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シニガミヒロイン  作者: 山本正純
第一章 崩壊する平穏
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集められた男子高校生たち

「誰かいないのか」

 赤城恵一は誰かがドアを叩き、大声で叫ぶ声を聞き、目を覚ました。

 その場所は見覚えのない体育館の中である。

 赤城恵一は床にうつ伏せの状態から起き上がり、周囲を見渡す。

 

 木製の床に白色や赤色のテープが張られており、バスケットゴールまでもが設置されている。前方にあるステージの両脇には、大きな黒色のスピーカーが設置されていた。

 ステージの両端には、用具入れらしいドアもあって、そこにも多くの男子高校生たちが集まっている。

 ステージは、赤色の幕によって閉まっている。そして天井には体育館には不釣合いな、大きいシャンデリアが垂れ下がっていた。

 シャンデリアの存在が不可解ではあるが、ここは紛れもなく体育館はないかと、多くの男子高校生たちは思った。

 赤城がこの空間を見渡すと、そこには同い年くらいの男子高校生たちが大勢いた。

 赤城恵一はスタンガンを当てられた首筋を触り、再び男子高校生たちの顔を一人一人見る。

 この場所に白井美緒がいるのではないかと彼は思ったが、どこにも彼女の姿はない。

 この空間にいるのは、全員違う制服を着た男子高校生たちのみ。


「ダメだ。開かない。引いてもダメかよ」

 後方にある赤色の正方形のパネルが埋め込まれたドアを天然パーマが特徴的な小太りの男子高校生が思い切り叩く。その彼の周りには、多くの男子高校生たちが群がっている。

「こっちもダメだ」

 用具入れらしきドアの前で丸坊主の男子高校生が叫ぶ。その彼の周りにも同じように男子高校生たちが集まっていた。

 赤城は焦る気持ちで周囲を見渡す。

 見た所出入り口らしいドアは、前方にある用具入れのドアか、後方にある赤色のパネルが埋め込まれたドアしかない。

 残るのは、壁に設置された梯子だけである。

 

 すると、上空から別の男子高校生の声が聞こえた。

「窓もダメですよ。全て填め殺しのようです」

 壁に設置された梯子を昇った、背の低いスポーツ刈りの男子高校生が、人が一人だけ通ることができるほどの狭い床に立ち、叫ぶ。

「何か壊す物はないのか」

 天然パーマが特徴的な小太りの男子高校生が窓の前に立つ少年に尋ねる。だが彼は首を横に振った。

「そんな都合良い物持っているはずがありませんよ。手荷物も奪われているみたいですし」 

「馬鹿か。制服のポケットにスマートフォンが入っているだろう。そいつで窓を壊せ」

 

 天然パーマの少年の声を聞き、低身長の少年が慌てて制服の上着のポケットからら、スマートフォンを取り出す。

 赤城はスマートフォンという言葉を聞き、思い出す。

 パニック状態に陥り、スマートフォンで警察に通報するということを忘れていた彼は制服に仕舞ったはずの、スマートフォンを取り出す。

 だが取り出されたスマートフォンは、彼の物ではなかった。黒色のスマートフォンに、黒色の背景に大きく『48』という赤い文字がプリントされた待ち受け画面。

 このスマートフォンは明らかに赤城恵一の物ではない。謎のスマートフォンはどうやらロックされていないようで、ホームボタンをタッチするだけで、すぐに開いた。そのスマートフォンは、通話アプリやメールアプリさえも入っていない。これにより、外部への通信は遮断された。

 一方、低身長の野球少年は、自身の制服に入っていた謎のスマートフォンを思い切り窓に向かい、振り下ろした。

 だが、窓は壊れることなく、鈍い音だけが体育館に響き渡る。

 何回やっても、窓は壊れない。

「くそ、強化ガラスかよ」

 野球少年は舌打ちして、梯子から男子高校生たちが集まる、体育館の床へと降りた。


 出入り口が一切ない密室に、48人の男子高校生たちが監禁された。

 何のために。赤城たちの脳裏に様々な疑問が浮かびあがる。

「一体誰なんだよ。俺たちをこんなところに閉じ込めたのは」

 頭に傷がある巨体の男子高校生が叫ぶ。すると、その声を待っていたかのように、ステージ上の赤い幕が開いた。

「皆様。お目覚めでしょうか?」

 ステージの幕が完全に開き、ボイスチェンジャーでの不気味な声がスピーカーから流れる。

 その声を聞き、集められた男子高校生たちは一斉にステージに注目する。

 ステージ上にいるのは、額にピンク色のハートマークが印刷された白色の覆面で顔を覆った白色のスーツを着た人物。その奇妙な風貌の人物はスーツの背中に、日本刀らしき物を背負っている。


 覆面の人物はマイクを握り、ステージ上から集められた男子高校生の顔を見下ろす。

「そうですね。全員起きているようです。それでは、第13回ラブバトルロワイヤルを開催します♪」

 謎の人物の突然のアナウンスと共に、体育館に集められた男子高校生48人は、衝撃のデスゲームに巻き込まれる。

「何だよ!」

「ふざけるな!」

「とっとと俺たちを返しやがれ!」

「ここがどこか。説明しろ!」


 男子高校生たちが当然のようにヤジを飛ばす。その反応に慣れているように、覆面の人物はマイクを右手から左手に持ち替え、クスクスと笑った。

「やっぱりね。どこの男子高校生たちも同じ反応でした。さて、皆様はとあるデスゲームのプレイヤーに選ばれました。とは言っても、こっちが無作為に選んだだけだけどね」

「デスゲームだと」

 赤城恵一は覆面の顔を睨み付けながら、叫ぶ。

「まずは、皆様をこの体育館に招待した私の仲間を紹介しましょうか」

 

