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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
篭の中の小鳥と路傍の花

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5 俺とファルコと謎の女(主に異常にデカイ乳が謎)

 「あっついあっつい~」ファルコがはしゃいでいる。

ロー・アースたちと別れ、俺といつの間にかついてきていたファルコは慈愛神殿に到着した。

スラムでトート先生にもらったズタ袋のような木繊維製の貫頭衣を着替えろといわれた俺はついでにサウナに入って来いとジェシカに厳命されてしまった。


 「まぁ。ファル相手ならいっか」

もう女ってばれているし。


 というか、ワイズマンにもいつのまにかばれている。

知らないのはロー・アースくらいだ。


 「知ってるよ~」???

……まぁいいか。ファルコのボケに付き合ってると日が暮れる。


 「……じろじろ見んなよ?」

「みない~」ファルコは腰布だけ巻いて両手で目を隠しつつ、器用にサウナの中に入る。


 二人に出会った時はまったいらだったのが数ヶ月で皿のようになってきた。

妙に敏感になってきて、衝撃を胸に受けると恐ろしくイタイ。マジ痛いので胸当てを今度買おうと思っている。

今は布を巻かなくても厚着をすれば大丈夫だが、そのうちサラシでもごまかせなくなるだろう。


 余談だが。

先日、親父が胸を支える下着を購入するからサイズと形を詳しく測らせろと言ってきたので殴っておいた。

個人の体型に合わせて各部位を細かく立体的に縫製した動きやすい服や下着は運動量の多い冒険者に伝わる独自技術らしい。先達も苦労しているようだ。


 親父に言わせればそのうちまんまるに膨らんだ挙句、

走るついでに『ばるんばるん』と震えて男どもを喜ばせまくるらしいが、悪夢であって欲しい。

御袋はそれくらいでかかったそうだ。エルフの癖に巨乳とか迷惑すぎる。娘も似たらどうするんだ。

(「いや、父としては凄く、期待する。乳だけに」「やかましいわっ?!! 」)


 「すべんなよ~」

俺は手早く服をたたんで隅に片付け、なぜかあった大きな布を身体に巻く。

滑ると大変だが、焼き石に触れたりしたら一大事だ。


 「おとなしくしてろよ」「うにゅ! 」

俺は慎重に焼き石を青銅の挟み棒でつかむと水の中に突っ込む。


 「もわもわ! もわもあ! あっついあっつい~!! 」

はしゃぐな。危険だから暴れるな。

「湯気に触るとやけどすっぞ~」「あちち! 」いわんこっちゃない。


 「水にそのままつけておけ」やけどはしてないようだし。

「おわっ! あっちち!! 」そっちじゃない!!! 「見せろ!! 」

「なんちゃって♪ 」……。


 「殴った~。チーアが殴った~」ふん。

「騒がしいですね」うん? 誰だ?


 「男?? 」

湯気だらけでわかりにくいが黒髪なのは分かる。そして背が高い。

「だよ? ぼく」「お前じゃない」俺は呆れる。


 「……」人影はなぜか答えない。

「あの。こやつはまぁ子供枠だから良しとして」

(隣でファルコが「こどもじゃない~」と言ってるが無視)

「まぁその……」言いたくないが、野郎は出て行け。結構切実に。

前はあまり気にしなかったが昨今は薄着をしているとどこからか嘗め回すような目線を感じることが増えてきた。


 「……私が男に見えますか?」そういえば女の声だな。

「あ~。失礼。背が高いのと湯気で分かりませんでした」「……」

機嫌を損ねたのか、謎の女は黙っている。

……そのまま音も無く近づき、俺の隣に座る。異常に髪が長いので顔は分からん。


 「ぼく、出る~」「今入ったばかりだろ。もうちょっと入っておけ」

「痴漢でつかまるとアップルにおしりペンペンなの!」俺は良いのか。俺は。

それともさっき子供枠にしたことへの当て付けか。


 「ふふふ。かまいませんよ。ただ、他所で言いふらさないでくださいね」「うん」

両目を手で隠したまま、『てけけ』と走って戻ってきて器用に俺たちの前に座るファルコ。

うむ。良い人っぽいな。他の女どもなら酷い目に会う。

……不意に手を握られたかと思うと謎の感触。異様に柔らかいけどこれって。


 「……男に見えますか? 」

「見えません。ごめんなさい」地味に怒っていたらしい。

つか、でかっ!!!


 「どーやったらこんなに上背と胸だけデカくなるんすか? 」胸はさておき、上背は欲しい。

「……物凄く、失礼ですね」と言うか手を離してっ! 恥ずかしいうえ、物凄い力だしっ!

「いでででででで」やっと手を離してくれた。男より力あるんじゃねぇか? この女。

よくよくみたら細身だけど筋肉も脂肪も程よくついている。怪力も納得だ。


 「……あなたの兄上様が心配するわけですね」はぁとため息が女から漏れた。


 ……ん?

「兄貴の知り合いっすか」「……面白い子ですね」

……なんか失礼だぞこの女! 人のこと言えないけど!

