3 毒蜜とクリームと謎の泡
「臭いが気になるなら、これを水に溶かして泡立てて布で身体を洗ってください」
謎の台詞をトート先生が吐く。
水につけても良い装備品はまとめて大きな壷に放り込み、「浄水」の加護を願えば良い。
実際、全身ウンコまみれになった俺たちの服や荷物は事実上使用不可能な状況になっていた。
水で流したくらいでは臭いも取れず、ウンコの色も落ちないのだ。
「浄水」なしでは食器の類は絶対にもう使えない。
即刻廃棄処分な俺たちの装備をなんとかするため、
何度も「浄水」を使ってぶっ倒れた俺を見かねた先生は苦笑しながら謎の白い石? を差し出してきた。
……なんじゃこりゃ。
「これ、甘い匂いがするのに苦くてまずい」
いつの間にか受け取ったファルコがそれに噛み付いていた。
……子供じゃあるまいし、なんでも食うな! ……子供かもしれんが。
「食べ物ではありません。ファルコさん」
トート先生も苦笑いしている。
「この香りは香料の香りですので味には関係ありません」ふ~ん。
「加えて、人間の栄養にはなりません。むしろ毒ですので口から出してください」
こらっ!!!!! 吐き出せファルコっ!!!
「毒蜜とミルクとクリームの味がした」
ファルコはぺっぺっとつばを吐きながらのんびりと言う。
「鋭いですねぇ」トート先生も笑っている。
「毒の花に集う蜂の蜜は毒になるってアレか? 」ロー・アースは地味に物知りだな。
「一部の毒蜜は強性剤にもなりますね。用法用量を間違えれば死にますが」むう。
香料がわりと肌荒れから肌を守るために少し入れているとトート先生。
口から入れれば猛毒だが、肌から入れたら薬になる薬は少なくは無い。そういうものなんだろう。
「相変わらず先生は金に糸目をつけないな」俺はあきれた。
蜂蜜なんて好んで食うのは熊かグラスランナーくらいで、本来、超高級食材だ。
採取には蜂に襲われる危険を甘受しないといけないし。
「蜜を取る蜂を飼えば問題なく」?????
「飼えるのか???!!!! 」こないだのフナじゃないが、この先生博識すぎるぞ。
「うん。面倒だけど飼えるよ」……お前は昆虫と意思疎通できるけどなぁ。
「蜜だけではありません。蜂やその幼虫の栄養価はとても高いのです。
病人すら生き返るくらいですよ?
あと、蜜蝋を加工することで、明るい灯火を安全に確保できるようになります」……は、はぁ。
「もっとも、蜂を飼える事実は口外しないでくださいね」???
「暗殺者ギルドに狙われます」……理解した。
「で、先生、この石で臭いだの汚れが取れるって言うんですか? 」俺には到底信じられない話だ。
「ええ」
先生はにっこり笑って肯定した。
「用法、用量は良く守ってくださいね」




