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・コレも義務-後-

 ――ピンポーン。


 調味料の有無を調べようとした時、静かに鳴り響いたインターフォン。

 このインターフォンさえ無視していれば、私はこの先穏やかに暮らせていただろうに、恋愛の神様はそう簡単に私を見逃してはくれなかった。


「は~い、今開けますよぉー。」


 キッチンに向けかけた足を、そのまま玄関に向け、チェーンと鍵を開錠し玄関扉を開けば、そこには見た事もない大人美人が、大人な魅力がムンムンな服を着て立っていた。


(うわっ、メンドクセぇ~。)


 明かにそれであると一発で判る女性の来襲に、私は笑いより、面倒臭さを先に覚えた。

 どうしてここの部屋を知っているのだとか、どうしてここに来たんだとか、聞きたくもない位面倒だった。


 大方別れ話に納得出来なくて、こちらに奇襲を掛けてきたのだろう。

 

 全くもって迷惑である。これで私が婚約者でなければ話は簡単だっただろうに、不運な事に私は婚約者。相手が望むのなら、相手をしてやっても良い。


「まだ全然片付いてもないし、何もないんですけど、それでも良ければ「返してよ」」


 へ?何?この人。


 人の話も聞かないで、いきなり返してよ発言?しかもアンタ、靴も脱いでないじゃない!!

 どんだけ自分勝手なのよ。


 こんなバカな女は相手にしたくない。でも、一度相手をすると決めたからには、きっちりと引導を渡してやると言うのが筋と言うモノだろう。


 溜息を一つ吐き、目を伏せる。


 女の駆除も婚約者の義務で、仕事なのだろう。これを見事撃破した後は、後で何かを奢らせよう。そう心に決め、私は寂しげな笑顔を浮かべ、攻撃に転じた。


「二人目。」


「え?」


「貴女で二人目ですわ。私と聖さんの婚約を認めないと、聖さんを返してと私に言いに来たのは。」


 私の急な言葉に、襲撃してきた女の人は目を白黒させながらも、それでも何とか反論しようとしていた。でもね、私はそれを待つほど、お優しいお嬢様じゃないの。


「悲しい事ですわ。私のどこが皆様のお気に召さないのでしょう。私は私なりに必死に頑張っておりますのに。」


「そ、そこが鬱陶しいのよ!!あの人は自由が好きなのよ。それにあなた、その貧相な身体であの人を満足させてられるの!?」


 えぇ。そりゃあーもう、嫌と言うほど知ってますとも。でもね、それはアンタに関係ないのよ。

 契約でもなんでも、今の私は奴の従順な婚約者。

 世間と奴が良いと言うまでは、私に他に好きな人が出来るまでは、この下らない茶番と演技と関係に付きやってやるともさ。


 頬を意識的に染め、恥ずかしそうに俯き、私は小さく呟いた。


「大きさは関係ないと、聖さんは言って下さいましたわ。肝心なのは感度と身体の相性だと・・・。」


「そんなの嘘よッ!!」


「それなら貴女は最近、いつ聖さんに抱かれましたの?私は昨日から今朝にかけてですわ!!」


 これは嘘っぱちである。

 ウソは嘘でも大嘘である。しかし、昨日の夜に逢っていたのは本当なので、全くの嘘とも言えない。

 結婚式まであまり休みが取れないと言う奴のせいで、奴の実家で私と奴は、奴の家族に朝まで拘束されたのだ。そのせいで今日は寝不足気味なワケで・・・。


 ふわわ、と、ついついガマンガ出来なくて、欠伸を我慢できなくて漏れ出てしまう。その欠伸を誤魔化す為、ちらりと彼女の背後に見えた人影を愛おしげに見るようにして(実際は睨みたかった。)、囁いた。


「私が寝かせて貰えたのは、明け方前ですわ。ねぇ、聖さん?」


 テメェの尻拭い位、少しはテメェで蹴りをつけやがれ!!私のこの無言の催促に奴は面倒臭そうに溜息を吐いた。そして。


「緋弓さん、そう言う事はみだりに口に出してはいけませんよ?そうでなければ、またあなたを所構わず抱いてしまいたくなる。」


 非常に甘ったるい声で言われた言葉に耐えるのは、いくばくかの殺意と寒気を抑える事が必要だった。恐るべし、色狂いの最低男。


 私はこうしてまた奴を心の中で散々貶したのだった。



 

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