11 謎の声が君の心の光を呼び覚ます
「みなさん。そろそろ」トート先生が探しにきてくれた。
久しぶりに遊びまくった。かなり満足だ。
「ご婦人、少々汚れていますが、アレでしたら私の小屋に泊まりますか?」
……絶対やめたほうが良いですよ? ララさん?! 卒倒間違いなしですよ??!
「石鹸をおつくりになられた方のお屋敷ですか」やめろっ! やめろっ! 汚いし! いろいろ危険っ!
というか、あんなスラムに妙齢の女性を連れて行くなっ!
すやすやと眠るファルコとドミニクを抱えたワイズマンさまとロー・アースがやってくる。
いろいろお疲れ様です。ワイズマン様。
「男爵殿には申し訳なかった」頭を下げるワイズマンさま。
「……過ぎたことです。女子の身ではどうしようもないこと」ララさんは視線を合わさず答える。
二人に何が起きたかは知らないが、聞かないほうが良いだろう。
「やめてくださいっ!!! 」うん? 何の声だ??
向こうで騒ぎになっているらしいが。歩を進める。
「はなせっ! バカ野郎!! 」子供が暴れている。……何があったの?
「この餓鬼が俺の財布を掏りやがったっ! 」「うっせ~! トロいてめぇが悪いんだよ! 」
スリか。まぁスリが衛視や聖騎士に捕まるのは良くある。放っておくか。どうせ百叩きでおしまいだ。
たまに百叩きしたあと癒しの力を注いで百叩く刑が無いわけではないが。連中だってそこまで暇じゃない。
「ふむ。聖女様。腕を斬りおとしましょう」
おい??!
「えええ?? ダメです! ダメです! 絶対ダメっ!!! 」
……ん?? あれは。
「ローラ??? 」ララさんが叫んだ。
あっちゃ~。変なとこで……。
「しかし、この子供は常習犯です。
しかも口ばかりで反省の余地もなく、悪意があります」
聖騎士は困った声を上げる。
「ダメ! ダメ! 絶対ダメ! 」
ローラは顔を青くして反対している。
「……いい仕事してね? アンタの娘」
マジで。子供にしてはいい度胸だ。
「ローラ!!! 」
歩み寄ろうとするララさん。ちょ! 待った!!
「お母さん??!! 」
馬から飛び降りてララさんに歩み寄ろうとするローラ。聖騎士たちに止められる。
「聖女さま。お戯れはお辞めください」
「はなしてっ! 母さんに何をするのっ! 」
「はいはい。手打ち手打ち」
ぱんぱんと場違いな拍手。ロー・アースだ。
「聖騎士様! この子は小さい子の面倒を良く見るやさしい子なんですっ!
どうかっ! どうかっ! 」
子供の母親にしては歳を取った老婆が泣きつくが、振り払われる。
「……なにしやがるっ! 」スリの少年と俺が叫ぶ。
叫ぶが早いか、聖騎士の一人に思わず石を投げた。
頭に綺麗に命中して倒れる。よっしゃ。
「誰だっ! 石を投げた者はっ! 」
……あっさり捕まりました。ですよねっ?!
「……金が要るんだよっ! 薬も飯もっ! 」
スリの少年が叫ぶ。「命だって金が要るんだよっ! 」
「……『貴族』としては心苦しいな。無力を感じるよ」
ワイズマン様の声が何処かから聞こえた気がした。
「腕を斬りおとします」聖騎士の一人が剣を振りあげた。
「てめぇっ……!!! 餓鬼の手斬りおとすなら俺の手にしろっ! 」
「……お前の沙汰は後だ」
暴れる俺を取り押さえる聖騎士。
「あん? ネーちゃんバカか?!
ネーちゃんなんかシラネェよ?! 俺の問題だろっ! 」
「じゃかましいわっ! 餓鬼! 」
「……なにやってるんだよ。お前」ロー・アースは額を抑えている。
「まぁ、おまえのそういうところが面白いけどな」そういってニヤリ。天を仰いだ。
……????
