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シニガミヒロイン  作者: 山本正純
第二章 カセイデミル
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処刑者リスト

 ラブによる第1回戦のルール説明が終わった直後、突然ドアを二回ノックした音が聞こえた。

 ドアを挟み、聞き覚えがない女性の声が聞こえる。

「恵一。早く起きなさい」

 その声の主は躊躇なく、赤城がいる部屋のドアを開ける。

「あら、起きてるじゃない。じゃあ、早く降りてきなさい」

 しわ一つない色白な肌の女性は、赤城の顔を、目を丸くして覗き込む。

「えっと、お母さんか。仮……」

 赤城は何かを言いかけ、口を閉じた。

『ゲームキャラの現実を壊すような行為や言動があった場合、ゲームオーバーになります』

 ラブの言葉が蘇り、赤城は首を横に振る。

 赤城の行動や言動は監視されている。あのまま言葉が赤城の口から零れてしまえば、確実にゲームオーバーになっていただろう。

「仮って何よ」

 母親らしき女が首を傾げ、赤城に尋ねる。

「ああ、放課後に仮面サバイバーの映画に行こうと思ったんだ」

 赤城は汗を流しながら、出まかせを口にした。仮面サバイバーという言葉に母親は反応する。

「仮面サバイバーね。あんなヒーローものなんかに熱中する時間があったら、彼女でも作りなさいよ。ところで、お小遣いを渡すのがまだだったわね」

 母親らしき女は、スカートのポケットから長財布を取り出し、1万円札を赤城に見せた。

 それから女は赤城の手に1万円札を握らせた。

「そういえばお小遣いがまだ貰っていなかったな。ありがとう。助かった」

 赤城が頭を下げると、母親らしき女は困惑する。

「ちょっと、何よ。改まって。そんなことより早く降りてきなさい。朝食の準備が済んでるから」


 赤城恵一は女に促され、部屋のドアを開けた。それから彼は母親の後ろを歩き、木製の階段を降り、リビングの椅子に座る。

 その椅子の前には長机が置かれ、その上に野菜サラダや食パンが盛り付けられた皿が乗っていた。

 赤城は早速朝食を口にする。ここは仮想空間であるはずなのに、なぜか食欲が湧く。

 その不思議な感覚に赤城恵一は途惑う。正面の席に座る母親らしき女は机の上で頬杖を付き、優しい眼差しで彼の顔を見つめた。


 朝食を完食した赤城に女は両手を1回叩く。

「早く着替えてきなさい。高校2年生初日に遅刻するなんて、お母ちゃん許さないからね」

 その母親らしき女の言葉を聞き、赤城はあの日の幼馴染の言葉を思い出す。

『高校2年生初日に遅刻するなんて許さないから』

 それはデスゲームに強制参加させられる前に聞いた幼馴染の白井美緒の言葉である。

 彼は二階にある自分の部屋に戻るための廊下を歩きながら、小声で呟いた。

「絶対に生き残って、美緒に会う」

 そうして自分の部屋に戻った赤城は、クローゼットを開け、黒色の学ランに黒の長ズボンという制服へと着替える。

 その直後、学習机に置きっぱなしになっていたスマートフォンが振動した。

「今度は何だ」

 赤城は何が起きてもおかしくないと言う恐怖から汗を流し、スマートフォンを手にする。

 

