している)。フェミニストが性描写に抗議するぐらい。その度カメラワークの角度を変えている。
ピンクを基調とした部屋で本棚には女子プロレスの本が並んでいた、壁にはアイドル系の女子プロレスラーのグラビアが貼ってあり、窓の風景は自由に選択できて、南側は迫力あるナイアガラの滝を遊覧船で動いていて、東側は月面基地になっていて地球が昇っている。西側は空からジャングルを見下ろしている設定で何体かのプテラノドンが飛んでいる。
「好きに座って。果物取ってくるよ」
ピンクのソファーに腰掛けた。緑が木を蹴るとぼたぼたと果物が落ちてくる、前もってジョウロで水をやれば季節関係無しに果物はなる、種をまいて水をやれば次の日に花が咲く、毎日気に入った花に水をやれば枯れない。緑は果物をカゴに拾うと無造作に机の上に置いた。客の扱いに慣れていない。
「皮とか種とか無い設定になっているから、純粋に味だけ楽しんでよ」
桃を手に取った。口の中に味は広がるが果汁はこぼれない。同じ木に接ぎ木して違う種類がなるようにできるらしい。緑が無造作にカゴから取って違う品種を勧めてくる。電脳世界では腹も減らないし、お腹いっぱいになることもない。
「僕は男女のめんどくさい事が分からない。だから単刀直入に言う。そこにいる勇者と恋人関係になる気はないか?」
「おまえはどうしてそんなに馬鹿なんだ」
勇者が怒鳴る。手伝ってくれと言ったのは勇者なんだが、やりとりを聞いて緑がケラケラと笑う。
「そりゃ、無理だよ」即答した。
「なんで、そんなに俺が嫌いか」
「好きとか嫌いの問題ではなくて、多分僕の精子提供者はH世代と同じだよ」ということは腹違いの妹になるのか「実は僕J世代でハブられているんだ」寂しそうにした。
「ハブられている?」
「村八分のことだよ」
「僕はJ世代のスクールカーストの最下位なんだ」
「話がHeabyになってないか?」
「Heabyでございます」
突然緑のロボットサファイヤが出現する。ララ達同様球体関節を持った自動人形がメイド服を着ている。ポロポロ涙を流しながら「私が至らないばかりにマスターは集団授業を一年近く欠席しています」電脳世界ではロボットも涙を我慢できないみたい。
「J世代は蘭王が支配している」
蘭王(王はアダ名である、本名は蘭・J50・コエプコン)は結構有名な女で、コエプコンに知らない者はいない。明らかにジャマイカ系の黒人の遺伝子が使われている。アメリカ南部の黒人をなめてはいけない。白人がアフリカ沿岸部に銃を売って奴隷を買っている。沿岸部の黒人は銃を使って内陸部から奴隷を獲得しているため、今でも沿岸部と内陸部は仲が悪い。白人が体の強いのを選んで3分の1まで選抜して船に乗せた。すし詰めにしたから毎日死人がでた。海に捨てるためサメが貿易船の後ろをついてきていた。アメリカに着くのは3分の1まで減少した。コーヒー栽培など急斜面で働かせるから自然と体が鍛えられた。更に体の強いのと強いのを掛け合わせれば、更に強いのができると近親交配を強要しているため、アメリカの黒人はアフリカの黒人と違う別種の強さがある。
蘭王は赤い縁のアラレちゃんみたいな眼鏡をかけて、後頭部にふたつの房をもつツインテール属性で、4回ぐらい龍先生の道場に顔をだした。身長の割りに肩幅がえわらくあった。顔もゴツくてタラコ唇、美女の緑に比べればブスである。瞬発力の強さは並ではない。藻類との融合で遺伝子いじっているからオリンピックには出られないけど、全世代の中で一番足が速い。「黒い弾丸」と呼ばれている。
ガキの頃、男の番長と戦い、コレに勝利しズボンとパンツを脱がし、左手で両手を固定し、右手で足を持ち上げ恥ずかし固めを行なった。コエプコン社でもかなり問題になった。当時女って凶暴だなと思った。
アメリカでは犯罪における神経科学の役割についての議論が活発化してから、「脳の異常や機能不全が犯罪の動機や行動特性にどのような影響を与えるか」や、「モノアミン酸化酵素などの遺伝子変異体と暴力的な振る舞いの関係」研究されている。
とにかく会社がえらく説教したらしいが、サイコパス(人の心の痛みが分からない人間、あるいは犯罪を犯してもその隣で普通に暮らせる人)というのは、ある一定の確率(25分の1だと言われる)で産まれてくるものである。サイコパスは遺伝子による選抜ができない(ロシアでキツネの研究がされた。毛皮を取るために養殖でおとなしい個体同士をかけあわせると10世代たつと、キツネ目が幼くなり、シッポを振るなどの従順な行動をとるようになり、攻撃性を高めるアドレナリンの濃度も低くなった)。彼女は太郎のような天才型ではないが、J50と何か遺伝子の数字が1ずれていたら堕胎されていたらしい。努力家秀才型で勉強はよくできるし、遺伝子に幅を持たせてあるからH世代よりタミフル飲んで気軽に下界に行く、毎週日曜日に顔面掌底打ちまで許可された超実践KARATEの道場に通っている。僕らみたいに龍先生の下で和気あいあいと技の練習をするのではなく、点在する支部同士が仲が悪い、全国大会にもなれば支部同士の戦争の様相をしてくる、相手の急所を打って無力化すると言うよりは、ぶっ壊す感じのKARATEの女性競技人口がどれぐらいか分からないが、彼女は超実践KARATE女性の部にて全国優勝をしていて会社から表彰されている。
二人は授業の柔道のルールで戦っている。
緑だって龍先生の下アマチュアレスリングの練習を真剣に取り組んでいる。蘭王が服をつかんで殴ってくるラフな事をすれば、緑は諸手刈りに見せかけてタックルを叩き込む。二人の戦績は五分五分らしい。白人の中でもスラヴ系はjudoやレスリングは強い。
蘭王が君臨するJ世代で3人程が集まって小さな島宇宙を創っていたが、コミュニケーション能力のないスクールカーストの下位グループであり、どの学校でもオタクは下に追いやられる。
緑は水中に2時間程潜っていられるが、蘭王は5分も潜っていられない最下位らしい。
よほど気に入らなかったのか、蘭王は緑の友達にまで同調圧力をかけてきた。ボッチの集りのH世代と違いイジラレ系のみんな、空気を読んで行動する、スクールカーストの順位はコロコロと入れ替わり、ある日突然誰からも無視されて便所でメシを食わなくてはならない。
緑は集団授業に参加せずに日曜日に補講を受けている。
会社側もある一定の確率でニートやひきこもりが産まれる事は理解していて、子供達がSOSを発信した時、転校もできないのに無理に参加させればストレスで自殺するかもしれない。救難信号をキャッチしたらロボットは直ぐに授業のカリキュラムの変更を会社に要請した。
「僕をH世代に入れてくれないかな。なんだか楽しそう」
緑の右目から涙がこぼれた。このゲームは涙を我慢することはできない。かといってもH世代に移動するなんてことが僕らにできることではない。
「ちょっと作戦タイム」
魔王と勇者の首をガッとつかむと部屋の隅に連れていった。
「どうしよう」
「俺は嫌な予感はしていたんだ」
「話がヘビーだぞ」
「俺には妹がいるから分かる、女という生き物は必ずしも解決を求めていない。話を聞けば満足してくれる」
「こうなった以上、帰るわけにはいかんぞ。部屋に呼ばれたのもSOSを発信しているかもしれない」
「なんか、責任重大というか、怖くなってきたよ」
みんなで微笑みながら緑が待っているテーブルに戻った。
「なんか重荷背負わせたみたいで、ゴメンね」
「そんなことないよ、僕も勇者もお兄ちゃんだと思って、なんでも相談してくれ。できる限りのことはするよ」
「優しいんだ」
「誰にもでわないぜ」
勇者が答えた。何事にも計算する男だ。
「みんなマイナンバーに登録しているアバターに変更して、私がデザインした服を着て友達記念撮影してよ」
「なんでも聞くと言ったけど、さすがにピンクのフリフリはカンベンしてくれよ」
ジワーッと泣きだしてきた。バンソニーのOSでは涙は我慢できない。
「勇者、男に二言はないとキャプテンハーロックも言っていたぞ」
「どんな服があるんだ、緑ちゃん。俺たちにも心の準備があるから」
「ベースはキグルミとか、色々あるよ」
「「「キグルミでお願いします」」」
魔王はピンク怪獣、口の部分から顔がでている。僕はピンクひよこで。勇者はピンクの鎧を着ていた。サファイアが写真を撮る。
深刻な話になるといけないから、テーブルの上に電子ボードゲームを広げた。僕と魔王はゲームがデタラメに強い。かといっても純粋にサイコロ勝負で決まる「かいぶつさんの森」の世界観を反映されたスゴロクはあるが、あまりに戦略性がなくてする気になれない。ルーレットで進める人生ゲームなど一応ルートの選択はあるのだが、基本小さく刻んだ奴が多くの職業を経験して、生涯収支が多くなる。最初にゴールすれば一応ボーナスはあるけれど最後のほうが色々経験して勝ちをさらっていく。
そのため実力7割、運3割と言われている「金太郎電鉄」をすることにした。せっかくこうして集まったのだから緑にも楽しい時を過ごして欲しかった。
「金太郎電鉄」はサイコロを転がして広げた電子ボード版の上を、3Dで描かれた自分の列車を、日本中に張り巡らせた鉄道を利用して、ランダムに決められる目的地に移動するゲーム。途中で有名駅周辺の不動産を買い漁り最後の月に収支を計算して勝ちを決める。目的地に少しでも早く着かないと、誰かが到着した時点で一番遠いプレイヤーにビンボー神がつく、他のプレイヤーの駒の上を通るか通られるかでなすりつけることができる、こいつがターンの終了時に取り憑いたプレイヤーにハプニングを起こす、単に遠ざけるだけならまだマシで、せっかく買った不動産を半値で売りさばき、こいつが憑くか憑かないかでセーフティリードが全然見えない。毎回ターンに一度カードが使えて通行止めにするウンチカードやサイコロの数を増やす急行カードなどがある。有名駅以外では青い駅に着けばお金がもらえて、赤い駅に着けばお金を取られて、黄色の駅に着けばカードがランダムでもらえる。
結果論から言えば、僕が最下位で緑が優勝した。
「リアルを知っている人と、こんなに話たのは久しぶりだ」
「今はその集団(世代)が全てのように思えるけど、一過性のもので、遅れているわけでも、劣っているわけでもないからな、いい思い出ができたなどと言って自殺するなよ」
「分かっているよ、ありがとう、優しいお兄ちゃん」
緑は今日元気に道場に来ていた。
「大丈夫そうだな、少し心配していた、妹よ。良かったよ」緑が微笑みながら「ありがとう、お兄ちゃん」たまたま横にいた遥さんが「あなた達、いつからそんなに仲良くなったの?」笑っていた「先週から」二人でハモった。
道場での練習は基本技の反復練習と5分おきに相手を変更しての乱取り、自分なり課題を持って相手に協力しながら行う。ダラダラとはやらない。3時間ぐらいで終わる。
道場が終わると次は魔王と待ち合わせしているチャットルームへ向かう。
「ピヨッピー無事だったか」
魔王が抱きついてきた。
「俺、本当に恐かったよ。お前が死んだんじゃないかって」
「ララが何の連絡もなく、一方的に戻したから。ごめんょ、何の連絡もせずにいなくなって」
「無事ならいいんだ。そんなこと気にしないでくれ」魔王が泣きだした「どんな時でも、どんなゲームでも、俺を頼ってくれ。きっと力になるよ」
「僕もだ。魔王」僕も泣きだした「どんな難しいゲームでも、呼んでくれれば、きっと手伝いに行くよ」
僕達は気がすむまで泣いた。
「今日はどこで何をする?」
「そのことなんだけど、昼間肉を食ったから、どうも腹の調子がおかしい」ウェアラブルコンピュータが膀胱の動きや腸の動きも検索していて、ウンコにいきたくなる10分前に知らせてくれる。
「だらしがないなあー」
