・婚家は魔窟-1
どうしてこんな事になっちゃったんだろう。
私は今、後悔のどん底を彷徨っている。そんな私の隣には、私のその深すぎる後悔の原因たる男が、にこやかに二人の兄嫁に爽やかな笑顔を振りまいている。
◇
例の合コンから三日。
あの日から私は何故か婚約者の顔をまともに見れない。見ようとしてもその途端心臓がいきなり高鳴り出し、それと同時にあの時の彼の瞳と眼差しが思い出されてしまい、結局は叶わない。それをこの三日間、一体どれだけ繰り返した事だろうか。
「・・・ん?緋弓さん、どうしたんですか?」
あぁ、遂に幻聴まで聞こえてきてしまった。どうして私はこんなにもこの人が気になるんだろう。私が好きなのは奏詩だけのはずなのに。なのにどうしてこんなにも気になるのだろう。
ぼんやりと自分の思考の淵に沈みこんでいた私は、無意識に彼の手を握っていた。それはまるで何かに縋るように。私がその失態に気付いたのは、温かな大きな手で、自分の手を思いの他優しく握られたから。
「・・・っ、す、すみませんっ!!私ったら何を、」
慌てて手を離そうにも、相手が手を離してくれないから、それも叶わない。その事で、体感温度がカァーっと、急激に高くなり、顔まで熱くなってくる。終いには泣きたくもないのに、あまりの気恥かしさで瞳が潤んでくる。
あぁ、これではまるで私がこの人に恋しているみたいじゃないか。
そんな事は絶対にあり得ない筈なのに。
もう、恋はしないと決めたのに。
自分でも判らない症状に慌てふためく私を見て何を思ったのか、お義兄さん達と真剣に話し合っていた婚約者サマが、私の手を解放した。
でも私がそれにホッとしたのも束の間。
「な、何を、」
「寂しいのなら寂しいと素直に言って下されば良かったのに。緋弓さんは本当に可愛い人ですね。――兄さん達もそう思うでしょう?」
「ひ、聖さん?」
抱き上げられ、膝の上に乗せられた私は、抵抗しようとした。でも、それは思いもよらない形で封じ込められた。
するり、と、無理矢理着せられた着物の裾の隙間から手を入れられ、太ももを幾度か撫でられ、オマケに胸元に顔を沈められては、声も出せなかった。
あぁ、そんな生温い目で見ないで下さい。
あぁ、そんなに恐ろしい目で睨まないで下さい。
そんな事を、頭と心の端で思いながら、否応なく感じる快感にプルプルと震えながら、私はそれらに耐えた。
私のそんな反応を充分楽しんだ婚約者サマは、私を膝の上に乗せたまま、お義兄さん達との会話に戻り、私はと言えば冒頭に戻る。




