10 天使(アンジェ)。再び
「助かっちゃった」
揉めるアキと女神官三名を放り出して逃げた俺はシンバットを呼び出し、
ファルコとアンジェを伴って『五竜亭』を後にする。
「ファルコちゃん。って言ったっけ」
アンジェはニヤニヤ笑っている。
かばってくれてありがとうと告げるとファルコは頬を赤らめた。
「……もし、童貞卒業したくなったら、お姉さんが可愛がってあげる」「みゅ? 」
ファルコの両の頬をもち、唇を尖らせて告げるアンジェ。……こら。
「っふふ♪ ……でも♪ 」
そういってファルコから離れる。
振り返って俺を愉しそうに見上げ。
「あなたが先かな? チーア♪ 」 ……懲りない奴だな。
「イラネ。ガキには興味ない」つっけんどんに突き放す俺。
「あら」
アンジェはニッコリと笑って、
「恋人に対して、酷い言い草」といいやがった。
いつ、だれが、だれと恋人になったって? え?
「下級神官って大嘘だろ」
俺はアンジェを睨みつける。
「う~ん。ホントだよ。素行悪いから」
アンジェはすっとぼける。
「女神さまの力がみえるよ? 」
ファルコはアンジェの足元をテクテク歩きながらそう言った。
簡単に言うと、女神から加護と癒しの力を与えられたのが使徒であり神官。
下級神官はそれ以外。
「……女の過去は、ナイショ♪ 」
秘密が多いほうが、女は魅力的でしょうと主張するアンジェに苦笑いしつつ、
彼女を何処に庇うか思案する。まっすぐ帰ったら100叩きが待っているとなると。
「……俺の親父の小屋ならしばらくほとぼり冷ますことができるかな? 」
「トーイ様のお父様と、チーアの親子で手篭めにされるのね。私」ぶっ?!
「置いていくぞ」
俺は半眼でアンジェを睨んだ。アンジェはペロっと舌を出して笑った。
「あはっ♪ 」「あはは」「ふふ」
「手、握って良い? 」「あ? なんでだよ? 」
「どうしてもっ!! 」わかんないヤツだな。
ぎゅっと握手するとアンジェの頬が緩んだ。
「ファルちゃんも! 」「みゅ?」
無理やりファルコの手を反対側の手で握るアンジェ。
「えへへへっ! これからも仲良くしてね! 」
「みゅ! 」「……考えておく」
「なによぉ~! それっ?! 」膨れるアンジェに笑ってしまう俺たち。
俺たち三人は親父の小屋に歩を進める。
もうすぐ。花が咲きだす季節がやってくる。