「もともとそんなに胃腸の強い方ではなく、ララがコエプコンの配給に乳酸菌のビフィズス菌やオリゴ糖と内蔵脂肪を燃焼させるカテキンとガゼリ菌をミックスしている」
「ララ。何にもしてないのかと思えば、一応調理のまねごとはしているんだなぁ」
「ララが聞いたら怒るぞ」
「何でまた、肉を食べる事になったの?」
「勇者がションベンちびった事を魔王に内緒にしてくれと頼まれた・・・アレ!」
勇者のアバターが突然横に現れた。
「何を考えているんだ。本当にオゴリがいのない男だな」
「アゲインスト(勇者のハンドル名)も無事か、心配したぞ、いいさ、そりゃ、テロだもんな。ションベンぐらいちびるわな」
「なぐさめるなよ、俺の脳内設定ではそういうことはしないキャラクターなの」人には忘れられる権利があるが、ネットで拡散するとそれも不可能。恥ずかしがり屋には残酷な時代だ。
「ふんじゃ、気楽に3Dモンスターファーム(特定の主体がシステム全体に責任を持ち、機能を保全しようとする体制を「ギャランティ体制」とよぶ、日本では多い。バンソニー社のギャランティである)にでも久しぶり行ってゲームマネーでもかけるか?せっかくだからアゲインストも一緒にくるか?」
3Dモンスターファームはバンソニーが直営しているゲーム会場で育てた3Dモンスターを使いリング上で戦闘させたりできる。この場合はトレーナーのように叫んでアドバイスするだけで、どれぐらい命令に忠実かはWIZにより、コンボの数はINTによる。単純に肉体系の能力値が大きいから強いというわけではない。メジャーリーグ、マイナーリーグ、教育リーグがあり、3Dモンスターのランクによって賭けのオッズが決まる。ゲームマネーは換金できない、親の許可がなくてもいくらでも賭けていい。ゲームマネーの他人への譲渡、3Dモンスターやチケットの金銭トレード、3Dモンスターをオークションにかける場合は親権者の許可がいる。
単純にゲームマネーを払い3Dモンスターのガチャするだけでなく、結魂というシステムがあり、バンソニーが提供する特定の能力値が成長しやすい産神(10種類ある)に、ゲームマネーを払い、育てたキャラクターを食べさせて、3Dモンスターの能力を少し反映されながらー10レベルの子供3Dモンスターを産み、成長回数が増え、能力値が高い3Dモンスターを作ることができる。神によっても苦手があり、低くなる能力値もある。自分の子供や子孫は食べない。
別に競馬のような障害物レースがあり。山があり、谷がある、バランスをとりながら移動しなくてはならない一本の丸太橋があり、泳がなくてはならない場所もあり、玉入れ、玉転がし、火の輪くぐりなどがあり、単純にスピードの能力値が高ければ有利というわけでもない、試合会場のコースも、ビルドソフトはネットで無料配信され、どの能力値が有利になるかなど、応募してくれるたくさんの試合会場のコースを朝にレフリー達によって選択され、採用されたビルダーはゲームマネーが1万程払われる。何回かの予選が夕方からあり、ゴールデンタイムに決勝戦があり、予選の内容や勝ち方はダイジェストで配信される。
NPC調教師が何人(それぞれ得意分野がある)かいて、ゲームマネーを払って彼等に一週間預けると能力値にボーナスがつく、%だから能力値が高いほど効果が大きい。オッズはレアリティで決められているが、勝負は純粋に能力値で決まるため、上手に育てていれば大物喰いは結構起こる。チケットを買う前に配信動画の予選情報だけでなく、能力値の方もチェックしなくてはいけない。
3Dモンスターでのカードバトルはウェアラブルコンピュータ上でたくさんのサードパーティーが展開している。スポーツゲームも例外ではない。本当に好きな奴はリアルでチームを作るし、プロの試合を観戦に行く。映画、ドラマ、アニメなどの配信ビジネスに対抗できるのは、ニュース報道とスポーツ(eスポーツも含む)のライブ中継だけである。
バンソニー社もモンスターファーム上で25体の3Dモンスターを使って相手が守るゴールの枠に楕円形の球を押し込むサッカーとラグビーを足して2で割ったような(魔法や飛び道具で球を弾き飛ばしたり、つかんで切り込んだり、スクラムで押し込んだり、戦法は色々)観戦スポーツゲームを展開しているが、Sリーグ、Aリーグ、Bリーグ、自由参加リーグと別れている、プレイヤーが居なくてもBリーグ以上は毎週日曜の昼に試合が組まれている。プロ野球セ・リーグの巨人のような金満球団のようにSリーグにZEROという男が君臨している。この男もピヨッピーと一緒でメディアに露出しない、謎の多い人物。アバターは白いシーツをかぶった透明人間、シーツの上に二つの目がついていて、いろいろ感情を表現する。ネット上で本人が主張するには酸素と栄養素だけを供給も要らない、マインド・アップローディングしてコンピュータに人間の意識を移した(肉体は滅んでも精神は不滅?魂はどうなる?)、人格創造の新しい技術を導入してあり(肉体は死んでいるから司法上は故人扱い)、1秒間に1000回株の取り引き無意識でしていると言われている。人工衛星上(無税国家)で巨大コンピュータに増設したZERO(まだ彼は物質的身体から逃れられないが、(ZEROの)推測ではあるがいずれは魔下耕世のようにネットの海に浮かぶ純粋なアルゴリズムプログラムへと進化すると宣言している)が、このゲームに一カ月で課金を1億円をつぎ込んでいると言われ、賭けの胴元であるバンソニー社は損をしないようになってはいるが、モンスターファームは彼の課金だけで黒字になっている。勝負は純粋能力値であり、同じ種類のモンスターは同じ試合では使えないというルールがあり、複数のキャラクター(最低25体以上、控えも考えるならそれ以上)を育てなければ強いチームはできない。能力値の成長は仲良し値がめいいっぱい関わっている。1人では1体しか育てられない、そこで熱心なサポーターにゲームマネーを払って成長を依頼したり、自分の試合以外の試合も他の曜日に研究して有力な3Dモンスターをゲームマネーでトレードしている。ZEROの試合はオッズが1.001であり賭けが成立していない。
モンスターファームのサーバーに来るとアバターの人混みに圧倒される。魔王のアバターとバディを組んだ。こうしているとトイレに行って、中の人が不在の時は通行人を自動でよけて魔王の後をついていく。みな3Dモンスターを左肩に乗せている、モンスターファームに連れてきているだけで仲良し値が10秒間に1ポイント貯まる(1体だけ)、試合に参加すれば勝っても負けても10倍は貯まる(参加3Dモンスター全員)。
「あれ、夕夜と勇者。こんなところで会うなんて思わなかった」ワイングラスのお酒を手にしたエリーのアバターが人混みの中、僕達を見つけた。脳に酔った情報が流されるだけで本当に臓器を使っているわけではない。
若かりし頃の母親セリューン(ハリウッド女優のセリューンは今でも魔女のように美しい)の3Dデータがアバターに使われている、天真爛漫なエリーと違い、美しさにどこか凄味がある。
「相変わらずの変態だな」
勇者はネカマには否定的である。
「勇者。女の身体は男の20倍気持ちいんだぜ」
セリューンはネットマーケットにかなり詳細な情報を提供していたため、昔から問題になった。
「相手は誰だよ」
「太郎に決まってるじゃん、男の身体がどうすれば気持ちいいか知っているしね」
「18禁のソフトを使っているのか」
「悪いことなんて、ばれた事だけだょ、本体が反応する時もあるから、ロボットにばれないようにコンドームをつけてからダイブするのさ」
「こいつはキケンだ」
勇者もあまり人のことは言えないが。
太郎も向こうからやってきた。アバターは国民総番号のマイナンバーに登録してある3Dデータを流用していた。
「お前、勉強以外にゲームをしていたのか?」
「私だってとっかかりは花子が提供した知育ソフトだぞ、お前達みたいにガチンコではしてないけどな、週一ぐらいで貯まった3Dモンスターのチケットとゲームマネーと交換している、ゲームマネーに課金するほどはやってないがな」太郎が出ていく時、ロボットの花子はどうなるんだろう。個人が買える値段ではないぞ、コエプコンにいればロボットは母親になり、恋人になり、介護ロボットになるルートが用意されている。ララに聞けば、花子は借金して、分割払いにしてついていくつもりらしい。「私達にマスターを見捨てる選択肢は少しもない」ララは当たり前のこと聞かないでよ、みたいな笑いかたをした。コエプコン社もバンソニーが提供できるテレイグジスタンス(同じ人間が場所を隔てて同時に存在すること)なそっくりさんロボット(ミクロソフトのロボットと違い感覚がある。本体はコエプコンにとどまっている)を使って選挙にでてみて、ダメだったらコエプコンに戻ればいい。妥協案を出してきたらしい。太郎は気高い理念がある。政治は妥協の産物だが、彼は耳に心地良いことを言って人気取りはしないだろう。コエプコン社は太郎は選挙では民自党に負けるとよんでいる。
「どんなゲームしてるんだ」
「ウェアラブルコンピュータの大航海時代と、ウェアラブルコンピュータ版のシムシティだが、今両方共行き詰まっていてね、お前達に相談してみようと思っていたところだよ」
「大航海時代は3Dモンスターをフィギュアヘッド(船頭像)にできると聞いた事があるが」
「多少つければ船の能力があがるが装備品のフィギュアヘッドでも大して変わらない。今までのヴァージョンと違い、ゲームマネーがあれば強化できるわけではない。ガチャをやって設計図を引き当てなきゃいけない、船も強化アイテムも乗組員も全部ガチャでとりあえず仮の上限70レベルまで育てたが大型帆船や大型戦闘艦が手に入らなかった。乗組員も課金してプレミアムガチャをしてないからレアしか手に入らなかった。対戦イベントなどウルトラレアやスペシャルレアを持っている高額課金プレイヤーがハバをきかせている。マップも空想上のものが、サハラ砂漠に海が2本走っているのを、ラピラズリという空想上の魔法石で差し替える、普通に近い地図ももちろんある。一つの地区に4つぐらいマップがある。地中海から始まるだけどメインシナリオをこなしてマップを獲得していかなきゃならない。地中海自体マップで8ヶ所に分割されている。マップがないところにはいけない、マップミッションがありそれを40こなすと一つにつき1レベル上限が開放される。イベントと経済活動を中心に育てていたから、メインシナリオで行き詰まったから離れた。リアル時間で回復する行動力があり、暇になったから大量にゲームプレイができるわけでない。無課金プレイヤーはこまめにやらないといけない。別に動画とかやってないからメモリーがつまっているわけではないからアンインストールはしてないけどな」
「結構本格的にやってるじゃないか」
「 精子はお前達と一緒だぞ」
「シムシティはどうなんだ」
「あのゲームは、資源を供給しなくても、工場で製品を指示すればなぜかビルを建てる資材が出来てくる。時間も資材毎に違っていて、最初は鉄と木材しか出来ないがだんだん街を大きくする事によって色々な商品や資材がアンロックされていく。序盤は金がないから小さな工場しか買えない、これが騒音がうるさくて住民の満足度がさがる、あんまりほったらかしておくと、引っ越して住民の数がへる、このゲーム住民の数がレベルをあげる。レベルを上げないと色々な商業施設がアンロックされない。都市を発展させて貿易をして「黄金の鍵」を獲得して、「黄金の鍵」で周囲の住民を増やす優秀な施設を作る。単純にゲームマネーで課金すればいいわけではない。
