6 熱き泉
「『五竜亭』の冒険者しか知らないから、人には言わないでね」
そういうフレアをあと目に、俺は服を脱いで泉に飛び込んだ。
「あらあら♪ 」
「きもっちいいっ??!!! 」
すっげ~いい湯加減だしっ?!!
きらきらと光を反射する泉。緑の中の木漏れ日。あたりを覆う湯気。
森の中にある『熱き泉』は凄く幻想的な風景だ。
まるで『妖精の世界にある』ような気がする。
そういえば、銀製品以外の鉄類の持込もダメとか言われたな。
なんでか知らんけど。『熱き泉』に入れなくなるらしい。
「♪♪♪ 」
自然と歌が喉元から流れる。
娼婦や男娼に間違われるので、人前では歌わないけど、実は俺は歌が好きだ。
「……チーアって、凄く美人だよね」
「……目、腐ってないか? 」「腐ってない」
そういってフレアは笑う。
「髪、すいてあげる」
何処からか取り出したか知らない櫛で、俺の髪をとくフレア。
泉から立ち上がり、腰だけ泉に浸かって熱き水を腕にかけてみる。
凄く気持ちいい。
「傷にもやけどにも効くんだよ」
凄いな。『妖精の里の泉』みたいだ。
……あれ?
「なんか、音がしなかったか? フレア? 」「……」
フレアは黙って大きな石を藪に投げた。
ごつ!!!!
鈍い音がした。
「……気のせいだよ。チーア」
獣とかかな?「ここには獣はいないわ」
むう。
なんだったんだろう。一体。




