6 謎の薬効
俺は知らなかった。この石鹸なる変な石の絶大な効果を。
俺達が去った後、慈愛神殿で大騒ぎが起こったなどこの時点で知る由も無い。
神殿を出てテクテク歩く。ファルコがぶんぶん手を振る。
見ると向こうからワイズマンとロー・アースが歩いてきた。
平謝りする俺の肩をぽんぽんと叩くワイズマン。なんと寛大な男であろう。
少し。許した。でも借金は払ってくれ!
「ところで」「うん?」ロー・アースは不思議なことを言う。
「お前、トート先生からお使い頼まれてなかったか? 」
???なんだったっけ???
「あれは良いものだ。友と堪能したよ」
「……野郎共の裸なんざ見たくもなかったんだが」
「しかし、君は少々臭うのだから仕方ない」「装備は『浄水』したのだが」
……。
……。
なんかあったような。
「……まだ『浄水』が必要か? 」「いや。不要だ」
「もうひとつできたら優先的に我が家に持ってきてくれ。陛下に献上する」
「それ、賄賂だろ」「失礼な」俺の抗議にワイズマンは苦笑した。
「あの石は凄いな。どんな香水より効果的だ。少々手間だが」
「匂いのみならず薄汚いスラムの野郎どもが見違えるような美男子になるほどだしなぁ」
「今なら良い縁談があるぞ。どうだね? 」「ありがたいが断る」
6月まで断れ。……色々ややこしくなるし。……ん?
あ!!
「正義神殿に持っていったらさぞ高く買ってくれるだろうな」
「あいつら皆潔癖症だしなぁ。流血沙汰になるんじゃないか?」
……冷や汗が流れた。
「そんなに気にしなくてもいいだろ。来月には慈愛神殿でつくってもらえるように話をつけるそうだ」
「そうか?しかし高いのだろう?? 」
「手間はかかるが意外と安くできるらしいぞ。というかひとつあればアレだけ使えるし」
「なるほど。それは慈愛神殿が一番良い。正義神殿や知識神殿なら下々に流通しないだろう。
戦神神殿は興味を示さないだろうし、商業神殿には渡してはいかん」
「……ちいや」
下に視線を向けるとファルコがにらんでいるのが見えた。
は、はははは……。ははは……。
「では、慈愛神殿に早く買い取り契約を結びに行かねば」「先を越されると厄介だしな」
感謝するよ。友よ。とワイズマンは俺に言う。ははは。はははは……。ははははは……。
「??? どうした。チーア君」「その。あの……ワイズマン……さま? 」
「??? 」え~と。
「同僚にあげちゃった…… 」『……』
「誰に?? 」「神官長……から同僚の下級神官に……」
「ふははは。チーア君は面白い冗談を言うな」「先生が手紙を添えて渡してなかったか? 」
「……俺。字ほとんど読めないんだが」『……』
『チーア』三人が一斉に俺を呼ぶ。
はいっっいいい???!!!
『とりかえして来いっっ!!!!!!!! 』
皆が俺に切れた。