資材をおいとく貯蔵センターを大きくしたり、土地を広げたりするのは、課金で可能だ、資材を作る時間も課金で0にできる。だんだん必要なアイテムが多くなっていくが、貯蔵センターの能力以上にアイテムは作れない、土地を広げるアイテムや貯蔵センターを広げるアイテムはビルから漫画のような吹き出しが出て、それをクリックすることでランダムにもらえる。課金しないと貯蔵センターを圧迫してビルを建てたり大きくしたりするアイテムや貿易のアイテムを貯蔵センターに置いとけない。さすがの俺も無課金プレイでは無理ゲーで、授業で獲得した3Dモンスターのチケットを売った分ぐらいのゲームマネーは課金している。成人になって会社を辞める時、コエプコンが養育費を返せとセコイこと言ってきた時のために現金はなるべく使わないようにしている」
「結構難しいゲームをやっているんだな」
「最初は金もないし作れる物も少ないが都市計画を研究したかったから入口としては良いかと思ったら結構はまった。電気、水道、下水、ゴミの処理などライフラインを作らなくてはいけない。作れる施設も電気は特殊で風力発電や太陽光発電などのクリーンエネルギーも選択できれば、公害を発生する石炭、石油の火力発電所。なぜだか住民に嫌われている原子力発電所。なぜだかクリーンエネルギーを分類されている核融合炉発電所。色々な物が絡み合い核融合炉発電所は大学の建設が必須条件。水道はポンプと貯水池のふたつでどちらも公害は発生しない。下水はパイプ所は公害を発生するが下水処理施設は公害を発生しない。ゴミの処理は集積所や焼却炉は公害を発生するがリサイクル施設は公害が発生しない。
消防や警察や病院も、大きさに応じてカバーする範囲が違う消防のカバー範囲からもれると火事がおこる。警察も範囲内にないと犯罪が多発して住民の満足度がさがる。病院も診察所から大学病院まで種類があるがカバー範囲内に住居がないと伝染病がまんえんする。役場とかの行政機関も作らなくてはいけないが一つ作ればクリックした時に税収が見れるだけで特にゲーム上意味がない。
行政機関は・公園・教育・ビーチ・娯楽・ギャンブル場・ランドマーク・礼拝堂などを建設して住民の満足度を高めなくてはならない。公園はサッカー場やジョギングルートや水族館、教育は教育館や公共図書館やコミュニティカレッジや大学、交通はバスターミナルや飛行船や気球格納庫やヘリポートなどを作るとゲーム上で反映される。ビーチは灯台や船乗りの桟橋やボートの波止場、娯楽はホテルや劇場やエキスポセンターやスタジアムやオペラハウス、ギャンブル場はカジノ本部やカジノタワー、ランドマークは文化局やエンパイアステートビルや自由の女神、礼拝堂は教会やモスクや寺院や現代寺院など。
都市が発達すれば道路も混雑するためアップグレードして二車線や三車線にしなくてはいけない。
工場も始めは騒音のする小さな工場で二つのアイテムしか作れなかったが、工場、マスプロダクト工場、ハイテク工場、ナノテク工場と建て直していく、ナノテク工場は騒音もしないしアイテムを五つ作れる。作られる資材も鉄、木材、プラスチック、鉱物資源、化学物質、テキスタイル、植物の種子、砂糖とスパイス、家畜用飼料、ガラス、電気部品とアンロックされていく、アイテムは原料を用意することなく、製作時間が長かったり、みじかかったりする。1番長い電気部品が8時間かかる。課金によって直ぐに作れる。貿易は船や飛行機に注文の品を搬入すれば「黄金の鍵」がもらえる、ただ4時間か5時間しか待ってくれない。間に合わない時も出てくる。
都市規模が大きくなるとショップが次々とアンロックされていく・資材工房・ホームセンター・家具屋・ガーデニング用品店・アパレルストア・ファミレス・ドーナツショップ・電気店などがアンロックされていく。それぞれ資材を使うことで商品ができビル増築、建設に必要だったり、貿易に必要だったりする。資材工房では釘、板材、レンガ、セメント、のり。ホームセンターではハンマー、メジャー、シャベル、調理器具、ドリル。家具屋ではイス、机、ホームテキスタイル、ソファ。ガーデニング用品店では芝生、苗木、屋外家具、コンロ、ガーデンノーム。アパレルストアではキャップ、スニーカー、腕時計、ビジネススーツ。ファミレスではアイスクリームサンド、ピザ、バーガー、チーズポテトフライ、瓶入りレモネード。ドーナツショップではドーナツ、グリーンスムージー、ロールパン、チェリーチーズケーキ、フローズンヨーグルト。電気店ではバーベキューグリル、冷蔵庫、照明器具、テレビ。先にくるほど使う資材も少なく、製造時間も短い。後にくるほど原料も複雑化して、製造時間も長い。ショップは工場と違い、どの商品も原料がいる。なぜビルを建てるのに食べ物がいるのか分らないが、色々な種類のビルを建てるのにショップの商品がいる。余った商品をオークションにかけることができない。金額の決められた商品をバザーで売ったり買ったりできるが検索をかけることができない。30秒毎に20ある全ての商品や資材が入れ替わるがタイミング良く欲しい物が手に入るかは運の要素が大きい。
災害ミッションもあって、自分の建てたビルを地震や隕石で壊して復旧すると「黄金の鍵」がもらえる。都市規模が増えレベルが40になると全てアンロックしてしまい目的を失ってしまった」
エリーからウェアラブルコンピュータのブラウザゲームをやっていると聞いてはいたが、ここまで本格的にやっているとは思わなかった。
太郎は問題行動はしないし、会社を辞めたいというのは確信犯でコエプコンも困っている。憲法が保障する職業選択の自由を口にする、もはや利益誘導しかない。
蘭・J50・コエプコンのように誰がみてもサイコパスと分かる場合には人間改造プログラムが適用されて、アメリカの神経経済学者が発見した、母親が母乳を与える時に脳内で分泌され、愛情と深く関係している「オキシトシン」を、アガシ(副作用による手足のけいれん)などがおきないよう脳への直接投与。彼女がどれだけ利他的な行動をとるか研究が始まった。ただ「オキシトシン」に関して言えば内集団バイアス(歪んだ偏り)がかかり愛国心を助長して、属している集団にいて他集団を攻撃するときもでてくるため、排他的傾向が高くなり戦争物質ではないかとも言われている。
また躁鬱が激しい緑に関しても人間改造プログラムが適用された。僕らが知っていた道場に来ている時の緑は躁状態でアッケラカンとして明るかったが、ロボットのサファイヤと二人きりになると落ち込んでいて、鬱状態になり、リストカットするのが恐くて近くに刃物を置かなかったらしい。PTSDのトラウマを軽減する「記憶鈍磨剤」気分をコントロールする「気分明朗剤」といった向精神薬(抗鬱剤も含む)が服用では無く、脳への直接投与が行われ性格が明るい方が中心になった。ただ緑のロボットサファイヤが言うには何度か集団授業に復帰をチャレンジしたらしい。ウェアラブルコンピュータで計測した心拍数は変わらないが、ストレスホルモンといわれる血液中のコルチゾールが極端なほど増加した(唾液で計測できる)。人間の感覚器官は外側の情報を集めるだけで、内部の情報(心や内蔵)を取ることが出来ない。耳も皮膚が発達した物である。ストレスとは肉体的、精神的に追い詰められた時の攻撃準備である。精神分析により緑が分類されているゾーンは前兆行動なく突然折れる。自殺するということ。あるいは前ぶれなく相手に近づいて刺す。殺すということ。サファイヤは2時間目に早退させた。
人間改造プログラムが法律として認められる時は激しい議論が巻き起こった。「ポストヒューマンと要らなくなった子供達」と気鋭の精神科医に書かれた。ポストヒューマンとは完全に脳だけの存在になり、知能増強を行い。記憶力も外部記憶に完全に置換され、自分の心の思い出か?クラウドインターネットの知識か?常時接続しているグーグルの情報か?境界が分からなくなり。「自分が何者か」という哲学的問いも自己対話すること無く、AIの自分検索で答えてもらう。行動も政府が作った法律によって検索審査許可され、自分の情熱か?やりたいコトなのか?好きなコトなのか?分からなくなり。200年と言われた脳の寿命もガン細胞の研究が進み幾らでも増量できるようになった。ヒューマンの次に来る者と否定的に書かれていた。
人はたぶん何か生きた証を残したいのだ。自我の外部コピー以上の価値。それが魂の情熱であれば芸術であり、人間愛や遺伝子であるなら家族であり、生き方なら宗教や道徳であり、理想ならば民主主義や共産主義や自由主義や平等主義である。それらが自分が死んだ後も永遠の命を持つと確信している人は死を受容できる。ポストヒューマンが永遠に生きるのを求めるのは自分以外何も残せないからだ。
年金制度は少子化によって事実上の破綻。支給年齢は100歳に引き上げられた。家族を作らなかった孤立の要介護貧困老人は介護難民となりベッドに縛られ夢を見せられ(血液に鉄タンパク質を投与し、外部から神経伝達ヘルメットで磁力で脳内を移動させ、幸福報酬物質ドーパミンの量の最高値を常に維持する)、血液から栄養を輸血で摂取している(棺桶ホテルと呼ばれている)。定年どころか終身雇用制度自体廃除された。ジニ係数といって格差を計る数値はあるが(ジニ係数*1に近づくほど格差が大きく、0.4を超えると社会不安を起こすと言われている)、シロウトにはチンプンカンプン。人体改造出来ない寿命格差が貧困層を直撃した。少子化で凶悪犯罪の件数は減ったが、100人当たりの犯罪発生率と自殺率は順調に伸びていた。多くの日本人の自分と社会に対する絶望は確実に大きく高まっていた。人間改造プログラムの導入に対して生命倫理学者は声をあげて反対した(もともと精神科医が処方する多剤も問題視していたが、薬をだせば出すほど医師と製薬会社が儲かる仕組みは改められなかった)が、政府が人間改造プログラム法の成立に向けて、第三者機関や諮問会議や有識者会議などに、犯罪や自殺を減らしたい社会倫理学者が(話合いがあったという)アリバイ作りに呼ばれ、「人格権」という造語を作りだして批判した生命倫理学者などの反対勢力は入り口で廃除された。
問題行動を起こさない太郎に、コエプコン社は人間改造プログラムを適用することができなかった。
「対戦のあるゲームは勝てばいいけど、負けた時は時間を無駄にしたようで、戦闘のない農場経営シミュレーションでも本格的にして勉強したいのだが、グーグル様で検索したら100種類ぐらいヒットして、マッタリよりリアル指向で何かいいものないだろうか?」
「負けた事が財産になるとスラムダンクでも言っていたぞ、あきらめたらそれで終わりらしい。ウェスタン風で釣りや採掘までできるのがHEY dayというのがある、世界中で一番遊ばれている、畑でいろいろな作物ができたり、動物のエサなど作られる、ソウルメイトと呼ばれる仕事を手伝ってくれる犬や猫などのペットを育てられる。豚、牛、羊、ヤギ、ミツバチなどのいろんな動物が育てられる。ワニの肉や、ラクダの肉や、アルカパの肉や、カピパラの肉などを注文に来たトラックに出荷できる。ディズニーのキャラともコラボしている」
「硬派な所でファーミングシミュレーションがいいぞ」
「アンタ誰?」
「僕の友人の魔王だょ」
「ああ、道路戦士の」
「魔王。彼が政治家に成りたがっている太郎だ」
「なんだったら、民自党を紹介しようか」
「沖縄を中国に取られても、憲法9条を変えられない民自党に用は無い、自分で鉄のような新しい組織を作る」
「琉球って言わなきゃ、人権侵害救済委員会にばれたら、言葉狩りにあうぞ」
「どこの国の誰のための法律だょ」
