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・いざ、デビュー

 ――名家の花嫁。


 それは誰もが望んでなれる訳ではない。そんな御大層な、そして面倒臭い身分に治まる事に決まってしまった私には、結婚するまでに、そして嫁として生きて行く過程の中で、確実にこなして行かなければならないモノが幾つかある。


 そんな様々な難題な課題の中でも、特に理解し難いのが【新婚家庭における、フルコース】と言う名の料理教室に通う事。


 因みに新婚期が過ぎれば違うフレーズがもう用意されていると聞く。全く、どんだけ料理でお金を稼ごうと企んでんのよ。料理なんて腹が膨れればいいのよ!!


「・・・そんなに行くのが嫌なら辞めればいいだろう。別に義務って訳でもないんだ」


 ぶすぅ~ッと、頬を小動物のリスの様に膨らませている私に、聖はげんなりとしている。


 疲れてるんなら、私に構わなくたって良いのに。

 明日も早いんだったら、早く寝た方が良いと思う。

 そっちの方が建設的だし、お互いの精神上にも効果覿面だとも思うし。


「辞めない、一回も行かないで辞めるのは性に合わないもん。ったぁー」


 料理教室に行く前の予習として、包丁で皮むきの特訓をしている私。

 明日のメニューはじゃが芋の冷たいスープに、ローストビーフ。

 ローストビーフってあれよ?

 結婚式とか食べ放題の時にしか食べれないあれよ?


 血の出た指を口の中に含めば、鉄の味が直に広がった。

 

 地味に痛い。

 これで本当に明日から私やっていけるの?

 って言うか、なんなのこの手。


 怪我をした指の血を止めようと、包丁の手を休めていた私の服に勝手に潜り込んでくる不埒な手。

 なんで男ってこうも即物的なの?

 私は明日のデビューの予習で忙しいって言うのに!!


「もう、なんなの?邪魔しないでよ」


「邪魔はしてない。無防備なお前が悪い」


「家でも緊張してろっていうの?勘弁してよ」


 そんな事言われたら息詰まっちゃっておかしくなっちゃうじゃないのさ。

 また反論しようと口を開きかけた時、それは侵入してきた。

 

 軟らかくも弾力のあるそれは、どう考えてもソレなワケで・・・。

 抵抗しようにも抵抗出来ない様に手は拘束されて、遂には正面から抱きしめられてしまいました・・・。

 あぁ、なんて情けないの。 

 なんでもっとこう、はっきり抵抗出来ないのかな?


 そんなこんなで、まだ真新しいキッチンで散々責められた私は、料理教室で成功する訳もなく、無様な結果をぶら下げて帰宅したのでした。ぐすん(泣)。

   

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