9 司祭。モニカ
「店主を出しなさい。出るところに出ますよ? 」
アキを睨みつける華やかかつ目つきのキツイ美女。ジェシカ。
若干、トウは立っているが恐ろしいほど美人だ。
アキは一瞬青ざめたがそこは荒くれ者どもの集う宿の娘。
「店主のエイドと女将のアーリィはでかけております。
用件があれば代わりに私が伺いますが? 」とジェシカを睨み返す。
「チーア様」
ツカツカと歩いてくるカレン。
俺と目を合わせようとするので視線を逸らす。
カレンはニコリと微笑むと。
「出てきなさい。アンジェ」
「ひっ? 」テーブルの下からアンジェの声が聴こえた。
失礼。アキに頭を下げ、こちらに向かってくる侍祭。名前はジェシカ。
無言でテーブルの下のアンジェを片手(!)で引きずり出し、
「無断外出は尻たたき100回とカレンから聞いているはずです」と呟いた。
「ご、ごめんなさい。ジェシカ……侍祭」
とってつけたように侍祭と言うアンジェにジェシカはニコリと笑って。
「あとで何処に逃げても100叩きです」恐ろしいことを告げる。
「あのね。あのね。あんじぇ姉ちゃんは、ぼくにあいにきたの」
いたいことしないで。と告げる小さな妖精。
勿論。そんな事実はない。とっさにファルコがアンジェをかばっただけだ。
しかし、ジェシカの手をアンジェから離すには充分だった。
めそめそしながら「御友達にあえなくてさみしかったの」と大嘘ぶっこくファルコ。
「「「……」」」
ジェシカとカレンは呆れている。勿論。おれも。
……黒い奴め。ファルコ。あ、今、目元に唾つけやがった。
カラン。扉がまた開いた。今日は来客が凄く多いな。
「チーア様。お迎えに参上しました」
幼さの残るこれまた美女……ってどんだけ美人ばっかり出てくるんだ! いい加減飽きたぞっ?!
華麗な衣装を身にまとった。司祭。
「私は、モニカと申します。畏れながら司祭を務めさせて頂いております」
へえ。可愛らしい人だな。
「? 司祭さまがこのようなむさ苦しいところに自ら? 何故? 」
「……そちらにいらっしゃるチーア様は、トーイ様。……即ち我が神殿の最高司祭の弟君です」
うわ。余計なこと言うなよ。モニカとやら。アキはボケーとしている。無理もない。
くるっとアキの顔が俺の方を向く。
アキは俺の顔をまじまじと見て。言った。
「はじめまして。私はチーアの婚約者の、アキ・スカラーと申します」
アキはペコリとモニカ達に頭を下げた。
『ウソつけ』
俺達五人は一斉にアキに冷たい台詞をぶつけた。