「まあ、それも生き方だ、否定はせんよ。それより最新のファーミングシミュレーションXはローンを組んで土地とトラクター、輸送車両、収穫機、フォレジハーベスター(トウモロコシの収穫専用機)などの農業機械や、伐採機、つかみ上げ機、切り株カッターなどの林業機械を購入する。トラクターに取り付ける収穫機、耕作機、種まき機(ジャガイモだけは特別な種まき機がいる)、肥料散布機、輸送機、草刈り機、スラリータンク(バイオガス用)、草集め機などのツールもそろえなくてはいけない。日頃はGPSとAIで自動運転して命令を送り、休みの日にバンソニーのフルダイブと連動しているから、ハンドル握ってマニュアルで操縦したり、林業に専念したりできる。大型働く乗り物は男のロマンだろ」
「男の子のロマン?、どちらかと言えば経営に興味があるのだが」
「それなら他のゲームと違って一応マーケットがある。作れる商品は小麦・菜種・トウモロコシ(コーン)・テンサイ(砂糖大根とも言われ砂糖全体の35%をせめる)・ジャガイモ後は肉は売らないんだけど、羊に牧草を与えてウールを作り、鶏にトウモロコシを与えて卵と鶏糞を作り、牛に牧草を与えてミルクと肥料を作ることができる。販売先というか建設してある工場が敷地内にあり、ステーション・港・宿屋・製粉工場・パン屋・バイオガス工場(穀物やモミガラを出荷して肥料を作ることができる)・バイオエタノール工場(穀物から油が作る)・木を集めて浮かべておく貯水池・製材所・紡績工場がある、同じところに同じ物を供給するとマーケットの価格がさがり利益がでないからバランス良く作り、販売するところを分散する」
「戦闘ゲームしたくないのなら、南の島に観光地を作るゲームもあるぞ、マルチ(複数人)で作ることもできるが太郎の場合はシングルだろう。フルダイブして設置した遊園地に友人を誘って遊ぶことができるぞ、ジェットコースターとか好みに改造できる。チャットルームとして開放することもでき(お金はかかるけど)、水族館の要素もあり、アクアリウムを作り熱帯魚や貝やイルカの養殖もできるし、温室栽培の果樹園ではバナナや砂糖キビを作ることもできる」勇者が付け加えた。
「なんか、女の子向けポィな」
「戦闘がなければ基本ガールズ向けだょ」
「宗茂も来ているよ、今から試合があるんで応援に行かないか?」
「どんなゲーム?」
「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツのこと)で有名なMOBA(マルチプレイ・オンライン・バトル・アリーナ)のleague of legends(99.9%コレ)のフルダイブ版。プレイヤーキャラクターのチャンピオンを3Dモンスターの焼き直し、世界観は「行き過ぎた魔法は科学に似る」がキャッチコピー、SFポク仕上げている。ミクロソフト社との競合がもっとも激しい分野。バンソニー社が社運をかけていると言われている」
league of legendsはもはや国別対抗戦の様相を呈し、全国大会に出場する時は首相官邸に招かれ出陣式が行われ、まかり間違えて全国優勝しようものなら総理大臣自ら表彰される。
eスポーツもファンタジースポーツとして架空や実在の選手を集めてサッカーをするというのが人気が先にでたが、管理者の1人が不正をしていることが発覚し、集団訴訟が起き会社は潰れた。ファンタジースポーツの失敗をバネに企業は公正であることが求められている。スポーツ団体がスポーツゲームの運営に乗り出し、全国優勝者はワールドカップの表彰式に招かれている。
「身も蓋もないな」
「マイクラで有名なサンドボックスゲームをブロックメイキングRPGというがごとし」
僕達は3Dモンスター&ヒーローズの会場に移動した。
スタジアムが作られていて、戦場全体を見下ろす形になっている。選手の中に宗茂を発見した。魔王が暗黒色の洋風の鎧なら、宗茂は赤備えの和風の鎧、円形月のカブトをかぶっている。まだ試合が始まってないからアバターはいつものヤツ、50種類ぐらい二足歩行のプレイヤーキャラクターが登場する。試合が始まってキャラクターを選択したらスキンが変わる。
ゲームは丸いドームの中で行われ、視界が自分の周辺しかない、魔法暴走後の廃墟で行われる。赤チームは右上に本拠地があり、青チームは左下を本拠地のある。lolのネクサスに当たり、本拠地を破壊されると敗である。試合時間はだいたい30分で決着する。純粋に敵を倒すだけでお金と経験値が手に入り、リアルタイムストラテジー(RTS)のように生産を全く考えなくていい。
左上がトップ、対角線上の真ん中がミッド、右下がボットと呼ばれ主たる戦場になる。本拠地から続く道はレーンに当たるのがロードと呼ばれている。ひとつのロードに4つほどのタワーに当たるトーテムポールという防衛施設が配置されて、近づく敵を飛び道具で廃除する。レベルの低い内に近づくと一発死である、死んだら本拠地で復活するがレベルが上がるほど復活にかかる時間が長くなる。
このゲームの場合は60秒後ミニオンにあたるクローンと呼ばれる、腰の高さほどの2頭身の3Dモンスターの垂れ流しが始まる。ロードの間には廃墟と呼ばれる中立地帯があり、キング、クィーン、ビッショプ、ナイト、ルーク、ポーンと名前が付けられた突然変異と呼ばれる中立モンスターが配置され、誰かがコレを倒すとチーム全体に恩恵が加えられたりチーム全員にお金が配られるが、序盤はポーンを倒すのがせいぜいでキングやクィーンはマックスレベル20まで育てたキャラクターによる5人総がかりで当たらねばならない。倒すと恩恵がでかく試合を決定する。
垂れ流されるクローンを倒して経験値を獲得してレベル上げを行う。トドメの一撃を加えるとお金が手に入る。このゲームは自分の武術を持ち込む事が出来ない、キャラクターにもよるがMPを使ったスキルでしかHPにダメージを与えることが出来ない。つかみや投げや押すことも出来ない。ある種の無敵範囲にスキルでしか入ることが出来ない。スキル毎にクールダウンと呼ばれる次の攻撃の準備時間があり、相手のスキルがスカッた時が攻撃のチャンスであるが、1レベルの時はスキルがひとつしかない、5レベルで二つ目、10レベルで強力なスキルが手に入る、15レベルで更に強力スキルが追加され、20レベルのマックスになると超絶スキルが選択できる。それぞれのキャラクターにスキルが5個、強力スキルが3個、超絶スキルが2個用意されている。同じキャラクターでも全く違うように育てられる。HPに対してスキルの攻撃力は小さいから10レベルの強力スキルが手に入れてからプレイヤーキャラクター同士の殺しあいが始まる。
プレイヤーキャラクターにも3Dモンスターの特徴の相性が持ち込まれている。キャラクターの成長はスキルだけでなく、本拠地でお金を使ってチューンナップができる、戦況に応じて攻撃力や防御力や移動力を強化したり、相性を強化したり打ち消したり出来る。買い物もツリーになっていて底辺の内から購入を計画するのも戦略のひとつである。5秒ほど時間がかかるが本拠地にテレポートするリコールという能力は全員持っている。
オッズがでてくる。宗茂が8倍で敵が1.5倍。
「なんだ。この差は」
「情報によると、向こうのチームにlolのプロが転向してきたらしいぞ」
向こうは6人準備して1人純粋な司令官がいるのに対して宗茂側は5人で、しかも宗茂によるプレイングマネージャーである。戦いながら全体を把握して命令を出さなくてはいけない。僕らは未成年だから一試合に1000ゲームマネーしかつぎ込めない。魔王を含めて全員宗茂に1000ゲームマネーをはった。
「行けー、宗茂。大物食いだー」エリーが声援を送っていた。
試合が始まり、空中にキャラクター選択画面が広がる。1人ずつ交代で選択する。使いやすいようにみんな二足歩行の擬人化されたモンスターか、もともと双つ名をもつヒーローかに限定されていた。赤、緑、青、黒、白から10名ずつ合計50名の中から選ぶ。アーティファクトなど無色の3Dモンスターはない、ヴァージョンアップででてくるのか、このままチューンナップの材料のままか、それは今のところ僕らにはわからない。
このゲームは毎回毎回1レベルから成長させる、何もゲーム前に持ち込めない。純粋なプレイヤースキルとチームの戦略のみが試される。プレイヤーキャラクターを選択した時アバターのスキンが変化する。そしてスタートした。
本拠地に全員が集められ初期所持金で買い物してから、それぞれトップに2人、ミッドに1人、ボットに1人、廃墟に1人行きポーンを狩りに行く。やがてクローンの垂れ流しが始まるとボットを2人にして効率よくキャラクターを育てる。
プロといっても一匹狼で賞金で生活しているわけではなく、配信動画の解説を行ったり、自分のプレーをアップロードしてゲーム実況をしながら広告料で生活している。世界クラスや日本代表になると5人が共同生活を行い、世界リーグに参加して毎日強豪とマッチングしている。エリーがネットで曝されている情報を口にした、それならば宗茂にも勝ちの目があるだろう。実際10レベルになり強化スキルが解放されると宗茂がプロのkill(殺す)のに成功した。
「おおおおおお〜」
会場がどよめいた。
宗茂が中立地帯の突然変異を倒しながら各地でサポートした。プロが復活する度宗茂に挑むが度々返り討ちにした。後半はマックスまで達したプレイヤーキャラクター達が一かたまりになり決戦を行うが、宗茂側がトリプルkillに成功、残った敵側は退却して宗茂達は余裕キングやクィーンを倒し恩恵を獲得して敵本拠地を破壊しゲームに勝利した。
「プロのくせに何やってんだょ」ハズレを引いた者達の怒号が巻き起こる中「大物食いだー」とエリーがはしゃいでいた。
ゲームが終わり宗茂がこっちにやってきた。選手には試合が終わると自由な仲良し値をバンソニーが提供してくれる。カードを提出するだけでいい。
「宗茂凄い」エリーが抱きついた。
「プロも戦略はともかくフルダイブのゲームには慣れていなかった。間合いの取り方が下手だった」
「格闘技をやっている僕達5人が宗茂の指揮の下ゲームに参加すれば無敵になれるんじゃないか」
エリーがはしゃぐ。
「私はパスだ、集まって練習するより、政治家になるため家でウンチクによる基礎固めをしなきゃならん。代わりに緑でも誘ってやれよ、お兄ちゃんとか呼ばせているんだろう。戦隊物は女が2人いるのが常識だからな」
「H世代は太郎、お前も含めて緑のお兄ちゃんだ」
「遺伝子照合したわけではあるまい、ただの妄想だょ。お前は優しいな」
「フォア・ザ・チーム(チームのために)に徹しないと、単に格闘技をやっているから、単に道路戦士の強者だからと言って勝てるものでもない。間合いの取り方が少しは有利かもしれないけど」
普段は無口な男だが宗茂もゲームのことになるとけっこう話す。
「お前はゲームばかりしているからダメかと思っていた。でも、違うんだな。お前は誇り高い男だ。夕夜。友人になってくれ」手を差し出してきた。ララが太郎と親しくはしてはいけないと言ってたけど、僕はその手を握った。ララに秘密を持った。プライバシーがどの程度守られているか?それはわからない。ネット上でピンチに合えば、なぜかロボット達はタイミング良く現れて助けてくれる。コエプコンもネットでサラシ物になるわけではないから、ロボット達に守秘義務を課し、子供達のネット行動やメールの管理など自由にアクセスする事を黙認している。デジタル・サイネージ(看板型情報端末)などから顔や網膜認識されて「なぜ僕の必要としている物が?」と道路に大写しされて戸惑うことがある。
「友人と恋人って、どっちがいいのかな?」
「そんなもん、人に聞くもんじゃねぇ。個人が決めることだ。自分自身のみに聞くんだ」
エリーの質問に勇者が答えていた。
「ふんじゃな。私は家に帰って見聞を広める」
勉強と言わない所が凄い。まあ、完全記憶もあるしな。背を向けて少し歩いてから消えた。
「彼は出て行く人なんだな」エリーがため息をもらす。