 スマートフォンの待ち受け画面に通知という文字が表示され、その下に次のような文字が見えた。

『シニガミヒロイン。処刑者リストが更新されました』

「処刑者リストだと」

 赤城は何が起きたのか、理解できなかった。

 彼は真実を確かめるために、シニガミヒロインというアプリをタッチした。

 すると画面に『ステータス』と『参加者名簿』と『処刑者リスト』という文字が映し出され、『参加者名簿』と『処刑者リスト』にそれぞれ赤色の丸が付いている。


 赤城はまず『ステータス』という文字をタッチしてみた。間もなくして画面が切り替わる。



赤城恵一


レベル1

知識:0

体力:0

魅力:0

感性:0


死亡フラグケージ:0


累計EXP:0

Next Level Exp :100


 次に赤城は、『参加者名簿』という文字をタッチする。

 画面の一番上に『残りプレイヤー。40名』という赤色の文字が記され、その下には次のような文字が表示された。



『ナンバー01。病弱な後輩。島田節子。2名。10番。百谷次郎。17番。千春光彦』


『ナンバー02。底辺アイドル。倉永詩織。2名。3番。桐谷凛太朗。31番。松井博人』


『ナンバー03。歴女な一面のある文系女子高生。島田夏海。8名。13番。滝田湊。15番。谷口宗助。35番。矢倉永人。44番。多野明人。48番。赤城恵一』


『ナンバー04。マニュアル人間の理系女子高生。三橋悦子。3名。14番。達家玲央。18番。中田蒼汰。26番。西山一輝』


『ナンバー05。体育会系元気ガール。樋口翔子。4名。12番。高橋空。30番。前田奏太。32番。宮脇陸翔。42番。後藤隼人』


『ナンバー06。内気な野球部のマネージャー。堀井千尋。5名。2番。市川陸。9番。島崎海斗。21番。三好勇吾。25番。村上隆司。40番。櫻井新之助』


『ナンバー07。演劇部のマドンナ。日置麻衣。3名。7番。小嶋陽葵。19番。中西優斗。33番。武藤幸樹』


『ナンバー08。中二病家庭教師。大竹里奈。4名。4番。入山朝日。28番。古畑一颯。38番。石田咲。43番。鈴木大河』


『ナンバー09。ツンデレ転校生。石塚明日香。1名。39番。内田紅』


『ナンバー10。退学ギリギリお嬢様。平山麻友。2名。11番。杉浦薫。29番。高坂洋平』


『ナンバー11。アニオタガール。佐原萌。3名。26番。阿部蓮。36番。藤田春馬。37番。藤田冬馬』


『ナンバー12。二重人格者な学級委員長。小倉明美。4名。1番。5番。岩田波留。34番。森川瑠衣。46番。大家碧人。47番。横山雷斗』


『ナンバー13。ヤンデレ外国人。木賀アリア。2名。41番。北原瀬那。45番。長尾紫園』




 この画面を見れば、誰がどのメインヒロインを攻略しようとしているのかが一目で分かるだろう。

 次の画面をタッチする前に、赤城はある違和感を覚えた。

『残りプレイヤー40名』

 予選を勝ち抜いたのは43名のはずだった。それなのに人数が3名足りない。


「まさか……」

 赤城は嫌な予感を覚え、次の画面『処刑者リスト』をタッチする。

 その画面を目にした赤城は思わず目を大きく見開いた。

「どういうことだ。これは」

 赤城は思わず大声を出した。


『1番。飯田悠斗。混乱してお母さんの腹を包丁で刺したから死刑』


『22番。竹下達也。仮想空間発言で死刑』


『23番。中村晴樹。俺の家じゃない。父親殴った息子を処刑』

 

 43段まである空欄に、このような文字が表示され、赤城の額から汗が溢れる。

 

 処刑者リストを読んだ桐谷凛太朗は自室の椅子に座り、足を組んだ。

 彼の手には、スマートフォンが握られている。

「これは愉快です。まさかあのルールは、裏ゲーム開催のフラグとなっていたなんてね」

 理由まできちんと書かれた処刑リスト。このリストに記載されたプレイヤーはゲームオーバーになる。

 彼は頬を緩ませ、席から立ち上がり、学校へと向かった。

 そして周囲を見渡しながら、彼は叫ぶ。

「ラブさん。聞こえていますか。一つだけ提案があるのですが……」

 桐谷の声をカメラ越しに聞いていたラブは、48台のモニターが設置された部屋の机の上に置かれたノートパソコンで文字を打った。

『いいですよ。プログラムを修正しておきます』

 ラブはノートパソコンのエンターキーを押し、彼に対してメールを送信した。

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