2 かしまし娘だけど四人いる
「ちょっと? 詰めないでっ!」騒がしいな。
俺がそちらに目をやると若い娘達の声がする。
「ちょっと、汚いけど、男前じゃない? そう思わない? ミズホ」
「え~あれ、こどもジャン?! レティ?! 」
「私はああいうの好きだなあ。
……アタックしてみようかな。ミナヅキ。どう思う? 」「アンジェ、趣味悪いわよ」
……聴こえてんぞ。半妖精の耳舐めんな。
「……カレンさん。あんまり怒ってやんないで」「ふふ。いつものことです」
カレンは俺と親しく話しているフリをしながら、向こうの建物の壁を睨んでいる。
「レティシア! ミズホ!ミナヅキ! アンジェ! 出てきなさいっ! 」
カレンが建物の壁にしかりつけると、パタパタと四人の若い娘が倒れこんだ。
「いった~い!」「ちょ……重い」「お姉ちゃん。離れて。重い」「うう。レティ。腕絡めないで」
……。
絡み合っている四人の子供たち。年齢は俺くらい?
「そこに座りなさい」カレンは穏やかにキレた。
そこって、石畳なんだが。「もちろん。正座です」
正座ってのは、東方の軽い拷問である。凄く痛い。
「えっと、この方がチーア様」「チーアです。カレン」
正座して悶えている四人の少女達を無視して、速やかに訂正しておく。
「あと、俺は『冒険者』です。だから神官としての地位はありません」
そういうことらしいので、あらかじめ言っておく。
「なんてことを」カレンは絶句している。
修行名目で『冒険者』にならないかぎり、
傷を癒せる『使徒』は原則外出を禁止されている。
(ちなみに、犯罪抑制のため傷の治癒には癒した傷の正確な記録の提出義務がある)
そんな堅苦しい目に遭わずに済んで助かった。
カレンの目にはトンでもない不良と映っているだろうけど。
「なので、お世話になれません。残念です」
俺はそういうと、彼女らに頭を下げ、「お気遣い、ありがとうございます」と告げ、
「『自称、トーイの弟』の乞食は去ります」と神殿を後にすることにした。