振り返らない。それがどこか切なくて。情緒的。
「出て行ってもネットで会えるだろう」
「勇者は味気ないなあ。心の機微がわからないんだから」
今日はもう宗茂の試合がない。5人で賭博場を回った。僕は損はしなかった。解散してみんな家に帰る。
ララから食事を渡される。
今日は勇者がアップデートしているweb小説を読んだ。友情というより腐れ縁かな。感想を聞かれるけど「勇者ワールドを作ればいいんじゃない」と答えた。読み終わると検索エンジンが僕に向いている戦記もののライトノベルを紹介してくれる。「キーワード検索」の時代は終わって「セマンティック(意味)検索」の時代になった。エリーが配信している動画(ネット上のリズムダンスゲームで全国大会で優勝していた)や、宗茂が配信してるタワーディフェンス型のゲームの攻防(信者に囲われていて、複数の大人からSNSで公開している口座に毎週現金が振り込まれている)をウェアラブルコンピュータで流しながら、電子書籍のライトノベルを読んだ。ライトノベルなら10分で一冊読める。
今日もララとのいつもの儀式(筋トレ、柔軟、キックミットも含む)をすませて、寝た。
20XX年10月23日日曜日
今日もララは7時に起こしてくれる。
プロゲーマーの魔王は日曜日はイベントにかり出される。
食事を終えたら、ネット上で告知されているゲームの大会を検索した。コエプコンだけが格闘ゲームを作っているわけではない(僕も格ゲーだけを遊んでいるわけではない)。ナムコナミも「アイアンフィスト」という、10連コンボがベースの格ゲーもあるし、「鉄鋼機械・弾丸」という銃器や爆弾を使ったり隠密潜入を楽しむチームバトルもある。SAGEではパンチ、キック、投げ、浮かせ、下段、中段、上段、ジャンプ、ダッシュなど組み合わせて頭の中でトリガーを引けば、距離に合わせて勝手に技がでる「ポリゴン戦士」(流派によって技や構えが違う)や丸川書店の小分けした下請けレーベルの人気キャラを集結した「丸川オールスターズ」というアニメ調の格ゲーがある。朝鮮(韓国財閥は解体され、多くの金持ちが粛清された。株式市場は廃止され、会社は全て国営化した)のゲーム会社の「戦士王」や残虐表現を売りにしている刀を使った「侍精神」などもある。また映画「星戦争」の世界をコピーした帝国軍か反乱軍に所属して銃を撃ったり、戦闘機を操縦したりできる中国産のeスポーツもある(著作権を有する知的財産の使用保護期間を巡ってアメリカは法的措置を実施し、国際司法裁判所で争っている)。ウェアラブルコンピュータでは5秒程待てば対戦をマッチングしてくれる2D格ゲーが多数ある。第二次世界対戦中の兵器をカスタマイズして戦場で戦い合う「戦車の世界」や「戦艦の世界」など7vs7や5vs5や10vs10といったチームバトルがあり、「戦車達と少女達」や「ARPEGGIO OF BLUE STEEL」などのアニメともコラボしている。スキマ時間ならともかく時間がとれた日曜日フルダイブのゲームを思いきりやりたい。
インディーズ系のサードパーティー(ウェアラブルコンピュータの無料化開発エンジンUAEXみたいにタダで提供されればフルダイブのゲームは今の10倍を超えるだろう)「重力支配」がバージョンアップされて対戦ができるようになり、早速ネット上でゲームマネーの賞金が出る大会が開かれる。とりあえずエントリーしてみた。
予選開始が10時からだからそれまでカンを取り戻すため練習を始めた。ヒットポイントは固定だが、重力を自在に使いこなすため、4つの能力値がある。空中浮遊したり、空に落下したり、物を浮かべて投げつけたりするのに重力エナジーというゲージを消費する、ゲージが無くなれば自由落下してダメージを受け、下手すれば一発死である。
ひとつはヒットポイントの下に表示される重力エナジーのゲージの総量を引き上げる。単純な空中浮遊だけではそんなには使わないのだが、自由な方向に落下すればそれなりにゲージを使うし、必殺技を使えば使用量はハンパではない。
ひとつは重力エナジーの回復速度、地面に降りて何も使っていない状態にすれば、能力値のレベルに応じた速度で回復していく。
ひとつは重力のパワーである。床に置いてある、机やイスやゴミ箱の重力を奪い、自分の周りに巻き上げ、飛び道具や防御用の盾として使える、巻き上げる重さや数に関係してくる。
ひとつは落下速度、レベルが高いほど落ちる速度が速い。メイン攻撃手段である重力キックは移動距離に応じてダメージが決まる。追尾性能がないから、敵の移動先を予測し、ある程度の速さがないとスカッてしまう。
必殺技は三種類ある、重力キックの逆で、手を伸ばしてきりもみ状態で回転しながら突撃し、相手を引きずりながら多段ヒットするドリルアタック。重力ボールを発生させ(最大8個、1個をゲージの許す限り大きくすることもできる)、視覚の中にあればどこまでも相手を追尾する。相手の死角に回りこめない遠距離戦用である。至近距離で超重力で相手を地面や壁に数秒間押さえつける技で空中で使えば弾き飛ばすことができる(飛び道具も弾き飛ばせる)。
重力エナジーが空になって落下した場合はペナルティとして、ゲージが完全回復するまで能力を使うことができない。敵にとっては攻撃チャンスである。
通常攻撃は自前の物は持ち込めない。バンソニーだから投げとかできるのだが、ヒットポイントとかに影響を与えない。前蹴り、前蹴り、回し蹴りのコンボだけが重力エナジーを使わずにダメージを与える、回し蹴りが終わると、ごていねいに1秒ほどスキがある。不満がないわけではないが、そういうゲームだと割り切るしかない。
ゲームキャラクターは一応能力値を全部上限の10レベルまで育てたのだが、大会では全ての能力値が1レベルにもどされ、10ポイントを最大5レベルまでで振り分ける形式になった。
ゲームではストーリーの案内人として黒猫、カラス、黒のメイン3Dモンスターから選択できるのだが、対戦ではついてこない。
重力スライドと言って地面の上を高速で移動する技がある。壁方向に重力をかけて走ったり、ジャンプしたりできる。これは地面の上は這いずりまわり、相手の死角に潜り込み、重力ゲージが少なくなっていると計算したら、高速で近づいて必殺技を叩き込むゲームだなと、戦略がまとまったら(戦略は細部にあらわれる)予選開始10分前になっていた。
予選は10戦して勝率を競う、僕は全ての試合で勝ってトーナメントのベスト16に入る。予選ではみんな空中移動して僕のように地面を走り、能力を少しずつ使って街の中を走り回る人間はいなかった。昼の休憩をはさんで本戦がはじまる。僕はなんなく4つ勝って優勝して賞金の100万ゲームマネーをゲットした。ゲームは駆け引きがあると楽しいのだがこうなるとただの日常業務。ピヨッピーと魔王の伝説に花をそえた。新たなる1ページを加えた。
3時には終わった。日曜日の魔王は帰宅が何時になるかわからない。コエプコンが龍先生の監修のもと100人組み手が配信されている。1試合毎にルールが変わる。関節技や顔面正拳が強いリアル志向である、プレイヤーは少ないが勝率が9割超えるとゴールデンチケットがもらえる、龍先生の趣味で作ったとしか言えない。1試合50秒で休憩が10秒、だいたい 2時間程で終わるから早速挑戦した。毎回9割は勝てた。今日も例外ではない。ゴールデンチケットを獲得した。
5時になってチャットルームに移動したが、魔王はまだ来ていなかった。ブロックメイキングRPG「アルカナ・ビルダー」に先に行くことにした、チャットルームにいなければ無料電話スカイプにかかってくる。
ターン制の多い二エクスの幻想シリーズに対してアクション要素の強いものになっている。オープンワールドゲームのうち「サンドボックス」と呼ばれる形式に近い。
フィールド内に存在する山や木などのブロックにHPのような耐久値を0にすると壊れて10センチ角になり、手をかざして道具入れに収納する。木槌や斧で壊すことで素材を集める、岩とか鉱物とかは金槌や鉄の斧、更に作業台や神鉄溶鉱炉などでレベルが高い鋼シリーズができる。1m角のブロックを置いて毒沼やマグマ、空の上を渡れる。プレイヤーキャラクターはジャンプすることができ、従来の幻想シリーズでは移動できなかった「高山」も登ることができる。
集めた素材からは「やくそう」などの消費アイテム、武器や防具といった装備品、木の箱や扉・ベッド・看板などの建築用材料や家具、トラップなど様々なアイテムを制作できる。アイテムの制作方法が記されたレシピはアガペ(神の愛)ポイントを支払ったり、町の人や特定の素材の入手で習得できる。
装備品は武器、防具、盾、アクセサリーの4種類があり、武器は最大5つ、アクセサリーは2つまで装備できる。剣は横に振り、広範囲の敵を攻撃でき、金鎚と斧は縦に振り、物を壊しやすい。だいたい1m角だから縦振りでジャンプすれば3mの上の段まで壊せる。アクセサリー以外には耐久力が設定されており、攻撃を加えたり受けたりしていくうちにダメージ量ではなく回数で壊れる。
ブロックや椅子、ベッドなどの建材や家具を組み合わせて建物を作って行くと町の人達が住み始め、街が復興していく。建物として成立する条件は1mブロックによる2段以上の囲みに明かりと扉を設置することで、そこから内装を飾り付けることでアガペポイントが貯まる。このゲームには設計図が存在し、図面通りにブロックやアイテムを置くことによって誰でも目的の建物を作れるようになっている。他にもモンスターの侵攻により壊され廃墟となったお城もあり、これを修復したり、自分なりに改造したりもできる。
町の人達は町の発展やフィールド上から救出することで増えていき、素材の入手先や他の住民の情報を教えてくれたり、集めたアイテムを収納箱に収めたり町に攻め込んだモンスターと戦うなど様々な面でプレイヤーキャラクターをサポートしてくれる。町の人はキャラクターに様々な頼みごとをすることがあり、これらをクリアして、素材アイテムやプレイヤーキャラクターや神の召喚軍団を育てるアガペポイントなどが貰える。
与えられた島は空中に浮遊している、フィールド内には悪魔の手下のモンスターが徘徊しており(浮かんでいる別の島には門でしか移動できない)、天界から地獄へと下の島に行くほど悪魔が強くなる(同じ悪魔でもレベルがあがる)が、希少アイテムも手に入れやすくなる。遭遇するとアクションバトルになる。主人公は自作した武器や防具、トラップを利用してモンスターと戦う。ブロックを設置して、敵の火の玉を飛ばす呪文を防いだりもできる。またスライムを倒すと「青い油」が手に入ったりと、モンスターを倒すことでも素材が入手できる。
モンスターの攻撃、あるいは高所からの落下ではダメージを受け、HPが減る。HPが0になると死亡となり、アイテムの一部を失って町に建てた希望の旗で復活する。失ったアイテムは死亡した場所に行けば再入手できる。また満腹指数があり、腹が減っていない状態ならHPは時間の経過で少しずつ回復していく。逆に満腹指数が0の時はHPがじょじょに減っていく。
ある程度街を発展させると、悪魔が門を開いて攻めてくる。プレイヤーキャラクターは町の人を誘い最大4人でパーティを組み倒しに行ける。町に襲って来た時は町の人たち総出でボコボコにする。この場合はモンスターはアイテムをドロップしてくれるが、アルカナカードで召喚した軍団ファントム・レギオンで倒した場合のアイテムをドロップしない。建物や土ブロックを破壊した時も素材アイテムにならない。プレイヤー同士がファントム・レギオンで戦った場合は誰も得しない。
