・疑心暗鬼
人は一度疑う心を持ってしまったのならば、そう簡単にはその疑ってしまった人を信じる事が出来ない。
信じたくても、心の何処かで信じたい人のありとあらゆる言動を探り、拒絶してしまうもの。
私の場合は笑顔で全てを覆い尽くし、心を閉ざしてしまう傾向がある。
ぼんやりと何もせずに一日を過ごしていた私は、リビングのベランダへと通じる窓から、西日が入り込んでくる事に気付き夕飯の支度をするべく、キッチンにある新品で立派過ぎる冷蔵庫を開け、項垂れた。
どうしてか今日に限って、冷蔵庫の中身は空に近く入っているのは酒類と調味料のみで、メインになる様な食材はなかった。
「仕方、無いわよね・・・。」
一々買い物に行くのも億劫だけれど、買い物に行かなければ夕飯を作る事も出来やしない。例え作ったとしても食べてくれる人はいないかもしれないけれど、一応作っておけば食べてくれるかもしれない。そう思い、髪を手櫛で軽く整え、シュシュで左サイドでまとめ、財布と携帯、エコバッグを持ちいつものスーパーへと行った。
スーパーはマンションから徒歩15分と言った立地の場所にあり、更には住宅街の近くにあるせいかそれなりに混雑していた。
かごを右腕に掛け、適当に肉や野菜、魚等を買い、序でに朝食用のシリアルや食パンも買う。
おおよそ小一時間を掛け買い物をしてお金をを払い終えた私は、マンションに帰る為にスーパーから出た所で、今頃は会社にいるであろう人を見かけ、何やら急に全てが馬鹿馬鹿しくなってしまった。
私は何のために買い物に来たんだろう。
私は何のために仕事まで辞めたんだろう。
私は何のために・・・。
どうして、どうして・・・。
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、私の足はマンションではなく実家へと自然と向いていた。
その間にも何度も携帯が鞄の中で震えていたのだけれど、その時の私は気付かなかった。と言うよりは、気付きたくなかった。
「まぁ、緋弓。どうしたのあなた。」
真っ青な顔をして、との久しぶりの母の優しい声に、私は堪え切れずに涙を流した。
泣いているのは悔しいから?悲しいから?それとも苦しいから?
判らない、判らない。
私は全てを拒絶する様に自宅の玄関で意識を手放した。
短いですが、更新しておきます。




