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・義兄様はエリート様

 浅羽あさば れん、35歳。

 職業、エリート銀行行員。

 家族構成、弟と妹、両親、そして今現在は妻(弓子お姉と犬)と二人暮らし。


「3ヶ月ぶりだね、緋弓ちゃん」


 にっこり、悩殺級のスマイル(うわっ、古ッ!!)を浮かべ、私の向かいの席に腰をおろした麗しきお兄サマは、頬をうっすら紅く染めるウェイトレスに氷の様な眼差しを向け、かっちりとしたメガネのフレームを外し、目頭の凝りを解す様に揉んだ。


 どうやら今日はあまり機嫌がよろしくないらしい。それでも義理の妹としての義務で、にこっと愛想笑いを浮かべる。


「お疲れ様です。だいぶお疲れのようですね。廉さん。」


「緋弓ちゃんもね。」


「私は平気ですよ。まだギリギリ20代ですから。」


 くふふふ、と、不気味な笑みを漏らせば麗しきお兄サマは、ギロリと私を睨んできた。うん、怖い怖い。


「ホントに君達姉妹は似てるよね。わざと人を怒らせて何が楽しいの?」


「スリルです。それに美形は怒っても綺麗だから見ていて飽きないんですよ。お姉がわざと廉さんを怒らせるのはただ単に廉さんが好きだからですよ。お姉の解かり難い愛情表現です」


 トマトソースのパスタをくるくるとフォークに巻きつけながら言えば、お兄サマ、えぇーい、面倒だ。廉さんははにかんだ。うんうん。解かるよ。廉さんは弓子お姉が大好きだもんね。嬉しいんだよね。なのにその愛しい奥さんの妹をデートに誘うとはどういうことかな?


「そう睨まないでくれるかな?実は部下の女子行員に言い寄られていてね。」


「なるほど、ようするに囮ってわけですね?」


「うん。お礼はするよ?何が良い?鞄?指輪?それとも・・・」


 次から次に勝手にお礼を決めている廉さんに、私は微苦笑を浮かべた。


 廉さんは古くから続く名士の家柄の長男で、大学に入学して弓子お姉と出逢うまでは、両親に特に逆らった事さえなかったらしい。それが運悪く弓子お姉と出逢ってしまったばかりに、廉さんは変わってしまった。


「先生、水臭いよ。ここの代金立て替えてくれたらそれで良いよ。私、先生の妹でしょ?」


 廉さんが結婚の挨拶に初めて家に来た時、私は驚いたね。何しろ、小学生時代からお世話になっていた家庭教師のお兄さんが、まさか本物のお兄さんになるなんて誰が予想出来るって言うの?


「ありがとう、緋弓ちゃん」


 私の言葉にホワンとした微笑みを浮かべ、廉さんは静に息をついた。

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