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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
あの子の影を踏まないで

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2 ジジ臭い18歳と謎のシャキシャキ爺さん

 「絶対見えねぇ。どうみてもオッサンだろ」

「てか、ババァや餓鬼にモテまくりだし」

俺ばかり話しているのは奴が口を利かないからだ。

テクテク歩き、ナジ……なじみの門番に手を振って街を出て郊外の森にある『五竜亭』に向かう。

「ただいま」「お帰り! ファルちゃんは??!! 」

「川のほとりの舟ですやすやお昼寝してたぜ」まったく。手間かけさせやがって。

「……ファルはどうした? 」エイドさんの眉がつりあがっている。俺たちなんかしたか?

「だからここに……」俺はロー・アースの背中を見て驚いた。いつの間にか小さな丸太。


 「身代わりウツセミジュツだな……」エイドさんがため息をつく。

ファァァァルゥゥゥッッッ!!!!!!!!!!!


 「『いいフインキなので、じゃましないようにするの! ファルコ』……だそうだ」

ロー・アースが丸太にナイフで彫ったと思しき文字を読み上げる。

雰囲気ふんいきだろ。ってそういう問題じゃない! てか変なこと考えるなっ!

「も、もう一回さがしてきまっす!!!!!!!! シンバット!! こいっ! 」

俺は愛馬を呼ぶとロー・アースを置いて駆け出した。


 「……! 」手綱を引いて止まる。

「おっと、いい馬に乗ってるじゃねぇか。坊主」……糞ッたれ。馬泥棒か。

「お前らの相手なんてしてる暇ねぇんだよ!」軽くシンバットに合図するとシンバットはかまわず馬泥棒に突撃。

そのまま飛び越える。「悪いけど、俺には幼児が。もとい用事あるんだよっ!! 」


 「おいっ!!? ファルコを見なかったか??! 」

ファルコの知り合いの肉屋を見つけた俺は叫ぶ。

「?? ファルちゃん? ああ。向こうの広場で子供たちと遊んでたようだが? 」ナニやってるんだよ。

「恩に切る! 」俺はシンバットに合図して走る。


ダダダッ! ダダダッ!

「おいっ?! 」子供たちに声をかける。

「あ。チーアちゃんだ! 」「ひもの遊びまた教えてよ!! 」

アヤトリとか何とか言う遊びは兄貴が教えてくれたのだが、子供ウケ抜群だったりする。

「ファルは??! 」「ふぁるちゃん? さっき用事があるからって帰ったよ~」なんちゅう移動速度っ??!

「ど、何処にいったかわかるかいっ?! 」「えっと、魔導士ギルドの塔を登って遊ぶって! 」


 はいっ??!! あれ、天に届くほどあるぞっ??!

「ぼくらも登りたいって言ったら『人間の子供だと危ない』って」「ずるいよねっ! 」

「……ありがとう。行ってみる」

シンバット! 町の反対側だッ!走れっ!!!???


 「ファル! ファル! ファルコ!! 出てきやがれっ! 」

魔導士ギルドの三つの塔の周りで叫びまくる俺はどう見ても変人である。

魔導士と思しき男女が怪訝な顔をして通り過ぎる。

「うん? ファルちゃんがどうした?? 」

振り返ると知らない老人が不思議そうな顔をして俺を見ている。

さっきまで人の気配なんてしなかったはずなんだが……誰だこのジジイ。というか貴様何歳だ。

見た目は70とかそれどころじゃない歳に見えるが、足腰しゃくしゃくで言動ハキハキ。マジ年齢不詳だ。

「さっき帰ったぞ? 」爺さんは気さくそうな笑みを浮かべる。

「なああにぃぃぃっ!! ……登って遊ぶとか頭のオカシイこと言ってませんでしたか?! 」


 マジマジと謎のジジイを見てしまう俺。

ジジイは愉しそうに笑うと。

「うん? さっき登りきって、茶飲んで帰ったが……なにかあったのかね? 」

はやっ! てかありえんっ???!

「い、いえ、ちょっと! たいしたことありません! 」爺さんは関係ないし。


 立ち去ろうとする俺の背に爺さんが声をかける。

「……グィンハム君は有望な青年だったらしいな。彼の導師から何度か名前を聞いたことがある」はいっ?

