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シニガミヒロイン  作者: 山本正純
第二章 カセイデミル
19/74

作戦会議

 4月7日の午前9時。赤城恵一は多野明人の自宅のインターフォンを押した。

 入学式開催のため休校となった火曜日。赤城は島田夏海を攻略しようとしている仲間と集まり、作戦会議を行う。

 多野が玄関のドアを開ける。ドアが開ききったところで多野は頭を下げた。

「待っていたよ。谷口君と矢倉君が来ている。滝田君はまだ来ていない」

「そうか。一番遅かったのではないかと思ってヒヤヒヤとした」

「まさか遅刻して抜け駆けをしたのではないか」

 多野が赤城を疑いの眼差しで見つめる。だが赤城は首を横に振って否定する。

「そんなことするわけないだろう。証拠だってある。ステータスを見たら抜け駆けしたかどうかが分かる」

 赤城は自分のスマートフォンを操作して、ステータスを表示させ、それを多野に見せた。

「確かに計算上は裏切っていないな。昨日のメインヒロインアンサーで200経験値稼いだとしたら、抜け駆けしていないって説明できる」

 多野が納得した表情を浮かべスマートフォンを赤城に返す。

 

 その直後、滝田が多野の自宅前に駆け付ける。

「ごめんなさい。少し話し込んでいたら遅刻してしまいました」

 滝田が多野に対して謝ると、多野は右手を差し出した。

「一応ステータスを見せてもらおうか。俺たちを裏切って島田夏海と話し込んでいた可能性も否定できないからな。やましいことがなかったら裏切っていないって証明してみろよ」

 真剣な多野に促され、滝田が自分のスマートフォンにステータスを表示させ、彼に見せた。

 

滝田湊


レベル5

知識:20

体力:0

魅力:20

感性:10


死亡フラグケージ:20


累計EXP:400

Next Level Exp :100


「昨日のホームルーム直前の会話で30、お見舞いで100稼いだ。そして昨日のメインヒロインアンサーでS評価1回にA評価1回、B評価を2回という結果だったらこのステータスでも納得できるな」

 多野が頭の上で計算する。その隣で赤城は滝田のスマートフォンを覗き込んだ。

「凄いな。もうレベル5かよ」

「ただのマグレですよ」

 滝田が頭を掻く。

 それから赤城と滝田は多野の自宅に上がり、彼の部屋へと足を進める。2階にある多野の部屋のドアを開けると、そこには谷口と矢倉の姿があった。2人は床に座り互いのスマートフォンを見せあっている。

「谷口君。矢倉君。これでメンバーが揃ったぜ。早速だが対策会議を始めようか」

 円状の小さな机の周りに5人が集まる。その机の上にスマートフォンを置き、多野が話を切り出す。

「まずは昨日のメインヒロインアンサーについてだ。ご存じのように鬼畜仕様のあのクイズゲームは、答え合わせがなかった。つまりクイズの答えはプレイヤーの直感で判断するしかない。例えばあの島田夏海の反応が悪いから不正解だという風にな。そこで皆に聞きたいことがある。昨日のクイズの問題はどんな問題が出題されたのか? とりあえず時計回りに話してくれ」

 多野に右隣りに座っていた赤城が、集まった4人の顔を見る。

「1問目は島田夏海と遭遇した時の対応だった。2問目で島田夏海がなぜあなたがここにいるのかと聞いてきて、3問目は好きな武田四天王が誰なのか。最後の問題は誕生日がいつか?、」

 赤城が昨日のことを思い出しながら、4人に説明する。それを聞き谷口と滝田と矢倉の3人は、一斉に右手を挙げた。

「僕も同じ問題でした」

「僕もですよ」

「その問題だったら僕も同じです」

 谷口滝田矢倉という順番で3人は赤城の説明に反応を示す。その後で4人は手を挙げなかった多野へと視線を移した。

「俺か。俺は少しだけ問題が異なっていたよ。1問目から3問目までは同じで4問目は、またお見舞いに来てほしいって言ってきたな。4つの選択肢からセリフを選ぶ感じだったよ。だが、これで謎が増えたな。なぜ俺に出題された問題とお前らの問題が異なっていたのか」

「もしかしたら問題はランダムではないのかもしれません。ランダムじゃないのなら、多野君だけ最後の問題が違うなんておかしいです」

 矢倉が右手を挙げ推測を口にする。矢倉の言葉にヒントを得た谷口は1回手を叩いた。

「確証はありませんが、問題はプレイヤー側の行動によって選出されると思います。例えば3問目。昨日俺たちは島田夏海と戦国武将絡みの会話をしましたね」

「だから3問目は、好きな武田四天王は誰かなんて問題だったのか」

 赤城が谷口の意見に耳を傾け、納得する。

「そして多野君の最後の問題。またお見舞いに来るかどうかを聞いてくるっていうのは、昨日の多野君の行動が関係してくると推理した方が説明できます。昨日多野君は僕たちと一緒に節子ちゃんのお見舞いに行くって言ったでしょう。その結果最後の問題だけが異なったものが出題されたとしたら、プレイヤーの行動によって出題される問題を操作できるということになりますね」