もしかして。あの兄貴だって親父の息子である。


 「あのバカ兄貴、真面目ぶっててやっぱり女ばかりの神殿で女作ってたか。兄貴の彼女っすか?! 」

はぁぁぁぁぁと大きくため息をつかれた。


 「……そうだったら良かったかも知れませんが、違います」

そして女は俺のほうを向いてこういった。「……嘘がつけないんですね。あなたは」


 「……ああ。まーな」自慢じゃねぇが正直者だぞ。


 「兄上様は人望のある立派な方ですよ」「ありゃ、真面目そうに見えるが天然ボケだろ」

俺と親父が来訪した時には既に何処ぞにフラフラ旅立った後だったし。


 「ですよね……」黒髪の女はため息をついた。

「無駄に女にもてるから身内は苦労させられるし」「ええ」

「アレだけもてるのにまったく気がついてないし」「ええ」

「しかも娼婦、貧民、貴族と階層問わず見境無し」「ええ」

「放浪癖酷くてフラフラ何処か旅立ってしまうし」「ええ」

「そもそも…」「もういいです。泣きたくなってきました」

がっくりと肩を落とす女。あの兄貴に惚れるとろくなことがない。女心には疎いし。


 「泣きたいときは泣くの~笑うときは笑うの~それが出来ないから人間は辛いの~」

前のほうからファルコの声。そーいえばいたな。珍しくおとなしくしてるから忘れてた。


 「泣きたいときに人のために笑うから人なの~。だからこっそり泣くの~」

「ミリオンがそーいってた」そうかそうか。あの手癖の悪い餓鬼もいいこと言う。

じゅ~~~~と強烈な湯気が立つ。ファルコが焼き石を入れなおしたらしい。気の効く奴だ。


 「……ファルコさん。でしたっけ?」

「なのなの!」


 ……なんでファルコの名前を知ってる。この女。

「……ありがとう」「どういたしましてなの。この間はありがとうなのの! 」

? ……それってお前この女と知り合いか?

そう指摘しようとすると。


 「むきゅ」うん???

あああああ!!! 伸びてる!!! 伸びてる!!!


 「しっかりしろ! 」

水をかけてやる。


 「出るの出るの」「アホかっ!伸びるまで我慢するな!」

「すんませんすんません。俺達は失礼します」「ふふふ。またお話しましょう」

正直、この神殿には出入りしたくないのだが。女は苦手だ。


 「その布は適当なところにおいておいてください」

「あ、すいません。コレ、ひょっとしてあなたの?」

頷く女。そういえば裸で入ってきたな。この女。悪いことをした。


 外に出た俺達は用意されていた男物の服を着ていそいそとサウナを後にした。

「あのねーちゃん、泣いてたね」まぁあの短時間でコイツが伸びたりはせんわな。

「一人にしてやったほうがいいわなぁ」「だぁねぇ」

そういえばなんの為に来たんだったっけ??? まぁたいした用事じゃなかったんだろう。


 「チーア!!! 」 うん?

「何処か斬られていませんか??! 正義神殿の聖騎士に捕まったと!! 」

あ~。そういえば。


 「あ~。大丈夫です。伯爵家の跡取りが助けてくれました」「なの!」もう一人いたけど。

「この子が馬泥棒とか」ぷんぷんと怒るオールドミス。

煩型うるさがただが悪い人ではない。らしい。最近好きになってきた。五月蝿いけど。


 「……それより、ミス・カレンも彼氏探しましょうよ」「余計なお世話です」

俺がからかうとカレンは俺の耳をかるくつまんだ。「いでで」

この人が何故婚期を逃したのか本気で疑問だ。


 「普通の人より歳取りにくいんだし、彼氏作りましょう」キッツい顔立ちだけど美人だし。

「しつこいですよ?」カレンはキツイ眼を更に吊り上げる。

カレンは20代半ば過ぎに見えるが50前らしい。神の加護である。


 「ふう。怪我はないようですけど、怪我をしたら言いなさい」治してあげますとのこと。

「まぁ自分でも治せますし」カレンの手を煩わせたら後が怖い。


 「あ。そーいえば」ふと思い出した。

「カレン。これを使うと身体が綺麗になるって」「??? 」

唐突に渡された箱を開けて石を取り出すカレン。

「ちいや、ソレ、だめ」「??? いいじゃん。別に」「ぼく、しあないよ? 」


 「……素敵な香りですね」「説明書はコレっす」

俺が取り出した箱に入った石もどきにカレンは興味を示したが、

すぐに「私より、若い神官たちのほうが喜ぶでしょう」とつっぱねた。

キッツいようで真面目だからなぁ。カレンは。

「ミズホかミナヅキか、アンジェあたりか」「ちいや。ちいや」「うっさいなぁ」

ミズホとミナヅキは双子の神官で仲が良い。アンジェは人当たりが良い。

え? なんでアンジェがいるかって? ……やっぱり捕まった。

それはそれは恐ろしい目にあって、神殿に連れて行かれた。当面外出禁止だろう。アレは。

親父がとりなしてくれたが、マジでジェシカは恐ろしいと思った。


 廊下を走ってくる影。「お~い!アンジェ?!!いいのがあるんだが?!」

「今、チーアの相手どころじゃない!! 」……また何かしでかしたか。懲りろよっ?!


 「アンジェ!廊下を走らない!」

「カレン!司祭様に追っかけられているの!許して!」

また何をした!!!?? 貴様!!!


 「アンジェ!! また変な本を持ち込んで!!!??

まだ持っているでしょう! 出しなさい!! 」

「いやです!! ……もとい、持っていません!!! 」

……語るに落ちたな。頑張れ司祭様。確かモニカって言ったっけ?

子供を叱るときさえ可愛らしい女の子だ。年上どころか行き送れらしいけど。


 ……どたどたと走っていくアンジェとそれを追っかける司祭様。

二人が通り過ぎた後、黙って神に祈りを捧げるカレン。……あいつらは見なかった事にしよう。

図書室でたまに会うマリアは嫌味だからパスとして。


 「ミズホたちは?」「あの二人はゴミの回収に」

汚物の収集はこの神殿の資金源である。

「じゃ、ミズホたちにやってください」「了解しました」


 「ちいや~」何故か俺のズボンを引っ張りまくるファルコ。

「あとでアメやるから黙れ」「うん! 」……いいのか。それで。


 カレンは説明書に目を通すと、

「では、お湯とたらいを用意しておきます」と姿を消した。

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