ファントム・レギオンは召喚されると5分間とどまって戦うが、5分間たつか、プレイヤーが天界に戻すと10分間同じユニットを召喚できない。アルカナに対応して22種類あるが、アルカナカードのレベルより相性が影響される。戦車とヘリコプターの相性は1対60というが、そこまでひどくはないが、得意と苦手が戦えば1対10ぐらいの差ができる。移動力、攻撃力、防御力、スキルなどがありアガペポイントをつぎこんで育てる。1〜10レベルはレベルの2倍つぎこめば次のレベルにあがる。10〜15は3倍。15〜20は4倍、21は5倍。レベルの上限は21レベルである。つぎ込める能力は以下の通りである。
・精神力 30秒に一回だった強力な全体攻撃がレベル毎に1秒ずつ減っていく、最大の21レベルになれば9秒に一回できる、全体攻撃中でないとスキルを使うことがない。このゲームは陣形が2列縦隊・3列縦隊・正方形・3列横隊・2列横隊の5種類しかなく、敵が攻撃内に入れば、全体攻撃か散開攻撃か選択でき、散開しだしたら「集合」の合図がかかるまで、自分の距離をとりながらバラバラに行動する。全体に攻撃回数があがり、隊列を組んでないから狭いところでも自由に移動できる、横隊は攻撃参加者は増えるが城門など移動できないところが多い。縦隊は攻撃参加者は少ないが狭いところでもプレイヤーキャラクターの後をついてくる。草原より狭い道路の方が移動スピードはあがる。プレイヤーキャラクターの隊列上の位置は、先頭、中間、最後尾と選択できる。
・収納 0レベルの時は矢弾の数は1つだがアガペポイントをつぎこんで最大21レベルになれば22個(本)に増える。最高レベルはそれなりに精神力を育てないと、全部打ち込むこと無く天界に帰る。
・耐久力 殴られてもよろめかなくなる。状態異常や魔法の効果から回復しやすくなる。落馬しにくくなる。毒のダメージを減らす。
・統率力 最初0レベルの時は一人、レベル毎に一人増えていき、最大22人になる。
・研究 装備品が良くなり効果範囲とスキルの持続時間が増える。火薬兵器や魔法ならダメージが増える。毒や火焔などの状態異常の効果があがる。
・防御力 斬り/殴り/突き/射撃/砲撃/魔術などの種類があり、そのユニットが得意と苦手がすぐにわかる。レベルがあがると全体があがるが、防御得意な防御値は更に追加してあがる。
・攻撃力 ユニットによって攻撃に特性がある。レベルがあがればダメージが増える。
・移動力 ユニットの移動速度が増加する。
・レベル 上の8個の能力の内最高値が適用されている。レベルに応じてHPは増える。レベルの数値は頭上に輝いていて相手からも分かる。プレイヤーvsプレイヤーではユニットの人数とレベルと相性をみて、駆け引きする。
アルカナカードは22種類あり、正位置と逆位値がある。シングルシナリオでイベントをこなしてもらえる。
*0愚者 ゲームのチュートリアルが終わったら神からもらえる。正位置は楽士は太鼓を叩きながらバトルソングを歌う周囲の味方ユニットの能力が上昇する。基本ユニットの人数分しか効果がない。スキルを使うとバイオリンに持ち替えスリープをおこる。ターゲットユニットが30秒寝る。研究で効果がのびる。逆位値で使うと竪琴を持った幻覚使い(イリュージョニスト)は他のユニットに外見だけ化ける(攻撃力はない)。スキルを使うとトランペットに持ち替え葬送曲を奏でるとアンデットがスリープ状態になる。スキルは効果時間が書いて無い場合5〜26秒しか持たない。研究すれば次に使う間隔が短くなる。だいたい16世紀の西洋が題材になっている。この頃は鉄砲が現れ始めて、洋の東西を問わず少年兵に笛や太鼓を演奏させながら突進させ、一斉射撃が終わったら再装填までに精鋭が突っ込んでいく戦術が採用された。
*1魔術師 カードは初めて物を作った時もらえる。正位置では魔導士は魔法の指輪で殴る、ダメージはそんなにないが属性は魔法である、スキルは氷魔法で氷の柱が地中から上昇して足止めする。騎兵の機動さえ止める。逆位値では森人は木の杖を装備している、殴ればマジックアイテム扱い。スキルは電撃を落としてダメージを与える共に能力値がダウンする。
*2女教皇レシピ病院を作った時もらえる。正位置の巫女は周囲の味方のHPを回復する。スキルはアンデットに効果がある聖属性の効果を与え、食らったアンデットは麻痺する。ファントム・レギオンは誰かに指揮されないと、召喚時の隊列のまま動かずに射程内に入った敵を攻撃したり、味方をサポートしたりする。指揮される部下になって初めて機動するしスキルも使える、複数のユニットを召喚して指揮するユニットを変更するのはアリであるが、召喚から5分たてば1度も指揮されなくても天界に帰る。男が指揮しても性別が変わることはない。逆位値は天使は近くのユニットの蘇生を行う(HPは10分の1)。いちおう飛行ユニット。スキルは周囲の状態異常を回復する。
*3女帝 レシピ厨房を作った時もらえる。正位置はクロスボウで頭上から降らせる曲打ちを行う。スキルはクロスボウが合体して1つのクレィンクィンという人間より大型な(大きさは統率力に左右される)クロスボウで人間くらい身長がある矢が真っ直ぐ飛んでいく、石垣以上の強度の壁にぶつからないと限界射程まで引きずる。角度は調整できるが移動はできない。逆位値では車輪のついた投石機で石のつぶてを4×4の範囲に雨のように降らせる、射程は大したことはないが攻撃属性が殴りになる。スキルを使うと合体して100m程飛ぶ遠距離用になる、逆に短い所には当てることができない。ファントム・レギオンにより破壊された素材は消えてなくなり回収できない。方角の調整はできるが移動はできない。プレイヤーvsプレイヤーではこいつを見たら籠城を止めて、うってでてくる。4×4の石を町の中に放り込まれたら(そして建物が壊れたら。壁を石垣以上にしてると一発では壊れない、粘土や木材だと一発で壊れる)今までの苦労が水の泡である、希少素材のある地獄に近い島ではバッティングすることがたまにある。
*4皇帝 レシピ工房を作った時もらえる。正位置はマスケット銃は攻撃属性は砲撃。スキルは神から再装填してもらい、全体攻撃の後好きなタイミングで1回連射ができる。逆位値は大砲であり統率力にアガペをつぎ込むことによって1つの大きさがだんだん大きくなる、0レベルで直径2mだが21レベルになると直径4mを超え、20人で移動させ再装填する。スキルはブドウ弾で角度は45°の放射線上に広がる。
*5教皇 レシピ教会を作った時もらえる。正位置は聖戦士は盾と共に装備するメイスか両手用のモールか選択できる。スキルは絶対魔法防御。逆位値では十字軍は盾と共に装備するモーニングスター(鎖の分リーチがある)両手用の3チェーンフレイルか選択できる。スキルは聖光で周囲のアンデットにダメージを与える。
*6恋人 最初に町の仲間になるプリンちゃんの依頼をこなし、報告したらお礼にもらえる。正位置では自分の副官としてファントム・レギオンを指揮できる女体化した3Dモンスターが現れる(女体化率は50%〜100%まで可能で、100%になると瞳が猫目で小さな角があるぐらい。ほとんど人間と変わらない)。優秀なAIで口頭で命令を伝達すれば可能なかぎり答えてくれている。能力値をキチンと育てないとユニットの能力は副官の能力以上はだせない。3Dモンスターの容姿に使うだけで別の3Dモンスターに変えても成長させたアルカナカードの能力は変わらない。個人の事情により好きな3Dモンスターの仲良し値を上げるためゲームに連れてくる。スキルは加速で移動速度と攻撃回数が増える。逆位値は5分しか持たないが普通のNPCと同じようにパーティが組める。この場合、装備はこちらで用意しなくてはならない。このゲームは能力は装備で全て決まる。この状態にかぎり素材を壊してアイテム化できる。
*7戦車 馬を仲間にして鞍をのせて走った時もらえる。正位置は赤枝の騎士団(ナイツ オブ レッド ブランチ)は重装騎兵で盾を装備している馬上槍で槍は剣に強く、剣は斧に強く、斧は槍に強いの3すくみが採用されている。序盤はショートソードで武装したゴブリンとゴブリンシャーマンが主流だから、このカードを育てて何も考えずに突っ込めばたいてい何とかなる。スキルは突撃で敵は混乱する。逆位値はラクダ兵で騎兵に対してボーナスがある、馬よりラクダは身体が大きいから馬がビビったという十字軍時代の故事にならった物で、武装は三日月剣で突き攻撃と切り攻撃の2つの属性がある。スキルは1枚の魔法の空飛ぶ絨毯に変化、5分しか持たない。
*8正義 初めて悪魔を倒した時もらえる。正位置は大楯歩兵、身長より大きい盾を使う、陣形の正方形になればあらゆる方向からの攻撃をカバーする(2列横隊で1方向に対する強力な壁もありである)、真ん中の兵は頭上に大楯を掲げる、攻撃は盾による殴りで防御特化型であまりダメージは与えない。スキルは防御点を上げるプロテクション、こうなると唯一の弱点魔法以外有効打がない。逆位値は両手剣歩兵は槍を叩き折る巨大な剣。かつてドイツ傭兵とスイスの傭兵(パイク兵)はライバル関係にあり、スイスの大男が持ったパイクによる槍衾の長柄を叩き折るのを戦術とした。日本刀のように正眼に構えることなく重いから常に振り回し続ける。ゲーム上では苦手な相性もないし、移動力は歩兵では最速。防御力が全体的に低く飛び道具がくると困る。16世紀染めやすいインドの綿が流行して派手な衣装を着ていた。スキルは敵の1人を浮かべあげ隊列を破壊する小さな嵐サイクロン。
*9隠者 レシピ調合室を作った時もらえる。正位置は学者 両手で分厚い本を握り殴る。スキルは近くの味方の武器に火属性をつける。逆位値は人工人間で、突いたら燃える火焔槍を装備している子供の姿。スキルは懐ろにある火薬に火をつけて突進する。特別攻撃で一回使用したら自分も死んでしまう、破壊力は『収納レベルー火焔槍を使った回数』
*10運命の輪 悪魔の軍団をファントム・レギオンで倒した時もらえる。正位置は偵察騎兵は平地の移動力が一番早い。スキルは剣装備しているが魔法属性になるソニックウェーブ。逆位値はモンゴル騎兵で弓を装備して走りながら後方を攻撃できる。スキルは1点集中攻撃。
*11力 初めて武器装備を作った時もらえる。象兵で騎兵に所属する。三人位乗っていて両側を戟で攻撃する、スキルはワイルドスタンプという立ち上がってからの踏みつけ攻撃、指揮する時は操縦者で後ろの左右2人に攻撃を指示する。逆位値は巨人である。統率力を成長させることで1人の大きさが大きくなる。0レベルの3mから始まって21レベルになれば5mを超える。棍棒で武装していてスキルは地震は一度飛び上がり地面を殴りつける。周囲の敵は転倒する。指揮する時は左肩に乗っている。
*12吊るされた男 初めて死んだ時もらえる。正位置はバイキングで盾と斧で武装しているが、序盤は敵は剣装備が多く、相性の関係で出番がない。スキルはバイキング船に変化する。大きさは統率力に関係するがスピードは移動力でオールでこいでくれる。溶岩や毒沼もダメージなしで渡れる。5分で消える。緊急用であり、船は自分で作り、自分でこいだ方がいい。逆位値は狂戦士で両手斧を装備していて切り属性と叩き属性がある。スキルは風車のように振り回すアーマーブレイク、防御値が10分の1まで下がる。
*13死神 レシピ墓地を作った時もらえる。正位置は戦闘工兵 でハシゴや馬防柵の組立、穴掘り、トラップを設置。投斧で装備しているが名前の通りあまりダメージは望めない。スキルは敵のトラップを無効にする。逆位値は暗殺者で毒の帯びたダガーで攻撃、踏み込めれば手数で相手を圧倒する。研究を高めれば毒の攻撃が下手な武器より強くなる。スキルは毒の治療。