「つまり行動に気を付けていたら、簡単な問題が出題されやすくなるってことか。凄い必勝法じゃないか」

 多野が納得した表情を浮かべ谷口の顔を見る。

「矛盾するかもしれませんが、行動によって問題が簡単になるとも思えません。鬼畜なルールで何人もの男子高校生たちを殺してきたラブのことです。きっと行動によって問題を操作するなんて必勝法は、存在していないのかもしれません」

 一方で滝田が反対意見を出す。

「確かに滝田君の意見も正しいです。しかし必勝法はもう1つあるんですよ。こっちの方が正確かもしれません。例えば3問目。4つの選択肢の内1つだけ徳川四天王が混ざっていたでしょう。あれは確実に不正解です。つまりメインヒロインアンサーは不正解さえ選ばなければ、確実に経験値を稼ぐことができるということです。それをやるためには不正解を見抜く力が必要となります」

 谷口の意見を聞き赤城は自分自身の知識を恥じた。あの時赤城は徳川四天王の名前を選んでしまった。戦国武将に関する知識があれば貴重な経験値を稼ぐこともできただろう。

「あの問題。僕も間違えたんですよね。不安ですよ。知識がないと不正解なんて見抜けないでしょう」

 矢倉が不安になり顔を俯かせる。すると突然多野が立ち上がり、彼の右肩を優しく叩いた。

「大丈夫だ。知識がないなら勉強すればいい。あのスマートフォンのインターネットアプリを使えば、戦国武将に関する情報なんていくらでも手に入る。だから明日に備えて勉強した方がいい」

 多野によって自信を取り戻した矢倉は机の上に置かれた自分のスマートフォンを手にして、検索を始める。

 こうして作戦会議は戦国武将に関する勉強会へと変貌した。全てはメインヒロインアンサーの正解率を上げるため。島田夏海との会話によって経験値を稼ぎやすくするため。

 

 その勉強会は午後4時にお開きとなった。それから各自は自宅へと帰るのだが、滝田だけは自宅を素通りしコンビニへと向かう。

 コンビニのゴミ箱の前に、桐谷が立っている。滝田は透かさず彼の元へ駆け寄った。

「桐谷君。お待たせしてすみません」

「良いんですよ。早速ですが、今朝の続きを僕の自宅でお話しましょうか。既に仲間たちも集まっています。面白い物を見せてあげますよ」

 滝田は頬を緩ませ、桐谷と行動を共にする。

 桐谷の自宅の中にある彼の部屋には、既に杉浦と百谷と千春の姿があった。

「ところで村上君と櫻井君はどこですか?」

 滝田が部屋を見渡しながら桐谷に尋ねる。

「彼らは必要ないでしょう。だから誘っていません。それでは僕からも質問です。あなたと同じヒロインを狙っている連中は、どこまで気が付いていますか?」

「戦国武将に関する知識を仕入れて好感度を上げようなんて言っていますよ。それと不正解を見抜く力があれば確実に勝てるって。笑えますね」

「なるほど。どうやら僕たちが導き出した必勝法には気が付いていないようですね。そういえば、もう1つ面白いことに気が付いたんですよ。このことに気が付いているのはA組の中では僕だけかもしれませんね」

「何ですか?」

 千春が首を傾げると、桐谷は苦笑いした。

「必勝法の効果をさらに増強してくれるシステムです。この必勝法は破綻していないのかを確かめたいので、滝田君には協力していただきます。これから説明する必勝法は口外しないでください。ライバルを蹴落として生き残りたいんでしょう。ランキング第3位にランクインさせてあげます。

 

 そして迎えた2日目のメインヒロインアンサー。赤城恵一はA評価の答えを4回選択し、何とか死亡フラグケージを溜めることなく2日目を生き残ることができた。

 結果発表から数分後、各クラスの獲得経験値ランキングが更新された。

「ウソだろ」

 そのランキング結果に赤城恵一の表情は青ざめた。

『2年A組。好感度経験値累計獲得ランキング』


『第1位。桐谷 凛太朗。 2000経験値』


『第2位。村上 隆司。  1700経験値』


「第3位。滝田 湊。   1600経験値』


 この結果を知った赤城の行動は決定した。明日学校で滝田を問い詰めると。


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