天空に舞い上がりL字を描いてくるくると回る影。
影は急にスピードを増し。
「騎手を!きっく!」
雲間から太陽が覘き、その姿を光に包む。稲妻のように舞い降りる小さな光。
「ドン!」
馬上の剣を振り上げた男の顔面に鋭い一撃! そのまま天に舞う影。
「ザク! 」「ドム! 」鋭い蹴りを受け馬上から倒れる聖騎士二名。
「ゾッ! 」「くっ! 」一撃を鉄の盾で受けた聖騎士も再度舞い上がった影の一撃は避けきれず。
「ズゴッ! 」「クッ! 」吹き飛ばされる。
「ざくれろっ! 」錯乱して謎の台詞をはいて剣を振り上げた騎士の一撃は虚しく空を切り、
「じぉ! 」「ングッ! 」落馬させられる。
……ひゅんひゅんと空中を華麗に半ひねりする影。
すたっと大きく股と手を開いて舞い降りる。
「……ぼく。さんじょう! 」ファルコ???!!
「貴様っ!スリに加担する気かっ! 」
「……ぼく、しあない(知らない)っ! 」
聖騎士の剣をすり抜け、剣を持つ手に蹴りをいれ、頭に蹴りをいれ、舞い上がる。
「ぼくは みかたなの」
天空に舞う小さく強い人の形。それが太陽の光を浴びて輝く。
「「「おおおおおおっっ!!!!」」」思わず叫ぶ俺たち。
「騎手を真剣!!!きぃぃぃぃっくぅぅっっ!!!!」
天空から華麗な月面宙返りを描き、露店の上を何度も舞い、鮮やかな一撃が隊長格に入る。
よっしゃ! よくやった!
「……母さん!! 」「ローラ!! 」
抱き合う母子。
「はなせ! コンチクショウ! 」
コソコソと逃げようとする少年をロー・アースとワイズマン様が捕まえた。
「後は頼む」「わかった。存分にやれ! 」
ワイズマン様は腰に下げていたレイピアをロー・アースに投げる。
レイピアを受け取り、ニヤリと笑うロー・アース。
「ここは手打ちにしないか?! 」「何を言っているっ!! その子供は邪悪だっ! 」
「うっせ~~! 善人なんてマヌケしかいねぇよっ!!! 」
「レィ! やめなさい! 」少年の叫びに老婆が叫ぶ。
「ちいや。だいじょうぶ?」
いつの間にか俺から距離を取った聖騎士たちと俺との間に立ったファルコが背中を向けたまま問う。
「あはは……迷惑かけてスマネ」いつもいつも済みません。
「まぁ、かまわないんだが」やる気のない声が背後から。抜刀の音。
「貴様ら。何のつもりだ?! 」
ローにつられて聖騎士たちが剣を抜く。
「成り行きで犯罪者の餓鬼に加担することにした愚かな男さ」
「なの! 」「……まぁそういうこった」
「バッカじゃね? あいつらっ! 」「レィ! 」「黙ってみていろっ! 少年! 」
向こうで少年と老婆とワイズマン様の声が聞こえる。
「……貴様らは関係ない。黙ってみていろ」
隊長格の男はファルコに蹴られた頭を振るとそう言い放つ。
「おぃぃ? お前ら聞こえたかぁ? 」
「きいてにぃ」「おれの記録にはなにも無いな」
ああ。おれたちは馬鹿だ。大馬鹿だ。自然と笑みがこぼれる。
「喧嘩だっ! 」「喧嘩だっ! 」
「聖騎士たちと冒険者が喧嘩だっ! 」大騒ぎする群集。
「ただいま冒険者0聖騎士10! 冒険者に賭ければ十倍だっ!
冒険者に賭ける奴はいないかっ!?? 」
「私が出そう! 銀貨一万枚だっっ!!! 」「おおおっっ!!!! 」
……へ???!!