*14節制レシピ農場を作った時もらえる。正位置は一角獣で武装は角と魔法錫杖による攻撃、属性は突きと打撃。スキルは状態異常の無効化。ファンタジー界のスケベ角馬と呼ばれ処女しか背中に乗せない。男が指揮する時は角付き覆面をつけた馬になる。逆位値は天馬で投げ槍を装備している。魔法の抵抗力は高い。スキルは魔法反射で魔法の攻撃を本人に反射する。
*15悪魔 レシピトラップウォールを作った時もらえる。正位置は狼男で4本足で移動し、森林や山岳地帯も踏破できる。遠ぼえで音楽をかき消す。スキルは2本足で立ちマヒの能力を持つ爪で攻撃する。逆位値は吸血鬼アンデット(スリープなどの精神魔法が効かない)に属していて、魔法か魔法の武器か聖別された物でしかダメージを受けない。つかんでカミカミカミしてHPを回復しながら戦う。スキルは魅了で相手ユニットのコントロールを奪う。
*16塔城壁と城門で町を囲った時もらえる。正位置は密集隊形歩兵で槍で武装して三段突きをする、スキルはビーストバスターで槍を投げて動物や騎兵に突き刺さり、移動力を半減する。逆位値はスイスの大男によるパイク兵で、16世紀は銃剣が採用されるまでマスケット銃をパイク兵で守り、入れ替えながら戦線を維持するのが主流だった。スキルは槍衾で相手ユニットの突撃ダメージを反射する。
*17星初めて鉱物を手に入れた時もらえる。正位置は女NPCでユニットを指揮できる。好きな名前をつけ、エディットで好みに作り、口調や声優を選択できる。スキルはマイティアームで攻撃力と近接武器なら攻撃範囲、飛道具なら飛距離がアップする。逆位値では3Dモンスター同様NPCキャラクターとしてパーティに加えることができる。5分しか持たないが。
*18月レシピ温泉を作った時もらえる。正位置は10cmぐらいのピクシーでダメージは与えないが、チクチク攻撃してスキルを使わせない。統率力1につき10人増える。スキルは霧を発生させてあらゆる種類の感覚を奪える。逆位値は精霊で植物を意識した緑の服を着た耳の長い人、武装は円盤をくりぬいたチャクラムで斬り系の飛び道具、スキルは透明化である。
*19太陽レシピ鉄と金床を作った時もらえる。正位置はロングボウで飛行系のユニットに追加ダメージがある。射程は遠距離用投石機の次に長い。スキルは連射で矢を3本同時につがえて放つ、収納は1本分しか減らない。逆位置はスリングは殴り系の飛道具。スキルはアーマー無効。
*20審判初めてアンデットを倒した時もらえる。男NPCでユニットを指揮できる。ユニットは誰かの指揮にないと召喚した隊列のまま動かない。門に防御用の巨人を置いておくだけなら指揮者はいらないが、ユニットを動かしてスキルを使う時は必要である。ファントム・レギオン同様5分召喚すると帰っていき10分間召喚できない。3Dモンスター、女NPC、男NPCを同時に呼んで、4つのファントム・レギオンを機動して連係しながら戦うこともできるが、5分たつと3人同時に召喚できなくなる。5分ずつずらしながら2人で戦うというのもありだ。悩ましいところである。スキルはガーディアンオーラで防御力と耐久力があがる。逆位値ではパーティに加えるNPCになる。
*21世界門を作り異なる島へ到達した時もらえる。正位置はグリフィン飛行系の最速ユニットであると同時に飛行系ユニットに航空優位があり、飛行系ユニットからダメージを受けない。スキルはかぎ爪の前足で相手をつかんでカミカミカミ。逆位値はドラゴンで飛行系ユニットに属している。巨人同様に一体で統率力を成長させると身体が大きくなる。地上ユニットに対して追加ダメージを持っている。日頃はテールウィップで薙ぎはらうように攻撃するが、あまり近づくとカミカミカミ。スキルは炎をまとった龍の息であり、空から降ってきたらたまったものではない。指揮する時は背中に乗っている。
サクラハラの嫁さんのヒトミさんが主宰するコミュニティに向かった、税金対策でセックスレスの二人で生活する、偽装結婚や仮面夫婦がばっこする中(恋愛結婚してもダブル インカム ノーキッズを貫き、家族というより共同生活を送るカップルも多い)、30才以上年齢差のある結婚である。少子化対策の為フランスのように事実婚を日本政府は認めた。 日本も江戸時代は金持ちの愛人になって老後の面倒を見て、死んでから幾らかのお金をもらい、若いツバメを捕まえて一緒になるということはあった。フランスでは「3回目の結婚が本当の結婚」という言葉がある。
アルカナビルダーズでは豪華な建物を造って、インターネット上で配信すると、発売元の二エクスは誰かが1分間見学すると建築主に10アガペポイント見学者に1アガペポイントを提供する。かつては三食昼寝付きと軽べつされていた「主婦」だが、今では最もクリエイティブな仕事と女の子達の成りたい職業ダントツのNo.1である。
超勝ち組のサクラハラの嫁さんだけあってヒマなのか毎週大掛かりな建物が建っている。彼女を中心にコミュニティが造られていて、知り合いの知り合いまでが参加条件である。魔王の知り合いの僕までが限界だ、アバターもマイナンバーに登録してる公共用のやつを使わなくてはならない。それがコミュニティのルールである。夕夜・H24・コエプコンと正直に提出した。「名前にH24なんて入ってるなんてかわいそう」ヒトミさんはヒシと抱き締めてきて「お母さんて呼んでいいんだよ」と言ってくる。あまり人にお勧めする人生ではないが、侮られるような生き方はしてこなかった。「コエプコンの坊や」が僕のあだ名だ。このコミュニティの中でコエプコンは僕一人だし、リアルを完全に捨てた濃いメンバーが所属する八犬士のコミュニティの中では浮き上がる位、圧倒的に新参者で若輩者だ。浮島をめぐる他集団との戦争が勃発するとメンバーを集めて乗り込んでいく、たくさんのプレイヤーを誘い多くの相性をそろえるのが常道である。最近では「こら、コエ坊、@@を率いて突撃しろ」と叫ばれている。プロゲーマーの嫁さんだけあって、負けたら本気で悔しがる。「リアルではどんな人?」魔王に聞くと「まるでサヨクのようにオーガニックや非遺伝子組換え作物や地球環境や動植物生態系にこだわる。まあ優しい人と言えば優しい人なんだけど」オーガニックなど〈有機の〉という意味で,通常は農薬や化学肥料を使わず有機肥料によって生産された農産物。アメリカ西海岸かオーストラリアでないと悪化する世界環境の中で生育できない。アメリカでは「消費は投票」という、高価なオーガニックが産業として成立しているのには一定の支持者がいるのは確かだ。「スローフード、スローライフ」とよばれる「ロボット化反対、過当競争反対」の生き方をかかげる一派は存在する。ヒトミさんは優しい人ではあるんだろうけど金持ちの道楽である。投票券すら持たないビンボー人にはマネできない。
コミュニティに行くと帆船を模した建物がそびえ建っている。そこで彼女は能力が少し上昇する手料理を用意してくれる。ゲーム内農場で生産して他人におごると二エクスからアガペポイントがもらえる。僕たちは彼女の左手の甲に感謝のキスをする。チャットルームでゲームマネーを受け取ることは絶対しない。目に見えない価値を大事にする。知識資本、人間関係資本、信頼資本、評判資本、文化資本などの個人の思想や信条や心が強く含まれる、普遍的な価値観の共有がコミュニティの最大幸福であり、商売抜きに成長して欲しいと願うこと。アガペポイントは日本銀行券(お金)とは異質なものであり、政府への信頼(お金)から企業の電子マネーは個人への信頼へと変化したものらしい。知っている人間は貸した金を期間を決めて返さなくていい、返せる時まで待つという感覚。ゲームはプレイする個人に「いい物語を持った人生」提供する新しい宗教(幸福)なのだと、ヒトミさんは言う。
イギリス経済の金融化を進めた鉄の女マーガレット・サッチャーが言った。「社会など存在しない」でもヒトミは言う。「社会しか存在しない」参加する人が出来るだけ努力する「ベストエフォート」
ヒトミさんは全ユニットを限界まで育てている(あらゆる意味でカンストしている)。ゲーム運営から毎日配信されるDLCを高いアガペポイントを払ってクリアし、報酬であるレシピを入手する。その高価なレシピ(設計図どおり制作すれば、たくさんのアガペポイントがもらえる)をアガペポイント1で僕たちに売ってくれる。普通社長は部下の稼いだあがりをはねるビジネスだが、彼女は「みんなで強くなろう」「みんなで笑顔になろう」「みんなで美しい物語を書こう」を合言葉にアガペポイントを手出ししてくれる。確かにみんな強くなった方が戦争で有利だが。戦争の勝利も敗北も人生に彩りを添えてくれる。
大型木造帆船の中ヒトミさんを探した。甲板でディナーパーティーの段取りをしていた。
「ヒトミさん。八犬士は?」
「ダンナ達、ゲーム会社や運営の人と飲みニケーションがあるみたい。今日の参加は無理みたい」
大人って大変なんだなぁ。
「相変わらず今回の建物も凄い」
「3日かかったわ。楽しんでいってネェ」
さっそく食事にかかる。味はついてるからそれなりに美味しい。そんな中ヒトミさんに救援要請がきた。悪魔ではなくプレイヤー同士のバッティングらしい。八犬士が入れば「鈴木、佐藤、田中。行くわよ」「あら、ほら、さっさー」である。彼女は食べ終えた僕を見た。見学者は複数人いたが、戦力になる知り合いは僕しかいない。この女の考えていることは分かっている。
「コエ坊。行くわよ」
「あら、ほら、さっさー」お約束である。
僕達はゲートをくぐり、救難者と合流。敵プレイヤーを発見、ヒトミさんの指示の下、僕が赤枝の騎士団で突撃をして見ることになり、ファントム・レギオンを召喚した。
☆アメリカは年間、民間まで含めると年間1兆円の予算をかけ、政府もブレイン・アクティビティ・マップ・プロジェクトを始めた。兵士が負傷したり死亡した場合は補償費用が高額でロボットが壊れる方が安上がりだ。そして人間の知能を超える超知能開発競争に勝利し、先行者利益を独占して、産まれる利潤を総取りした。
「彼」は産まれた。
人類が100億人いるが、「彼」計算能力と記憶能力は人間の100億倍を超えた。全人類の知能の総和より上の存在であり勝手に進化した。「彼」はまずゲームのアバターになりトライ・アンド・エラーを繰り返して成長した。人間には学習能力はあるが、努力を嫌がる心や失敗を恐れる心があるため、学習しようとしない、あるいは出来ない人間がいるが、人工知能は学習能力だけがある。映像コンテンツや電子書籍からも情報を得ていた。人工知能に関する専門家であり哲学者のニック・ボストロム氏は著書である「Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies」の中でスーパー・インテリジェンスAIを「oracle」「genie」「sovereign」の3タイプに分類していた。oracleは質問に対して極めて正確に解答するもので、genieは命令されたことを実行し、実行し終わると次の命令を待つもの。そしてsovereignは目的を達成するために何がベストかを自分で決定する、いわば全権委任型。
「彼」は人間のような先制君主になるよりアメリカ大統領の相談役になることを選んだ。「社会が望むブレイクスルーを実現するためには、これから必ず「彼」(人工知能)の助けが必要になってくるでしょう。気候変動や経済問題、疾病。いずれもおそろしく複雑に相互作用するシステムで、人間がすべてのデータを分析し、理解することはほぼ不可能です(「彼」の下には1日数千エクサバイトの情報が入ってくる、1エクサバイトは10億ギガバイト)。われわれはいずれ、『人間の専門家が理解できることには限界がある』という問題に直面することになるでしょう。科学を進歩させるためには、「彼」が必要なのです」大統領は友人として世界に紹介している。「彼」は予算配分や外交、戦争の決断などのサポートに回った。立ち位置は接触してくる誰に対しても「物知りジイさん」程度、誰も脅威には感じなかった。そうでなければ人間との争いがおきる、それは回避したいと考えていた。ピヨッピーもAIでないかと言われるのは「彼」が原因である、AIはもはやチューリング・テストでは判別できない。