 仮面の男の言葉を聞き、ステージ上からぞろぞろと総勢12名の全身黒ずくめの男たちが姿を見せた。その中には、恵一を拉致した大男と痩せた男の姿がある。

「君たちを拉致した犯人たちです。ハッキリとカミングアウトすると、私たちは世間を騒がせている男子高校生集団失踪事件の犯人でもあります。ご存じでしょう? ここ1年の間に1か月に1回ペースで起きた謎の怪事件。私たちはある目的を達成するために、全国各地12か所で、デスゲームを開催してきました。しかしゲームを全クリできる男子高校生は1人も現れませんでした。つまり、1か月以内に家族の元に失踪した男子高校生の遺体が送られてくるという事件は、私たちが企てた物。彼らは私たちのデスゲームの敗者なのです♪」

 覆面の言葉を聞き、赤城恵一は朝のニュースを思い出す。去年の4月から始まった男子高校生集団失踪事件の犯人は、ステージ上に立っている13人の男たちなのか。

 先日発見された男子高校生たちを殺したのは、13人の男たちなのか。

 嫌な予感が男子高校生たちを襲う。それとは裏腹に、一部の男子高校生たちは密かに期待してしまう。これは何かの撮影、または不謹慎なドッキリではないかと。様々な思考が体育館を渦巻いた中で、覆面の人物はマイクを握り直す。

「自己紹介がまだでしたね。私はゲームマスターのラブと申します。皆様が全クリできることを切に願っていますよ。これで少しは不安が減りましたかね。やっぱり相手の名前が分からないと、不安になりますもん♪」


「違う。お前らは何人の男子高校生たちを殺してきた。お前らがやっていることは犯罪だろうが」

 赤城恵一は自身の正義感を男達に振りかざす。だがラブは彼の声に聞く耳を持たない。

「これまでゲームオーバーになった576人は、負け犬だったと言うだけの話ですよ? 長話もあれなので、ゲームのルールを説明します。皆様はデスゲームと聞いて、どのような事を連想しますか? 異世界RPGの世界に閉じ込められて、プレイヤーを次々と殺していく。そんなゲームを連想して不安に襲われた、か弱い男子高校生の皆様。ご安心ください。皆様にプレイしていただくデスゲームは、拳銃や槍でプレイヤーを殺し合うと言う暴力的な内容ではありません。皆様には恋愛シミュレーションデスゲームをプレイしていただきます!」

 ラブの一言に男子高校生たちは驚愕を露わにする。それはデスゲームと聞き、RPGを予想していた男子高校生が大半であるためだからだ。恋愛シミュレーションデスゲームなんて聞いたことがない。

 そのゲーム内容に驚かない男子高校生たちはいないだろう。

 

 その時、頭に傷がある不良少年らしい高校生が、突然ステージに上がった。

 ラブの横に並ぶ黒ずくめの男たちは、彼を止めようと足を踏み出す。だが、それをラブが静止した。

「こういう馬鹿には、身をもって教えないと分からないから動かないでよ」

「俺たちをとっとと帰せって言ってるんだ!」

 不良少年はラブに殴りかかろうとする。だがラブはそっと自分のスマートフォンをスーツから取り出し、画面をタッチした。

『ごめんなさい』

 幼い少女の声がスピーカーから流れ、不良少年の手が止まる。それだけではなく、この体育館に集められた男子高校生たちも体が動かなくなった。

 唯一動くことができるのは、ゲームマスターのラブのみ。

「皆様。聞こえていますか。ゲームマスターに歯向かったら、こうなるんですよ。覚えておいてね」

 ラブは背負った日本刀を抜き、軽く不良少年の首を切断してみせた。

 10秒後、時間が動き始めた瞬間、47人の男子高校生たちは大きく目を見開く。

 ステージの上で、10秒前まで生きていたはずの不良少年の首から、大量の血液が噴き出しているのだから。


 不良少年の首は空中を飛び、彼の眼球がギロリと動いた。それがステージ下の床に落ちると同時に、少年の体は膝を床につき、前へと倒れた。首の断面から、ドロドロとした血液が漏れ、階段を血の色で染めていく。

 

 何が起きたのか。男子高校生たちは理解できない。目の前にあるのは不良少年の生首と、生々しく綺麗に切断された首の断面。

 それを目の前で見せられた赤城たちを含む多くの高校生たちは吐き気を催す。別の男子高校生たちは間抜けに腰を抜かした。

 返り血で白色のスーツや覆面を汚したラブは、そんなことを気にする素振りを見せず、手を叩き、説明を続ける。

「分かりましたか。ゲームマスターに歯向かったら死ぬんですよ? あなたたちは強制的にデスゲームに参加するしか選択肢がないのです♪」

 強制参加のデスゲーム。参加しなければ、殺される。この事実は次第に男子高校生を支配していった。


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