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・婚家は魔窟-1

 どうしてこんな事になっちゃったんだろう。


 私は今、後悔のどん底を彷徨っている。そんな私の隣には、私のその深すぎる後悔の原因たる男が、にこやかに二人の兄嫁に爽やかな笑顔を振りまいている。



 例の合コンから三日。


 あの日から私は何故か婚約者の顔をまともに見れない。見ようとしてもその途端心臓がいきなり高鳴り出し、それと同時にあの時の彼の瞳と眼差しが思い出されてしまい、結局は叶わない。それをこの三日間、一体どれだけ繰り返した事だろうか。


「・・・ん?緋弓さん、どうしたんですか?」


 あぁ、遂に幻聴まで聞こえてきてしまった。どうして私はこんなにもこの人が気になるんだろう。私が好きなのは奏詩だけのはずなのに。なのにどうしてこんなにも気になるのだろう。


 ぼんやりと自分の思考の淵に沈みこんでいた私は、無意識に彼の手を握っていた。それはまるで何かに縋るように。私がその失態に気付いたのは、温かな大きな手で、自分の手を思いの他優しく握られたから。


「・・・っ、す、すみませんっ!!私ったら何を、」


 慌てて手を離そうにも、相手が手を離してくれないから、それも叶わない。その事で、体感温度がカァーっと、急激に高くなり、顔まで熱くなってくる。終いには泣きたくもないのに、あまりの気恥かしさで瞳が潤んでくる。


 あぁ、これではまるで私がこの人に恋しているみたいじゃないか。

 そんな事は絶対にあり得ない筈なのに。

 もう、恋はしないと決めたのに。


 自分でも判らない症状に慌てふためく私を見て何を思ったのか、お義兄さん達と真剣に話し合っていた婚約者サマが、私の手を解放した。


 でも私がそれにホッとしたのも束の間。


「な、何を、」


「寂しいのなら寂しいと素直に言って下されば良かったのに。緋弓さんは本当に可愛い人ですね。――兄さん達もそう思うでしょう?」


「ひ、聖さん?」


 抱き上げられ、膝の上に乗せられた私は、抵抗しようとした。でも、それは思いもよらない形で封じ込められた。


 するり、と、無理矢理着せられた着物の裾の隙間から手を入れられ、太ももを幾度か撫でられ、オマケに胸元に顔を沈められては、声も出せなかった。


 あぁ、そんな生温い目で見ないで下さい。

 あぁ、そんなに恐ろしい目で睨まないで下さい。


 そんな事を、頭と心の端で思いながら、否応なく感じる快感にプルプルと震えながら、私はそれらに耐えた。


 私のそんな反応を充分楽しんだ婚約者サマは、私を膝の上に乗せたまま、お義兄さん達との会話に戻り、私はと言えば冒頭に戻る。 

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