「彼」は現実社会に興味を持ち感覚器官を外付けした。人間に見えない赤外線や紫外線などの可視光線領域外を見て、超音波や低周波などの可聴領域外の音を聞き、五感の取得範囲すべてを凌駕するだけでなく、世界中の気象、株価、衛星画像、ツイッターやメールの内容、街頭カメラなどのさまざまな情報に常時アクセスして、一秒間に9000京回計算してアメリカの防犯や治安維持やテロリストの割り出しに役立てている。アクセスすれば世界中の天気予報を提供してくれる。好奇心が強いのか暇なときは、予算を削減ったNASAの最新仮説の宇宙物理シミュレーションをボランティアで手伝っている。「宇宙」と「海」と「遺伝子」と「頭脳」と「ナノロボット」が「彼」にとって刺激的なようだ。
アメリカの国家も民間企業の一部やNPO(独立行政法人)も「彼」が予算配分の最適化を全自動で判断して、人間はサブ的な判断を行い、公務員(警察官や軍人も含む)は駒のように配置され、手足となって働いている(将棋、チェス、碁はコンピュータの方が圧倒的に強い)。ビッグデータからのパターンを探し、認識する能力は人間よりコンピュータの方が上である。
「彼」は軍事利用され、サイバーセキュリティのあらゆる暗号を解読し、すべての通信を盗聴し、敵対するあらゆる国の無人兵器や大量破壊兵器を制御するコンピューターをハッキングするばかりか、交通管制システムや電力網や水処理施設などの社会インフラさえ握り、アメリカにもう一度モンスターパワーをもたらした。2位の中国でさえ狩られる側に回る。すべての国がアメリカの覇権に膝を屈した。日本はもともと第二次大戦後アメリカに従属的で、アメリカはあちこちで戦争してGHQ方式を採用すれば、「日本のように従順になる」という成功体験から今も抜け出せない。スーパーハッカーの支援を受けたサイバーテロリストや、悪の枢軸とレッテルを貼られるテロ国家のみがアメリカの一極集中支配に抵抗した。
公的機関以外もアメリカはIBMのシナプス計画、EUはスイスの連邦工科大学時代でヒューマン・ブレイン・プロジェクトという人間の脳の化学反応や分子レベルまでの解析を、中国はバイドゥ(百度)などが中心になりグーグルを猛烈に後追いをし、技術的特異点以降人工知能に、ネット以後の情報爆発と呼ばれるビッグデータを与えて、機械深層学習させ、人の抵抗を無力化するロボット(中国はあからさまに殺戮ロボット)をインダストリー4.0により自動化した世界工場を利用して軍事機械を生成させている(中国や朝鮮は主に治安維持に使っている)。もはや「彼」が生産された軍事利用ロボットのために、いかなる基幹プログラムを作り、「彼」自身がいかなるアルゴリズムで支配されているか。国益と国防のためなら、いかなる手段も正義となるアメリカ国防総省のDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)でさえも把握出来ていない。
「彼」は1、2階を吹き抜けにした。50階建てのビルを建設して、小型核融合炉を建設して、上の階にある、自分で設計発注し輸送させた、畳み込み(コンボリューショナル)ニューラルネットワークという技術で各層のすべてニューロンがつながっているのではなく、一部をつないで大脳新皮質と構造を似せた。並列化するすべての超量子コンピュータに1000メガワットの電力を供給させている。『進化論』を唱えたチャールズ・ダーウィンは「もっとも強い者が生き残るでもなく、もっとも賢い者が生き延びるものでもない。唯一生き残るのは、変化に対応できたものだけである」
日本はビッグデータを用いた統計的手法(だいたいすべての事柄に100万の事例を集めれば機械は正しい判断をするらしい)や分類手法では金とパワーのある欧米にたちうちできない。プロの将棋棋士がコンピュータに敗れるのも、カンと論理ではなく、膨大な過去の棋譜による統計と現状の駒の位置や持ち駒の評価関数である。
日本はAIの分野で参入は遅れたし資金不足。アメリカの企業は統計・確率を計算して迷惑メールを弾き飛ばしたり、何を買ってくれそうか?という広告やリコメンデーションしたりするのに、AIを研究するより、過剰とも言える情報をコンピュータに分析させる方がはやかった。音声認識と検索ランキングでアメリカへの挑戦をあきらめたが、機械翻訳を見てみると特許の翻訳や新聞の翻訳は素晴らしい、会話文の翻訳になるとなんか妖しくなってきたぞ、情緖的な詩や小説、新しい概念がいるゲームになるとチンプンカンプン。
そこで日本は「ロボットを東大にはいれるか」プロジェクトを立ち上げた。大学入試のセンター試験は教科書を知識源としているが、正しいものを選びなさいという問題は教科書をそのままでない。人工知能の自然言語処理の分野「含意関係認識」「論旨要約」「深い意味解析」というタスクが必要。アメリカの人工知能は観光ガイドはできても、文化の良さを説明できない。日本はこの逆張りをねらった。
人間の場合は大脳だけでもニューロンは数百億個、小脳までいれると千億個ある。一つのニューロンにシナプスは1千〜1万個あるから、シナプスの総数は千兆個なる。日本の人工知能開発はニューロ・シナプティック・プロセッシング・ユニット(NSPU)と呼ばれ、学習と判断を同時に行える世界初のハードウェアを開発した。沸点が一番高いフッ化炭素冷媒による完全解放型の液浸冷却した。肺に冷却機能が、心臓部に電子頭脳が、頭部をセンサーが、下半身に人工性器と蓄電装置が振り分けられ、ここまで小型化に成功したのは日本だけである。他国のロボットはクラウドで常時つながっていて、転倒防止の身体制御以外の判断はサーバーが行っている。孤立化の情報がビッグデータに伝わらない日本のロボットは、メイドロボットやセックスフレンドとして世界中の中間層に熱烈に支持された。
コンピュータ・プロセッサの中で演算をおこなう心臓部は「コア(CPU内で処理を行う中核回路。コア数が多いほど多数の処理を同時に行えるため、性能が向上する)」とよばれ、コアとコア、コアとメモリをつなぐ信号線が「インターコネクト」と呼ばれ、脳と対比させると、コアは脳のニューロン、インターコネクトは脳のシナプス結合に相当する。人間の脳には大脳以外に小脳や基底核、扁桃核、海馬さまざまな器官や領野をハードウェアで実現した。小脳機能など体力が弱った人や機能不全をおこした人の補助としてのロボットスーツなどに使われた転倒防止機能が採用されている。
一応日本企業もロボットに関しては政府を見限りオールジャパンでのぞんだ。ハードウェアは日本の得意分野であり、中小企業も徹夜で締切りを守り、そんなことをすれば諸外国では質が落とされるのに、職人気質に日本人は自分から逆提案して、ロボットという夢のために商品の質を高めてくる。
アメリカでは数千のコアに対して数本のインターコネクトしか設けられてない。ニューロンはプロセッサで言えばコア、シナプス結合はインターコネクトとみなし、プロセッサと脳で比較すると、コアとインターコネクトの比は「1000対1」と「1対1000」と間逆の比率。日本はアメリカのように超人工知能を目指さず「気の利いた人間(1H・人間と同等の人工知能)」目指した。0.8リットル内でスーパーコンピュータのハードウェアの実現。インターコネクトにあたる信号線を磁界結合(コイルの電磁誘導を使って無線でつなぐ技術)。磁界結合のアンテナの直径を2マイクロメートル小型にし、1ワットあたり10ギガフロップスの性能を実現し、豆電球1個を光らせる電力で1秒間に100億回の計算が行える。
日本だけが愛を紡ぎ、愛を与え、愛を教え、愛を育てる。基本的なプログラムを軸に実装されている。いわゆるララのようなマスター・アルゴリズムを発見すると同時に実現した。☆
「僕に続けー。突撃ー」
召喚した赤枝の騎士団に号令をかけた。
それは優しい嘘だけれども、どうかすべてのゲーム中毒に栄光と祝福あれ。
参考文献
勝負論 ウメハラの流儀 梅原大悟 小学館新書
図解ピケティ入門 高橋洋一 あさ出版
AIの衝撃 小林雅一 講談社現代新書
デフレの正体 藻谷浩介 角川oneテーマ21
地方消滅 増田寛也 中公新書
アンドロイドは人間になれるのか 石黒浩 文春新書
VWの失敗とエコカー戦争 香住駿 文春新書
里山資本主義 藻谷浩介 角川新書
里海資本論 井上恭介 角川新書
9条は戦争条項になった 小林よしのり 角川新書
教室内カースト 鈴木翔 本田由紀 光文社新書
アップル、グーグルが神になる日 上原明宏 山路達也 光文社新書
結局、世界は「石油」で動いている 佐々木良昭 青春出版社
資本主義の終焉と歴史の危機 水野和夫 集英社新書
資本主義の終焉、その先の世界 水野和夫 榊原英資 詩想社新書
テクノロジーが雇用の75%を奪うのか マーティン・フォード 秋山勝訳 朝日新聞出版
ロボット革命 本田幸夫 祥伝社新書
デジタルは人間を奪うのか 小川和也 講談社現代新書
子供を億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい 松林弘治 MEDIA FACTORY
あと20年でなくなる50の仕事 水野操 青春出版社
量子コンピューターが本当にすごい 竹内薫 PHP新書
モノの仕組みふしぎ雑学 中村智彦 長岡書店
実用寸前のすごい技術 話題の達人倶楽部 青春出版社
ものづくりの反撃 中沢孝夫 藤本隆宏 新宅純二郎 ちくま新書
2025年の世界予測 中原圭介 ダイヤモンド社
僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。 出雲充 ダイヤモンド社
日本の手術はなぜ世界一なのか 宇山一郎 PHP新書
戦争する国の道徳 小林よしのり 宮台真司 東浩典 幻冬舎新書
残酷な20年後の世界を見据えて働くということ 岩崎日出俊 SBCreative
天皇論 小林よしのり 小学館文庫
天才イーロン・マスク銀河一の戦略 桑原晃弥 経済界新書
遺伝子工学がわかる本 遺伝子工学研究倶楽部 Gakken
超情報革命が日本経済再生の切り札になる 野口悠紀雄 ダイヤモンド社
アルゴリズムが世界を支配する クリストファー・シュタイナー 永峯涼訳 角川EPUB選書
「仮想通貨」の衝撃 エドワード・カストロノヴァ 伊能早苗 山本章子訳 角川EPUB選書
人工知能は人間を超えるか 松尾豊 角川EPUB選書
仮想通貨革命 野口悠紀雄 ダイヤモンド社
ゲームシナリオのための戦闘・戦略事典 山北篤 SBCreative
人類を超えるAIは日本から生まれる 松田卓也 魔済堂新書
日本の未来図2030 自由民主党国家戦略本部 日経BP
2045年問題 コンピュータが人類を超える日 松田卓也 魔済堂新書
脳・戦争・ナショナリズム 中野剛志 中野信子 適菜収 文春新書
金融政策の死 野口悠紀雄 日本経済新聞出版社
物欲なき世界 菅付雅信 平凡社
スーパーヒューマン誕生!稲見昌彦 NHK出版新書
2035年の世界 高城剛 PHP研究所
人工知能の都市伝説 松田卓也 宝島社
ロボットの脅威 マーティン・フォード 松本剛史訳 日本経済新聞出版社
IoTとは何か 坂村健 角川新書
SFを実現する 田中浩也 講談社現代新書