4 レッドとファルコと俺
「しっかし、お前等くっさいぞ。最近何やってるんだよ? 」
レッドは「くっせーくっせー♪ 」と鼻をつまんで厭々をしている。
むかつく。
「トートって医者の手伝いやらされてる」「タダで? 」うん。
「とーとのおっちゃんおもしろいんだよっ?! 」「ファルコ。タダ働きは良くない」
レッドはそういうが、一応、依頼人だからな。トートは。
ロー・アースは今頃スラムで薬品の調合の手伝いをやらされているはずだ。
住民の信頼を勝ち取るためには必要らしい。俺達二人も午後から行くことになってる。
「……とりあえず、お前等、風呂に入れ」
「風呂? 」「おふろ?? 」
知らないのか。とレッドは笑う。
「黒髪黒目なら知ってると思うが? 」
俺は無言でヤツにジョッキを投げた。
「おっと? 何するんだ! 」うっせ。
ああ。すまん。とレッドは笑う。
「そういうつもりはないんだが、ホラ、黒髪黒目の連中って何故か毎日風呂に入ろうとするだろ? 」
ああ。そういう意味か。てっきり黒髪黒目の半妖精が神の子だの悪魔の使いだのいう気かと思ったぜ。
「あるんだよ。この宿には」
???
「あっつあつの。御湯がいつも、朝も昼も晩も入ってる。風呂が」
えっ??!
「マジかっ? 」「ホントッ? 」
俺達二人は目を見開く。さすが車輪の王国。珍しいものがある。
「もちろんさっ! 入りに行こうぜっ!!! 」「おうっ! 」
ファルコが愉しそうに同調する。パァン! とハイタッチを交わす二人。いつの間に仲良くなった?
宿に泊まっていない俺でも、掃除を手伝えばタダで入れてくれるらしい。
熱い御湯か。熱き水の泉に何度か入ったことあるけど、アレ気持ちいいんだよなぁ!
……あれ?
「なんでお前と入る必要があるんだ? 」
俺が睨みつけるのを見て、レッドは不思議そうにしている。
「そりゃ、男同士遠慮なんていらんだろ」
「女湯もあるわよ~♪ 」
遠くからアキの声が聴こえた。そういえばアキも黒髪黒目だな。
興味は。凄く。凄く。あるんだが。
じっとレッドの目を見る。赤い目。黒水晶で出来た眼鏡。
「??? どうした? チーア? 」
……悪気は。ない。んだよな。たぶん。
「チーアはね、この間の御屋敷の掃除で怪我しちゃってるの」
ファルコがたまりかねたらしくフォローしてくれた。
「風呂に入ると染みるからダメだって」「え? お前等、なんで掃除で怪我するんだ? 」
俺が聞きたいわ。マジで何度か死に掛けたし。
「いここっ♪ 」
そういってレッドの手を引くファルコ。
「え? いや、 傷に効く熱き水を引いているんだけど……」戸惑うレッド。
「おい!? ひっぱるな?!!ファル?! 」
「……わかったわかった。もう。次は一緒に入ろうぜっ?! チーア! 」
ずるずるとファルコに引きずられながら、レッドは風呂場に向かっていく。
……サンキュ。ファルコ。恩に切る。




