表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

・降ってきたお見合い話

記念小説です。

 私、守丘もりおか 緋弓ひゆ、当年29歳。

 職業はインテリアを主に手掛ける会社の受付嬢歴10年目のベテランと言う名のお局。

 彼氏・恋人いない歴は、今年の春で丸5年。


 そんな私の家族は、口煩い姉に、育ち盛りの高校生の弟、そして最近特に結婚結婚と口煩い母に、私が勤めるここの会社の幹部の一人でもある父の5人家族。

 その家族に囲まれ、我ながら騒がしくも充実した日々を送っていると思っていた日々。


 でもそれがある一人の男性の出現によって、大きく揺らぐことになるだなんて、誰が考えただろうか。


「え?知雪、お見合いするの?」


「そうなの。相手は官僚でエリートなんだって」


「なんだって、て。」


 社員食堂で大人気のAランチを突きながら、親友である彼女のカミングアウトにどう反応すればいいか悩む。

 彼女と私は同期で、かけがえのない親友で、彼女は少し前に秘書課秘書室に移動となって、これからっていう時だった。なのに。


「仕方ないよ、緋弓。ウチは元々女は嫁いで家を守れって家だからさ。仕方ないんだよ」


 寂しげに微笑む彼女は、何所か疲れ切っているように見えた。

 それから察するに、状況はもう手遅れなんだと知った。


「それで、会社はいつ辞めるの・・・?」


「緋弓、」


 お見合いするだけなら、彼女はこんなに暗くはならない。

 お見合いして、結婚して、仕事を止める事が決まっているから、こんなにも暗く寂しそうにしているのだ。


 両親に反抗してまでここに就職したと言う知雪。

 入社してからずっと傍に、一緒にいた知雪。

 喧嘩しても、例えどんなに苦境や逆境に立たされても、一緒にいた、いてくれた知雪。


「解るよ。だって、ずっとに一緒にいたじゃない。雨の日も、風の日も。」


「遅刻した日も、ね。」


 から揚げに箸を突き刺し、わざと意地悪気に笑ってやる。

 それしか出来ないから。彼女は、湿っぽいのが大っ嫌いで、超が付くほど苦手だから。


 ふぅーっと、溜息とも、安堵の息とも取れぬ息を吐いて、箸に刺したから揚げを口に入れ、もぐもぐと口を動かす。知雪も食事を再開し、たぬきそばをズルズルと啜る。


「緋弓、アンタも気をつけなさいよ。私達はもう若くない。」


「大丈夫よ。私なんかにお見合い話なんか来ないよ。心配し過ぎ」


 そう。確かそんな事を話していたのはつい最近だった。と言うか、今日のお昼だった。

 なのに、こんなことってあるのだろうか。


 ぽかりと間抜けにも開かれたままの口と目に、髪から滴り落ちる水。


 今、この親父は何と言った!?


「う、だから、そのぉー、見合いをだな・・・」


「却下。」


「緋弓ぅ~」


 50をとうに過ぎた親父が気色悪い、と言わないだけ、感謝して欲しいと思う。そう思いつつ、困り切った顔をした父を無視し、ソファーに座り、お気に入りのクッションを胸に抱く。


 誰も彼も結婚結婚と煩いが、そんなに結婚しなければならないのか。

 それでも何か?結婚は女の義務だとでもいうのか!?

 もしそうだと言うのなら、今すぐそんな義務は撤回してしまえ!!


「逢うだけでも良いから、とりあえず逢ってくれ。事は社運が掛かってるんだ。」


「今時、政略?うわ、ダッサ。」


「相手はやりての若手の社長だぞ?」


 それを聞いて、益々面倒でウソ臭い上に、嫌になって来る。

 何も私じゃなくても、と思ってしまう。

 そして不意に思い出す。自分がここの家の次女である事を。


 にやりと、人相の悪い笑みを浮かべ。


「私じゃなくても、弓子ゆみこお姉でも良いじゃん」


「フフフ、残念でした。私は来月結婚するんですぅ~。」


「な、そんな事、聞いてないよ!?」


「だって、アンタには今初めて言ったもの。」


 お先、と笑う姉にがっくりと肩を落とし、私はクッションに顔を埋めるのだった。 

続くのか?これ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