「私も少ないですが銀貨千枚出します」「うおおおっ!! 」
せ。先生、ワイズマン様! なにいってるんですかっ??!
「ちょ! ニーちゃん莫迦だろっ! 」「少年よ。『正義は勝つ』のだよ? 」
いや、正義じゃないと思います。多分。背中にいやな汗がする。
聖騎士の強さはチートである。一人対俺達三人ならまぁ回復祈祷さえなんとかできれば勝機はあるが。
ファルコの蹴りはほとんど効いていないようだし、向こうのほうが数多いし。
うん。莫迦だ。俺、大莫迦。巻き込んですまん。二人とも。
「まぁ。やってみますか」魔法の光を放つレイピアを構えるロー・アース。
「へんしん! 」謎のポーズをとり、短剣と盾を取り出すファルコ。
「チーアさん! 」弓と矢筒が投げつけられる。修復に時間がかかっていた俺の弓。
手を振るトート先生に手を振り返す俺。
ワイズマンさまとトート先生の声。
「遠からん者は音に聞けっ! 彼らこそっ! 」
「「「夢を追う者達! 」」」おれたちは一斉に叫ぶ。
「糞を追う者っ???! 」驚く聖騎士たち。
「余計な事言うなっっ!!! 」おれたちは一斉に怒鳴った。
ファルコが宙に舞い、流星雨のように蹴りを空中から何度も放つ。
それを盾で防ぐ聖騎士。その身体が揺らぐ。
地を縫うように身を低くして駆けるロー・アースがその両脚に脚を絡めて転ばせたのだ。
「速攻! 」その間隙を縫って俺は矢を放つ。ばふっ! という音とともに矢に仕込まれた目潰し粉が噴出する。
トート先生が開発した殺傷能力は無いが戦闘能力を奪う便利な矢だ。
むせる聖騎士たち。目潰しだけではなく、痒みを発生する効果もあるそうだ。
間髪なく華麗に天に舞うファルコ、地を駆けるロー・アース。
「子供の攻撃は軽い! 男を狙え! 」
そう叫んだ聖騎士はファルコの豪快な頭突きを食らって倒れた。
そのまま首と身体の力で跳ね上がり、空中で体勢を整えて横回転を加えた蹴りを放つファルコ。
その蹴りとロー・アースの斬撃が重なる。「くっ! 」
「『混乱』!『虚脱』!『困惑!』」悪戯好きの精神の精霊の加護を振るう俺。
ほとんどは聖騎士たちの強靭な精神を打ち破るに至らずだが、注意をひきつけるくらいはできる。
「女を狙えっ! 」うっせぇ?! 誰が女だってっ??!!
ローとファルコを止めに入った聖騎士以外は俺に殺到する。
「やれるもんならやってみやがれっ! 餓鬼の腕落としたりで何が正義だっ! 神だ?! 笑わせんな! 」
大声で啖呵を切ってやる。聖騎士の剣が俺の肩口を捕らえた。
……薄れる視界の隅でファルコが一撃を避けきれず、背後と前方から斬られたのが見えた。
ロー・アースに殺到する聖騎士たち。よく見えないが血がたくさん見えたかも。
ごめん。二人とも。
……あ~あ。死んじまった。とほほ。ザマァねぇなぁ……。
「……」なぜか意識がある。恐る恐る目を開く。
肩口から袈裟斬りされたはずなのにかすり傷ひとつない。
……いや、消えてしまった。といったほうが正しい。
「やめなさい」俺の前に立つ小さな影。
「喧嘩は正義神も慈愛の女神も認めていません」揺れる金色の髪。ドミニク?!
『正義とはお前の心の光だ』
『正義とはお前の心の光だ』
『正義とはお前の心の光だ』
『正義とはお前の心の光だ』
「うわっ? なんか聴こえた?? 」「俺も!!?? 」「俺も??!! 」騒ぐ野次馬たち。
膨大な言葉が俺の脳裏に流れる。これって。
……なんか力が湧いてくる。熱い気持ちが心から漏れるようだ。身体中が温かい。
「汝の心に正義ありや? 心の光は神の光。神の光は汝を導く炎……。
正義の神よ。我らか弱き人の心の光に力を。炎を与えよ。
……勇気よ。力となれ! 闘志よ。鎧となれ!
