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Lucky Umbrella

作者: 人儚

 あなたは幸せになれる傘を知っていますか?

 なんでもその傘は、一見して普通の傘。しかし、持ち主を幸せにする傘なんだそうですよ。

 もちろん、私はうわさを聞いていましたから、その傘があるらしいぐらいは知っていましたが。

 でもどこへ行ってもうわさしか聞いたことなくて。いえいえ、実際に受け取った人もいるんです。実際に受け取った人に聞いてもちゃんとした返事はなし。ただのうわさだと思いますか?

 私はただのうわさだとは思いませんね。でも、仮に、そんな傘があるなら受けとってみたいですね。

 これからする話は誰かのお話。そんなわけで主人公がいます。名前は。そうですね。仮に。A子さんとしますか。

 え?古い?話に入れない?仕方ないですね。では命名。「中田里沙なかたりさ」でどうですか?いいですか。よかった。そんな中田里沙ちゃんの話。

 今からするのは傘の話。丸い傘の話。ほんの少しの幸せな話。

 中田里沙は中学生女子である。別の言い方をすれば、思春期真っ只中である。自分でもそう自覚いていたし、年齢上仕方のないことである。好きな人だっていた。それは・・・。と思い始めて考え直す。別に言わなくてもよいではないかと。そんなわけで私はそううわさと占いが好きな女子中学生だった。

 ある日、とあるうわさを聞いた。幸せになれる傘があるといううわさを。結論から言えばその傘を探し歩いたのである。なんでも偶然出会えるとのこと。私は偶然を待つタイプではないし、むしろ手繰り寄せるタイプであったから捜し歩いた。

「にしても、ないね・・・。」

 そう私は夕方のコンビニの前で黄昏ていた。見つからない。偶然とはそこまで起こりにくいものかという事を知った。

 しかしまた、幸運を探しに来た私には更なる不幸が待っていたのである。

 夕立―

「あーあ・・・。おわりましたー。幸運を探しに来たのに・・・。まさか雨が降るなんてなぁ・・・。」

 濡れて帰る覚悟をしていた私の前に幸運は訪れたのだった。

「あのー・・・。」

 だれかにそういって話かれられる。振り向いてみるとそこには隣の中学校の制服を着た男の子が傘を持って立っていた。

「これ、使いますか?」

 男の子はそういって傘を差し出してきた。「いや・・・。悪いですから・・・。」そういって断ろうとしたが男の子は続ける。

「僕もこれおととい知らない人に貸していただいたんです。ですから、どうぞ。」

 男の子はそういって傘を私に無理やり押し付けて雨の中を走って帰って行った。

「折角だし・・・。借りとこうかな。」

 私はそうやって傘を開いた。

「え⁉」

 私が驚いたのはかさの内側だった。外側は肌色でクローバがシンボルとして描いてある。いわば、あの男の子が持っていては少し違和感があるそんな傘だった。それとは反対に内側にはびっしりと名前が書いてあった。

 そしてルールと枠に囲ってある文章を読む。

『その一。あなたは他人から幸運を分けてもらった素敵な人です。その素敵な気遣いを無駄にしないこと。

 その二。返すのは次の人に。恩返しは次の人に幸運を分けてあげることにしてください。

 その三。よければこの傘に名前を書いてください。それによってどれだけの人が幸せになったかわかるからです。

 その四。みんなにやさしく。 以上。発起人「 」』

 結論、私はその傘で帰路に就いた。家に帰ると私はすぐに傘に名前を付け足した。発起人さんの名前はもうすり切れててわからなかった。でも思う。素敵な人なんだろななぁと。

 私はそれから数日後に傘を次の人に渡した。あの男の子と同じようにして。素敵な男の子だったと思う。名前はわかる。だって傘に書いてあるから。傘は私に幸運を本当に届けてくれたような気がした。

 あなたの元にもこの傘がめぐりゆくかもしれませんね。

このシリーズで短編を書くこともありますのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 発想が面白いかなー。 最初の方で読者の興味が引けてると思う。 [一言] 作者の人儚さんも思春期真っ只中なかんじですねww
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