「あ、あの。なんか奴はしゃべってなかったっすか? 」

関係ない人が暗殺者ギルドや大貴族に目をつけられるのはダメだ。


 「ふむ。可愛らしい男装の少女と頼りがいのある魔剣士との愉快な冒険譚なら多少は」だぁぁああああ!!!

「わ、忘れてくださいっ! 出鱈目です! 出鱈目っすからっ!!! 」これ以上変な噂を広めるなっ! 頼むっ!

「ガウル君は元気にしているかね? 」はいっ??? 誰? この爺さん!


 おやじ。おやじ。クソ親父ねぇ……。

アンジェに案の定手を出そうとしたり(無実だとか言ってたが)、娘の入浴を覗こうとしたり、

あまつさえ入浴中に全裸とマラを勃起たせて

「一緒に入ろうっ?! 」とかキラキラの瞳で喋ったりする。

……あの。あのクソ親父のことを知ってるのか? このジジイ。


 てか、なんで親父と俺が親子って判るんだよ。

俺、容姿だけは流石にあの親父に似なくて良かったと思ってるんだが。親父に悪いけど。


 「……この間娼館ひとつ、やり手ババアや引退したババアども含めて、足腰立たないようにしてしまって出入り禁止くらいましたが」「ぷっ」

あははっ! 相変わらずのようだな!!! と笑い出す爺さん。


 いらいら。


 「爺さん! 俺、あんたの相手している場合じゃねぇんだっ! ファルコは何処行ったかシラネェかっ??! 」

「……せっかちだな。ドライアド君の娘は」 ?????

「暗殺者ギルドや貴族のことを心配しているのなら、私は大丈夫だ」はぁ???!!

「駆け落ちじゃないってこと知ってましたか??! 」無茶苦茶意味不明な質問をしてしまったが。

「……彼の婚約者は確かに家名だけの没落貴族で我も強い。が、一途に彼を愛していたよ」


 ……。

「えっと。……失礼しました」

「若いうちはよくある。そうでなければ年寄りの出番がないではないだろう? 」

俺の無礼にニコリと笑う爺さん。気さくなジジイだ。


 「……あ、あの。全部話して大丈夫ですか?」

「グィンハム君が『黒き針ブラックニードル』なる暗殺者に殺され、川に捨てられた件だね」


!!!


 「あいつ、そんなこと言ってたんですかっ!!」

グラスランナーの調査能力と足の速さを舐めていた。


 「彼の話や私の知る事を統合するとそうなると言っただけだが?」「余計なこと吹き込まないでくださいっ!!」

俺に叱り飛ばされ、肩をすくめる爺さん。しかし、すぐに俺に頭を下げた。


 「……俺、やっぱアイツを止めてきます」

大貴族や暗殺者ギルドを敵に回したら、ファルコも俺たちも危ない。ひょっとしたら俺たちに関わった人皆が。


 シンバットに跨り、腹に蹴りを入れる寸前、爺さんの一言が耳に入った。

「本物の『黒き針』は死んだ。今いる者は亡霊に過ぎん」 ???


 「……どういうことっすか? 」

「そのままだ。暗殺者ギルドとしては『黒き針』の名前は惜しいということだな」

「……ロー……。もとい、俺の知り合いは奴は殺人鬼に過ぎないって」

そもそも子供に負ける奴なんてなぁ……。


 「確かに暗殺だけならもっと腕利きもいるが、100年以上もその名を知られた殺戮者だ。

ただ愉しみのためだけに街や国の有力者をたぶらかし、

鉱毒を撒かせ、周囲の竜族を刺激し、毒を撒き、王族や貴族の不和を招いた。

奴の愉しみのためだけに殺された人間は……直接手を下した人間だけで麦袋の麦よりも多いであろうな」


うえぇえぇえ。


 「暗殺者ギルドに目をつけられたら終わりじゃないですかっ!」「そうだな。私も止めたのだが」

老人は俺をじっと見た。


 「『正義の味方じゃないけれど。おばあちゃんのために『黒き針』を捕まえる』そうだ」

……。ば。か。やろう。ファルコのバカヤロウ。


 「行くのかね?」

「……ええ。その。やっぱり」

無理だろ。暗殺者ギルドに逆らって生き残れる筈ない。王だって無理だろう。が。


 「やっぱ。アレです。友達っすから」

無理してもニッコリ笑ってみせる。へへ。

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