正義を胸に奮い立つものよ。立ち上がれ! 今こそ邪悪を討つ鉄槌となれ!
『聖戦』」
ドミニクに天から光が降り注ぎ、粒子となって俺たちにまとわりつく。
凛とした力と決意を感じる光だが、どこかやさしくて暖かい。
これが、正義神さま?!!
聖騎士たちが慌てふためいている。
異教徒の俺らに効果があって聖騎士であるはずの彼らに効果が及ばないってあるのか?
この祈祷が通じないということは神様自らが「おまえら悪党」と仰ったようなものだ。
他国に使えば大問題になるのでどちらかと言うと政治的な理由で使われることはない祈祷と聞く。
「お仕置きっ! 」「……よくわからんが」
「おいっ! オッサン! 俺らも賭けさせろっ! 」
「すっ! すまんっ! もう締め切ったっ! てかなんで生きてるっ! 」知るかボケ。
「ふふん♪おねーさまと呼んでいいのよ?」
勝ち誇るドミニクだが、お断りします。ありがたいけど。
「おいっ! 冒険者達の負けでいいんだよなっ!?? 」
『良いわけ無いだろうっ?! 勝負はこれからだっ! 』
ワイズマンさまとトート先生が叫ぶ。
「行けっ!! 」
「反撃開始っ! 」「おうっ! 」「うんっ! 」
身体が熱く、そして驚くほど軽い。まるで熱にうかされたように痛みも疲れも感じない。
「回復役は女だけだっ! 」……やべっ?!
俺に殺到する聖騎士たちに沢山の石や棒、果物や野菜が当たった。ひるむ騎士たち。
「あん? 聖騎士様が女子供真っ先とか? あたし等が相手になるよ? 」
買い物帰りの主婦たちがニヤリと笑う。
「あんちゃん! 剣一本じゃやりにくいだろっ! パンの伸し棒だがっ! 」
ニコリとロー・アースが棒切れを受け取り、華麗な棒さばきで剣を防ぐ。
魔力を込めたレイピアがうなりをあげ、聖騎士たちの鎧を紙切れのように引き裂く。
慌てて回復祈祷を乞う聖騎士たちだが、その癒しの光はなぜか俺たちに降り注ぐ。
「がんばれ! チーアさん! 」「いっちゃえいっちゃえ! 」
「行けっ! 」「やっちまえっ! もう賭けは負けでいいやっ! 」暖かい光。
……僅かな力ではあるが、間違いなくコレは使徒の使う癒しの力。……こんなにたくさん?
