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シニガミヒロイン  作者: 山本正純
第二章 カセイデミル
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ファーストコンタクト

 黒髪全体をウェーブさせた低身長の少女。茶色い瞳に二重瞼。その少女はどこかの社長令嬢のような雰囲気を出す、その少女は窓側の1番前の席へ座った。

 次に現れた少女は、黒色のボブヘアに大人しい雰囲気を出している。本と鞄を片手に持った彼女は、4列目の1番後ろの席に座った。

 その少女、堀井千尋の顔を、彼女を攻略しようとしている五人の男子高校生が見る。

 男子に注目された堀井は脅えるように、自分の席に座り、本を読み始めた。


 午前8時30分。教室のドアが開き、黒いスーツを着た男が入ってきた。

 その男は教卓の前に立ち、教室の周りを見渡す。

「全員席に着け」

 男に促され、モブキャラたちや男子高校生が自分の席へ座る。

 赤城恵一の席は、5列目の1番後ろの席だった。

「何だ。島田夏海は欠席か」

 その男が、席に座る生徒たちの顔を見渡す。

 すると突然後ろの教室のドアが開き、1人の少女が姿を見せた。

 後ろ髪が腰まで届きそうなほど長いストーレートヘアが、歩くたびに揺れる。右頬に小さな黒子がある少女の容姿は、美少女そのものだった。

少女は、スーツを着た男の方向へ、体を回転させて、頭を下げる。

「すみません。秋山先生。節子が入院している病院に行っていたら、遅れました」

「分かった。夏海。席に座って構わない」

「ありがとうございます」

 島田夏海は、再び頭を下げ、自分の席に座った。

「それでは朝礼を始める。私は2年A組の担任、秋山だ」

 担任教師が挨拶し、淡々と連絡事項を述べていく。その間1番後ろの席に座る赤城恵一は、担任教師の話を真面目に聞いている夏海の後姿を見つめた。


 10分程で朝礼が終わり、生徒たちは体育館へと向かった。

「勝負は部活動ですよね。櫻井君」

 村上隆司が小声で隣を歩く櫻井に声を掛けた。櫻井は村上と顔を合わせ、首を1回縦に振る。

「ああ。そうだな。村上。お前の隣は堀井だったな。このラッキーマン。抜け駆けしたら、許さないからな」

「まさか抜け駆けするとでも思いましたか。あのタイプは隣でも苦労するんですよ」

 村上が白い歯を見せる。

「そうだな。兎に角放課後の部活が一番の稼ぎ時だ。精々隣の席で嫌らしく経験値を稼げよ」

 櫻井は村上の笑顔に、笑顔で返した。

 

「この体育館。まさか……」

 始業式が開催される体育館に入った赤城恵一は、周囲を見渡す。

 この体育館の景色は、予選ゲームが開催された体育館と同じ。床に貼られたカラフルな色のテープ。そして前方のステージの両脇には、大きな黒色のスピーカーが設置されていた。

 ステージの上には大きな机が置かれている。

 赤城は一瞬、この体育館で予選ゲームが開催されたのではないかと思ったが、天井にはシャンデリアがぶら下がっていない。

 また彼は、嘔吐物と死体が発する匂いも感じることができない。

 あの時ラブは、あの場所はいくらでも作り変えることができると言っていた。

 その言葉が正しいとすれば、この場所は予選ゲームが開催された体育館とは違う場所ということになる。

 赤城は頭を働かせ、推理する。その結論に自分自身が納得すると、彼は2年A組の列に並んだ。

 男女それぞれ1列ずつ。並び方は、クラスの席順で1列目と2列目の席に座る生徒が最初に並び、次に3列目と4列目の生徒が後ろに続く。最後に5列目と6列目の生徒が並ぶ。

 現在赤城恵一は1番後ろにいる。

 その彼の前には、お河童頭の下半分を刈り上げたかのような髪型をした黒髪の少年、多野明人が真っ直ぐな姿勢で立っていた。

 次々と生徒たちが体育館の中で整列していく。

 当たり前のことだが、悠久高校の生徒は2年生だけではない。モブの3年生の生徒だっている。

 180人程の全校生徒たちが綺麗に整列すると、体育館の窓際に整列していた教師の1人がマイクを握った。

「これより始業式を始める」

 間もなくして、初老の男が檀上に上がる。

「校長先生の挨拶」

 司会を務める教師が檀上に立っている校長先生に対して、頭を下げた。

 これから始めるのは、長い校長先生の話。それが10分間続く。この長さは現実世界の校長先生の話と匹敵するのではないかと赤城は思った。

 最後に校長先生は一度深呼吸して、話を締めくくる。

「2年生の皆さん。明日は後輩の1年生の入学式です。先輩になるという自覚を持ち、学校生活を楽しんでください。3年生の皆さん。進学や就職など進路は様々ですが、悔いの残らないように考えてください」

 明日は入学式。この事実を聞き、桐谷は顎に手を置き、考え込んだ。


 20分に及ぶ始業式が終わり、赤城たちは2年A組の教室へと戻った。

「明日が入学式だと。そこまでリアルだったなんて聞いてねえ」

 なぜか、教室内に女子生徒が1人もいない教室の中で、櫻井はロッカーの前に立っている桐谷に詰め寄る。

「何を焦っているのですか?」

 桐谷が冷静な口調で櫻井に聞き返す。

「焦るに決まっているだろう。ここまでリアルだったら、上級者でさえ、ギリギリな戦いになるからな。初心者は確実に負ける」

 櫻井の言葉が聞こえたのか、A組に所属する男子生徒たちが一斉に桐谷の周りに集まった。

「どういうことだよ。負けるって」

 三好勇吾が啖呵を切り、櫻井に尋ねる。

「馬鹿でも分かるように説明しようか。明日は入学式。この場合、俺たち2年生の明日はどうなるのか。その答えは休みだろう。それが厄介なんだ」

 櫻井の言葉に続くように、桐谷が口を開いた。

「明日は入学式です。校庭は保護者の駐車場として使われるはずですし、殆どの部活動は行われないでしょう。お話はここまでにしましょうか。この続きが分からなければ、話す価値もありませんし、僕は嫌いなんですよ。リア充野郎が」

 桐谷が怖い目付きで赤城恵一を睨んだ。その顔は先程の冷静な物ではなく、狂気に満ちたかのような物へと凶変している。

「もう一度言いましょうか。僕はリア充が嫌いです。このオタクな顔を散々馬鹿にしやがって。何がオタクキモイだ。人を馬鹿にするのもいい加減にしろ。赤城恵一。僕は知っていますよ。お前に美緒っていう女がいること。散々お前は叫んでいたもんな」

「だから美緒はただの幼馴染で」

 赤城恵一は桐谷凛太朗の挑発に乗ってしまった。その彼の声を聞き、桐谷は腹を抱えて笑う。

「最高ですよ。幼馴染恋愛。これで赤城恵一は終わったも当然ですね。精々頑張ってください」

 桐谷は多くを語らず、自分の席へと戻った。

「どういうことだ」

 赤城は桐谷の言動の意味が分からず、首を傾げる。

「説明する価値はありませんね。まあ、この休憩時間を有効活用してみてはいかがでしょう」

「言われなくても分かっている」

 数秒後、教室のドアが開き、次々に女子生徒が教室の中に入った。そしてメインヒロインの3人は、自分の席に座る。

 桐谷の言動にイライラしている赤城は、彼から離れ島田夏海が座っている席へと向かった。彼女を攻略しようとしている4人の男子高校生たちも同じように、島田夏海が座る席へと向い歩き始めた。



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