「やっちゃえ! 」偽者さんことローラの声。
たくさんの人が手を振っている。沢山の人が笑っている。沢山の人が。俺たちの勝利を願っている。
ファルコが元気に駆ける。地面を蹴った。
露店の柱、大地、騎士たちの鎧、盾。それららが瞬時に砕け散った。
それが蹴りだとも判らぬ凄まじい一閃。
うちおろされた剣を両手の手首で受け止める俺。聖騎士の目が見開かれる。
「……ははは。前にもらったブレスレットが役に立ったよっ! 」
本当は将来大好きになる男の人に見せる時にってあのばあさんは言ってたが、当面先のようだ。
そして歯で仕掛けの留めを外す。「武器にもなるんだぜっ??!!! 」
俺の腕から飛び出した輝く複数の輪が至近距離から聖騎士の身体を打ち抜く。
間隙が空く。今だっ! 左右の脚を連続で振りぬき、アンクレットの輪を打ち込む。
いくつもの光の輪が胴鎧に吸い込まれていき、倒れる聖騎士。ふう。
がらん がらん がらん がらん がらん
各神殿の時の鐘が大きく響き渡る。
雲間が開き、夕暮れの太陽の光が俺たちにふりそそぐ。
「おい。少年。……この世に罪を重ねたことのない人間はいない。
むしろ罪に、血に染まり、我らの身は悪そのものといっていい。……だが」
「たとえ、神様にそっぽをむかれても、夢も希望もなくても」ララさんの声が続く。
――― ぼくは みかたなの ―――
「……信じてみないか? 」
夕暮れの最後の光。きらきらと輝く光の中を受け、空を舞う小さな姿。
天空の光を受けて輝く隼の蹴りの一閃が、光の矢となる。
とっさに盾を掲げる隊長。だがその盾は。
「我が装甲を砕いただとっ!!! 」
「うっっおおおっっ!! 」
身体に鋭いひねりを加え、さらにもう一撃を蹴り込む。
――― !!!!!!!!!!!!!!! ―――
……。
……。
ファルコが満面の笑みを向ける。その先にはあのスリの少年がいた。
「よぉっ」
「やっと わらったね♪ 」彼の微笑みに釣られて俺も笑みがもれた。
「おっしゃ~~~~~!! 」
「すっげえええええ~~~!! 」「やっりぃいぃぃ!!! 」
大騒ぎする人々。ちょっと恥ずかしい。
「いっちょあがりっ! 」親指を立てるファルコ。
パンパンと手を叩いているロー・アース。
相手は全員息はあるが、動けないようだ。
「さて。私の勝ちのようだな。銀貨十万枚頂こう」「私は一万枚ですね」
「貴族様たち後生ですよっ?!! 」後ろのほうで胴元とワイズマン様たちが騒いでいる。
そのまま逃げようとしたスリの子は老婆とトート先生が捕まえた。
「マヤっ! 離せっ! 」「この子はっ! どうしてどうして! 」
「うっせ~! みんなには薬と飯がいるんだよっ!
マヤの稼ぎと寄付だけでやっていけねぇだろうがっ! 」
「だからって泥棒をしていいわけないよっ! 莫迦っ! 莫迦っ! 」
泣いて彼を抱きしめる老婆と天を呪うように叫ぶ少年。
「お母様の言うとおりです。彼には罪があります。悪意もあります」金髪の女性は言う。
「でも、あなたは正義をなそうとした。そう信じます」少年に微笑むドミニク。
「オレが……正義????!! バカじゃね? お前??! 」
「バカじゃないよ? 聖女様だもん! 」ローラが少年に抗議する。
「……な、な、な……なんて格好してるんだローラ?!! 」驚く少年。知り合いか。
「へっへ~ん! 綺麗でしょ??! 」
くるっと回って魅せる少女・ローラ。
「ばっ! ばかっ! お前みたいな不細工知るかっ! 」
……あ。素直じゃないな。顔真っ赤。
「レィ。って言いましたね。……いい言葉があります」少年の前に立つ女性二人。
「『泥棒にも三分の理』です」女性はそういって微笑んだ。ララさんともう一人。
え? え??? なんでここに??!!!
「……え~と。高司祭……さま? 」……なんでいる。
「……喧嘩は厳禁です。チーア」うん。反省している。
「はんすうしてます」お前は牛か。ファルコ。あと、なぜ正座。
「邪教徒の聖女が何の用だ?」
「……使途の力を私欲に使う貴方に言われる理由はありません」
高司祭さまは涼やかな顔で答える。
「それより、うちの子に何をする気ですか?相手になりますよ?」
口元に手を当てて艶然と微笑む高司祭さま。……あはは……怖いかも。
「どうします?」
スリットの入ったローブから長い脚を魅せ、啖呵を切る高司祭さま。
かわいらしい様子なのに何故か決まっている。
「……あいつ、怒らすと怖いから撤退だね」ドミニクが隊長に言う。
「貴様は……? 」「莫迦」ドミニクはため息をついた。
「あんたの上司だ」




